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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第23話

(*´ω`*)おぱようございみゃす!

「クート⋯貴方、おかしいよ」

「そうなの?」


 ハーニャはクートの手を振り解き後退る。熱い一夜を過ごした為に現実感の無い、熱に浮かされた様な精神状態だったが、一気に冷めた。


(この子⋯危険過ぎる―――)


 ハーニャと結婚して子供を作ってもきっと生き方は変わらない。カヤルの想いが実って結婚出来てもきっと生き方を変えないだろう。

 もしもハーニャが不治の病に掛かり、レアアイテム⋯いや、レジェンド級の秘宝が必要となっても、嬉々として冒険に出掛けるだろう。妻を救う為、子を救う為、格好の理由を見つけて喜び勇んでダンジョンへ潜る。

 異常者だ。冒険者として大成する者は何処かがおかしい。クートにはその片鱗が有る。だが道半ばで死んでしまう可能性の方が高い。守らなければ。私が守らなければ―――


(私が⋯クートを救う)


 思い詰めたハーニャが遂には辿り着く。見た目は可愛いが抱き締めて来る腕は逞しい。背は自分より低いが、強いオスだ。組み伏せられ伸し掛かられ力尽くで彼の物にされた。強く逞しいオス。けれど危うくて不安になる存在。あの狩り方を見れば解る。一歩間違えば直ぐ死んでしまいそうだ。見捨てられない。見限る事が出来ない。例えクートから特別に想われていなくとも、もうクートを放っておけない。

 そんな境地に至ってしまったハーニャ。クートと云う底無し沼にどっぷりと嵌ってしまったのだ。


(私が救ってあげる)


 破滅的な少年を救う為、使命感を燃やすハーニャ。


(子供は⋯欲しいけど、今は無理)


 昨夜の事を思い出すと下腹部の奥が疼く。また彼のモノが欲しくなる。けれど今は止そう。

 子供が出来ても其れを理由にクエストに向かう筈だ。妻の為、子供の為⋯と云う前向きで真っ当な建前を与えてはならないのだ。

 今のクートに必要なのは、ずっと側に居られる女だ。つまりは―――


「私とパーティーを組みましょう」

「ハーニャ?」


 クートならDランク等あっという間に飛び越えて行きそうだが、今はまだハーニャのが格上だ。殺し合いなら勝ち目は無さそうだが、単純に冒険者としての腕は未だ未熟。ならば自分がクートを教え導けば良い。せめてもう少し自分を大切にして欲しい。ハーニャが愛せば変わるかも知れない。貴方には価値が有るのだと教えてあげれば―――


「その内お願いするよ。今は良いや」

「ふぇ?」


 まさかの拒絶。ハーニャは二の句が告げずに唇をパクパクと動かすのみだ。


「なんでよ?」


 ショックを受け震えるハーニャ。絶対オーケーの流れだった筈だ。結婚なら良くて仲間は駄目とか意味が解らない。普通は逆だろう。仲間兼性欲処理の情婦なら良いが結婚はパス。そんな都合の良い女だった昔の自分。良い、慣れてる。今更純情ぶったりしない。クートはまだ十五歳。自分なんかオバサンだ。クートが二十を越えた時は三十過ぎ、クートが三十過ぎたらハーニャは四十過ぎだ。此のまま付き合っててもその頃に捨てられ、クートは若い娘と結婚するのだ。


(あ⋯考えてて哀しくなって来た⋯)


 妄想が大暴走の末、超絶飛躍して泣きそうになるハーニャ。

 以前、今考えた様な扱いをされていた女冒険者が居た。側に居るだけで幸せだと自分を誤魔化してたが結局破滅した。そんな感じの末路は嫌だ。クートを殺してお腹の子と三人永遠にダンジョンを彷徨うとか絶対嫌。幸せになりたい。


(やはり二番は嫌。一番が良い)

「うーーーーー」

「泣かないでよ。ハーニャの事は好きだよ。可愛いし」


 情緒不安定になるハーニャの肩を抱くクート。大事な体だ。自分に必要な大切な体。


(抱き心地最高だもの)

「そう?可愛い?」


 コロリと機嫌の良くなるハーニャ。

 長期間男っ気無く過ごして来たハーニャはチョロかった。クートは完全にハーニャの体目当てであるのに。

 クートの冷酷な面が良くも悪くも作用している。クートはハーニャの心を考慮しない。心は結局脳味噌の中で起こる魔力反応に過ぎない。美味しい御飯を食べさせ気持ち良く性交すれば十分幸せに出来ると確信している。

 そしてそれが真実なのも尚質が悪い。

 此の弱肉強食の世界に於いては、金に成らない幻想⋯愛だけで生きて行ける者等居ない。

 金と食、其れが無ければ愛も夢も語れない。


「ハーニャとはパーティーをいずれ必ず組みたいよ」

(長期遠征クエストに行くなら、毎晩抱いても平気な頑丈な女が必要だし)

「うん」


 クートの真摯な瞳に絆されるハーニャ。必要なのは頑丈な女であってハーニャではない。ハーニャで足りなければ増やせば良い。ナイフの他に手斧や鋼糸を増やした様に。

 クートにとって女はクエストをこなす為の道具だった。只クートは物持ちが良いので道具は丁寧に大切に扱う。その道具が使い物にならなくなるまで―――


「今はランクが違い過ぎる。足を引っ張りたくない」

「確かにそっか⋯。いや、足を引っ張るのは私か。私がクートの足を引っ張っちゃうか⋯」

「そう言うつもりは無かったんだけど。まぁそうだね⋯」


 今のクートとパーティーを組むと受けられるクエストがFランクに限られる。しかも功績はハーニャの総取りだ。昨日サハギンを二人で倒していたら、魔石五個は全てハーニャの物になっていた。

 FとDでも、其れ程の格差が生まれるのだ。そしてクートの功績が減るとランク昇格が遠退く。それでは本末転倒だ。

 新人冒険者なら誰でも突き当たる問題だ。パーティーを組み安全にクエストをするか、ソロ活動で報酬総取りを目論むか。


「それに火力不足でしょ。パーティー組むならさ」

「むむむ⋯」


 スキル体術の斥候職と、スキル食材鑑定の非戦闘職。

 火力不足は否めない。メインとなる戦闘職が必要だ。ルカは却下だ。未だ弱い。恐らくハーニャよりもクートよりも。それに弓士は後衛だ。更に別に前衛が必要になる。

 その前衛をスカウト出来ても前衛一に後衛二、バランスが悪い。更にメンバーが必要になる。

 前衛が三か四、そして後衛が二。

 其処まで大所帯になった場合、一番不要なのはクートになる。食材鑑定はサバイバルに便利だが、それだけだ。食糧を大量に運べる荷物持ちを用意した方が効率が良い。食材が減った分、獲得した魔石や素材を持って帰れるからだ。

 クートが亜人系人型モンスターばかり狙うのは其れも有る。牙や角が素材となるモンスターを狩っても魔石だけしか持ち帰れない。

 嵩張るからだ。十や二十モンスターを仕留めて三、四匹分しか素材をゲット出来ないのは非効率だ。

 なのでクートは基本嵩張らずに高値で買い取って貰える魔石オンリーを狙っている。

 仲間が増えれば目的も増える。狙いもバラバラになる。魔石を大量ゲットするより、素材に出来る特徴を持つモンスターを数匹狙った方が儲けたり出来る。

 安全に狩れる。直ぐに帰れる。家族が居る冒険者は日帰りクエストを選ぶ者も居る。

 クートはリーダーに向いてない自覚は有る。他人を利用はするが信用は出来ない。疑り深いとかでなく、他人の面倒を見れる程の余裕が無いからだ。


「だからまぁ、現役ベテランに新人の面倒見させる訳にもいかないよ。ハーニャはハーニャで頑張って」

「ああ言えばこう言う」

「正論だと思うけど」

「正論嫌い」

「ハーニャって結構子供っぽいよね」

「生意気」

「痛い」


 ハーニャは女としては抱き甲斐が有ったが、仲間にするなら無しだった。今はだが。


(今の俺だと不測の事態が起こった時にハーニャを守れない)


 クートは愛が有れば何でも出来るとかの幻想を抱かない。

 一晩中抱いてハーニャの体は大体把握した。戦力分析までは完璧ではないが、やはりこのペアでは不安が残る。


(もう一つ、要素が要るな)


 それはそれとして⋯


「大丈夫だから」

「一緒に行くよ」

「恥ずかしいから」

「良いから」


 クートは強引にハーニャの手を取って引き摺って行くのだった。


「―――うぅ〜ん⋯クート君⋯ハッ!」


 冒険者ギルドの職員休憩室にてカヤルが目覚める。


「ゆ、夢?」


 ソファに寝ている。何時の間に?疲れてるのだろうか?記憶が曖昧だ。


「うん、アレは夢よ。悪い夢⋯」


 独身仲間だと思ってたハーニャ。男に興味無さそうだし無害だと思ってたのに。そう、アレは夢。夢なのだから―――

 

「産院にハーニャとクートが入ってくの見たぞー。ははは、カヤル寝盗られてやんのー」


 支部長がゲラゲラ笑いながら休憩室に入って来た。


「⋯産院?⋯子供⋯けっけっけっけっ」

「げ、カヤル!?」


 カヤルが首をギギギと軋む様に動かす。カヤルの死んだ目と目を合わせ引き攣る支部長。


「けこーーーーーーーーーーーーーっ!」

「カヤルが発狂したっ!?誰かぁっ!僧侶か神官を呼べぇっ!」


 奇声を発したカヤルが居る休憩室から支部長は逃げ出し、周囲に助けを求めるのであった。

 ちなみにハーニャは妊娠はしておらず、避妊薬を処方して貰ったのだった。

(*´ω`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!

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