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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第22話

(*´ω`*)おぱようございみゃす!

「⋯ルカに⋯ルカになんて言おう⋯」


 事態を見守るしか無かったその他大勢の一人、元冒険者元弓士メリッサが頭を抱える。脳破壊され卒倒した親友も心配だが、ルカの事を思うと憂鬱だった。


「なんて悪い男だ⋯いや悪いのか?ハーニャのが年上だし⋯どっちから手を出したの?」


 経緯は解らない。ハーニャの方から誘ったのかも知れない。いやするタイプじゃないか。


「クート⋯恐ろしい子」


 最近可愛がっている愛弟子の想い人はとんでもない男だった。新人冒険者としての歩みもおかしいが、倫理観が終わっている。

 ルカに手を出しベタ惚れにさせておいて、全然違う女と結婚するとか。


「ルカ⋯アレは止めた方が良いわ」


 勿論冒険者の大半が男として屑が多い。妻子持ちの冒険者がクエスト先で娼館に泊まるのは普通だし、仲間と寝るのも良くヤる。良く行く遠征先に現地妻が居たりもする。結婚してても離婚重婚なんでも有りだ。クートもそれと同じ屑なのかも知れない。

 冒険者ギルド内での修羅場等珍しくも無い。昔、恋愛関係に無い筈の男女ペアのパーティーが居た。男には別に妻子が居たからだ。しかし結局、男は女を性欲処理に使っていた。長いクエストでは色々溜まるから。そして遂に女の方が妊娠した。だが勿論男は妻子を選んだ。

 二人はパーティー解散となる。ならばせめてと、二人で初めて潜ったダンジョンへ最後のクエストへ行き⋯そして帰って来なかった。

 発見された男は凄まじい形相で死んでおり、女の方は笑顔で死んでいた。迷信だが、ダンジョンで死ぬと魂もダンジョンに囚われ永遠に中を彷徨うと云われる。もしかしたら親子三人、永遠に仲良く暮らしてるのかも知れない。


「⋯⋯⋯未必の故意に依る置き去り殺人とか、ダンジョン内密室殺人事件とか無理心中とか⋯勘弁してよ?」


 ハーニャは好きな男を殺したり無理心中する様なタイプには見えない。所謂クール系のサバサバした女だ。だがそんな女程、男が出来ると豹変するのかも知れない。


「クート君か⋯思ってたより地雷なのかも⋯」


 メリッサが戦慄する。夫と子供が居て良かった。関わりたくないとドン引きしてるのも本当。だが心の片隅に『え?そんなに良かったの?』と云う好奇心が芽生えている。

 歯型だらけのハーニャにはドン引きしたし、それを自慢するクートにもドン引きだ。しかし、アレ程激しく求められた事が最近有ったろうか?ずっと夫とはご無沙汰だ。育児に専念してる所為か、女でなく母親と見られてる気がする。最近可愛いとか言われてないし、優しくもされてない。

 衆人環視の中イチャイチャされると見てる方が砂糖を吐きそうになるが、ほんの少しだけハーニャが羨ましくなった。なってしまった。


「いかんいかん、魔性の男だよ、あいつ⋯」


 天然の女誑しかも知れない。彼自身は余り女に興味が無さそうだ。噂だけしか知らないが無茶なクエストを繰り返しているらしい。そんな彼を女達は心配する。守ってあげたい、癒してあげたい、支えてあげたいとか思ってしまう。無事に帰って来たら安心する。嬉しくなってしまう。

 母性本能とか庇護欲とか刺激され、甘えられたら女としての幸福感に満たされるのだろう。危うい。


「とんでもない新人が居たもんだよ」


 しかし、違和感が残る。先程の振る舞いについてだ。


(なんか⋯そう云うのとも違うんだよね⋯まるで釣り⋯みたいな)


 メリッサや他の冒険者達が関わらなかったのは他人の修羅場は酒の肴にするのが妥当だからだ。銅貨一枚も儲からない。

 先程のハーニャの体を晒す行為には、自分の女だとアピールするのとは別の物を感じた。

 ⋯それは概ね正しい。

 クートの中に有ったのは一つ、ハーニャを自分の女としてアピールする事。

 もう一つは戦闘職⋯ハーニャは斥候職だが⋯を支配する事で歪んだ劣等感を満たすのが一つ。

 そしてもう一つは⋯


「冒険者って⋯思ったより⋯血の気が多くないんだな⋯」

「え?何?」

「何でもないよ」


 ハーニャの手を引きながらボソリと呟くクート。聞き咎めたハーニャに笑顔で首を振る。

 生意気なルーキーをとっちめてやろうと絡んで来る先輩冒険者を⋯煽ってみた。期待してみた。が、期待外れだった。

 その読みや期待は勿論正しい。生意気な事を云うルーキーを躾けるのも先輩の務めだ。しかし規約が厳しくなった昨今、先輩からの可愛がりはかなり厳しくなっている。新人が先輩に喧嘩を売る場合はまた別だが。ペナルティが発生するのが解っているのに、わざわざ新人いびりをする馬鹿は居ない。

 それとは別に、彼等プロの冒険者は命の遣り取りをするのが仕事だ。ベテランはそれなりの嗅覚を持っている。


(殺したいな⋯もっと強い奴を―――)


 クートは好んで人型の亜人系モンスターばかりを狩り殺している。身体構造も違うし知能は低いが、人型だ。彼自身に自覚が有るかは解らないが⋯クートの殺しの業は、人間相手にも通じるものであった。

 普段はヘラヘラし、宵越しの金は持たずに娼館に通い詰める底辺冒険者達だが、彼等はプロだ。彼等が生き残れているのは嗅覚が優れているからだ。

 ヤバい奴には関わらないと云う、生存本能。


「クート、その、さっきのは⋯」


 路地裏に差し掛かり、二人切りになったタイミングでハーニャが話し掛けて来た。


「プ、プロポーズ⋯て事?」


 男と付き合った事が無いではないが、お互い性欲処理をする様なドライな関係だった。相手の冒険者は一般人の女性と結婚した。何人か付き合ったが、結婚の話題が出た事は今まで無かった。


「そうなりますかね?子供が出来てたらですが⋯」


 一晩寝ただけだと少し弱い。


「じゃ、じゃぁもしも子供が出来たら?て事?じゃぁ冒険者は―――」


 冒険者は辞めるのだろうか?続けるにしてもあんな危険な狩り方はしないで欲しい。ならばそれも悪くないかも知れない。ハーニャは半引退してメリッサの様に教官になり、クートは内勤職になって安全に生活する。それも悪くない。堅実な将来設計だ。


「子供の為にもっとたくさん頑張る」


 クートは笑顔で応える。違和感。何か噛み合っていない。会話が、思考が、生き方が。

 そんな違和感を覚えるハーニャ。


「⋯結婚、してくれるん⋯だよね?」

「あ、そうだ。カヤルさんに訊いておかなきゃ」

「え?カヤル?」


 何をだろう?嫌な予感しかしない。


「冒険者が死んだ時の保険金だよ。俺が死んだら、ハーニャにちゃんと入る様にしといた方が良いもんね」


 クエスト中に起こる死亡事故に対する保険。クエストランクにミスが有って、Fランク対象クエストの狩り場にEランク以上のモンスターが現れたり等、冒険者ギルド側の不手際が濃厚な場合適用される。死亡した冒険者のランクに基づいた保険金が遺族に支払われる。ダンジョン内の密室保険金殺人や故意に死亡し遺族に金を遺す等、違法行為に対しての罰則は有る。生命保険の金を前借りして借金する後先考えない馬鹿も居る。問題も多いが、成り行きで子供を作ってしまった冒険者達からは概ね好評で活用されている。


「確か普通に死んでも適用外?だったっけ?子供が出来てたら⋯もっと戦わなきゃ。もっと殺さなきゃ」

「――――――――――っ!」


 クートの考えにハーニャが戦慄する。


「あなた⋯おかしいよ⋯」


 若いから向こう見ずなのかと思った。

 若者特有の万能感。若いから、未来が有るから何でも出来ると盲目的に信じる危険思想。

 それとも、違う。

 クートは堅実だ。

 己の身の丈を知り、地味に地道に実績を積んでいる。


(命の価値が、軽い)


 モンスターとは云えあんなに簡単に命を奪えるのは、自分の命も軽いから。

 何も価値を感じていない。恐らくハーニャや、出来てたとしても子供に対しても。きっと変わらないだろう。

 自他共に対する命の価値の希薄さが、彼の無茶なクエストからは読み取れた。

(*´ω`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!

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