第17話
(*´ω`*)次々とヒロインを喰いまくるクート君。流石スキル食材鑑定!(違う)
「⋯そんなに気にする程の事?」
ハーニャは真剣な面持ちの友達に訊ねる。
「気になるの!ハーニャは気にならないの?」
「俺も気になる」
「支部長は黙ってて下さい」
「私は其処まで気にならないかなぁ?長年冒険者やってると偶に居るよ?スキルや適性とか抜きにして実力有る奴」
ハーニャは渡された極秘資料⋯クートの個人情報を見る。年齢、固有スキル、ランクに実績。
(確かに新人としては目を見張る物は有るかもだけど⋯)
「食材鑑定で良く戦えてるとは思うよ?」
「でしょ!クート君は凄いのよ!」
「じゃぁ心配要らないんじゃ―――」
「其れは其れ!此れは此れ!」
「あ、そう」
今の所ゴブリンやオークしか仕留めていない。討伐数はゴブリン五十オーバー、オーク三十オーバーだ。ソロでこの数は驚異的だが、戦闘職なら其処まで大袈裟にする数ではない。
「Dランク冒険者ハーニャに、Fランク冒険者クートの身辺調査をお願いするわ。此れはギルドからの正式な依頼よ」
「うん、まぁ指名クエストなら受けるけど」
指名クエストは美味しい。受けない理由は少ない。
しかしギルド支部長が渋い顔をする。
「いや職権濫用じゃないのか?」
「そんな事無いです。此れは個人的な事ではないです。だから経費で落とします」
「んな無茶な」
「だからお願いっ!ハーニャにしか頼めないのっ!ほら、ちゃんと指名料で上乗せしてるからっ!」
「そう言われたら受けるけど」
提示された金額は美味しい。やる事は新人冒険者の身辺調査と云うか監視だろう。
「此処俺の執務室なんだけど。変な作戦会議に使わないで」
「浮気用のヤリ部屋にしてるのは誰ですか?」
「すみませんでした」
此の日此の町の冒険者ギルド支部長の執務室にて、カヤルに依るFランク冒険者クートの追跡調査の作戦会議が行なわれた。ちなみに本来の意味での追跡調査ではなく、Dランク冒険者、斥候職ハーニャがクートを追跡して調査するだけだ。
基本ソロで活動するハーニャは需要が有れば何処のパーティーでも働く助っ人的な存在である。
特定のパーティーに所属する事も有るが、今はフリーである。仲違いして喧嘩別れしたとかではない。
(婚活かぁ。考えた事も無かったけど⋯)
解散理由はリーダーの出来ちゃった婚。寿引退である。女だけの気楽なパーティーだと思ってたら裏切られた。元仲間だった弓士のメリッサも便乗して子供を作り結婚してしまった。今は新人冒険者の教官をしている。
ハーニャとカヤルとメリッサは同年代であり飲み友でもある。友達の頼みなら仕方無い。報酬も美味しい。
「じゃぁやりますか⋯」
冒険者ギルド前の細い路地裏で待ち構えるハーニャ。カヤルの愛しのクート君の人相は聞いている。
「出て来た出て来た」
クエストを受諾したらしきクート君が意気揚々と出掛けて行く。モンスターエンカウントマップもちゃんと活用しているのだろう。迷わずズンズン進んで行く。町を出て人通りも疎らな畦道へ。そろそろモンスターが出没してもおかしくない。
「お手並み拝見と行こうかしら」
人混みが有った時は尾行は簡単だったが、人が居ないのに付いて来る人間が居たら警戒されてしまう。本格的にハーニャはスキルを使う事にする。
「ま、私のスキルも食材鑑定とどっこいどっこいだけどね」
ハーニャの固有スキルは『体術』。一応戦闘職ではある。だが攻撃力には繋がっていない。
体術と云っても山程細かく分類出来る。
打撃系特化の体術や、護身術特化のものもある。極めれば指一本でモンスターを倒せる達人や、全方位から攻撃を受けても掠りもしない体捌きをする達人も居る。
ハーニャはそんな領域には到達出来ていないし、多分無理だろう。
(風下はこっち⋯この距離なら肉眼でも追える⋯)
ハーニャの体術は気を鎮めて気配を消し、独特の歩法で足音を消す事を得意とする。
風を感じて風下を選んで移動する。
索敵斥候偵察に特化したスキルであった。
敏感肌で風や気配を感じ易くする為にかなり薄着である。鎧は無し。チューブトップにホットパンツ。ガーターベルトにダガーナイフを収めてある。
本職のナイフ術の使い手には及ばないが、斥候偵察に特化したスキル体術の攻撃力不足を補っている。
「今日はサハギンか」
クートがやって来たのは水場だった。目撃情報や討伐報告も上がっているサハギンの棲息地だ。魚も良く捕れる為に釣り人も良く来る。運の無い者は文字通り魚の餌⋯半魚人の餌になってしまう訳だが。
「釣りしてるし」
クートは釣り糸を垂らして普通に釣りをし始めた。田舎出身の少年らしく、次々に魚を釣り上げている。
(釣り竿なんて持ってたっけ?作ったのかな?)
だとすると手先も器用なのだろう。
「!―――来た」
無警戒な釣り人だと思ったのだろう。水場からサハギンが現れる。そしてクートの足首を掴んで川に引き摺り込んでしまった。
「え」
アッサリ敵に捕まってしまった期待の新人冒険者の姿に固まるハーニャ。
「ま、まさかね?」
確かに遠目に見ても女の子みたいな中性的な見た目の子だった。筋肉質でなく華奢な印象だった。
「⋯浮かんで来ない⋯」
少し焦る。いや、大いに焦る。簡単過ぎる。だが将来有望な新人が油断に依り退場する等良く有る出来事だ。ハーニャはクートとは一度も話した事も無いので別にショックでもない。
「あっ!?」
水面に血が広がる。ドクドクと心臓が早まる。冒険者は自己責任。ソロだと魔石も報酬も独り占め出来るが、ピンチの時には誰にも助けて貰えない。彼も成人済みのプロの冒険者だ。此処で見捨ててもハーニャの責任にはならない。契約書もちゃんと読んだ。
依頼内容はクートの監視だけ。命の危機に助けろとはなってない。勿論冒険者の基本理念として下位ランクの冒険者を助ける義務は有る。
しかし戦闘職でないハーニャがサハギンに引き摺り込まれた人間を川に飛び込んで助けるのはかなりシビアだ。距離も有る。もう間に合わないだろう。
「遺体⋯遺品でも持ち帰れば納得してくれるかな?無理かな?」
釣り道具や荷物はそのままだ。アレを持ち帰ろう。そう思ってハーニャが身を起こした時だった。
「なんぞ?お主」
「――――――――!?」
背後から何者かに声を掛けられた。
ゾクゾクと背筋を怖気が走る。
圧倒的強者。
其れが、真後ろに居る。
「お主、何故に小僧を付け回す?」
「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」
恐ろしくて声も出せない。体が震える。冷や汗が止まらない。
誰だろうか?気配は―――しない。殺気も無い。だが、声はする。凄まじい隠形だ。ハーニャの様に体術で気配を消してるのではない。此れは魔力制御。自然と垂れ流しになる体外への魔力放出を限り無く薄くするか完全に断つ事で完成する、本物の隠形術。
ハーニャとは比べる事も出来ない上位者だ。
「答えよ。返答如何に依っては―――」
ごくりと生唾を飲み込むハーニャ。
「魚の餌になって貰うぞ?」
ハーニャは今回のクエストを受けた事を激しく後悔し始めていた。
(*´ω`*)ケモケモロリババアは気紛れなのでずっと付いて回ってはいないです。今回は偶々です。




