第2話「懐かしいね2014年」
「明日には伝えるね私の好きな人
応援してよね約束して
私のわがままを明日だけ聞いてくれる?
少し大人になったこの心のわがままを」
『ハニワじゃん…』
女子高生が持っている異様に小さい携帯から流れてきたのは昔好きだったアニソンだ。いや、最近聞いていなかっただけで今でも好きだっけ。
自分がタイムスリップをしたこと来たことはすぐに飲み込めた。
まだコアもビブレもある。早速ビブレのアニメイトに行った時には懐かしさで泣けてしまった。
何故か俺は埼玉県北葛飾郡に住んでいたはずなのに今は慣れ親しんだ地元の福岡にいる。しかも時代を超えて。
こっちに来てすぐに実家に向かった。
そこには家族が団欒を囲んで食事をしていた。
もちろん俺もいる。
そう、「この時代」の俺だ。
『母さん、あんなに楽しそうに笑ってたんだ。』
案外自分が自分じゃない自分を見るということ、存在を受け入れることはそこまで拒絶はなかった。
それ以上に驚いたことは、自分の記憶にある母と目の前の母の表情の違いに驚いた。よく「進級は出来るのか」「学校からの配布物はないか、授業参観で恥をかきたくない」小言を言われていた記憶ばかりであるが、実はこんな顔して笑っていたんだ。
この頃は毎日家族で飯を食うのが当たり前だったな。よく嵐のドラマやバラエティを見ながら飯食って。食事中にLINEを返そうとしたら本当に怒られた。
食後は、適当に答え見ながら宿題してたっけ。英語の単語だけは毎週月曜に試験があるから再テストにならないよう通学中に必死に覚えようとしてたなぁ。結局再テストで英語科の担任に渋い顔されながら朝学校に早くいか行かなゃで、、
不意に埼玉で暮らしている5畳の部屋を思い出した。
普段自炊なんかしないのに、寒さに震えて煮込みを作り始めるくらい足元が冷たいあの部屋。寒さなのか寂しさなのか、それとも不安からなのか。訳も分からずに震えて2時間おきに目が覚めるあの部屋。
『いいなぁ。』
別に家族と死別したわけではない。ただ、最近は特に口数が減った父と、犬とばかり話している母なのでたまに帰省しても家族の会話はあまりない。
色んなタイムリープものの映画や小説は見て来た。
過去を変えたら今の俺がいなくなってしまうとか、昔の自分に出会ったら、話しかけたら過去の自分がショック死してしまうので結果として自分も死ぬとか…
わけも分からないままリスクを犯すわけにはいかない。
そういえば昔好きな歌があったな。確かやなぎなぎさんの終わりの世界から。
その日は遠目から見てその場を後にした。
『ねぇ、お兄さんひょっとして未来の俺?』
俺ではない。
「この時代」の俺がわけも分からないままリスクなどおそらく考える余地もなく無邪気に話しかけて来た。
…アニメイトにて昔買えなかった思い出の品に手を伸ばしていた俺に対して。
『……。』
驚きのあまりに口をパクパクしている。
『いやぁ。生徒会のみんなに老け顔老け顔って言われてたけど、こんなに顔変わらないんだ。縦より横の比重が増えてるのはかなりショックだなぁ。』
『…っ。なんで、、、』
『え、だから顔が似てたから。あと、それ。信奈の特装版でしょ?他にも、カゴに入ってるBlu-ray。こっちはSAO一期のやつでしょ?全部俺が欲しいけど流石にって諦めたやつじゃん。ここまで来たら「あぁ、未来の俺かもなぁ」くらい想像着くよ。』
この時思い出した。高校生の時、妙に周りの大人が分かっていることを丁寧に話すことに、そのスピード感の違いにイラッとすることが度々あったことを。
いや、でも今の俺がその状況に置かれてもそこまでは想像つかないぞ。凄いな過去の俺。ひょっとしたら今の俺より頭いいかも。
『いやぁ、でも思ったより若いね。何歳?「時生」読んでたからお父さんになった俺と会いたかったなぁ。あ、違うか。俺が若い親父に会いに行くことになるのか。ひょっとしてもう結婚してる??』
思考が追いつかない。
ずっと胸が苦しい。
息が浅い。
動悸が止まらない。
ひょっとしてこのまま死ぬのは俺のほうなのか…。
目の周りにチカチカと星とも光とも言えるモノが不規則に揺れながら体の力が抜けていった。
遠くなる記憶の中で慌てている俺が視界の左先に見えているが、疲労感に勝てず俺はそっと目を閉じた。
天神ビブレも天神コアも通い詰めました。
上の階にあったお好み焼き屋さん?もんじゃ屋さん?でくっちゃべっていたのは思い出です。




