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第一話 「スロットでタコ負けた日にひょんなことから過去へタイムスリップすることになった話」

『あぁ、くそが…』


道も舗装されていない田の畦道を歩きながら直樹は足元の小石を蹴り上げる。




『なんで、俺が台を変えた途端に5800枚も出るんだよ。化物語打つためにどんだけ金貯めたと思ってんだよ。』




ため息を吐露する。それだけでも、田舎道ではとても響く。そして当たり前だが何も反応はなく、暗闇に音が吸い込まれるようだ。

今はそれさえも胸糞悪い。




『10万だぞ、、、なんでこんな目に、、、』




せめてもの復讐に持ってきたスロット店のカードを田に捨てて軽い嘔吐感を抑え込みながらふらふらと歩いていた。




真っ暗な道を歩く時、唯一好きなのは音楽を聴きながら星を見て歩けることだ。


これだけはどれだけ嫌なことがあっても変わらずに、普遍的にそこにあってくれる。


それこそ、昔から変わらずに。




『ガキの頃思い描いていた大人って何だったかな。』




昔を振り返ろうと思ったが、ゲーセンやアニメイトに通っていたこと、好きだった後輩に振られたこと、ギリギリ卒業出来て大学もAOでなんとか決まったこと。思い返せばロクでもない事しか浮かばなくてまた自己嫌悪に陥る。




『そういえば、いつもお前はギリギリだなって言われていたなぁ。』


高校の恩師のことを思い出す。




「今、学級通信を出せない奴が将来仕事で期日を守れるわけがない。まともに学校の予鈴に間に合わない奴が途端に立派な大人になれるわけがない」


先生、あんたの言うとおりだよ。

取引先から来る発注書や請求書に埋め尽くされて稟議の申請は通らなくて、、未だにギリギリでどうにかこうにか小手先の仕事をしているよ。

あの頃と違うのは、帰って震えて明日詰められることに怯えてすっかり眠りも浅くなってしまったことかな。




10分ほど歩き最寄りのコンビニでホットコーヒーを買い、悴んだ指を温める。


最近、コンビニのコーヒーが日に日に値段が上がっている気がする。

今日はそれすらもむかつく。




『それ、美味いかい?』




苦いコーヒーを飲みながら、先生元気かなぁなどと考えていた。




『ほれ、坊主に聞いてんだよ』


しゃがれた声が耳に入ってきた。




『え、僕っすか?』




『そうじゃ。なんや顔が死んどるからいたたまれなくなっての。』




確かに、最近目が死んでるだの顔が死んでるだのよく言われるようになった。と言ってもそう言ってくるのはお前もなとツッコミたくなる同僚たちだが。




『あぁ、はは』




引きつった笑いで返す。




『何や悩み事か?』




うるさいなぁ。そろそろ流石にだりぃ。




『さっきそこでスロットで10万負けたんすよ。まだ月初ですよ、残り生活費5万で結構かつかつなんすよ。ギリギリ次の給与振り込み間に合えばカード分は返せるけどマジ自転車操業っす。世の中、もっとよくなりませんかねぇ』




何をペラペラ話しているんだろう。きっと疲れてるんだろうな。

また明日の朝には上司から数字の話されるのか。

眠いけど寝たくないな。明日になってほしくないな。




『はっはっは。それは災難だったの。いいこともあれば悪いこともある。この上なければ1番じゃ。』




ここで初めてじいさんの顔を見た。思ったよりしわしわな顔だった。




「直樹、この上なければ1番、1番」




これは、俺のばあちゃんがよく言っていた言葉だった。田舎で芋掘っていたばあちゃんの顔が浮かんだ。




『そうっすね。この上なければ1番っす。でも、最近は色んなものが見え過ぎてしまうから比べるものが多くて疲れるんすよ。』




『昔は良かったと、若者なのに思うのかい?』




『今よりは幾分か良いんじゃないっすかね。ここ最近いいニュースなんて何も聞かないし、なんかこう社会全体が無気力っていうか。頑張ってもしゃーないって感じしますよね。』




『………』




『ほら、給料なんてまーじで雀の涙っすよ。そのくせに残業はするなとか無駄な工数は削減していけとか。自分たちは昔タバコ吹かしながら好き放題していたくせに。GPSどころかメールもないからやりたい放題、いいっすよね。接待もバンバンあって気力と体力さえあれば誰にでもチャンスがあって。』




だんだん虚しくなってきた。


あぁ、今の俺には何にもないんだ。失うものもないけど、誇れるものも何もない。


それを自覚した途端目頭が熱くなった。




『昔に戻りたいかい。』




しゃがれた声が再び聞こえた。




昔がそんなに良かったかどうかわからない。あんまり思い出せない。けど、今よりはいい人生を送れる気がする。




『それなら行ってみんさい。』




じいさんにアウターの袖を掴まれる。


途端に視界がぐるっと反転した。




今日も星が綺麗に瞬いている。




きらめく一等星。


って言えるほど僕たちは立派な人間ではなかった。この星々と比べるのもおこがましい。




その星々に囲まれて見えた星のか弱い光


それは、すぐにでも暗闇に飲まれてしまいそうで


でも、そのまま僕のようであり、そして自信のなさのようだったのかもしれない。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


初めまして。星乃冬紀と申します。

スロットで負けた日は大体ヤサぐれます。

そんな日に「今の自分を過去の自分が見たらどう思うんだろう」とぼんやり考えることがありました。

考えてみると、むしろ今の私だからこそあの頃のまだ純粋だった自分に出来るアドバイスもあるのではないかなと思いそのようなフィクションを作ってみたいと思い今回立ち上げてみました。

実際配信するまでにはいろんな手順があるんですね。

メールアドレスを作ることから色々新鮮でした、、、、


これからも緩くお付き合いいただけますと幸いです。

次回は「過去の自分に会ってみた」を作りたいと思います。

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