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ドライバーズ・ハイ  作者: げっとは飛躍のせつなさ
1章 部内リーグ戦

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21/24

1-7 二番台二回戦 七海 vs 優奈(二)

 第二セット、七海のサービスから。


 せっかくなので一本、サービスエースでもとって景気づけと行きたいところだった。

 仮に烈火が相手だったら、適当にYGヤングジェネレーション・サービスでも出しておけば、

 一本くらいは勝手に自滅してくれそうなものだが、

 優奈は部内で一、二を争うレシーブの名手だ。


 そう簡単にサービスエースなんて取らせてくれないし、半端なサービスでも出そうものなら、

 たちまちフリックやチキータの餌食にされてしまう。


 付け込まれにくいショートサービスを、なるべく低く。

 得点出来ないなら、せめて確実に出せるサービスで、攻撃の起点を作られる事を防ごう。

 七海が選んだのは、バック前への無回転サービスだった。


 サービスを出した直後に、七海は固まった。

 これではまるで、()()()()ではないかと。


 無回転のサービスに、あえて回転を強くかけて返すことはあまりしない。

 そんなことをすれば、ボールが高く浮き上がって、

 相手にチャンスを与えるリスクが生まれてきかねない。


 回転に対して強い粒高が相手なら、なおのことだ。


 つまるところ、レシーブが、あまり好きではない無回転になることが、想像に易いのだ。


 頭の中を真っ白にさせながら、七海はネットを超えていくボールを見送った。

 低く、短いサービスにはなったものの、七海は、あまり得意ではない無回転のレシーブの対処を考えないといけない。


 優奈は的確にバウンド直後(ライジング)にラケットを合わせて、短くストップを仕掛けてくる。

 七海も合わせてラケットを台上へと繰り出す。そこにあったのは、サービスを出した時のままの黒い方の面だ。粒高の貼られた赤い面じゃない。


 七海は更に焦った。

 動揺しすぎたか、ラケットを反転させるのを忘れている。


 とはいえ、こっちの面だって使えない訳じゃない。

 フォアハンドラリー等の基本練習の時には、こっちの黒い面のほうを使って練習しているのだから、ある程度、どういう飛び方をするのかはわかる。


 ええい、ままよ。

 七海はラケットを反転させることなく、黒い方の面を使ってストップのお返しをした。


 ネットを跨いだ先で待っていたのは、優奈の得意なチキータ。

 こっと軽い音と共に弾き出されると、ボールはすぐさまネットに捕らえられた。


 七海は胸をなでおろした。

 と同時に、少しばかりの手応えを感じた。


 もしかしたらいけるかも……?


 1-0(ワン・ラブ)

 半信半疑のまま繰り出す、七海のサービス、二本目。


 さっきより少しだけ回転を掛けた、下回転のショートサービス。


 優奈のストップに合わせて、黒い面を向けたラケットを台の上に繰り出す。

 

 今度はちゃんと、反転させないと決めていた。

 少し強めにボールの斜め下側をツッツキして、優奈のバックハンド側に返した。

 

 突然の作戦変更に、優奈は慎重な姿勢を見せた。

 安定して返せるツッツキを、バックハンド側、サイドラインギリギリの厳しいコースへと返してくる。

 攻めてくる気が無いと見るや、七海も黒い面を向けたまま、ツッツキで応える。


 ツッツキあいの展開だ。

 ドライブを初めとした強打を果敢に狙ってくる烈火達が異常なだけで、女子選手、特に高校生同士の対決になると、よく見られる展開だ。


 お互いにミスをするか、チャンスボールがくるまでツッツキで粘り合うため、試合が長引きがちだ。

 そのために促進ルールと呼ばれる、試合展開を早める為のルールが適用されることもしばしばあるー促進ルールが部内リーグで適用されることはまずないがー。


 優奈のツッツキは一球一球が正確で、攻められそうな隙を感じない。

 対する七海もなかなかの正確さで、少しずつコースを散らして優奈の攻撃を躊躇わせる。

 十本ほどツッツキあった後、七海は台の下でラケットをくるりと反転させ、赤い粒高の面でツッツキをした。


 ルール上、ラケットの面の色は、片面が黒色、もう一方の面は、黒でない色でなければならない。

 そのため、表裏で違う種類のラバーを使っていたとしても、ラバーの色を見れば、どちらの面で打ったかは一目瞭然だ。

 それに、裏ソフトラバーと粒高ラバーとでは、打球音がまるで違う。

 だから優奈は、粒高ラバーでツッツキした事は分かっているはずだ。


 だからといって、体がついてくるとは限らない。

 

 粒高ラバーで下回転のかかったボールをツッツキした場合は、粒高ラバーの回転をそっくりそのまま返そうとする性質と、ツッツキの下回転をかけようとする性質が相殺しあって、無回転になるのだ。


 それをそうと知らずにツッツキすれば、ボールを上に打ち上げてしまうことになる。

 そうならないよう、ラケットの角度を調整する必要があるのだ。


 優奈はなんとか面を立てながらツッツキするように返すが、ボールは少し浮き上がりながら七海の台についた。


 七海は大きくテークバックを取りながら、体の裏側でまた密かにラケットをくるりと反転させた。

 そして金属音を鳴らしながら、華麗なループドライブを決めた。

 

 優奈のブロックに合わせてもう一本、フルスイング。

 ボールがバウンドの頂点に達してから、落ちてくるまでしっかり待って、体側よりも後ろ側から引っ張りあげるようにドライブした。


 優奈は左足を強く踏みしめながらリズムをとり、ゆっくりと、しかし着実に躙り寄ってくるドライブにタイミングを合わせてバックハンドではじき返そうとする。


 しかし、ボールはラケットを振り切った後を悠々とすり抜けて、優奈の胸元へと飛び込んできた。


 握りこぶしを作りながら、七海は心の中で独り言ちた。

 

 自分、ペンドラいけます!

 七海(ななみん)式ペンドラいけます!


 少しニヤついた顔つきのまま、ネットに引っかかったピン球を、ラケットでちょいとつついて返した。


 七海はしばらく、黒いほうの面でレシーブを構えてみた。

 安定するわけでは決してなかったが、幾分か、赤い粒高の面でやり合うよりは、やりやすさを感じた。


 それに、七海は見よう見まねでやってみた、付け焼き刃のようなドライブが、優奈には効いていると確信していた。


 七海のドライブは、烈火や葵のそれと比べても、打球のタイミング(インパクト)がかなり遅い。

 加えて、反発力の強いカーボンラケットを使い、七海よりも遥かに力強いスイングでドライブを振るう烈火達のそれに比べて、球速もかなり遅い。


 そのために、返球してから次のボールがやってくるまでの時間がかなり長く感じられるのだろう。

 一方で緊張(テンション)のかかった粘着ラバーから放たれるそれは、十分に回転がかかっていて、バウンドするやいなや、急に加速して優奈を襲う。


 その早いのか遅いのか、掴みづらい球質が、優奈のリズムを崩しているようなのだ。


 七海のドライブに対して、優奈は左足を強く踏み込んだり、時には僅かにジャンプしながら、無理やりタイミングを合わせようとしていることが度々ある。


 七海は、その隙を見逃さなかった。


 とはいえ、やはり付け焼き刃は付け焼き刃。

 短期的なリードは取れても、七海自身がミスすることも多く、結局は突き放しきれない。

 一点取っては一点取られ、をひたすら繰り返す展開が続いた。

 

 そして迎えた9-9(ナイン・オール)、優奈のサービス。

 

 ラケットの上で何度かピン球を弾ませながら、優奈は大きく息を吐いた。

 それから台に対して真正面に構え、ラケットを縦に構えた。


 ピン球が高く投げあげられる。


 落ちてくるタイミングに合わせて優奈は大きくしゃがみこみ、頭上を這わせるようにラケットを振るい、バックハンド側で強く切りつけた。


 伝家の宝刀、王子サーブ。


 強烈な回転のかかったサービスは七海のフォア側に落ちたあと、低く、速く、そして大きくバック側に向かって曲がってきた。


 七海は反転させておいたラケットを出して、粒高ラバーで対処しようとする。

 しかしあまりに大きく曲がってくるので、ボールの飛んでくる位置を見誤った。

 七海の脇の下を、ボールがするりとすり抜けていった。


 10-9(テン・ナイン)


 後が無くなる時というのは、大抵、こんな風にあっさりとしているものだ。

 もう一本来たらどうしようか、考えながらまたレシーブを構えた。


 優奈は台に対して真正面に構え、ラケットは縦に構えている。

 もう一本、しゃがみこみサービス。

 今度はフォアハンドだ。

 七海から逃げるように、フォア側に向かって曲がっていく。


 七海は追いかけて粒高ラバーの面を振り上げるが、その手に打球の感触は伝わってこなかった。

 速く、鋭い優奈のサービスは、確かにそこに来ると思ったのに、ラケットを振った先にボールはなかった。

 

 まるで消える魔球だった。


 11-9(ゲームセット)

 貴重な二勝目を上げるのに繋がりそうなのヒントこそ見つけられたが、七海の二勝目は、早くとも次のセットへ持ち越しとなった。


七海「後がなくなったけど、なんか掴めた気がする」

真琴「ななちゃんって、何仕掛けてくるか読めやんことあるんが怖いんよなぁ」

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