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ドライバーズ・ハイ  作者: げっとは飛躍のせつなさ
1章 部内リーグ戦

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19/24

1-5 四番台一回戦 真琴 vs 葵(二)

 続く第二セット、葵のサービス。


 ここで真琴は、手を変えてみる事にした。


 葵のサービスを、それまでの安定して返すためのツッツキではなく、まるでカットをするかのような大振りのツッツキで返した。




 強烈な回転がかかったボールが、葵のバックハンド側に降り立った。


 流石の葵も一旦は様子見、ツッツキで返してくる。




 やや浮き上がるが、回転の激しい真琴のツッツキと、


 低く、正確に、攻めにくいコースを突いてくる葵のツッツキのラリーが、しばらく続いた。




 先に攻撃のタイミングを掴めたのは、葵だった。


 ラケットを体の正面で巻き込むようにテークバックを取り、上に向かって振り上げる。




 高めの弧線を描くドライブが、真琴のバック側に迫る。


 真琴はカットはせずに、バックハンドドライブで応戦した。




 回り込んでフォアハンドを狙えば、冷静にフォア側を付かれて動かされるし、

 カットで凌ごうとすれば、今度はストップで前に動かそうとしてくる。



 消去法のような対応策だが、他にやりようも思いつかない。



 しかし、ぐたぐだと撃ち合っている余地もない。


 あまりに苛烈で安定したドライブに、徐々に打ち負けていく感触があった。




 どこかで葵を出し抜かないと、とは思うものの、

 その糸口が掴めないまま、失点を繰り返す。




 5-0(ファイブ・ラブ)

 大きく息を吐きながら、真琴は天を仰いだ。



 真琴はサービスからの展開のイメージを膨らませるが、葵の牙城は崩せる気がしない。


 三球目、五球目まではイメージ通りに出来るものの、それだけの展開では全く足りない。



 イメージしないよりは良いが、イメージしたところで、

 安定感抜群のブロックとカウンターにより、結局はラリーに持ち込まれる。

 そうなるともう、その場その場で飛んできたボールに対応する、地の力必要だ。




 山吹葵とは、そういう相手だ。




 真琴は葵の方に向き直って、台を正面に、バックハンドサービスを構える。

 しかし、にわかに横向きになって、フォアハンドサービスに構え直した。


 そして自分の身長の倍ほどの高さにまでボールを投げあげて、

 落ちてきたボールの下側を切りつけた。




 なんとかなれ、の気持ちを込めた、ハイトスサービス。




 ボールを高く投げあげると、落下するボールの勢いがサービスに乗るため、回転が強くかかりやすい。

 一方で真っ直ぐ投げあげることも、落ちてきたボールをコントロールする事も難しくなる。

 リスクもリターンも大きいサービスだ。



 強烈な下回転のかかったボールが、葵の側のエンドラインにまで届く。


 葵は下に大きくテークバックを取って、真上に持ち上げるようなループドライブで返す。




 真琴は、このループドライブを狙っていた。



 ボールを体のやや右側に捉えると、ラケットを横に滑らせながらカウンターを仕掛けた。



 一セット目の一点目、奇襲で奪った初めての得点。

 その立役者となった、シュートドライブ。

 真琴は、それをもう一度持ち出した。




 ボールは唸るように大きく曲がり、葵のバックハンドに飛び込んでくる。




 しかし、葵もまた、ラケットを体の正面に巻き込んで、テークバックを取っていた。

 狙うはもちろん、真琴のドライブのカウンターだ。



 ボールは軌道を右へ右へと曲げながら、葵の真正面へと吸い込まれていく。



 金属音が鳴り響く。




 次の瞬間には、真琴のミドル側にボールが突き刺さっていて、真琴は、それに触れる事すら出来なかった。




 6-0(シックス・ラブ)


 真琴は内心、頭を抱えた。

 これ以上、葵に通用させられるプランが思いつかない。




 それでも真琴は意地でくらいつくものの、葵の勢いは止まらない。


 先にドライブを仕掛けても、撃ち合っても、カットで凌いでも、ツッツキでミスを狙っても、葵は難なく対処してくる。


 撃ち合えば負け、ミスを誘っても効果はなく、台から下がって粘ろうとすれば、前後に動かされて体力を奪われる。


 ひたすら、それの繰り返しだった。


 11-2(ゲームセット)


 結局、真琴がこのセットで取れた点は、たったの二点だった。




 後の無くなった第三セット。


 出し惜しみしている場合ではないが、生憎、もう手の持ち合わせがない。


 三球目、五球目までのプランなら幾つかあるが、それだけで得点を決められた事は殆どない。



 どれだけプランを立てたところで、五球目のその先の、プランの立てられないラリー戦を制しなければ、勝ちの目を見い出すことなんて出来なかった。



 なら、翻っていつも通りやるしかない。



 奇を衒うわけじゃなくて、相手よりミスの少ないプレーをするしかない。

 それが何よりも難しいことだが、小手先の戦術が通用しない以上、その他に道などない。



 真琴は台に対して正面に向き、バックハンドでサービスを構えた。



 体の正面でボールを切り付け、葵のバックハンド側へとサービスを送る。



 葵はツッツキでバック側に返してきた。



 真琴はバックハンドドライブを狙ったが、甘い攻撃になったらば、葵は容赦なく叩いて来るだろう。



 そんなビジョンが頭をよぎると、真琴はラケット面を上に向けた。

 半端な攻撃で隙を見せるよりは、チャンスを待ったほうが分がいいだろう。


 ツッツキで凌ごうとしたが、間に合わせたような面の向きになってしまい、ボールが少し高めに浮き上がった。



 待ってましたと言わんばかりに、葵は体の正面で手首を巻き込んでテークバックをとる。


 それを上へと弾き出すように振り抜いて、ループドライブを仕掛けてきた。




 真琴は台から少し離れて、カットで凌ぐ。



 何度か打ち合っても勝てなかったから、もうカットで凌ぐしかない。



これも、フットワークに自信の無い真琴にとっては、怖い選択だった。



 カットで凌ぐために後ろに下がったところに、ストップで前に動かしてくるだろうことが、容易に想像出来たからだ。


 フットワーク練習に、真面目に取り組まないけなさそうやなぁと、真琴はどこか呑気に考えていた。


 案の定、葵はストップで前に動かしてきた。



 真琴は慌てて前進しながら、やぶれかぶれに払って攻撃を試みる。




 払い(フリック)は葵のバック側を正確に撃ち抜いた。


 しかし、葵の反応は早かった。丁寧に面を合わせて、ブロックを的確に決める。



 体側に食い込むような厳しいコース。


 真琴は体をどかしながらなんとかフォアハンドを振るが、ラケットは空を切り、ボールは後ろへと飛んでいく。



 敵わない。



 相手にするには、基礎の力が全然足りない。



 練習の時から分かっていたつもりだったけど、この三セット中、ここまで何も通じないのは想定外だった。




 5-11(ゲームセット)


 結局爪痕を残すことの出来ないまま、この試合は葵が制することとなった。

真琴「知ってたつもりやったけど、やっぱバケモンやったわぁ」

葵「誰がバケモンだ!」

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