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なろうラジオ大賞4

知らないオジサンがひまわりの花束で告白してくる

「僕と結婚を前提にお付き合いしてほしい」


 そう言って手渡されたのはひまわりの花束。

 突然のことで面食らう。


「えっと……なんでひまわり?」


 思わず尋ねてしまった。


 そもそも告白してきた男性とは面識がなかったし、どこの誰かも分からない。

 深夜のコンビニで夜勤をしている時にいきなり告白されて、時と場所をわきまえろとか、お前誰だよとか、色々と突っ込みたいところが沢山あったのだが、真っ先にそこを指摘してしまった。


 冴えない中年の男性だった。

 私よりも一回り上の世代。

 お腹は出てるし、自信なさそうだし、伏目がちで目を合わせようとしないし。


 そんな人と付き合えるはずないし、普通に告白されたってNG出すに決まってる。


 でも……なんで……ひまわりなのか。

 ひまわり……。


「君に……似合うと思って」


 照れくさそうに笑う男性は、やっぱり私の目を見ようとしない。


「はぁ……そうですか」

「それで、返事は?」

「ダメに決まってます」

「少しでも考えてもらえませんか?」

「無理です」


 私の答えを聞いて、男性はため息をついた。


「分かりました、すみませんでした」

「…………」

「…………」


 いや、帰れよ。


 しばらく無言のままレジの前に突っ立っていた男性だが、諦めて帰っていった。


 それから早朝まで業務をこなし、早番のパートさんに引き継いで退勤。

 帰ろうとすると、駐車場の隅にそっと置かれたひまわりの花束が置いてあった。


 持って帰らなかったんかい。


 置いてきぼりにされたひまわりを見ていると、なんだかとても悲しい気持ちになる。

 せっかく花を咲かせたのに、置き去りにされたひまわり。


 とても見捨てておけなかった。


 気は引けたけど、ひまわりの花束を持って帰ることにした。

 花瓶に生けて新鮮な水をそそぐ。


 少しだけ元気になったかな。



 ぴんぽーん。



 チャイムが鳴る。

 こんな朝早くに誰だろう?


「はーい!」

「こんにちは!」


 そこには小さな女の子がいた。


「え? どうしたの?」

「これ」

「え?」

「うけとって」


 よく分からないけど、差し出された小さな封筒を受け取る。

 女の子はさっさとどこかへ行ってしまった。


 なんなんだろ……。


 封筒を開けると、中にはひまわりの種。

 そしてよれよれの文字で「ありがとう」と書かれた手紙。


 もしかして……今のはひまわりの精?


 そんなはずないかと思いながら、机の上のひまわりを見る。

 黄色く輝く大輪の花が、少しだけ開けた窓から吹き込む風に揺られていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒマワリの精がオッサンってところがすばらしいです。 たしかに背丈といい、顔の大きさといい、頑丈さといい、種に脂肪たっぷりなところといい、おっさんですよね。
[良い点] キモいおっさんと向日葵の妖精!? この全く相容れないアイテムを、よくぞ1000字内で融合できたもんだ! すごい力技なお話デスな笑!! あっぱれでござる!! [気になる点] >よれよ…
[良い点] とっても不思議なお話でした〜! オジサンも女の子も誰だったのかな? ラストでほっこりしました(*´∇`*)
2022/12/26 08:07 退会済み
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