襲撃
やぁみんな、私は国会議員の石橋ゲルだ!今は参議院選挙のために静岡まで来て応援演説をしている。
ふとTwitterを見る。するとなんだか笑えるようなツイートが流れてきた。
「石橋ゲル元幹事長、ナローゲージと突放の魅力には逆らえない模様。」
「演説場所が四日市あすなろう鉄道本社前と三岐鉄道本社前とか公私混同だろ、下がれや鉄ヲタ議員め」
「この写真はでんちゃが大好きな石橋ゲル議員の図」
…予想はしてたけどなんでこうなるかなあ。まあいいさ、どうせ私が応援演説したところで当選することはないんだから。ここは野党優勢だし。それにしても、私のことをこんなにバカにするなんて許せないよねぇ……?
どうやって言い返してやろうかと考えていると、私の後ろから大きな爆発音がした。振り返るとそこには手製の銃らしきものを持つ青年がいた。しばし目が合う。すると彼はすかさず二発目を撃った。ドスッ、ドスッ、っと私の体に鉄球が叩きつけられる。糞!散弾か。そう思った瞬間、私の腹部から血が垂れてきた。そして次の瞬間、彼の持っていた銃が爆発して吹き飛んだ。おそらく三発目を撃とうとしたら暴発したんだろう。その衝撃で腕を負傷したのか、血を流している。それでもなお、彼は諦めずにまた別の武器を手に取った。まだ武器があるのか。用意周到なテロリストだ。だが日本の警察をなめるなよ。そこまで攻撃を続ければこちらも応戦の用意が整う。
「石橋さん!こっちです!逃げてください!」
「山本くん、こそ、私を放っておいてさっさと逃げなさい。私が死んだとあれば、この場で次に狙われるのはあなたです。」
「でも石橋さん!血が…」
「私は不死身の石橋ですよ…この程度で死んでたまるか…」
また爆発音がした。倒れた体にさらに熱い鉄球が叩きつけられ、私の意識は遠のいていく。
「貴様…よくも石…………を………ぶち…………て…」
あぁ、山本くん、こんなときに感情的になってはいけません。それではあなたまで死んでしまう…
「石橋ゲル、石橋ゲルよ、私の声が聞こえますか?」
誰の声だろう。私は起き上がって周囲を見渡す。
いや待て、私は撃たれて死んだはずでは?なぜ起き上がれているのだ?
「ここは神々が作りし天上の世界。あなたはここに呼ばれたのです。」
なるほど。私は三途の川を相当快適に渡ったらしい。青函連絡船でも使ったのだろうか。
「なんだ。神が私に何の用だ。私は日本をよくするため忙しいのだ。かってに呼び出さないでくれるか。」
「その日本が未来で破滅するからあなたを呼び出したのです!」
「なに!?」
なんだと。日本が破滅するだって!?
「いったいどういうことだ。」
私は神の話を聞いた。それによると、日本は未来で他国から攻撃され、圧倒的な物量を前に焦土と化し、さらには民族浄化が行われて大和民族はおろか琉球民族やアイヌ民族まで殲滅されるという。
そして敗北の大きな一因として、神は「地方インフラの脆弱さ」を挙げた。道路は橋が弱すぎて装甲車や戦車が通れず、鉄道輸送しようにもことごとく廃線になっており、残る新幹線は開戦と同時に破壊されて陸上自衛隊がほとんど抗戦できなかったようだ。
「…だがそんなインフラ整備など私にできるはずがない。もっと権力のある…そうだな、案倍君を呼び出せばいいのではないか?」
「案倍議員は奈良であなたと同時刻に襲撃され、死亡しています。」
「なん…だ…と…」
案倍君が…暗殺された…?そんな…
「では時間です。日本をよろしくお願いいたします。」
あぁ、あなたその後ろ姿は…
「天照…皇…大…神……様」
私は病院で目を覚ました。どうやら集中治療室の中のようだった。