6 それでも。
今話で完結です!
離ればなれの暮らしがお互いの心の距離を縮めるなんて、誰が言ったのか。
それは時を時間を隔たらせ、お互いの心を枯らしてゆくだけにすぎないのではないか。
少しの不安は会えない日々で増大し、不信に変わる。
どんなに忙しくても、たった一言でも連絡ぐらいできるはず。
彼にとって私って、そんなひと言の時間もつくれない程度のものなのか。
久しぶりの彼からは、なにを聞いても言い訳にしか聞こえず、私は聞く耳も持たない。
お互いに居心地が悪くなり、いつしかつまらないことで言い合っていたり。
どんな言葉も傷つくし傷つける。
もしかしたら、わざとそんな言葉を選んでいたのかもしれない。
そんなことをしても、余計にこじれるだけだと知っているくせに、売り言葉に買い言葉。
会おうと思えばいくらでも時間を作って会える距離。
どんなに忙しくても、たったひと言でも連絡ぐらいできるはず。
今の時代、国内であればそこそこ距離が離れていても、日帰りだってできる。
そう。気持ちさえあれば、大抵のことはできると思う。
お互いを求めているなら、その心の声に耳を傾けて、想いのままに行動すれば良かった。
ああ、きっと忙しいのだろう、邪魔しちゃいけないと、お互いいらぬ気を使いすぎたのか。
結果、いもしない誰かに嫉妬してみたり、信じるべき時に疑ってみたりする。
人間って本当に自分本位だ。
あなたの期待に応えたい。
いつしかそう思うようになって、次第にムリをするようになった。
最初はよかった。
些細なことでも喜んでくれるあなたに、もっと喜んでほしくて。
もっと力になりたくて、その想いが次第に空回りしていく。
ふたりは似ているのかもしれない。
だからお互いに譲らないし、相手が傷つく言葉もわかる。
そんな言葉を投げ合って、受け止めるのは辛かった。
もっと早くに。
そう、気づいた頃に寄り添って。
少し、ほんの少しの思いやりを相手に向けられるとよかった。
でも、いつまでたっても初めの頃の心地よさが忘れられずに、また同じことを期待してしまう。
相手がどう思っているのか、もう考えられないぐらいに自分のことを優先していた。
お互いに。
それでも『じゃあね』と別れの言葉を口にする踏ん切りがつかず、またいつ会えるとも解らぬ未来を選んでしまう。
心の中で何度も呟いた。そして飲み込んだ。『じゃあね』『じゃあね』
でもふと過る。
ここで『じゃあね』をしてしまえば、もう彼とは二度と話すことも会うこともないだろう。
そんな未来を想像してはいつも『じゃあね』を飲み込む。
どんなカタチでも、たぶんまだ繋がっていたいと思うから。
離れてしまうわけではなく、かといって前ほど近いわけでもない。
そんな状況、ハッキリ言って嫌だ。
仲良くするならとことん一緒にいたい。
嫌ならさよならする。
中途半端はイヤ!
一般的に、男性は曖昧さを好み、女性は明確さを好むと言われる。
いわゆる『男性脳』と『女性脳』。
私は曖昧さは求めていない。女性だから。
でも彼には本当の私の気持ちなんて解るはずもないし、私にも彼の本当の気持ちは解らない。
ハッキリした性格なので、このモヤモヤはイライラする。
それでも『彼とは涸れず別れず解られず』これからもこんな関係を続けていくのだろう。
そう思うと胃が痛い。
完
ラストまでお読み下さりありがとうございました。
今作品は、表現に重きを置いて、ひとりの女性の今ある状況と心情。そこに至るまでの経緯を独白のようなカタチで認めました。
ここまで読んで下さった全ての方に感謝を!
ありがとうございました!
藤乃 澄乃