5 甘水(あまみず)
喉の渇きを潤すように、僅かな補水をするけれど、それでは心の乾きは解決できなかった。
そう。キミはずるい。
私がキミから離れようとすると、素早く察知して、少し構ってくる。それまで連絡もよこさなかったクセに、少々の甘水を差し入れてくるのだ。
私はそれで気を良くして、また前の位置にもどっていくという寸法。
今の私たちって、一体何なんだろう。
もう以前の関係とは違っているのだろうな。
でも考えたら、私たちってお互いの何を知ってる?
趣味? 考え? 嗜好?
どれも曖昧なものばかり。
どれもホントでどれもウソかもしれない。
信じるものはどこにあるの?
私はただ、目の前にあるものを信じたい。
霞がかかったおとぎ話はもう卒業したい。
そう思いつつも、またキミの屈託の無い瞳に、ついこころを許してしまう。
だんだんと優柔不断な自分に嫌気がさしてきて、日常も楽しく思えなくなってきた。
こんなに揺さぶられて振り回されてもなお、キミといる意味はあるのだろうか。
ふとそんなことを考えるようになっていく自分に気づく。
気持ちがまだあるのなら、もっと大切に扱って欲しいし、もっと話がしたい。
放っておかれるのは、もうごめんだ。
キミのこころが掴めない。
このままだとキミを嫌いになっちゃうよ。
それはイヤだな。
今はまだそう思える。
お読み下さりありがとうございます。
次話で完結です!
次話「6 それでも。」もよろしくお願いします!