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2 きっかけ

 大学のサークルで見かける彼。

 見かけは『男性』だが、物腰が柔らかく話題も豊富で、彼の周りはいつも男女問わず大勢の人で賑わっている。

 同じサークルなのでたまに話はするが、それは彼の方から声をかけてくれたときに、それに答える程度の会話しかしてこなかった。

 私は引っ込み思案で、自分からその輪の中には入っていけずに、外から『楽しそうだな』と見つめているだけだった。

 別に彼に興味があったわけではない。

 ただ、奥手な私でも楽しいことは大好きなので、楽しそうな集まりを微笑ましく眺めていただけ。


 私にも友人は沢山いるし、明るい性格だから周りに人も集まってくる。

 でも、自分から友だちになりたいと声をかけたことは殆どない。


 そんな中、彼の存在は少しばかり気にはなっていた。

 しかし特別な感情は一切無く、『いつかゆっくり話してみたいな』程度のものであったのだが。



 ある日。

 彼が、あのいつも明るく振る舞っているあの人が少し落ち込んだ様子を滲ませていた。

 大したことはないと周りには言っていたようだが、私には妙にひっかっかって。

 何故だかこのまま放っておいてはいけない気がした。


「大丈夫?」


 気づけば自然に言葉を発していた。

 すると彼はその言葉が嬉しいと、凄く喜んでくれた。

 それがきっかけで、段々とふたりで話す時間がふえてゆき、あるとき彼に言われた。


「あなたは本当に優しいよね。このサークルでこんなに親切にしてもらったのははじめて。あなたみたいな人、大好きだよ」


 異性に言われる『大好き』は、同性のそれよりもこころに突き刺さる。


 え、ちょっと待って。

 それってどういう意味?

 好意を持ってくれてるってこと?

 でも、確かキミには彼女がいたはず。

 

 そう。

 大好きな彼女が。


 結論はでた。

 社交的な彼の言葉は誰にでも言っている言葉なのだろう。

 彼にとっての『大好き』は、彼女に対してのそれとは違う。

 だから私も普通に友人として『答えた』。


「私も太陽のように明るいあなたみたいな人、大好きだよ」


 

 それからも、ことあるごとに「大好き」「趣味が合う」「気が合うね」なんて言われ続けた。

 しかもふたりだけの時ばかりでなく、みんなといる時でさえその言葉は口ずさまれた。

 気軽に言葉にするぐらいの間柄ということか。

 特に深い意味はないのだろう。


 社交的な彼。社交辞令?

 どういうつもりなのか計りかねたが、そんな言葉たちを投げられて嫌な気はしない。

 むしろ、ただの友人のつもりが、少し気になる存在へと進化していった。

 もちろん、あくまでも友人としてだが。


 向こうもそう思ってくれていたのだろう。


「オレ達は親友だな」なんて言ってくれるようになった。

 私もその『親友』という言葉が嬉しくて、「うん、親友だね」と『答えた』。


 そして呼び名も名字から下の名前へと変わっていく。


 それからは親友として行動をともにするようになり、いろんな話で盛り上がった。


 この人と話をするのが楽しい。


 自然な感情だ。



お読み下さりありがとうございました。


次話「3 答えたい」もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほほぅ? 親友ですとな? ふぅん……親友ねぇ? ふぅーーん?
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