表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

解決不能

作者: HasumiChouji

「違う、そんな意味じゃない」

 その国の大統領は、自分に自動小銃を差し出した悪魔をそう怒鳴り付けた。

「御安心下さい。閣下の身体能力を大幅に上げて、筋肉量は3〜4割増し、銃弾は絶対に当たらないように……」

「確かに、テロリストの捕虜になった我が国の兵士をこの手で助けたい、と願ったが、1980年代のハリウッド映画の主人公になりたい訳じゃない。『この手で』とは比喩だ。私自身が救出に行ってテロリストと戦いたい、って意味じゃない」

「ああ、なるほど。つまり、大統領の手柄だと世間が思う形で、捕虜になった兵士を救えれば良いのですね?」


 その大統領の支持率は低迷していた。

 そんな時に起きたのが……外国に駐留していたその国の軍隊の兵士達がテロ組織に拉致される、と云う事件だった。

 テロ組織は、ある要求を突き付け、それを拒絶するか48時間以内に回答が無い場合は……その兵士達を処刑する、と宣告していた。

 兵士達が処刑されても、テロリストの要求を呑んでも……大統領に2期目が無い事は確実だった。


「では、私の方で、この国の国民が大統領の手柄だと思う形で、兵士の皆さんを救出する手筈を整えました。成功率は100%です」

 大統領が最後の手段として呼び出した悪魔は、そう言った。

「そうですね……」

 続いて悪魔は自分の左手を見せて指を弾く真似をした。

「このように大統領が左手の指を弾くのが合図です。それから、1時間以内に事態は全て解決します。あ、もちろん、6つの魔法の石も金色のガントレットも不要です」

「なるほど。判った」

「では、この時点で、大統領と救出される兵士の皆さんの魂は、死後、私のものになる、と云う契約が成立したと見做してよろしいでしょうか?」

「ああ」

「では……早い内に指パッチンを……あの……大統領……どこへお出かけで?」

「次の大統領選挙の選挙運動だが、何か?」


「我々はテロには屈しない。テロリストの要求を呑む事は無いが……同時に、我が国の兵士達は必ず救出する」

 野外のステージで大統領は聴衆に向けて、そう告げると……左手を上げ、指を弾こうとした……その瞬間……。

 銃声と共に、大統領の左手は消えた。


「この度は……まことに……何と申しますか……その……」

「き……貴様……こうなる事を知っていたな……」

 悪魔は律儀にも入院した大統領の見舞にやって来た。

「とんでもない……。ですが……私も商売ですので……」

「何だ?」

「一度、売買契約が成立した魂は私のものです」

「ま……待て……きさま……」

 病室のTVには、ニュース番組が表示されており、大統領暗殺未遂事件の容疑者が逮捕された事と、大統領が病院に担ぎ込まれ、意識を取り戻す前に、テロリストが通告していた48時間が過ぎ、捕虜の兵士達が処刑された事を告げていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ