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09 古代遺跡の真実

「キリル様が想像しているように、私は夢の中で『永遠の聖女』と会っています。彼女は普通の女の子で、皆さんが思っているような神秘的な力など何ひとつ持ってはいませんよ。だから私は、それをお伝えしてもいいのか、ためらっていました」

「そうですか……私はそれでもかまいません。目覚めてさえくださればいいのですから」


 ただ目覚めればいいだけなんて本当だろうか。教会は『永遠の聖女』に奇跡を期待しているのだと思っていた。そうでなければ、何百年もかけてまで、こだわる必要がないのだから。


「でも、それは無理だと思いますわ。残念ですが、彼女はもう――生き返りませんもの」


 作り話をして嘘をつくのは私には難しすぎる。きっといつか辻褄が合わなくなるだろう。だから私は、キリル様に本当のことを告げることにした。


「生き返らない? それはまるで亡くなっているような言い方ですね」

「はい。本人がそう言ってます」


「あれほど美しい状態で身体が保たれているのに、あれが死んでいるですと? もし、そうだとしたら、フレイヤさんにそれを話したその魂は、ずっとあの身体とともにいるということですよね。私はそれを見たことが一度もありませんよ」


 私はキリル様に肩をがっちり掴まれた。睨まれるのも今日一日で何度目だろう。


「痛いですわ」

「は、申し訳ありません」


 今回は、私を壁際に追い詰めた時みたいに、脅すためにやったわけではなかったみたいだ。キリル様はすぐにその手を離した。


「私は私の知ってることを話しているだけですから、魂がどうだとか聞かれてもわかりませんわ。今更ですけど、キリル様には魂がどんなふうに見えていらっしゃるんですか」


「身体の外に出てしまった時に見えるだけですが、それは白い光です。フレイヤさんの場合は頭のてっぺんからぼわーっと抜け出てきて、棺の上まで飛んできました。そのあと少しだけ空中をさまよったあとに身体へ戻ったんです」


 やだ、想像したらすごく怖い。それで身体に戻らなかったら私はどうなるんだ。


「フレイヤさん」

「はい?」


「貴女の話が納得できるような、何か証拠になるようなことはありませんか。私がではなく、教会の者が信じられるような」

「証拠ですか……」


 そんなものあるわけないけど、私には『永遠の聖女』だった頃の記憶がある。


 私が『永遠の聖女』とコンタクトが取れるのではないかと考えているキリル様なら、もう全部話してしまって、丸投げしちゃったらどうだろう。

 そうだ、そうしよう。


「ここまできたら、私はキリル様にすべてお話した方がいいと思っていますけど、話しが長くなりますわよ」

「でしたら、場所を変えましょう。魔術の検証はそれを伺ってから後日でもかまいませんから」


 とりあえず、今日は儀式から免れることはできたようだ。


「私の執務室でもよろしいですか」

「落ち着ける場所であればどちらでも」



 キリル様のあとについて、私がやって来たのは、大聖堂に隣接されている神官の詰所だった。

 いくつかある部屋のなかの一室でキリル様は普段仕事をされているそうだ。そこに案内されたのはいいのだけれど……。


「散らかっていてすみませんが、こちらへ座ってください」


 キリル様が折り畳みの椅子を用意して、私に勧めてくれた。


「ありがとうございます」


 そう返事をしたものの、机や床の上に、ところせましと本や魔法陣の図案が散乱していて、座るとしても足の置き場に困ってしまうような状態だ。


 キリル様の見た目のイメージから、塵ひとつ落ちてないようなとても綺麗な部屋を想像していた。だからドアを開けた時に目に入ったこの光景にはすごく驚いた。


 部屋はそれほど広さはないので、書類の置き場所がなくてこんな状態なのかもしれないけど、それにしても……。


 キリル様自身は仕事用の机に腰掛け、私と向かい合わせになるようにこちらへ身体を向けた。


「それではお話を伺いましょうか」

「ええ、念のため言っておきますが、これから私が話す内容は、私の想像でも、作り話でもありません。ですが、その真実はキリル様でも想像がつかないような話になると思います」

「わかりました」


 キリル様の白金水晶の瞳が私をしっかりと見据えている。


「そもそも、教会が古代遺跡と呼んでいるあの場所ですが、もともと、この星のものではありません」

「フレイヤさん? 始めから申しありませんが、貴女の言葉の意味が私にはわからないのですが」


 私の思い出した前世の記憶は、キリル様に想像すらつくか怪しいものだ。

 この星の文明しか知らない人にとったら、あり得ないことだと思う。


「あれは、空から落ちてきた宇宙船の残骸なんです。そして『永遠の聖女』も」

「空から落ちてきたということは、やはり神の関係者なのですか」


 そういう捉え方もあったか。

 相手が知らないものを説明するということはなんて難しいんだろう。


「いいえ違います。神様とは縁もゆかりもありません。ただの人間ですよ」


 この星とは文明の差が激しすぎて、これから話すことは、神の御業に見えることが多いかもしれないけど。


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