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16 美少女?

 私は家で目を覚ますと、すぐにノエルの部屋へと向かった。

 いつもなら、侍女のターナが知らせに行ってノエルが飛び込んでくるんだけど、倒れたあとどうなったのか心配になって、居ても立っても居られなかったからだ。


「もう身体は大丈夫なの?」

「ええ、それより私が意識をなくしたあと、どうなったか教えてほしいの」

「お姉様のことは、キリル様がすぐに馬車に連れて行ったんだけど、運ぶために横抱きにしていたから、きっとまた噂になってしまうわね」


 ノエルが言うには、気を失ったのが店の外だったし、私が倒れる前にキリル様が受け止めてくれたから、それほど騒ぎにはならなかったそうだ。

 ノエル自身はずっと私たちを観察していたから、私が倒れたことに気がついて様子を見るために外まで出てきて、一緒に帰ってきたらしい。


 いろいろとキリル様には迷惑をかけてしまったけど、これで予定通り、教会の人たちも私たちが恋人だと思うだろう。


「それで、お姉様たちは何をしていたの」

「病気のことでキリル様が私に会いに来ていたことを、教会の方たちが何かを勘違いをしたみたいで、私に儀式へのお誘いがきていたのよ。魔術なんて使えないから困ってしまって。キリル様が、恋人だってことにしておけば、二人で会っていても変な詮索をされなくなるだろうって、協力してくださったの」


「お姉様の病気と儀式が関係していて、それを調べるているって、本当のことを言って断ればよかったんじゃないの?」

「それを知られてしまうと、私が教会に召喚されて徹底的に調べられてしまうと思うの。キリル様だけでも面倒くさいのに、実験体の扱いはいやだもの」

「そうだったの。わたしはてっきりお姉様が本気になってしまったのかと思ったわ」


「え?」


「もしかして、本当なの?」

「やだ、違うわよ」


 自分でも声が上ずっているのを感じる。ノエルに変に思われてしまう。


「わたしは大事なお姉様が傷ついたら嫌だったの。だけど、キリル様だったら考えてもいいわ。あの人、わたしのことを相手にしなかったから」

「だから、あれは恋人のふりをしていただけで、彼は私のことなんて何とも思っていないわよ。本当は隣に並ぶのだっておこがましいことなのに」

「お姉様!」


 ノエルがテーブルに手をついて私の方に身体を乗り出してきた。


「な、なに?」

「昔から言っているけど、お姉様って『麗しの神官様』と引けを取らないほどの美少女なのよ。なんでそんなに自己評価が低いの!?」

「やだ、それは家族の欲目でしょう。キリル様と同等扱いしたら、他人には鼻で笑われちゃうわ」

「本当だってば。お姉様って美的感覚が人とは違いすぎるのよ」

「そんなことないわよ。ノエルは天使みたいにとても可愛いって、ちゃんとわかっているもの」

「可愛いとはちがうの。なんて言ったらわかるかな――あ、そうだ。お姉様は『永遠の聖女』はどう思った? あれが美の基準なのよ」

「それは……」


 目をつぶっているから、何とも言えないけど、雰囲気は全くもって普通に見える。いや、目を開けたって何一つ特徴がなく、本当に平均的な感じだと思う。


「ね、お姉様は『永遠の聖女』のことを特別美しいとは思えないんでしょ。だから、自分のことも勘違いしているんだわ。瞳は大きすぎず、かといって小さくもなく、鼻も高すぎず、低すぎたりもしない。すべてが一番理想的なんだから」

「そうなのかしら。自分ではよくわからないわ」


 私の顔は、実は一般的じゃないのだろうか?


「本当にそうなのよ。お姉様が本気なら、わたしがキリル様をその気にさせてみせるわ」

「無理よそんなこと」

「大丈夫。任せておいて。お姉様は私の言う通りにしていればいいから。まずはあのペンダントをどうにかしなきゃね」


 なぜか、ノエルに火がついてしまったようだ。

 ノエルならキリル様も振り向いてくれると思う。


 だけどそんなことを言ったらまた怒られそうだから、私はその言葉をノエルには伝えることができずに飲み込んだ。


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