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歌姫な僕と、名探偵な貴女 ~花散る帝都~  作者: フミヅキ
第一章 歌姫と探偵は花やぐ帝都にて出会う
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事件の序章

お読みくださって、ありがとうございました。

昨日の更新で新たにブックマークしてくださった方がいて嬉しかったです。

今日はお仕事終わってちょこちょこ所用をこなしてこんな時間になってしまいました……。すみません。


お話ではラフカがちょっと大変なことに巻き込まれた感じで、どうなるのでしょう……?

また明日続きを更新する予定ですので、もしよかったら読みに来てください。


フミヅキ

 お手洗いというよりは、どこか夜風に当たれる場所はないかしらと、ラフカが廊下を歩いていた。しばらくフラフラしていると、彼は見知った姿を見つけた。


(あれは……もしかして首切り役人さん?)


 昼間、舞台の上で死刑執行した時のゆったりした白装束で、鞘に入った大剣を携え歩いている。廊下はかなり薄暗いのに、なぜか顔を隠す兜も付けている。


(なんで城の中でまであの格好してるんだろう? もしかして、あの格好でホールに行って何か出し物でもするのかしら? でも、晩餐会には参加しないって言ってたしなぁ)


 ラフカは首切り役人らしき人物を見れば見るほど違和感を覚えた。


(気のせいかな……? さっき会った時より体が大きく見えるような……?)


 気になったラフカは、首切り役人姿の人物を追いかけた。小柄な彼にとっては脚の長さが違うから追いかけるのもたいへんだ。ついに廊下のある角を曲がったところで、ラフカはその姿を見失ってしまう。


「残念~。うん? というか、あれ? ここ、どこ……?」


 ラフカは不安げに周囲をキョロキョロと見回す。調子に乗って他人を追いかけた彼は、どの通路を経てここまで来たのかまったく覚えていなかったのだ。


「嘘……もしかして僕ってバカじゃん……?」


 普通の屋敷であれば問題なかっただろう。しかし、ここは両陛下のおわす名高きグリア城。その広さと通路の複雑さ具合は半端ではない。


「え~ん。レン、助けてぇ……って、無駄か」


 可愛く泣き真似してみたところで、肝心のレンに届かなければ意味がない。ラフカは同じ装飾の続く薄暗い廊下を、杖をついてあてもなく歩き始めた。


 しばらく行くと、扉の隙間からうっすらと光の漏れる部屋があった。誰かいれば助けてもらおうと考え、ラフカはドアをノックする。


「すみませーん……。誰かいませんかぁ? 僕、お城の中で迷ってしまってぇ……」


 そっと中を覗くと、石造りの床で誰かが寝ているようだった。扉側に背を向けるようにして横になっている。


(晩餐会で酔った人が休んでるのかな。だとしても、こんな冷たい床で寝るなんて)


 どんな間抜けだろうと、ラフカはその顔を覗こうとして――彼は目を見開いて硬直することになる。


「くびきり……やくにん、さん……?」


 そこに横たわっていたのは兜を外した首切り役人だった。しかし、昼間に見たときの穏やかな表情からはかけ離れた姿だった。


「い、いやぁ……! どうして!」


 首切り役人の倒れた場所には真っ赤な池が広がっていた。胸元がざっくりと大きく切り開かれ、そこから血が溢れ出ているのだ。


 ラフカが昼間に見た彼の体はお役目のために鍛えられた体型だったが、その顔は仕事と不釣り合いなほど穏やかに優しく微笑んでいた。その顔が今は目を見開き、絶望に歪んだ表情で固まっている。


「し、死んでる……? いやああああああ!」


 ラフカは絶叫した。脚に力が入らず、ラフカはクラッチ杖を握る手に力を込めて、なんとか血だらけの床に倒れるのを防ぐ。


(こ、これ、死……そんな……! じゃ、じゃあ、まさか……さっき廊下で見たのは首切り役人さんの幽霊……!)


「なんだ、どうした!」


 少しすると、かなりの声量をもつラフカの悲鳴を聞きつけて、部屋に数名の男性がやって来た。今日の晩餐会参加者のようで、皆、着飾った姿だ。


「これは……男が死んでいる! あ、お前は今日の『蕾』の!」


 彼らはハッとしたようにラフカを見つめる。


「まさか、お前がやったのか!」

「え……?」


 目を見開くラフカを男たちは怖い顔で睨みつける。


「ふん。『夜の子供達』などを城に呼ぶから、こんなことになるのだ!」

「警備兵に突き出してやる」

「え、そんな! 違うよ、僕じゃない! ちょっと、そんな引っ張ったら痛いよぉ!」


 彼らのうち一人が城内の警備兵を呼びに行き、他の者達は強い力でラフカの体を床にねじ伏せた。


(ど、どうしよう! どうしてこうなっちゃうの! レン助けてぇ!)


 ラフカは泣きながら心の中で最愛の人に訴えた。


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