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 手作りのその毒を飲むと、魔女はたちまち醜いすがたとなりました。大きく垂れ下がった鼻には先っぽにイボがあり真っ赤、欠けた汚らしい茶色のすきっ歯、頬は痘瘡の跡で穴ぼこだらけ。あの美しい漆黒の瞳は白内障のようにうすらぼけた青となり、まつげと眉毛は所々抜けているという有様。髪はばさばさのグレイヘアで、身体は骸骨のように痩せ細り、黒衣から覗く手の甲は大きなシミだらけです。


 その時から、魔女を求める男は激減しました。ですが、何人かの男はその姿の魔女を以前と同じように追いかけました。

 何故ならば、賢者や聖人といった者は毒で姿を変えた魔女の本当の姿が見えていたからです。彼らはその醜い姿が仮の姿だと知っていました。魔女の美貌は隠されただけで、そのままであると。

 そして、毒の効き目が抜ければ魔女はたちまち元の美しい姿に戻るということも。


 賢者 「恐ろしい毒をもってしても、汝の本来の姿を隠すことなぞ出来ぬ。汝の姿はこの私には筒抜けなのだよ。諦めるがいい、魔女よ。そして、その美しい姿を我が寝所で晒してくれ。拝ませてくれ」


 聖人 「貴女はありのままの自分が嫌いなのですか? それは、天から賜った奇跡の姿でありますのに。ありのままの姿を見せなさい。ありのままの貴女を愛してあげなさい。そうすれば、私もありのままの貴女を愛するでしょう」


 なんということでしょう。本来ならば女犯(にょぼん)してはいけないタイプの男まで寄ってきました。


 エルフ 「エルフ族の私を馬鹿にしておるのか? そのような小手先の魔術など見破れない私ではない。私の口づけひとつでそのマヤカシなぞ吹き飛ばしてくれようぞ。さあ、そこのベッドに腹這いになれ。足を開いて尻を上げるがいい、さあさあさあ」


 また、かえって火に油を注ぐ、いえ、闘争心に火がついてしまった類の男もいたようです。

 しかし、魔女は死に物狂いで逃げ切り、操を守り通しました。


 ちなみに毒の効き目は一週間程度でした。ですから、魔女はその毒を一週間ごとに飲まなければなりませんでした。

 本来の魔女の姿でいることはほとんどありませんでしたから、魔女は毒の姿である方が本来の自分の姿なのではないかと思ってしまうほどでした。


 そして、長い年月が流れました。


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