毎年秋になるとたわわに実った豊乳を狩るようです
「今年も秋がきたな。実りの多い秋だと良いのだが……」
アタランテ大陸の中でも上位に位置する国、たわわ神教国の国主がそうつぶやいた。
彼の名はオルドー。
国主にしてたわわ教の教祖でもある。
その彼がそばに仕える従者へと問いかける。
「それで、情報は集まっておるのか? 今年はどこの『果実』を狙うのだ?」
低く響くような声が部屋の中に発せられる。
その声に答えるように従者が答えた。
「はっ。先日スイカが見つかったとの報告がありました。リンゴーン国のメロン伯爵家の次女です。生まれてから今までずっと、胸をサラシで押し込めて来たようで発見が遅れた模様です」
「ほう、スイカとな。よく今まで隠しおおせていたものだな」
「はっ。普段は屋敷から出なかったようなのですが、今年になってご友人の令嬢が主催するパーティーへと参加した際に気が付きました。うまく隠すようにドレスを着ていましたが、たわわ鑑定団の目はごまかせなかったようです」
「よし、分かった。こたびの果実収穫はリンゴーン国で執り行うことにする。用意させろっ!!」
「はっ。かしこまりました」
こうして今年もたわわに実った果実狩りが行われることとなった。
アタランテ大陸ではすでに秋の風物詩となってしまっているこれは、太古の昔に神託が告げられたことによるものだ。
【秋なのでたわわに実った豊乳を狩ろうではないか】
かつてのたわわ神教国の教祖が神殿で受け取った神託。
星の彼方よりもたらされたその神託により、それ以後、毎年のように秋になるとたわわに実った豊乳がたわわ神教国から狙われるようになったのだ。
さらに、その豊乳を神殿にて捧げることでその国には加護が授けられるということも判明している。
そのため、たわわ狩りは他の国々にまで広がることとなったのだ。
なぜ、神はこのような事態を引き起こしたのか。
それは誰にも知る由もない。
平和だったはずのアタランテ大陸に今年も血が流されるのだった。