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第7話 買い物

「ヘルシャフト様はこの後は早速依頼などは受けられますか?もしそうなのであればこちらでご要望にあった依頼を見繕うことを出来ます。どうしますか?」


 冒険者に登録して冒険者になった俺に受付嬢が早速依頼を受けるかと聞いてくる。


「悪いが今日は登録しに来ただけなんだ」


 この後に買い物をする予定の俺は、今日は依頼を受けないことを告げた。


「分かりました。知ってはいるとは思いますけど、冒険者に登録してから一週間以内に依頼を受けないと登録抹消になってしまいますので気をつけてくださいね」


「それは理解してるから、明日は依頼を受けるつもりだ」


 一応忠告してくれる受付嬢に感謝しながら明日は依頼を受けることを言っておく。


「それなら大丈夫そうですね。明日から頑張ってください。私も応援しておりますので」


「ああ、出来る範囲で頑張るつもりだ。それじゃあ俺はもう行くな」


「はい、明日来られるのを楽しみに待ってます」


 そうして俺は冒険者ギルドを後にした。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「確かこっちのほうだったよな」


 冒険者ギルドを後にした俺は、今日の買い物の目的の1つである服を買うために商業区にある服を取り扱っている店に向かっていた。

 服を取り扱っている店にも種類があり、古着を取り扱っている店、新品の服を取り扱っている店、オーダーメイドの服を取り扱っている店がある。

 俺が今向かっているのは、オーダーメイドの服を取り扱っている店になる。

 何故新品の服を取り扱っている店を見ないでオーダーメイドで最初から服を作ろうとしてるかは、絶対に店に欲しい服が無いと分かっているからだ。

 そもそもフリューゲルという種族用の服を取り扱っている店なんて余程大きな街じゃないとなく、ここみたいな普通の大きさの街の店では取り扱っていないのだ。

 もし奇跡的にあったとしても絶対に俺が欲しい服は置いてないだろう。

 俺が欲しいのは、今着ている侍衣装の服なのだ。

 異世界常識全書で俺が手に入れた知識には、侍衣装はこの世界に無いことが分かっている。

 つまりフリューゲル用の侍衣装が欲しい俺としては、オーダーメイドで服を作ってもらうしかないのだ。


 それから10分程で俺は目的の店に到着した。

 その店に入る瞬間悪寒に襲われたが、気のせいだろうと思い気にせずに店に入った。

 それからすぐに後悔するとも知らずに―――。


 カランカラン


 店の扉を開けると来店を告げるベルが鳴った。


「ここで服を作ってもらえるって聞いたんだがっ!?」


「いらっしゃ~いっ!?」


 俺と店員は顔を会わせた瞬間にどちらも驚きの声をあげた。

 だが、その驚きの意味は互いに違っていただろう。

 その驚きの硬直から先に再起動したのは店員のほうであった。


「あらあらあら!いい男!」


 そう言いながら店員はこちらに近寄ってきたのだ。

 その時になって俺は、身の危険を感じて再起動出来たのだ。

 しかし、時すでに遅しだった。


「……本当いい男」


 店員は10m程もあった距離を一瞬で詰め、後ろから俺の耳元で言葉を囁いたのだった。


「っ!?」


 これが女性だったらまだ良かっただろう。

 この店員は―――だったのだ。

 男ではなく漢である。


「あら、私は乙女よ~」


「なっ!?」


 なんでこの店員は人の心を読めるんだ!?


「女の勘をなめちゃや~よ」


 俺は先程からまともに言葉を発することすら出来ていない。

 それは仕方がないだろう。

 来店していきなり身長が2mを越える筋肉ムキムキの巨漢がフリフリたっぷりの服を着て出迎えてきて、俺の身体能力をもってしても反応出来ずに背後をとられて、挙げ句の果てには心まで読まれたんだから。

 そこまできて俺は認めることにしたこの人は乙女……いや、漢女であると!


「乙女だっつってんだろ!」


 ……はい、乙女です。

 俺は腹の底から響くような怒鳴り声に負けて、素直に?認めた。


「分かってくれればいいのよ~」


 やはり心の声で会話が成立してるのが謎だ……。


「だから女の勘だって言ってるじゃないのよ~」


 そう言いながらウインクをしてきたが、これは俺の心にかなりのダメージを負わせた……もちろん悪い意味で。


「あら~今のウインクはお気に召さなかったみたいね~なら他のを―――」


「いやいや!大丈夫だから!」


 これ以上は何をやられるか分からなかったけど、絶対にやらせてはいけないと本能が訴えてきており、俺は必死に店員を止めた。


「そうなの~残念ね~なら立ち話もこれくらいにしてあなたの用件を聞こうかしらね~」


「はっ!そうだった!俺は服を作ってもらいに来てたんだった!」


 あまりにもここに来てから衝撃的すぎることがありすぎて俺は、当初の来店理由を完全に忘れていた。


「それで~あなたはどんな服を作って欲しいの~?」


「それなんだが、この今着てる物と同じデザインの服を数着作ってもらいたいんだ。もちろんフリューゲル用で」


「う~ん。初めて見るデザインだし上手く作れるかは分からないわよ~?それにフリューゲル用の服も作ったことがないから時間がかかりそうだわ~それでもいいなら作るわよ~?」


「それでもいいから頼む」


 この街では、この店が一番らしいから迷わずに頼むことにする。

 ここの店が作れなかったらしばらくは諦めて浄化魔法に頼るしかないだろう。


「分かったわ~それじゃあ一週間後くらいにもう一度うちの店に来てちょうだ~い」


「一週間後だな、分かった。代金は先払いのほうがいいのか?」


 完成予定を聞き、代金を払ったほうがいいか聞くと。


「ええお願いできるかしら~1着小金貨1枚になるわ~それとこの注文表に名前を書いてくれるかしら~?」


 そう言われたので、3着ほど買うことにしていたので小金貨はなかったから金貨1枚を出し、注文表にも名前をちゃちゃっと書いてしまう。


「ならお釣よ~それにしてもヘルシャフト君か~かっこいい名前ね~ちなみに私はここの店の店長のエリザベートよ~」


 エリザベートが俺の名前を呼んだ瞬間、その眼が獲物を狙う眼になったように見えた。


「じゃ、じゃあ俺はこの後も予定あるから失礼する!」


 ここから一刻も早く逃げなくてはいけないと感じ、予定があることを告げ急いで店を後にした。


「あ~まだお話ししましょうよ~」


 エリザベートが何か言っているようだか、振り返らずに次の目的地に向けて歩を進めた。

 だけど、一週間後にまたあの店を訪れなくてはいけないことに気づき絶望したのは言うまでもない。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「おや、いらっしゃい」


 ポーション等を売っている薬屋に着き、警戒しながら入るとここは普通にお婆さんがやっている薬屋で、特に変わったこともなく安堵した。


「ポーションが欲しいんだか、どれを選んだらいいのか分からないな」


 店にはたくさんの種類のポーションが置いてあり、ポーションなど見たこともない俺としてはどれを買えばいいのか全く分からない。


「あんたポーションを買うのは初めてかい?」


 そんな俺を見かねてかお婆さんが話しかけてきてくれた。

 そして、お婆さんの問いかけに首を縦にふって頷いて答える。


「ふむ、お前さんは魔法を使うかい?」


「ああ、使うな」


 お婆さんは俺に魔法の使用の有無を聞いてきた。

 まだ本格的に使ってはいないが、使うつもりはあるので使うと答える。


「ふむ、ならお前さんにはこれらのポーションがオススメだね」


 お婆さんはそう言ってMPポーションを中心にHPポーションや状態異常を治すポーションを合計で15本提示してきた。

 ポーションは作り手によって効果が違うらしくその中でも効果が良いものを提示してくれたみたいだ。


「じゃあこれを全部買う」


「かっかっか!気前がいいことだね。それなら代金は銀貨7枚と小銀貨5枚のところを銀貨7枚でいいさ」


「本当にいいのか?ポーションもけっこう効果が良いものを出してくれたのに」


 ポーションは1本小銀貨5枚だから、1本をタダでくれるっていうことと同じになる。


「これからもポーションを買いに来てくれればいいさね。人の好意は素直に受け取っておくもんだよ」


「分かった。じゃあ銀貨7枚だ」


 言われた通りに好意を受け取ることにし、代金である銀貨7枚を払った。

 そして、買ったポーションを《空間収納》にしまった。


「お婆さん、世話になった」


 お婆さんにお礼を言い、俺は薬屋を後にして宿屋に戻っていった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「あ、ヘル君おかえり!」


「ああ、ただいま」


 宿屋に帰った俺をちょうど掃除をしていたレナが迎えてくれた。


「ご飯はまだだからもうちょっと待っててね!」


「分かった。じゃあ俺は部屋に行くな」


 そうして2階にある泊まっている部屋に向かった。


「ふぁ~、少し疲れて眠いから夕飯の時間になるまで寝るか」


 部屋に入った俺は、疲れて眠くなっていたので少し仮眠を取ることにした。

 そして、今日の出来事を思い出し明日から頑張るぞと思いながら眠りについた。

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