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第2話 光精霊の祝福

「知らない天井だ」


 目が覚めた俺はそう呟いた。

 俺が目を覚ました場所は木造の小屋らしきところだった。

 取り敢えず現状を確認するために寝ていたベットから起き上がり辺りを確認してみる。


「狭いな。しかも家具が今寝ていたベットとテーブルしかないし」


 小屋にはベットとテーブルが置いてあるだけであり、その2つの家具だけでも小屋の半分を占領してるほど狭かった。

 他に物といえばテーブルの上に置いてある2冊の本だけである。

 俺はまずその本を確認してみることにした。


「魔法全書に異世界常識全書か」


 タイトルを確認した俺は興味がある魔法全書のほうを先に読んでみようと本を開いた。

 すると本が光だし、突然の出来事に俺が驚いて動けない間に本は、俺の手から抜け出して体に吸い込まれていった。


「なるほど、そういう使い方なのか」


 俺はもう魔法の使い方を理解した。

 つまり、この本は読まなくても覚えられるということか。

 それならばと異世界常識全書のほうも吸収させた。


「これで文字も言葉も常識と判断されて覚えられたのはありがたいな」


 その時まで俺は異世界常識全書の下敷きになっていて気づかなかったが、手紙が置いてあった。

 手紙を開いて読んでみると―――。


『やあ、さっきぶりだね。まあこれは手紙だし一方的なものなんだけどさ。これを読んでるってことは、魔法全書と異世界常識全書はもう取り込んだと思うんだよね。だから僕が伝えることはほとんどないけど、1つだけ言わせてもらうと君の《空間収納》に僕からのお詫びとして君好みの装備品を入れといたからね。じゃあ伝えたいこと伝えたし、またね。また会えることを楽しみにしてるさ』


 手紙は(ゼロ)からだった。

 俺は早速《空間収納》の中を確認してみた。

 ちなみにスキルの使い方は異世界常識全書で覚えた。

 確かに《空間収納》の中には装備品が入っていた。


―――――――――――――――

・天帝の着物《幻想級》

 ・(ゼロ)がヘルシャフトのために創った着物。

 ・使用者のステータスに応じた性能を発揮する。


・天帝の袴《幻想級》

 ・(ゼロ)がヘルシャフトのために創った袴。

 ・使用者のステータスに応じた性能を発揮する。


・天帝の羽織《幻想級》

 ・(ゼロ)がヘルシャフトのために創った羽織。

 ・使用者のステータスに応じた性能を発揮する。


・天帝の足袋《幻想級》

 ・(ゼロ)がヘルシャフトのために創った足袋。

 ・使用者のステータスに応じた性能を発揮する。


・天帝の草履《幻想級》

 ・(ゼロ)がヘルシャフトのために創った草履。

 ・使用者のステータスに応じた性能を発揮する。

―――――――――――――――


 (ゼロ)が用意した装備品は侍の装備品だった。

 確かにこれは俺好みだな。

 (ゼロ)はよく分かってる。

 しかもこれ能力も単純だからこそ強いよな。

 だって、使用者のステータスに応じた性能を発揮するって、つまり俺が強くなれば強くなるほど強くなるってことだもんな。

 簡単に言ってしまえば無限に成長するってことだ。


「じゃ、早速装備してみるか」


 俺はこの天帝シリーズの装備品を装備してみることにした。

 というか侍の格好したいという欲に抗えなかった。


「“喚装”」


 異世界常識全書で覚えた喚装を使い天帝シリーズを装備した。


「さすがファンタジー。一瞬で着替えが終わるんだもんな。そういえば、身に付けたはいいけど鏡もなにもないから今自分がどんな感じなのか確認出来ないな」


 今の自分の姿を確認したい俺はどうしようかと考え、外に出て水場でもあれば水面で確認しようと思い付き、小屋から外に出てみた。


「これはすごいな……」


 小屋から外に出た俺は視界に入った景色に言葉を失ってしまう。

 でもそれは仕方がないと思う。

 小屋の外に広がっていた景色はそれだけ美しかった。

 目の前に対岸が見えないほど巨大な湖が広がっており、その湖面からホタルのようでありそれよりも幻想的な光が無数に立ち上がっていた。

 それはとても美しく心地がよいものだった。


『ふふっ。これは珍しい子が来てるわね』


 突然声が響いた。

 それで気づいたが俺の目の前にこの幻想的な景色の中にあってもより魅力的で美しい女性が立っていた。

 いや、僅かにだが女性は浮いている。


「あ、あなたは……?」


 声が震えてしまったが俺はその女性に問いかけることができた。


『私は光の精霊エルネルよ。よろしくね、可愛い転生者君』


 女性エルネルは光の精霊と名乗った。

 確かに彼女が精霊と言われてとても納得できる。

 それは彼女が神聖なオーラを纏ってるからなのか何故なのかは分からなかったが、本能的なところで彼女が精霊であるということをすんなりと受け入れられていた。


「エルネル様は何故私のことを転生者だと分かったのですか?」


 そう精霊よりも俺には彼女が俺のことを転生者と呼んでいたことの方が重要だ。


『話してあげてもいいんだけど、その口調を直してくれないと教えてあげないわ』


 エルネルはそれだけ言うと俺の質問に答えずにそっぽを向いてしまった。


「わ、分かりま……った」


 急いで答えようとした俺の言葉使いはおかしなことになってしまう。


『ふふっ、分かりまったってあなたは随分面白い言葉使いをするのね』


 急いで答えようとして敬語と素の口調が混じってしまった俺の言葉はエルネルを振り向かせるのには成功したが、恥ずかしすぎる……。


『まあいいわ。それじゃあ教えてあげる。といってもとても単純な理由なんだけど、あなたが出てきたあの小屋ねこの世界の転生スポットの1つなのよ』


 エルネルが教えてくれた理由は確かに単純な理由だった。

 そりゃあ転生スポットから見たことがないやつが出てきたら転生者だと普通思うよな。


「理由は理解出来た。それで聞きたいんだが、ここが転生スポットの1つということは、他にも転生スポットがあるということでそれなら俺の他にも転生者っているのか?」


 今度はしっかりと喋ることが出来た。


『いいえ、転生スポットは確かに複数存在するけど今はあなた以外の転生者はこの世界にいないわ。そもそも転生なんてことは滅多に起きないのよ。本当に偶然で他の世界の輪廻から魂がさ迷い混んできて転生するか神が自らの力を分け与えて転生させるしか方法がないんだから』


 俺以外の転生者がいないという情報はありがたい。

 この情報だけでも今後の予定がたてやすくなった。


「なるほど、なら俺を転生させたあいつは神だったのか」


 今思えば、神のやってることに介入出来るとしたら同じ神しかいないよな。


『えっ!?あなた神によって転生させられたの!?神が自分の力を分け与えて転生させるなんて魂がさ迷い混んできて転生するよりも珍しいことなのよ!勇者召喚で力を与えるならまだしも!』


 俺がふと呟いた言葉にエルネルが急に興奮しだした。


『うわー、神によって転生させられた転生者なんて、この転生スポットで祝福を与える担当になってから始めてみたわ。でも確かに普通に転生するよりも内封している力が段違いね』


 なんか見世物の動物になったような気分だ。

 それよりもエルネルの発言の中で気になるフレーズがあった。


「俺が相当珍しいのは分かったんだが、転生スポットで祝福を与えるってなんだ?」


『あ、最初に説明しなくちゃいけなかったのを忘れてたわ』


 この精霊様は最初の第一印象はとても儚げなミステリアスな女性だと思ったが、それは間違いだったようだ。


『それじゃあ遅くなっちゃったけど説明させてもらうわ。祝福とは精霊が人間に与える加護みたいなものなのよ。効果についてはその人の資質によって変わってくるわね。まあ実際これは転生者に対する救済処置なのよね。さっきも話したけど、転生者のほとんどが偶然で転生する人たちばかりなのよ。あなたみたいに力が与えられてるならいいけど、何かの介入もなしに偶然で転生してしまう転生者にはそんなものないわ。だから、神には及ばないけど精霊が祝福を授けて多少なりとも手助けしてあげようってことなの』


「そういうことなら俺には祝福はないってことか?」


 俺には転生時に力が与えられてるから、救済処置である祝福は与えられないだろう。


『あなたが望むなら祝福は与えるわよ?』


 俺の予想と反して、エルネルは俺が望むなら祝福を与えるといった。


「なら頼む」


 ここは素直に祝福を貰うことにした。


『分かったわ。あなたに祝福を与えるわよ』


 そう言ってエルネルの手が俺の頭に添えられた。



 ―――汝、光精霊エルネルが祝福を授ける



 俺はエルネルの体に纏うオーラに包まれた。

 それはとても暖かな優しい光だった。



 ―――精霊の祝福!



 その一言とともに俺の体に纏わりついていた光が体の中に吸い込まれていった。

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