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名探偵・藤崎誠シリーズ

名古屋めし普及計画

作者: さきら天悟


「バカな話だ。

給食に名古屋めしを出すなんて」

藤崎は聞こえるように呟いた。

昼間、ニュースで、名古屋市の小学校の学校給食で、エビフライやきしめんなどを出すのを耳にしていた。

「税金のムダだッ」

総務大臣になった太田に向けて言った。



太田はロックグラスを引き寄せ、一口潤した。

「じゃあ、どうすればいい、名探偵の藤崎誠さん?」

太田は少し酔った藤崎を煽った。

酔っても頭脳は明晰だ、と共に働いた官僚時代から知っている。

太田は藤崎から何かいい案を引き出したかった。

「地方は何かしなきゃと、必死なんだ」


「名古屋めしを普及させたいからと言って、

市内の学校給食に出すか?

安直だな~」

藤崎はいっきにあおり、グラスを空ける。

「だから、魅力がなって、と言われるんだ。

名古屋は・・・」


名古屋は三大都市と言われるが(地元では。一部では東京、大阪、福岡。

実質的には東京、大阪、横浜かな)、

他県民から見れば魅力がないと言う。


排他的と言われるのも、もっともだ。

観光客など来なくても良いと思っている。

なぜなら、他の都市と違って、観光などなくてもやっていける。

世界のトヨタがあるのだ。

それから、名古屋市民は大阪みたいに東京を意識しない。

というより気にしていない。

なぜなら、東京も大阪も下に見ている。

両都市とも愛知の人、家康、秀吉が造ったからだ。




太田は藤崎を見つめる。

何か、言いたい顔だ。

藤崎のアイデアを聞いてみたいと思った。

「子供に広めるって、いいじゃないか」

わざと肯定した。


「俺だったらなあ・・・・」

と藤崎は語り始めた。








半年後、藤崎のアイデアは実現した。

太田が市長に話したのだった。

将来、総理大臣になるための下準備の狙いがあった。




「今日は名古屋名物のひつまぶしです」

先生は言った。


わー、

すごいー、

という子供や、

鼻をおひつに近づけ、匂いを嗅ぐ、

そんな子供は一人もいなかった。


先生は食べ方の説明をする。

「まず、おひつのご飯をしゃもじで四等分にします。

1杯目は、そのまま、

2杯目は、薬味を添えて、

3杯目は、出汁を注いで、

4杯目は、一番好きな食べ方で・・・」


先生は一通り説明すると、

「頂きます」と言った。


生徒は静かに食べ始める。

言葉を発しなかったが、笑顔がこぼれる。

2杯目を食べた時、わーッと声をあげる生徒がいた。

思わず、声を上げた。

大人の味が分かったようだ。

その声がキッカケに普段礼儀正しい生徒がガヤガヤし出した。

濃い味の名古屋めしの代表格、ひつまぶしは生徒の心を鷲掴みにした。

いや、そうではない。

先生も虜にし、生徒への注意も忘れるほどだった。

さすが、名古屋蓬莱軒のひつまぶし。

だが、値段も一流だ。

3600円也。

クラス20人で7万2千円?

学校全体で諸経費合わ百万円近いという。

しかも、十数校。

1000万円を超える経費がかかった。




だが、反響は凄かった。

もちろんSNSではない。

SNSは学校で禁止されている。


「ひつまぶし、また食べたいな」

と生徒は親にねだった。

100点のテストを見せて。


「ママ、久しぶりに食べに行こうか。

名古屋へ」

父親は嬉しそうに言った。





そう藤崎は東京の名門私立学校の給食にひつまぶしを出すことを提案したのだ。

外から名古屋に呼び込み、お金を使わせる、藤崎の狙いはそこにあった。

高額なひつまぶしを市民が食べても、

家計を圧迫するだけで経済効果があると言えないのだ。



「ねえ、次は味噌煮込みうどんを食べてみたい」

と言う息子に父親は目を細めた。



「名古屋って面白い所だね」

ひつまぶしに釣られての言葉ではなかった。

「ひつまぶしって凄いね」

男の子は自慢げに父親に報告する。


「ひつまぶしって、登録商標なんだって。

だから、蓬莱軒が他の店に使わせたくなかったら、

広まってなかったんだって」



また目を細めた父親は少し名古屋を見直した。

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