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廃人ゲーマー<ゲームでも異世界です。  作者: 中二ばっか
1章 終わりゆく世界にログイン
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1-6

 集会場から出て、階段を降り、大通りを通って、大門まで出て来たアカザ。

 大門の入口から見えた景色は、土が何度も踏まれて出来た道と薄緑の芝生。遠くには海岸や丘が見える。日は高く上り照り付ける日差しは人々に活気を与え、草木は光合成をするために喜ぶのだろうが、アカザには鬱陶しかった。


 そんな所に、30人近くの集団が大門の出た所に固まっていた。

 その集団の中央に居た人物がアカザを見かけた途端、立ち上がりアカザを血走った目で睨みつける。

「よぉ。にぃちゃん。昨日はよくも殺してくれたな」

「だから?」

「昨日の礼してやるって言ってんだよ! あん時は装備していなかった。それにこの数だ! 交代で殺し続けて一生門から動けなくしてやるよ!」


 昨日とは違う服装なので、一瞬誰だったか思い出せなかったが、昨日遊郭【常春】で暴れていた大男らしい。あの時とは違い分厚い金属板を加工して作られた重厚な鎧、大剣を装備しておりサブ、サード武装共に身に付けている様子はない。

 周りに居る手下たちは皮で作られた軽鎧や、足軽、プレートメイル、チェーンメイルと様々に装備しているが、どれもこれも手入れをしていないのか金属板が歪んでいたり、泥などで汚れていたりする。


 アカザはそれらを見て、交易品の搬送中や護衛クエストに現れる盗賊や略奪者ではないかと思い始めた。ならず者なのだから間違ってはいない。

 そして、大男が生き返っている様子から受付嬢が怒った理由が、この世界では死んだ者は蘇らないからと考えたが、そうではなかったらしい。


 そうなるとなんで怒ったのか理解できない。

 だがそのことについてアカザが思考する暇はなく、5人が同時にアカザに襲い掛かる。

 斧、刀、槍、ナイフ、剣。

 それらの凶器を持ち、襲ってくる男たちにアカザは全く脅威を感じなかった。


 ステータスが高いからではなく、単純にゲームとしてみた場合彼らは単純な攻撃しかしていない。スキルを使ったわけでもない。冷静に判断し、相手の攻撃モーションに合わせて回避系のスキルを使うだけでいい。


「【ステップ】」

 アカザは男たちの攻撃から、後ろに軽く飛んで距離を置くだけで全て躱す。

 空振りした男たちは、当たると思われた攻撃が外れてしまって、何が起こったのか混乱してしまう。その隙だらけの格好など、どうぞ攻撃してくださいと言っているようにアカザは思えた。


「サブへ変更【陣風】」

 腰に差していた武装【膝丸《薄緑》】【小鴉丸《八咫烏》】を即座に抜刀し、スキルの発動によって振るった刀から斬撃を帯びた風が放たれる。

 その斬撃の風は攻撃範囲内の敵に分散して攻撃するといったスキル。だが、アカザの高ステータスとスキルランク100の威力が、彼らの防御力とは比較にならない。


 男たちは輪切りに刻まれ、一瞬のうちに白い灰になる。死んだことによってペナルティとして持っていたキャッシュが落ちてしまい、金属音を響かせ、その場には一定時間まで消えない白い灰が残るだけであった。


「か、数で押せ! 連発なんて出来ないはずだ! あいつだって限界ってもんが来る!」

 昨日、アカザの一撃で死亡したはずなのに動揺する大男。

 恐らく負けたのは防具を着ていなかったからだとか、クゥカと初めに戦闘してしまったから消耗していたからだとか、思っていたらしい。


 アカザはこの時点で方針を決めた。

 相手が数で押してくるのなら、全員倒してしまおうと。

 どちらにしろあちらが仕掛けて来た喧嘩(PVP)である。

 アカザが彼らに向かって足を蹴り出し飛び出すと同時に、何人かがスキルを発動させる。


「【チャージングスピア】!」

「【ファイアボルト】!」

「【グラバーナイフ】!」

 力をため込んだ槍を放つ男、ローブを着た奴が初級の炎の魔法を発動させ握り拳程の火球を放ち、鋭利な短剣がアカザの首元へと素早く向かう。


 だが。それらの基本的なスキルへの対処をアカザが間違えるはずもない。

「【疾風一閃】」

 【ファイアボルト】を放ったローブを着た奴に、倒れるようにして上半身を倒した後、地面を蹴り急加速。地表擦れ擦れで瞬間移動とも思える速度で接近し肩から斜めに切り裂く。斜めに切り裂かれたローブを着た奴は、まるで風船が破裂するようにして白い灰に変換される。


 スキル群【侍】、【疾風一閃】。

 相手に一気に接近し切り伏せる。その接近している最中は相手の攻撃は、受け付けない無敵時間が存在する。

 その行動だけで力を込めた槍と迫ってくる短剣、火球を潜り躱す。



 スキル群【侍】。

 【フォークロア】はスキル制が売りであり、様々なスキルがある。通常のゲームだと職業ごとに扱えるスキルがある。例えば戦士なら近接攻撃系のスキル、魔法使いなら名前の通り魔法で攻撃をする。


 スキル群はクラスごとの特徴を表しており、【フォークロア】では種族によって得手不得手はあるものの、そのスキル群は条件を満たせば誰でも習得できる。例え戦士であっても魔法を使えたり、魔法使いであっても近接攻撃をするといった行動が取れる。


 【侍】はその中で日本に馴染み深いスキルなので人気が高く、その特徴は【スタンバイタイム】がないこと。

 そのことから瞬発力が高い物理アタッカーという印象が強い。


 反面、【クールタイム】は全体的に長く設定されている。だが、持久力がないかと言うとそういう訳でもなく、スキル【蓮華】がある。これは【侍】スキルによる攻撃を重ねれば重ねるほど相手に与えるダメージが高くなると言ったスキル。

 そのため、【侍】スキルで攻め続けられる技量があれば、凄まじい【生命力】を持つモンスターでも、ガツガツと目に見える形でダメージを与え続けるDPSダメージ・パー・セカンドと化す。

 

 そして、【疾風一閃】によって敵のど真ん中まで移動したアカザ。これを好機と思った集団たちは取り囲み、スキルを放とうとするが全員が【スタンバイタイム】を持っていたのか、わずかな間が出来てしまう。


 その間に【スタンバイタイム】がない侍のスキル、広範囲攻撃の使用を即座に決断。【蓮華】によって攻撃力がさらに追加された攻撃。


「【夏嵐】」

 スキルを発動するとアカザは二刀を構えたまま、その場で一気に急回転する。

 そこから生まれた剣圧によってアカザを中心に旋風が巻き起こり、その旋風に巻き込まれた集団は風で身動きが取れず、一気になくなる【生命力】。アカザが【夏嵐】のモーションを終える頃には、旋風に巻き込まれた者は白い灰と化していた。


 集団の中心部で使ったために、大半が【夏嵐】に巻き込まれ30人ほどだった集団はもう7人まで数を減らしていた。


「うわぁああ!?」

「嘘だろ。こんだけの数が居て、なんでこっちが負けてるんだ!?」

「て、てめら! 逃げ出してんじゃねぇ!」

 アカザは阿鼻叫喚を叫びながら逃げる人物たちに狙いを定めた。

 逃げ出すのだから追撃しないなんて思わず、最初の方針。全員倒すのだから逃亡させるなんていかないだけだった。


「【縮地】」

 スキル群【軽業師】、【縮地】。

 選択したターゲットの手前に転移するような速度で距離を詰めるスキル。

 アカザが攻撃をしようと狙いを定めた、一番遠くに居る逃げる人物に一瞬にして距離を詰め、相手を背中から斬る付ける。


 「なぜだ!?」と男たちは叫んだ。

 どうやら彼らはスキルを使った戦闘に弱い。と言うかスキルの知識がない。恐らく今まで数で取り囲んで袋叩きばかりしていたのだろう。

 アカザの行動からして【縮地】、もしくは転移系や移動系のスキルを使ったことは明白なのに、それに驚くとはどれだけ初心者なのだろうと思った。


 そして、振られる刀を見た瞬間相手の顔が恐怖に歪む。

 その顔を見てアカザは不思議に思ってしまう。

 死ぬ訳ではないのにそこまで怯える理由が分からない。痛いのかもしれないが一時的な物に過ぎない。


(いや、今は)

 様々な疑問がアカザの頭に湧き出るが、それらを一蹴する。

 アカザは反転し、いきなり逃亡中に追いつかれ足が止まった男に【小鴉丸《八咫烏》】を振るい、男の【生命力】を0にし白いモヤへと変換。


「ぶっちキル!」

 走る。ただそれだけの動作だが、アカザのagi《敏捷性》の恩恵から別方向に逃げ出した男にすぐに追いつく。


「くるなぁああああ!」

 泣き喚きながら男は、反射的に長い鉄の剣【ロングソード】を振り回す。【ロングソード】を【膝丸《薄緑》】で弾き、【小鴉丸《八咫烏》】で相手の腹部を突き刺す。

 素人丸出しの動きではあったが凄まじいステータスによって、STR(筋力)で弾いた【ロングソード】は放物線を描きながら遠くへと跳び、DEX(器用さ)によって正確に鎧の隙間に入り込み、AIG(敏捷)によって【小鴉丸《八咫烏》】がすばやく相手の体に突き刺さる。


 片手武器である刀として最高ランクの【小鴉丸《八咫烏》】。全刀真っ黒の刃が、相手の体の肉の抵抗も感じさせず、相手に突き刺さった瞬間、相手の体が爆ぜ白いモヤが散乱する。


 相手を倒した時、大門前に先ほど倒した集団が復活しアカザの目に映るが、全員に生気がない。

 その顔は全てやつれて、目の下にクマがあり、濃い絶望の色が見える。

 自分もあんな表情をするのかと頭によぎったが、アカザは何の感想も持たなかった。

 彼らに何があったかは知らないが、他人事と保留にする。そんな事に思考を向けるよりも、今はこの大規模PVP(対人戦)を楽しむ。


「やっぱ殲滅戦って楽しいよな!」

 ゲームと同じで、いや、自身がキャラとなって体で感じる爽快感は絶大であった。圧倒的ステータスで繰り出される攻撃、スキルが相手チームを蹂躙していく。

 相手にした彼らにしてみれば堪ったものではないことはアカザも理解しているが、相手からけし掛けて来たのだ。こちらがどう戦い彼らがどうなろうと知ったことではない。


 悪いことをしているとも思わず、ただ楽しむために彼らの【生命力】を消していく。

 犬歯を剥き出しに口を歪め、逃げる獲物を追いかける猛犬の気分だった。

 その為、アカザは躊躇なくスキルを使い、彼らへの攻撃を加速していく。


「【電光石火】!」

 アカザの体の表面に【スタミナ】を消費して気の膜を張り、相手へと突進するスキルを発動させる。

 怒涛の突進で自身の気が周りに散らばりぶつかり合い静電気と発生させ、摩擦熱が生み出され合わさり、赤みを帯びた気と電流がアカザの通った道に散らばり、進行上の彼らを纏めて消し炭にする。


「【伍之太刀・五月雨】!」

 アカザの振るう刀が一瞬にして無数の斬撃を作り出し、相手を細切れにするどころか振った刀から生まれた空気の流れさえ切り裂き、逃がさない。

 そこで、アカザは大男以外の取り巻きを倒した事に気づく。

 このままヒートアップしていたら、うっかり取り巻きと一緒に倒していた。


「ひぃっ」

 アカザが目を向けた瞬間、その巨体に似合わず怯え竦む大男。

「うぁあああああああ!」

 やけくそといった感じに大剣をアカザに振り下ろすが、【ステップ】によって刀身側面に回避されてしまい、アカザの刀が首元に突き付けられる。


「た、たすけ」

「死んだって別にいいだろ。生き返るんだから」

 何を必死に命乞いをしようとしているのか本気で分からなくなったアカザだが、相手を倒さないという選択肢は元からない。


 死んでも生き返るのだから、罪の意識を持つことも、相手からしかけて来たのでPK(プレイヤー・キラー)と思られることもない。PKKプレイヤー・キル・キラーとは思われるかもしれないが、落ちた金貨は拾う気はない。後で彼らが回収すればいいだけの話だ。ステータス減少も一時的な物で時間が経てば回復する。


 なので、命乞いをしている大男を倒すことに躊躇はなかった。


「【霞飛花】!」

 スキル群【侍】の必殺技ともいうべきスキル。【霞飛花】。

 【蓮華】の加算されたダメージ率を攻撃回数として相手を切り刻むスキル。

 1秒と言う時間に100回の斬撃を片手の刀で生み出す。

 両手で振るい、合計200の斬撃が1秒と言う時間の間に大男に叩き込まれる。

 1撃すら【生命力】をなくさせるのにそれを200回も叩き込まれた大男は、一瞬にして白い灰すら千々に裂かれた。


 大門に復活した者は立ち上がる気力がなく、浮浪者が座り込んでいるように無気力であった。

 30人以上のプレイヤーを殺戮したアカザの顔は生き生きとしていた。

「俺つえええええ!」

 自身の圧倒的な力と多数の相手を倒していく痛快感が心の底から湧き上がり、我慢できずに叫ぶアカザであった。

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