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廃人ゲーマー<ゲームでも異世界です。  作者: 中二ばっか
1章 終わりゆく世界にログイン
11/78

1-11

とりあえず頂上に向かう、アカザ、トゥルー、シルフィール一行。


 しかし、アカザはどうするべきか迷っていた。

 ニートが現実で剣を振り回し、命の奪い合い(と言っても死なないが)するとなると恐怖心をどうすればいいのか。

 そこで、最初と街に出た時とのごろつきの戦闘を思い出す。


(……ゲームとして考えればいいのか)

 ここは【フォークロア】の影響を受けてはいるが、現実に近い。ファンタジー小説でもいきなり何の前触れもなく、地面から足を離して空を歩くことはない。


 だが、戦闘システムは【フォークロア】そのものである。そして、あれだけ動いたのに全然筋肉痛にはならない。風邪みたいな症状も一晩で回復した。


(戦闘を楽しめむ……傍から見たら戦闘狂だな)

 まぁ、もうしたのだ。今更やめる理由はない。むしろ効率よく敵を倒すのならそちらの方がいい。


(よし、今後は遊びでモンスターを駆逐する方向にしよう。でも)

 今後の方針を決めたが、現実の良心的価値観からか何かがおかしいと思った――。


(役得だよなぁ)

 ……訳ではなく、アカザの前を元気に歩くトゥルーの小さなお尻や、シルフィールのほっそりとした美脚に目がいく。

 そう顔に表情が出ないように、心の声を覚られまいとして先程まで考えていただけである。


 そして、目が彼女たちに向いた時どうしてもにやけてしまう。

「何をにやけている?」

「……いや? 何のこと?」

「……」

 じぃー、とこちらに疑いの視線を向けて来るシルフィール。


 ここで「そんな薄着を着ているから男のサガで目がいく」なんて言いだせば、疑いの目は軽蔑の目に早変わりするだろう。


「……何やら疑わしいので、前を歩いてくれないか?」

「どうしても?」

「どうしても」

 疑念を払拭するために彼女たちよりも前に歩き出す。

 目の前には険しい斜面。全く面白みもない光景にアカザは少し落胆してしまった。



 山頂まで100m辺りまで登って来たが、前回のように特攻をかますようなことはしたくない。壁からひょっこり顔を出し、血糊べったりの残酷映像を見る気はない。

 と言うわけで【召喚獣】という斥侯を出す。


 サブ装備の【クロノスの鎌】に変更し、小声で【イペリア】と呟くと地面に直径3mの魔法陣が展開され、そこから小さなトカゲが跳び出て来る。

 ただのトカゲなはずはなく、その鱗は白く虹色の髪毛を持っている。

 【索敵】で敵の数を確認するが、【レッドワイバーン】の数はそんなに多く残っていないのか、赤い△が3つ表示されるだけである。恐らく、共食いで数を減らし、残った3匹なのだろう。


 その3体は【レッドワイバーン】たちの熾烈な生存競争で生き残ってきたため、【10年物】に変貌している可能性がある。

 フィールドに居るモンスターが長時間放置され続けると、そのエリアで2体ほどが【10年物】と言う称号がモンスター名の前に付く。


 こうなると体格が1回り大きくなり、モンスターによって異なるが各ステータス、アビリティが強化される。【生命力】に至っては10倍が基本。

 アカザでも【生命力】がなくなる、と言ったことはないと思うが、1撃で決着になることはない。最悪、3体に囲まれ集中攻撃を喰らう可能性もある。


 わざわざ正面突入をして苦戦をする気はなく、戦闘を有利に進めたいアカザ。

 そのために、この【イペリア】を突撃させ、戦力を図ろうと考える。【イペリア】は戦闘能力は低く、すぐに負けてしまうだろう。その説明をすると。


「……鬼畜が」

「精霊さんを殺しちゃうの……?」

 と、彼女たちは猛反発。シルフィールは唾を今にも破棄すてな表情で、眉を歪めかなり怖い表情になっている。


 トゥルーは上目づかいで今にも泣きそうだっためかなり良心が痛む。心なしか、【イペリア】の爬虫類の跳び出た目も涙が今にも出てきそうだ。そんな【イペリア】を抱え、アカザから離れるトゥルー。

 【召喚獣】とはプレイヤーにとってみれば、自律的に行動するAI、愛着がある人でも相棒と言った物。


 だが、NPC。この世界の住人にとっては神獣であり、敬い、信仰するほどの生物である。逆にアンデット系は邪教にされやすいがそれでも影響力は計り知れない。

 仕方なく、【イペリア】のアビリティスキル【ステルス】を使い全員が匂いが掻き消え、半透明になり、足音を出さなくなった。


 【イペリア】の特徴として足が速く、補助能力を発揮する特技が多いことで知られる【召喚獣】。これでモンスターに発見されることもなく、近づき先手が取れる。

 ただし、【召喚獣】の維持に【マナ】が減っていくためうかうかしていられない。【ステレス】の発動で2重に【マナ】を消費してしまう。

 【召喚獣】の維持には【マナ】が必要なため、維持できず、消えてしまうと【ステルス】も消えてしまう。


「取りあえず、これで相手に近づいて寝込みなり、不意打ちをする。それでいいな?」

 【ステルス】の発動中パーティメンバーは半透明になるので、頷いた彼女たちの姿が確認できた。




 【ステルス】を発動し、山頂まで一気に上がり【索敵】で最後の【レッドワイバーン】が居る所に目を向ける。


 少しくぼんだ溝の所に赤い鱗を纏った爬虫類の姿を見る。

 だが、そこに居るのは【レッドワイバーン】とは思えない生き物であった。


 それを見た時、驚くことがなかった人物はいない。

 あれはなんだ? 誰もがそう思うに違いない。

 自分の目をひん剥いている表情をしているのが、鏡を見ずとも分かる。


 アカザはゲームとして【レッドワイバーン】を以外の竜種を知っているから、数々のモンスターを見たことがあるから、衝撃は3人の中で一番大きい。

 現実で日が立つとモンスターが変化し【10年物】と付けられ、各パラメーターが強化される一般のモンスターが居るがそれとは違う。


 あるアップデートでモンスターたちが、【醒極状態】という理不尽なほど強化されたモンスターとも違う。それだって赤黒のオーラを纏うだけであり、あんな姿にはならない。

 今目の前に居る【レッドワイバーン】は普通のと1回り大きいが、それ以外にも特徴がある。


 コウモリの翼が5枚背中から生え(1枚は瞼の上から生えて、右の方に3枚偏って背中から生えている)、目は7つに増え(顔だけではなく首や背中、側面にもある)、足が6本(内1本は地面に付いておらず側面に生えている)、尻尾が4本。まるで壊れたおもちゃのパーツを、新しく買い直した玩具に子供が考えず接着剤で繋げたように、複雑な姿をしている。


 【フォークロア】でそんなモンスターを見かけた記憶すらない。

 左右対称的ではないモンスターも存在はするが、ここまで変則的ではない。

 まるでゲームがバグったようなものだ。【索敵】に赤の△が3つ表示されたが、周りには継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】しか見当たらない。


(……いや、そう考えると当たり前なのか?)

 少なくとも【レッドワイバーン】の習性がカマキリやサメのように、共食いが当たり前とは思えない。それらだって日常的に食べるとは言えない。食料がなくなった緊急措置だったはずである。


(あいつらが食う物って、肉だよな? クエスト内容とかで牛が襲われたとかで始末してほしいとか。それを同種の肉や血、骨、もっと言ってしまえば創波を取り込んで変貌した?)

 それが同種という物になった突然変異なのだろう。


 改めてアカザはそのモンスターを見る。

 【フォークロア】では見たことがないモンスター。 

 未知のモンスターに出会う。


 現実ならば、恐らく普通なら撤退を選ぶ。相手の能力も、戦法も分からい。

 牙や爪は相変わらず鋭く、怖い。手をきつく握り、少し足が震えている。


(でも、この世界はゲームだ)

 そう頭の中で言葉を繰り返し自己暗示をかける。

 アップデートでモンスターの種類が増え、それを倒す。

 そう思うと緊張が幾分か和らいでくる。徐々に余裕すら持てる。


 しかも、まだ誰もが見たことがなく、倒してすらいないモンスターを倒す。どのような攻撃をしてくるか。どんなレアアイテムが獲得でできるか。 

 強敵が現れて、攻略を練り、モンスターを倒す。それがどれだけ楽しいことか。

 後を見て、2人の顔が強張りつつも、逃げる意思がないことを確認。


 【イペリア】の召喚を解除し、腰に差した【膝丸《薄緑》】【小鴉丸《八咫烏》】を抜刀し、継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】に仕掛ける。


「ぶっちキル!」

 その掛け声と同時に【疾風一閃】を発動させるアカザ。

 風と化したアカザが一瞬にして距離を詰め、剥ぎ接ぎの【レッドワイバーン】の鱗に両手の刀で切り裂く。


 が、攻撃は通っているが黒いモヤに変化する様子はない。

 突然の攻撃に驚いたように吠える継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】。

 その大音量の咆哮が突風のように叩き付けられ、肌がビリビリと振動しまともに動けなくなってしまう。


 咆哮をまともに喰らい、慌てて耳を塞いだが耳鳴りが鳴り続けていて痛い。

(【ハウンドボイス】!? いや、ただの大声ってだけか!?)

 大型モンスターの咆哮には攻撃力が帯びていることがある。しかし、これはただ叫んだようなものだ。警戒した威嚇でも、敵意がある雄叫びでもない。


 ただの動作で動けなくなってしまう。

 そこに振られる尻尾。4つの尾が広がり、強大な手の平で叩き付けられそうであった。


(【縮地】!)

 必死に動くことだけ考え、スキルが発動する。

 後方に一瞬にして下がり、尾の範囲攻撃から逃れた後、素早く再接近し刀を振るう。


 が、まるで見えているように攻撃を躱し前に飛び出すことで避ける、継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】。


(こいつ。目は飾りじゃないのか!?)

 恐らくだが、虫の複眼のように視覚が広がっているのだろう。

 だとしたら背中から攻撃したところで、視覚外からの攻撃とはならない。


 後方から援護の矢が飛来する。

 鱗を突き破るが大したことはないようで、無視してアカザを攻撃してくる。

 内蔵なども増えているのか、口を開くと7つの一抱えもありそうな大きさの火球を連射してくる。


「【ディールアクション】!」

 地面を滑るように横に3回移動し、放たれた火球を全て回避。着弾地の地面が溶けていたことに背筋に汗が流れる。


 また火球を放とうとしている所を、【ソードゲイル】でのけぞりさせ、強引に火球の発射を阻止する。


 その隙に、接近し、コンボを繰り出す。

【居合い切り】【飛燕】【峰打ち】【飛車】【兜割り】を繰り出しての連続攻撃。


 一度両手の刀を納刀して腰を落とし、抜刀とともに刀が閃く。【居合い切り】によって側面にある目の1つを切断。

 続けて使用した【飛燕】で切り上げの斬撃を放ちながら跳び上がり、その巨体を浮かせる。アカザのSTRが高いためか、その巨体は中を飛び飛ぶための翼は機能していないため、身動きが取り辛くなった継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】。


 最頂点まで到達すると【峰打ち】を発動。刀の峰で巨体を叩き付け、先程の攻撃で溜まったダウン値を抑える。

 そこから【飛車】を使い、縦に高速回転して翼をズタズタに引き裂く。


 そして、最後は【兜割り】。一気に加速して地面に急降下し継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】を地面に叩き付ける。

 これらは全てスキル群【侍】であり【蓮華】の効力が発動し、スキルを使用するごとに威力が通常より上がっていく。


 巨大化しようとノックバック無効の能力は得られなかったようで、コンボ終了と同時に後方に吹っ飛ばされる。しかし、未だに【生命力】は尽きない。

 そして、立ち上がった継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】はその巨体を生かし、アカザに突進してくる。


 まるで岩石が迫ってくるような攻撃に、アカザは横に走ってその突進を回避する。しかし、腕を広げるように側面から生えた足を伸ばし、横に逃げたアカザを捕らえる。

 そして、勢いよくアカザを地面に叩き付ける。


「ぐがっ」

 マットでもない地面に体を叩きつけられたが、全身が痺れる程度で、それに悶えている暇はなく【受け身】を使わずに立ち上がる。

 回避スキルを使えば難なく、避けられただろうがアカザは走って攻撃範囲から逃れる方を選んだ。


 これがスキル群【侍】の弱点。

 スキル群【侍】のパッシブスキル、【蓮華】は【侍】以外のスキル群を使うとその効力を失う。それからまた、【蓮華】によるダメージ加算をやり直さなければならない。それを避けるために敢えて、【侍】スキル以外の回避や移動スキルは使えない。


 目の前には攻撃態勢の継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】。

 通常の【レッドワイバーン】の攻撃よりもかなり攻撃範囲が広がっており、通常の移動による攻撃範囲から逃げることでの回避が難しい。


 だが、回避手段がないわけではない。

 火球が7つ連射される中、アカザはアビリティスキル【斬り払い】を発動。自動迎撃が発動し、7つの火球を切り裂き、攻撃をアカザに届く前に散らす。


 アビリティスキルとは、パッシブスキルのような持続効力を発揮するスキル。しかし、発動中は何かしらのデミリットが生じるためON、OFFが可能となっている。


 【戦闘継続】ならdefの減少。

 【斬り払い】なら攻撃を迎撃するたびにダメージ率が少しずつ上がり、本来受けるダメージ分のスタミナ消費と通常移動力低下を引き起こす。ただし、迎撃できる攻撃は遠距離攻撃に限定され、範囲攻撃は無効化されない。また、接近攻撃も無効化することもできない。


 そこから【電光石火】を発動。

 前面に気の膜が張られ、空気摩擦が起き炎と電流を纏った突進。

 【斬り払い】は通常の移動に制限が掛かるだけであり、スキルを使っての移動能力には影響を受けず突き進む。


 継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】との体格差は歴然だが、それでもアカザの突進力が強いせいか、スキルの特性からか、その巨体は宙を舞う。この間に【斬り払い】を解除。

 しかし、それでも【生命力】がなくならない。


 合計5回以上の【侍】のスキルで強化された攻撃ですら【生命力】を尽かせられない。高ステータス、高性能の装備を使っているアカザの攻撃で、通常の【レッドワイバーン】の10年物ならばもう、3回目で死んでいてもおかしくない。


(……まさか他の【レッドワイバーン】の【生命力】を取り込んでるんじゃないだろうな)

 【蓮華】によるコンボを中断し【ステータススキャン】を実行。

 モンスターの残量【生命力】や、各ステータスを見る魔法であり、持続時間は30秒程度。

 ゲームの時のようにモンスターの頭上に吹き出しのように表示されたが、桁がおかしい。


【レッgfaewen-1g】《ノーmgaoル》

 【生命力】6akw88/8hjaoiK【マナ】3am7w/k3ma0【スタミナ】6kam0/kaig0

 STR/2oiw9 DEF/iho39 INT/s8o DEX/io2 AGI/h9w WILL/jaq MND/oio LUK/19k


 もはや完全に文字化けしている。

 【生命力】の桁からボス並の高レベルの量を持っていることが分かった。それに、【生命力】のゲージ残量はなんとか解り、今は7割方残っている。このまま行けば勝てると思った。


 だが、継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】の様子が変わる。

 ボコッと傷口の肉が膨れ上がり、破壊された鱗が、翼が元に戻る。

 そして、【生命力】も幾分かではあるが回復していた。


(アビリティの【高速回復】!? いや、【レッドワイバーン】にそんなスキルはなかったはず)

 ならば答えは【自然回復】。プレイヤーが攻撃を受けると当然、【生命力】は減る。しかし、時間と共に減った【生命力】は回復していく。それはモンスターにも適応される。


 しかし、回復速度がかなり早い。普通のフィールドのモンスターが持っているのは秒間掛けて【生命力】が僅かづつ回復するぐらいで、回復速度から見て1秒間に100は回復している勢いに思える。


 やはり、他の【レッドワイバーン】を取り込み、【自然回復】も強化していったらしい。

(回復力が追い付かない勢いで削るしかないか!)


「【イービルスパイク】!【アーマーダウン】!」

 サブ武装の【クロノスの鎌】に変更し、スキル【イービルスパイク】を発動する。

 剥ぎ継ぎの【レッドワイバーン】の地面から黒く細く長い針が10本突如出現し、足や胴体、翼を貫き拘束する。そこに【アーマーダウン】による防御力低下を引き起こさせる。


 そこから【膝丸《薄緑》】【小鴉丸《八咫烏》】に持ち替え、【胴切り】で更なる防御力低下を引き起こす一撃を放つと、1本の黒い細針も一緒に破裂し破片が傷を広げる。

 攻撃すると追加ダメージを与える代わりに、攻撃ごとに【イービルスパイク】の長針が破壊され拘束が解かれていく。


 後方からの矢はスキルを使っていないらしく通常の威力しか持っていないようで、はっきし言って【イービルスパイク】の拘束を解いているのを、手伝っているようにしか思えない。だが、注意を促す時間を使うより攻撃に専念する。


 【斬鉄剣】でニンジンの皮をむくように【レッドワイバーン】の鱗が付いた革を剥がしながら切り裂き、

 【一刀両断】で防御力を無視した一撃を加え、

 【雷斬】で紫の稲妻を纏った刀が、切り裂く。傷口から稲妻が入り込み、相手を痺れさせ状態異常【麻痺】を与え体を動かなくさせる。


 そこで【イービルスパイク】の棘がなくなるが、異常状態【麻痺】によって体を動かすことができない継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】。さらに【陣風】を発動し、動けない体に今までの性質を纏った半透明な刃が襲い掛かる。


 ズタズタに身体中切り刻まれ、あらゆるとこから血を流し、体に不規則に取り付けられた目は切り裂かれたが、未だに倒れない継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】。


 しかしアカザは、高速化された【自然回復】で治癒させる暇は与えない。


 【渾身一擲】を発動させ【霞飛花】を続けて発動。

 ダメージ加算が【渾身一擲】によって倍に膨れ上がり【霞飛花】の威力を大幅に上げる。

 無数の斬撃が一瞬にして走り終わる。


 攻撃回数は【胴切り】からのダメージ率の加算になるが、それでも凄まじい数の斬撃が継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】を襲う。


 【ステータススキャン】で見える【生命力】の残りもなくなっており、倒したと思った。が、アカザが気を抜いた瞬間、【生命力】が数ミリではあるが回復した。

 アビリティ【戦闘継続】で九死に一生を得た、継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】。


 アカザの不意を突き、口を開け火炎を吹き出す。

 粘り気の濃い、マグマのような炎がアカザを包む。


「アカザさん!」

 至近距離で攻撃をまともに喰らった事に、悲鳴を上げるように叫ぶトゥルー。 

 だが、炎を吐き出すのを終えた時、悠然とした足取りで近づくアカザ。

 【ステータスウィンド】で【生命力】を確認すると94%と減少していたが、それほど痛くなかった。


 最初の【レッドワイバーン】の攻撃でオロオロしていた時とは、違って冷静である。

 しかし、アカザは恐怖や痛みをなくした訳ではない。

 肌を焼く炎のチリチリとした痛みは痛覚として認識できる。


 だが、現実であれば眼球が焼かれ、肺の空気はなくなり、全身が黒焦げになってなければおかしい。

しかし、高ステータスや防御力に確信が持てて来たアカザに恐怖はない。


「ゲームだからな。死のうが生き返るんだよ」

 【疾風怒濤】

 燃え上がる炎の中から跳び出し、一瞬にして継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】を通り過ぎる。


 すると通り過ぎた後に、無数の斬撃が遅れて進路後の敵に襲い掛かる。

 遅れてやってきた斬撃の嵐に、継ぎ接ぎの【レッドワイバーン】は今度こそ【生命力】をなくし、体が燃えるように黒い灰となって空に散っていった。

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