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『―――起きてますか?起きていませんか?なるほど、ここは妹として起こすべきですよね』


あぁ、眩しいと思ったらもう朝か。

小鳥のさえずりに混じって聞き慣れた声が聞こえる。

昨夜は重い身体を引きずってなんとか布団に帰還出来た訳で、こんな日常的な朝に涙が出そうだ。


「ふぅ、おはようございまあぁーすっ!」


「のわあっ!?危ねえ、危ないだろヒカリちゃん!今さ、全力で足で踏もうとしたよな?ジャンプしながらとか、そんなえげつない子に育てた覚えはないんだが」


「もうっ、あたしは君じゃな……え、ちゃん?あっ、う、ごめんなさい。育て直しても良いんですよ?お兄ちゃん好みの女の子になるのも、やぶさかではありませんし」


朝っぱらからヤバイ事をおっしゃいますねー、我が妹よ。

どんなゲームだよ、確実にアウトだよ、あったら喜んで買ってやるがな。


そんな俺に命の危機を感じさせた妹は、布団の端にチョコンと正座している。

茶色のショートボブに同じ色のクリクリした大きな目。

上はラフなジャージに下はミニスカートに黒ニーソの絶対領域。

誰が見ても可愛いと言うような美少女、それが我が妹こと立花 光である。


そう、こいつは俺の妹だ。だからこそジャンプした瞬間、シマシマの禁断エリアを見たところで何ともない。

確りと薄目で確認したのは妹の成長を見守る兄として仕方がなくなんだ、あぁ、我ながらとっても優しいお兄ちゃんだぜ。


「とてつも卑しい視線を感じます。あぁ、お婆ちゃんもお友達のところにお出かけ中ですし、これはとんでもない過ちが起きてしまう気がします」


「待てよ、何故俺が着ていたであろうジャージをピカリ君が着ているんですかねー。しかもノーブラっぽいんだが」


「はっ?あなたみたいに可愛い妹を君づけで呼ぶようなクズには、衣服など人の物は必要ないですよね。真ちゃんったら死にたいんですか?クズにも勝るド変態ですね」


「あー……いや、勘弁してくれ。いつも起こしてくれてありがとなヒカリちゃん。俺はただ、俺なんかの服でお前が汚れないか心配なんだよ」


「あっ……お兄ちゃんに汚されるなんて嬉、こほん。あたしは寂しがりですから、お兄ちゃんの匂いと温もりを拝借できるだけで幸せなんです」


ニコリと首を傾げて微笑む様子はとんでもなく純情そうで可愛いんだが、流石俺の妹。

やっている事も言ってる事も変態だ、お兄ちゃん心配だよ。

しかし最近見た希望のバイブルのヒロインの格好に似せてくるのは、ただの偶然か?

思えばいつもいつも――いや、偶然だ。偶然じゃないなんて考えたくもないし、ヒカリちゃんに限って考えられないからな。


「ところでお兄ちゃん、実は私がこうして愛しのお兄ちゃんのジャージを直に着ているのには訳があるんですよ」


「ははっ、寝ているところを襲うだけの理由なんてどんな訳だよ?」


いつものじゃれ愛だ。

常日頃からこんな接し方をしてくるんだから、訳なんて聞くだけ無駄なんだけどな。

因みに学園ではピカリ君と呼んでいるせいか恐ろしくトゲトゲしい。

流石に人がいるとこでヒカリちゃんはない、言えないだろ。


「他のメスの臭いがします。だからあたしの匂いを付けているんだよ、お兄ちゃん?」


はははっ、言えない、言える訳がない。

黙り込んだら余計に怪しまれるのは充分理解している。

だがニコリと微笑んだヒカリちゃんの目が笑っていない、名前とは真逆の暗い目が怖すぎる。

なんだよこれ、あの危ない一夜は現実だったって事だが、またもやピンチじゃねえか。


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