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「――――ふ、ふふ。ふふふっ、救うですって?この私にそんな戯れ言をほざいたのはあなたが初めてよ。私の前に立って生きていられたのも褒めてあげるべきかしら」


「な、何なんだよ。何なんだよあんた……」


それ以上の言葉が出てこない。

何故ならケタケタ笑う彼女の腕が引き締まってきて、その細い指が抉り取られるんじゃないかと心配になるくらいに俺の腹に食い込んでいるからだ。


尋常ではない力、死にかけだからと道連れにしたいのか?

いや、それだと助けた意味がない、俺を受け止めた意味がない。

そもそも俺を助けたのはこの女だ、怖がるなんてあまりに失礼じゃないか。

あぁそうだ、ここは紳士として俺も受け止めてあげるべきだろう。


「私が怖いの?仕方がないわね。私はあなたにそう思われるのが当然だと思っているのだけれど、同時に少なからず悲しさを感じている。これは何?この感情は何なのかしら?」


「うはっ、ちょっ直接腹を撫でるな!いや、すべすべした感触は良いんだが違う意味でヤバイ。それにそんな疑問に答える前にもっとヤバイもんに迫られているんだが、一緒に喰われたいのかよ?」


「ならば終わった後に教えなさい、この私が揺らぐ理由を。そして今はただただその目に焼き付けるの、あなたの所有者がどんな者なのかを」


「分かった、よく分からないが約束する。だから一緒に逃げるプランをだな――」


「逃げる?ふふっ、私には逃げる意味も逃がす理由も全くないのよ。この私がダウジングを始めるのだから、あなたをあんな雑魚に喰わせたりしないわ」


ダウジング?こんな時に宝探しをしてどうする、そして何故彼女は俺の前に出るんだよ。

引き止める間もなく化け物が飛びかかってくる。

彼女がグシャリと喰われる光景を想像していた俺だったが、そんな惨劇は起きなかった。


「不知火、それが私のもう一つの名。失せ物の力を使い失せ物を狩る、魔宝使いの名前よ」


なんだ、蛍か?田舎だしおかしくもないが、白い蛍なんてあり得ない。

彼女の身体を包むように集まったそれが、天に掲げた彼女のナイフに集束するなんて想定外の光景だ。


長い線になったそれを彼女は振り下ろした。化け物を頭から尻尾まで両断する光の線、左右に分断された化け物の身体は一瞬後に燃え尽きて、灰すら残さずに焼失した。

そう、焼けていた。細くも凶悪な一撃はビームにしか見えなかった。


魔法使い、彼女の言葉が耳に残っている。魔法なんてある訳がない。

いくらこじらせているからって流石にないと理解している筈なんだが、小さな光の玉を辺りに従えた幻想的な彼女を見ていると現実的な思考が崩れて行く。


化け物を知っていて逃げなかったのは、彼女が狩る側だったからだろう。圧倒的な力を見せた彼女はコツコツと俺に近づいて来る。

化け物じみた力を見た筈なんだが、どうしてか逃げるつもりにはなれなかった。


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