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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第五章~強者が集う聖地~
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第七十一話  勝ち残った戦士達

 武術大会の予選会場が発表され、大会に参加する者達は皆予選の行われる各町へ移動する。ヴリトラとラピュスもエリオミスの町へ行き、見事に予選を通過。決勝トーナメントの出場資格を手に入れた二人はトーナメント会場のあるティムタームへ戻るのだった。

 エリオミスの町での予選が終ると、敗退した参加者達はそれぞれ自分の町へと帰っていく。ヴリトラとラピュスも大会が終わってからしばらくしてジャバウォックがジープで迎えに訪れ、二人はジープに乗りティムタームへと戻った。既に辺りは薄暗くなっており、三人の乗ったジープは凸凹でこぼこの人道を走っている。


「ほぉ~?それで見事に決勝出場の視覚を手に入れたって訳か?」

「まぁな。俺とラピュスなら楽勝さ」

「いや、お前はともかく私は殆ど偶然と言っていいくらいだったぞ」


 ジープを運転しているジャバウォックの後ろの後部座席に座りながら大会の結果を話しているヴリトラとラピュス。笑いながら話すヴリトラの隣でラピュスは謙遜する様な態度で苦笑いを見せている。二人の会話を聞きながら小さく笑っているジャバウォックは前を向いたままハンドルを回していた。

 

「ところで、リブル達はどうだったんだ?」


 ヴリトラは他の三人の事が気になりジャバウォックにリンドブルム達の結果を尋ねた。ジャバウォックはバックミラーでヴリトラの顔をチラッと確認してから質問に答えた。


「リブル達ももう終わってるぜ。当然予選突破でな」

「本当か?」

「ああ。リブルもニーズヘッグもラランも全員が勝ち進んだ」


 リンドブルム達が予選を勝ち進んだ事を聞いてラピュスは小さな笑みを浮かべた。リンドブルムやニーズヘッグは大丈夫だと思っていたが、ラランは自分と同じただの騎士である為、勝ち残れたかどうか少し不安だったのだろう。だが、ラランも勝ち残りホッと一安心する。


「ラピュス、お前はもう少し自分の力に自信を持った方がいいぞ?」


 安心して笑みを浮かべるラピュスを見ていたヴリトラはゆっくりと座席にもたれながら笑って彼女に声を掛ける。ラピュスは突然のヴリトラの言葉にふと彼の方を振り向く。


「お前は予選で勝ち残れたのが偶然だとか言ってるけど、お前の力で予選を勝ち進んだのは事実だ。お前にはそれだけの実力がある、だからもっと自分の力の自信を持てよ」

「ヴリトラ・・・」

「それにラランもお前の仲間だろう?隊長のお前が仲間の力を信じなくてどうするんだ?」

「いや、私は別にラランの力を疑ってるわけでは・・・」


 自分が部下であるラランを信用していないと思われた事にラピュスは反応する。ヴリトラは困ったような顔で自分の方を見ているラピュス顔を見るとニッとしながらラピュスの頭をクシャクシャと撫でた。


「ほわっ!?な、何だいきなり!」

「信じてるならいいさ。ラピュス、これだけは覚えておけ?戦場で、いや、どんな時だろうと自分の仲間を信じろ。仲間を信じていれば例えどんなな状況であろうと、希望は見えて来るもんだ」

「な、仲間を・・・?」


 クシャクシャになった髪を直しながらヴリトラの方を向き、少しだけ不思議そうな顔で聞き返す。笑顔でありながら言っている内容はとても真面目な内容だったので少し意外に思ったのだろう。


「ああ。俺達七竜将も今までずっと仲間を信じて戦ってきた。お前達もこれから色んな戦いに足を踏み入れる事になる筈だ。仲間を信じる、それは戦場で絶対に忘れちゃいけない事・・・どわぁっ!?」


 ヴリトラが話をしていると突然車体が上下に揺れてヴリトラは前に倒れ、ジープの床に顔面をぶつける。ガタガタと揺れる車内で顔面をぶつけるヴリトラをポカーンと見つめているラピュス。そこへジャバウォックがバックミラーで後ろを確認しながら二人に声を掛けてきた。


「二人とも、ここから道がもっと凸凹になる。車体が揺れるから倒れない様に注意しろ?」

「いや・・・ヴリトラがもう倒れている・・・」

「あらら・・・」


 ラピュスの言葉にジャバウォックは前を向いて運転しながら呟く。ヴリトラは顔を床から離して赤くなった顔を擦りながら態勢を直して座席についた。


「・・・てててっ、揺れるって事はもっと早く言ってくれよぉ」

「ハハハ、スマンスマン。まぁ、出来るだけゆっくりと走るからそんなに揺れないと思うぜ?」

「うう~・・・信じてるぜ?」


 納得のいかないような表情でジャバウォックを見つめるヴリトラ。さっきまで仲間をどんな時でも信じろという話をしていたのに、目の前の光景を見たラピュスは汗を掻きながらまばたきをしていた。それからジャバウォックの言った通り凸凹の道が続き、ジープは上下に揺れながら真っ直ぐティムタームへも向かって行ったのだった。

 ティムタームについたのはスッカリ日が沈んだ時だった。橋を渡り、門を潜って町に入ると街道にはも灯りがつき、町の住民の数も数えるられる程しかいなかった。そんな街道をジープでゆっくりと走りながらズィーベン・ドラゴンへ向かっておくヴリトラ達。途中でラピュスを詰所に降ろして別れ、ヴリトラとジャバウォックはそのまま戻って行く。ズィーベン・ドラゴンの庭に着くとジープを脇に停めてズィーベ・ドラゴンの中へ入った。


「お~い、ただいまぁ~」

「あっ、おかえり」


 帰って来たヴリトラの声を聞いて奥からリンドブルムが姿を見せて手を振る。彼の手には木製のコップが握られており、奥のリビングからはいい香りが漂って来る。どうやら夕食の準備が進んでいるようだ。

 リンドブルムの後ろからはオロチも顔を出した。その姿は普段クールなオロチにはあまり似合わない私服の上にエプロンを付けているという姿だっが。だが、ヴリトラ達には見慣れた光景である。


「遅かったな・・・?」

「ああ、ゴメンゴメン」

「まぁいいじゃん、晩御飯には間に合ったんだし」


 笑いながらオロチを見上げるリンドブルム。その姿を見てオロチは無表情のまま頷く。そして手に持っている箸の先をヴリトラとジャバウォックに向ける。


「早く手を洗って来い。今日はシチューだ・・・」

「あいよ。それにしても、オロチって時々母親みたいな事言うよな?」

「ああ、この歳でそんな事言われるもの違和感がある・・・」


 洗面所の方へ歩きながら話しているヴリトラとジャバウォック。そんな二人の姿を見ていたリンドブルムは苦笑いを見せ、オロチは無表情のまま奥へ引っ込む。それからヴリトラ達は夕食をしながら予選がどの様な内容だったのかを話して明日行われる決勝トーナメントにどんな人物が勝ち残って来たのかを想像するのだった。

 そして次の日、遂に決勝トーナメントが行われる時がやって来た。決勝戦はティムタームの町にある大きな闘技場で行われるため、町の住民達や予選を敗退した参加者達がトーナメントを目にしようと闘技場へやって来ていた。ヴリトラ達も特殊スーツ姿で闘技場の前まで来ており、目の前に堂々と建っている闘技場を見上げていた。その闘技場はローマ時代のコロッセオの様な円形をしており、闘技場の周りには見物客や闘技場を見上げている子供達の姿もある。


「うわぁ~!大きいね」

「こんなデカい闘技場がこの町にあったなんて知らなかったぜ」


 闘技場を見上げて驚くファフニールとジャバウォック。ヴリトラ達もその大きさに驚きの表情を見せている。そんな時、七竜将の背後からラピュスの声が聞こえてきた。


「おーい!お前達ー!」

「ん?おおぉ、ラピュス」


 ヴリトラが声のする方を向き、リンドブルム達の同じように振り向くとラピュスがラランとアリサ、そして数人の騎士を連れて歩いて来る姿が見えた。


「よっ!よく眠れたか?」

「ああ、お陰様でな」

「ハハハ、そうか。ラランはどうだ?」

「・・・余裕」


 笑うヴリトラがラピュスの隣にいるラランに気分を尋ねるとラランはヴリトラの方を向き、いつも通りの無表情で静かに答える。


「アリサはラピュスとラランの応援か?」


 ヴリトラの後ろの立っているニーズヘッグは同行するアリサに尋ねるとアリサは笑って頷いた。


「ハイ!私は武術大会に参加しませんけど、隊長とラランを精一杯応援するつもりです。第三遊撃隊の皆と一緒に」


 アリサはそう言って自分の後ろに控えている騎士達を見た。彼等はラピュスが隊長を務めている第三遊撃隊の騎士達だったのだ。ニーズヘッグの隣で騎士達を見ていたジルニトラとファフニールが笑いながらアリサ達を見ている。


「あら?あたし達も負けないわよ?アンタ達に負けないくらい力一杯応援するつもりなんだからね?」

「うん!一生懸命応援し合いましょう!」


 お互いに自分の仲間達を応援する気持ちを見せ合う七竜将と第三遊撃隊。双方ともに相手に敬意を払い悔いのない様に戦い、応援する事を強く思っていた。

 ヴリトラ達が笑いながら話をしていると、闘技場の入口の方から大きな鐘の鳴る音が聞こえてきた。その音に反応して一同は一斉に入口の方を向く。ヴリトラは高く鳴り響く鐘を見て小首を傾げた。


「何だ、あの鐘?」

「あれはトーナメントの開始を知らせる鐘だ。そろそろ行った方がいいな」


 ヴリトラの隣で鐘の意味を説明するラピュス。大会参加者である五人は真面目な顔で鐘を見た後に周りにいる仲間達の方を向く。


「それじゃあ、俺たちゃ行ってくるよ?」

「しっかり客席で応援してよね?」

「怠けてたら承知しねぇぞ?」


 ヴリトラ、リンドブルム、ニーズヘッグはジャバウォック達の方を向いてニッと笑う。それを見てジャバウォック達も微笑みながら三人を見ている。


「分かってるって。お前等こそ、機械鎧兵士なんだから、弱い奴に負けたら承知死ねぇからな?」

「まっ、怪我しない程度に頑張んなさい」

「頑張れよ・・・」

「ファイトォ~~!」


 四人がそれぞれ三人に軽く挨拶をし、ヴリトラ達は「まかせろ」と言う様な顔を見せる。ヴリトラ達の隣ではラピュスとラランもアリサ達から応援されている姿があった。


「隊長、ララン、頑張ってくださいね!」

「ああ、行ってくる」

「・・・応援してよ?」

「当たり前だ、ラランこそ簡単に負けんなよ?」

「第三遊撃隊の凄さを皆に見せつけてやってくれ!」


 アリサや隊の男性騎士達からの声援にラピュスは微笑み、ラランは無表情のまま頷く。仲間達からの言葉を胸に刻んだヴリトラ達は最後に軽い挨拶をして闘技場の方へ歩いて行き、残ったジャバウォック達も客席の入口の方へと歩いて行った。

 ジャバウォック達と別れたヴリトラ達参加者は闘技場の中へと入って行き、通路の脇にある部屋の前までやって来た。目の前のドアにはファムステミリアの文字で「武術大会参加者 控室」と書かれた紙が貼られてある。それを見て部屋を確認したヴリトラ達はドアを開けて中へと入った。部屋の中には予選を勝ち残った参加者と思われる者達の姿があり、その中にはザーバットやクリスティアの姿もあった。


「ここが控室か・・・」

「なかなか面構えのいい連中がそろってるじゃねぇか」


 ヴリトラとニーズヘッグが控室を見回して勝ち残った猛者達を見回している。奥で話をしているザーバットとクリスティア以外にも当然の様に勝ち残ったと思われる白銀剣士隊の隊長、チャリバンスとジージル。部屋の隅で胡坐をかきながら床に座り目を閉じている槍の名手のロン・ゴーチャイス。長い木製の椅子に腰を掛けて本を黙って読んでいる青年傭兵、ジェームズ・ゾゾームン。壁にもたれながら短剣を見つめている美女、アネット・ラファキル。ニーズヘッグとラランが受付に行った時に見た三人の姿もあった。


「やっぱりあの三人の勝ち残って来たか。ラランの目に狂いはなかったな?」

「・・・うん」


 三人を見ながら話し合っているニーズヘッグとララン。ヴリトラ達が知っている七人以外にも部屋の隅や椅子に座って大会開催に時間を待っている者達もいた。ヴリトラ達が参加者達を見回していると、ザーバットとクリスティアがヴリトラ達の所へ歩いてきた。


「やあ!」

「勝ち残ってきましたか、脱落すると思ってましたけど」


 ヴリトラ達の前までやって来て笑いながら挨拶をするザーバットとそっぽ向きながら嫌味を言うクリスティア。クリスティアを見てヴリトラはニッと笑った。


「それはこっちの台詞だろう?お前の事だから初戦で敗退するのかと思ったぜ」

「・・・私も」


 ヴリトラに続いてラランも無表情で呟きクリスティアをからかう。


「し、失礼な!言ったでしょう?私は以前とは違い心身共に強くなったのです!」

「へぇ~、どうだかなぁ~」

「くぅ~~~っ!」


 ニヤニヤ笑いながらクリスティアは見ているヴリトラに対し、クリスティアは顔を赤くしてイライラし始める。三人の様子をラピュス達は苦笑いをしながら見ていた。


「それはそうと、君達も全員勝ち残れたみたいだね?」

「ハイ、今でも勝ち残れた事が信じられないくらいです」

「ハハハハ。だが、今こうやって決勝トーナメントに参加しているんだ。もう少し自分の力の自信を持った方がいいと思うよ?」

「アハハ・・・。ヴリトラにも同じことを言われました」


 エリオミスの町から帰る時にヴリトラに言われた事を思い出して苦笑いを見せるラピュス。するとそこへ、会話をぶち壊す様に話に割り込んで来る者がいた。


「まぐれで勝ち残ったのに随分と浮かれてるわねぇ?」


 声が聞こえてヴリトラ達が一斉に振り向くと、そこには見下すような笑みを浮かべるジージルと無愛想な表情を見せるチャリバンスの姿があった。


「予選は所詮小物の中で強い奴を選ぶ為だけの余興に過ぎない。そんな連中の中から勝ち残ったぐらいで調子に乗るなどみっともないぞ」

「・・・ッ!私は別に調子に乗ってなど・・・」


 チャリバンスに言い返そうとするラピュスであったが、彼女の前にザーバットの手が伸びて彼女を制止する。そしてザーバットはチャリバンスとジージルの前まで近づき真剣な表情を二人に向けた。


「・・・お言葉ですが、この武術大会に参加する者達は王国中の実力者が大勢参加しています。その中から決勝まで勝ち残ったとなればそれなりの優れた力の技術を備えているという事。であれば、力を高く評価するのは変ではないと思いますが?」


 ラピュスと違い冷静に言い返すザーバット。青銅戦士隊の騎士と白銀剣士隊の騎士達の言い争いを周りで待機していた他の参加者達もジロジロと見始めている。大会が始まる前に騒ぎが起きるのかと思い、めんどくさそうな顔をする者も少なくなかった。


「確かに大会に参加する者達の中にはそれなりの実力者もいるだろう。だが、賞金を目当てに参加する者達だって大勢いる。金欲しさに力も持たない者が強者の集まる聖地に足を踏み入れるという行為をする者は愚か者でしかない」

「・・・ッ!」


 チャリバンスの言葉にザーバットは反応する。自分も賞金を目当てのこの武術大会に参加した為、チャリバンスの言った事にカチンと来たのだろう。ザーバットとチャリバンスの周りにいるヴリトラ達もザーバットが家族を養う為に大会に参加した理由を知っているので、チャリバンスの言った事は聞き捨てならなかった。

 話を聞いていたラピュスも流石に我慢の限界が来たのか、チャリバンスを睨みつけて言い返そうとする。すると、奥に控えていた一人の騎士が立ち上がった。


「それはどうかと思うわよ?」

「何?部外者は黙ってて・・・ッ!?」


 振り返り話に割り込んできた騎士に言い返そうとするチャリバンス。だが、その騎士の姿を見た瞬間に表情が固まった。そこには黄金色の鎧を身の纏い、白いスカートを履いて白いマントを羽織った女騎士が立っていたのだ。歳は十代後半程の若さで、黒い長髪を揺らしながら自信に満ちた表情を見せている。

 黄金の鎧を目にしたラピュス達王国の騎士達は驚いて固まっている。周りの参加者達の中にも驚いている者が数人おり、ヴリトラ達はジッと鋭い目をしてその女騎士を見ていた。


「金色の鎧を着た騎士・・・て事は」

「黄金近衛隊の騎士だね?」


 女騎士の正体に気付くヴリトラとリンドブルム。その後ろではニーズヘッグが黙って女騎士を見つめている。そんな中で女騎士はチャリバンスの方へ歩いて行き、彼の白銀の鎧に指を付けてチャリバンスの顔を見た。


「確かに賞金目当てという目的で参加した連中は他の参加者達と比べたら理由が小さいかもしれないわよ?でもさぁ、そのお金を何に使うかっていう内容によっては賞金を目的に参加するっていうのも立派な理由になると思うけど、違う?」

「そ、それは・・・」

「私からしてみれば、ただ陛下に自分達を見てもらいたいなんて理由で参加する連中こそ、愚かでしかないと思うけどね?」


 王家直属の女騎士の言葉に何も言い返せないのか、チャリバンスはそっぽ向きながら舌打ちをして控室の奥へと歩いて行ってしまった。残ったジージルも「情けない」と言いたそうな表情でチャリバンスの背中を見ながら後をついて行く。残ったヴリトラ達はチャリバンスとジージルが立ち去るのを見た後に目の前の女騎士の方を向いた。


「・・・アンタ達も、あんな人を見下すような騎士にはなんないでよね?騎士と名だけじゃなくて、陛下のお顔をも汚す事になるんだから」


 ラピュス達にそう言って自分が元いた場所へ戻って行く。女騎士の背中を見ながら驚くラピュス達を見て、ヴリトラはそっとラピュスに近づき静かに声を掛ける。


「おい、ラピュス」

「あ、ああ・・・」


 小声で話し掛けてくるヴリトラに返事をするラピュス。その様子にはまだ少し動揺が見られた。ヴリトラは女騎士の方を見て話を続ける。


「驚いたな、まさか近衛隊の騎士まで参加してるなんて・・・」

「ああ、あの人は恐らく『ビビット・トルーメル』殿だ。トルーメル家の長女にして十代で黄金近衛隊の姫騎士となった天才だ。ラランと同じ突撃槍を使うと聞いている」


 ラピュスがビビットの事を話していると、ラランもラピュスの隣まで来て話に参加してきた。


「・・・それと、あの人は双子でもう一人、妹の『レレット・トルーメル』って言う人も同じ黄金近衛隊に所属してるって話」

「うへぇ~、姉妹揃って近衛隊の騎士かよ?」

「まさに天才姉妹だね・・・」


 ヴリトラと一緒に優れた才能を持つビビットとその妹の事を驚くリンドブルム。自分達が注目する人物以外にも強敵と思われる人物がいる事を知り、ヴリトラ達は緊張し始める。そこへ控室のドアが開き、一人のレヴァート兵が入室して来た。


「皆さん、これより武術大会トーナメントの開会式が行われます。闘技場の方へ移動してください」


 レヴァート兵の話を聞き、いよいよトーナメントが始まるとヴリトラ達は気合を入れ直す。座っていたり、壁にもたれていた他の参加者達も一斉に立ち、控室にいた全員が闘技場の方へ向かって歩き出した。

 ヴリトラ達と同じように予選を勝ち進んだ強者達。彼等はそれぞれの思いを胸に決勝トーナメントの会場である闘技場へ向かう。果たしてそこにはどんな戦いが待っているのだろうか?


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