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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第五章~強者が集う聖地~
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第六十七話  守る為の新たな力

 太陽の日が照らすティムタームの町。昼まで街道には町の住民達が歩いて楽しそうに会話をする姿、その周りでは町を見回っている遊撃隊の騎士の姿があった。その光景は町の平和を静かに物語っている。

 フォルモントの森の戦いから既に一週間が経っており、七竜将達も戦いが終ってから二日後に町の戻って来た。レヴァート領内に進軍して来ていたストラスタ軍は全て追い返し、戦況は再び睨み合いに戻る。それから七竜将と姫騎士達は戦いの結果とブラッド・レクイエム社との戦いをパティーラムやガバディアに報告する。話を聞いた二人は軍上層部の人間達にその事を話し今後の対策について改善をさせたのだった。


「・・・今日も静かだねぇ~」

「・・・だな。そう言えば、あの森の戦いから今日で丁度一週間だな」

「うん」


 ズィーベン・ドラゴンの庭で丸太を椅子代わりにしながら空を眺めて話をしている私服姿のヴリトラとリンドブルム。フォルモントの森の戦いから今日まで七竜将は町での簡単な依頼を受けていたが、大きな事件や仕事などは一つもない。そんな日々をヴリトラ達を静かに過ごしていたのだ。


「でもさぁ、一体どうしたんだろうね?」

「ん?・・・ストラスタ公国の事か?」

「うん、突然降参したんでしょう?」

「ああ、フォルモントの森の戦いが終って俺達が町に戻った次の日に突然降参するっていう手紙が城に届いたんだもんな」


 ストラスタ公国が降参した、二人は不思議そうな顔でそう話す。

 実は今回の戦争はストラスタ軍の投降により既に終戦しているのだ。ヴリトラ達がティムタームの町に戻った日の翌日、王宮にストラスタ公国から親書が届いたのだ。その内容はこの戦いを終わらせたく一度会談を行いたいというもの。最初は罠だと思っていた王宮の者達もレヴァート領内で会談を行うという条件で承諾し、四日前に会談が行われた。その会談でストラスタ公国の大公がフォルモントの森から戻った魔獣使ビーストテイマーい、つまりガズンからブラッド・レクイエム社の話を聞き、今自分達の置かれている立場が危険だと知り、戦争している状況ではないと判断。レヴァート王国に投降を申し出たという訳だった。


「ガズンさんがブラッド・レクイエムの事を騎士団の人達に話したんだろうね」

「だろうな」


 二人は小さく笑いながらガズンの頑張りを称える。するとリンドブルムは不思議そうな顔で空を見上げながら呟いた。


「でも、よくストラスタ公国の人達はガズンさんの話を信じたよねぇ」

「ん?」

「だってさぁ、見た事のない武器を持って見た事のない姿をした連中が襲ってきたから戦いを止めろ、てガズンさんはそんな感じで言ったんだと思う?そんなんで軍のお偉いさん達が信じるとも思えないよ」


 リンドブルムの言っている事ももっともだ、突然傭兵が王国の騎士団に道の敵の事を話してもそれで騎士団の者達や上層部の人間が信じる筈がない。それなのにストラスタ軍はレヴァート王国に投降して戦争は終わった、リンドブルムはどうしてそう簡単に話がまとまったのか分からないでいた。難しい顔をして考え込むリンドブルムを見ていたヴリトラは丸太に座ったまま足を組んでリンドブルムと同じ様の空を見上げる。


「確かガズンのおっさんは元は騎士団だったって言ってたぜ。きっと昔の仲間だった騎士にその事を話して上層部に話してもらったんだろう」

「それでもこんな簡単に終戦するなんて、しかも宣戦布告をしたストラスタ軍が降参するって形だよ?何だが裏がありそうで気になるんだよ」

「まぁ、確かにな。でも、ストラスタ公国との戦争も終わって平和になったんだ。今はそれでいいじゃねぇか?何か起こったらその時に考えればいい、とりあえず今はゆっくりとくつろぐのが一番さ」

「・・・ハァ、ヴリトラって戦場だと相手の動きを一手二手先と読んでるのにどうして戦場にいない時はそんなに簡単でテキトーな考え方なんだろう・・・」


 戦場にいる時といない時とで考え方の違うヴリトラを見て小さく溜め息をつくリンドブルム。そんなリンドブルムを見てヴリトラはニヤニヤと笑っていた。その表情には戦場で的確な指示を出す隊長としての面影は殆ど見られない。

 二人が会話をしているとズィーベン・ドラゴンの中からニーズヘッグが出て来た。彼も服装は戦闘時の特殊スーツから長袖、長ズボンという一般的な格好をしており、その手には刷毛と大きな缶が握られていた。


「あれ?どうしたの?」


 リンドブルムがニーズヘッグの方を向いて尋ねると立ち止まったニーズヘッグが持っている缶を見せるその缶には英語で「White」と書かれてあった。


「ペンキ塗りだよ」

「ペンキ?何を塗るんだよ?て言うか、ペンキなんてあったんだな・・・」


 ヴリトラはファムステミリアの来る前にバンに積まれていた荷物にペンキがあった事を知ってジト目になる。ニーズヘッグは刷毛を持った方の手で指を指す。ヴリトラとリンドブルムはニーズヘッグが指を指す方を見ると庭の隅に水色のビニールカバーが被せてある大きな物を見つける。ニーズヘッグが近づいてビニールカバーを捲ると、そこには黒いジープが停めてあった。フォルモントの森でブラッド・レクイエム社が使っていたやつを持ち帰った物だ。


「ジープ?」

「ああ、フォルモントの森で戦ったブラッド・レクイエム社の連中が使ってたやつさ。戦利品や奴等が持っていた荷物なんかを持ち帰るのに使った」

「ああぁ~、あのジープか」


 ニーズヘッグの説明を聞いて納得するヴリトラ。隣に座っていたリンドブルムは立ち上がったジープに近づきそっと車体を撫でる。


「このジープをそのペンキで塗るの?」

「そうだ、いつまでもブラッド・レクイエムの連中と同じ色にしておくとマズイだろう?それに俺自身も嫌だしな」

「それもそうだね。ところで、あの後他のジープはどうしたの?」

「持って来てたC4を使って爆破しておいた。敵にまた使われたり、この世界の人間達に見つかると色々面倒な事になるしな」


 ヴリトラと違い戦場でなくても常に先を考えて行動しているニーズヘッグ。そんな彼を見てリンドブルムはうんうんと頷き、ヴリトラは頷くリンドブルムを見てどこか納得いかないような表情を見せている。

 ジープの前までやって来たニーズヘッグは持っている白のペンキの缶を置いて蓋を開けるとズボンのポケットに入っていたタオルを取り出して頭に巻いた。


「毎度毎度、荷物を積んでいるバンで動くのも便利だが、バンは俺達の移動用と荷物の輸送用の車だ。戦場で走り回るのにはむかない、ジープみたいな馬力のある車を使えるようにしておいた方がいいからな。今のうちに車体の色を塗り替えておこうって思ったんだよ」

「何だか面白そう。僕もやっていい?」

「それなら俺も手伝うよ」


 ペンキ塗りに参加したいと言い出すリンドブルムと丸太に座っていたヴリトラも興味が湧いたのか手伝うと言い出し立ち上がった。二人の姿を見てチラッとジープを見た後に刷毛を指で動かしながらニーズヘッグは口を開く。


「確かに一人でやるよりも三人でやった方が早く終わるな。・・・じゃあ頼む」

「OK!」

「うん!」

「じゃあ、とりあえず汚れてもいい服に着替えてこいよ。ペンキまみれになるのは間違いねぇんだからな」


 ニーズヘッグはズィーベン・ドラゴンの方を親指で指しながら二人に着替えてくるように話す。ヴリトラとリンドブルムは着替える為にズィーベン・ドラゴンの中へ入っていき、それから数分後、二人は着替えて戻って来た。


「着替え終わったか?それと刷毛も忘れず・・・」


 ジープに方から戻って来た二人の方に振り向くニーズヘッグは喋っている最中に言葉を止めた。目の前に長ズボンと胸にNと書かれて白いTシャツを着たヴリトラとその隣で同じようにNと書かれた赤いTシャツを着たリンドブルムの姿があった。ただ、リンドブルムはTシャツのサイズが大きく、膝の少し上まで裾がきていた。


「着替えてきたぜ?」

「じゃあ、始めようか」

「ちょっと待てぇ!それ、俺のTシャツじゃねぇか!」


 ニーズヘッグは二人の着ているTシャツを指差してツッコミを入れる。二人の着ているTシャツのNの文字はNidhoggニーズヘッグの頭文字を取ったもの、つまりニーズヘッグの服という印なのだ。


「汚れてもいい服にしろって言っただろう!」

「俺達にとっちゃあ汚れてもいい服だから」

「うんうん」

「俺が嫌なんだよ!」


 本気なのかそうでないのか、無表情でニーズヘッグの方の顔を見つめるヴリトラとリンドブルムにニーズヘッグは歯をむき出しにして怒る。


「早く着替えてこい!言っておくが次俺の服を着てきたらど突くからな!」

「「ハイハイ」」


 怒るニーズヘッグに簡単な返事をしながら戻って行くヴリトラとリンドブルム。そんな二人の背中を見ながらニーズヘッグは疲れた様な表情で溜め息をつく。

 しばらくして自分の汚れてもいいTシャツに着替えて来たヴリトラとリンドブルムはニーズヘッグと一緒に黒いジープに白いペンキを塗っていき色を塗り替えていく。


「おい、そっちは出来るだけ細かく塗ってくれよ?」

「わぁ~ってるって」


 ジープのドアの部分を小さな刷毛で塗りながらニーズヘッグに返事をするヴリトラ。既に顔には白いペンキが付いており、青いTシャツにも白いペンキが付着していた。リンドブルムもボンネットの上を丁寧に塗っていき、手や頬をペンキ塗れにしていた。

 それから数十分をかけてようやく全てを塗り終えた白くなったジープを見て満足そうな表情を見せる。既に三人は全身にペンキを付けて真っ白になっている。そんな時、三人の背後から声が聞こえてきた。


「どうしたんだ、その格好は?」


 聞こえてきた声に反応して振り返る三人。そこには三人の姿を見て「何をやっているんだ?」と言いたそうな顔をしているラピュスの姿があり、その後ろにはララン、そして男性騎士と女性騎士がそれぞれ二人ずつ同じような顔をして立っていた。


「おおぉ、ラピュス」

「一体どうしたんだ?全身真っ白だぞ?」

「ああ、ついさっきまでペンキ塗りしててな」

「ペンキヌリ?」


 ヴリトラの話を聞いて難しそうな顔で小首を傾げるラピュス。三人の後ろを覗き込んで真っ白に塗り替えられたジープを見て今度は不思議そうな顔を見せた。


「おい、その後ろにある自動車はこの前フォルモントの森から持ち帰ったやつか?」

「ああ、ブラッド・レクイエムのジープだからな。黒いままじゃ何かと都合が悪いんだよ」

「それでペンキで白く塗ったんだよ」


 ジープの方を向いて小さく笑いながら説明するヴリトラとニーズヘッグ。バン以外の自動車を見るのが初めてな騎士達はジープに近寄ってマジマジとジープを見物する。ラランもフォルモントの森で見た事があるとはいえ、やはり興味があるのか騎士達と一緒にジープの周りを回って見ていた。


「あっ、触っちゃダメだよ?まだペンキが乾いてないから」

「・・・え?」


 リンドブルムに忠告されてふと顔を向けるララン。だがその拍子にラランの手がジープのドアに触れてしまう。それに気づいたラランは慌てて手を離し自分の手の平を見ると真っ白になっており、ドアにはラランの手形がクッキリと残っていた。


「・・・あ」

「あちゃ~、やっちゃったぁ」


 間に合わなかった事に「まいったなぁ」と言いたそうに苦笑いをするリンドブルム。ヴリトラも同じように苦笑いをし、ニーズヘッグはやれやれと顔を左右に振る。


「早く手を洗ってきた方がいいぞ?油性だから乾いたらなかなか落ちなくなるからな」

「・・・ユセイ?」

「いいから早く洗って来い」


 ニーズヘッグは水道のある方を指差して手を洗って来るように話す。ラランも言葉に意味が理解出来ずにいたが言われたとおりに水道の方へ走って行き手を洗いに向かった。

 ラランが手を洗いに行った後にリンドブルムはもう一度刷毛を手に取り手形の付いたところを塗り直す。その光景を見ているヴリトラとニーズヘッグの後ろでラピュスがまばたきをしながらラランが走って行った方を見ている。


「ところでラピュス、今日はどうしたんだよ?」


 ヴリトラが後ろにいるラピュスの方を向いて彼女がやって来た理由を尋ねると、ラピュスは溜め息をついて呆れる様な顔をする。


「・・・あのなぁ、お前が昨日数人の騎士を連れて来てくれって言ったんだぞ?」

「あっ、そうだった・・・」


 自分が言った事を思い出して手をポンと叩くヴリトラ。隣で立っているニーズヘッグとジープを塗り直しているリンドブルムがヴリトラの方を向きジト目をする。


「それで?私達を呼んだ理由は何なんだ?」


 腕を組み、リンドブルムやニーズヘッグと同じようにジト目でヴリトラを見つめながら尋ねるラピュス。


「ああ、実はお前の部隊の騎士達に俺達の使う武器の一部を渡しておこうと思ってな」

「お前達の世界の武器をか?」


 ヴリトラの予想外の言葉を聞いてラピュス、リンドブルム、ニーズヘッグの三人は意外そうな顔で驚いている。ジープを囲んでいた騎士達もヴリトラの方を向いて何の話をしているのか気になる様な顔をしていた。


「ほら、ゴルバンの町やフォルモントの森でブラッド・レクイエムの機械鎧兵士を倒しただろう?その時に倒した奴等が使っていた武器なんかを戦利品として回収したんだけど、使わずに置いておくのもなんだし、お前達に渡しておいた方がいいと思ったんだよ」

「だが何で私達なんだ?」

「お前達は俺達七竜将が別世界の人間だって事を知ってるし、俺達と深く関わってきただろう?・・・もしかすると、ブラッド・レクイエムの連中に目を付けられる可能性だってある。自分の身を守れるよう、奴等の使っている武器と同じような武器を持ち歩いた方がいい」

「・・・奴等から身を守る術を身につけておいた方がいいという事か?」

「そういう事」


 ヴリトラが真面目な顔で話をしている姿を見てラピュスも同じように真面目な顔で話す。リンドブルムとニーズヘッグもヴリトラとラピュスの会話を聞きながら真面目な顔になる。そこへ手を洗って来たラランが戻り、ヴリトラ達の姿を見て何か真剣な話をしていると察して目を鋭くする。


「・・・少々面倒な事になってしまったな」

「お前達を巻き込む様な形になっちまったからな、身を守る方法を教える事が今の俺達に出来るせめてものお詫びだ」


 頭を掻きながら申し訳なさそうな顔をするヴリトラ。第三遊撃隊の騎士達はともかく、ラピュスやラランは既にブラッド・レクイエム社に顔がバレて目を付けられている可能性が高い。彼女達を危険な立場にしてしまった自分に何か出来る事がないかと考えたヴリトラは銃器などの武器の使い方を教える事にしたのだ。

 ヴリトラの顔を見ていたラピュスはフッと小さく笑って組んでいた腕を下に降ろした。


「お前らしくないぞ、ヴリトラ?いつものお前なら『何とかなる!』と気楽そうな顔で言ってるだろう?そんな顔をするなどお前には似合わない」

「・・・それに私達は貴方達と一緒に何度も戦ってる。今更関係ないなんて言う気はない」


 ラピュスに続いてラランも会話に参加して無表情のままそう言った。それに気づいて一斉に彼女の方を向くヴリトラ達。そして今度はリンドブルムとニーズヘッグは笑いながらヴリトラの方を向いて話しかける。


「確かにそうだね。僕達は何度も一緒にララン達と戦って来たし、彼女達も自分から戦う事を決意したんだもん」

「逆に関係ないから手を引けなんといえば逆にコイツ等の意志を否定した事になるから、かえって失礼だな」

「そういう事だ。だから私達は、少なくとも私とラランは最後までお前達について行くつもりだ。フォルモントの森の戦いでも言っただろう?」


 二人に続いてラピュスがヴリトラの顔を指差して真面目な顔で話す。四人の顔を見ていたヴリトラはしばらく黙っていたが、直ぐに目を閉じて笑い出した。


「・・・ハハハ、まいったなぁ。こんな事じゃあ俺も七竜将の隊長としてまだまだ未熟だって事かぁ」

「プフッ、確かに未熟かも♪」

「・・・うん」

「ムカつくなぁ、コイツ等・・・」


 吹きながら笑うリンドブルムとそれに無表情のまま同意するラランを見て頭に血管を浮かべながらカチンと来るヴリトラ。ラランとニーズヘッグも二人と同じ気持ちなのか小さく笑ってヴリトラの方を見ていた。

 話が終わると、ヴリトラ達は自分達の世界の武器の使い方を第三遊撃隊の騎士達に教える為にズィーベン・ドラゴンの中へ戻り、中から大きな木箱を持って庭に戻って来た。木箱を地面に置きラピュス達が木箱の中を覗き込むと、中には沢山のMP7、拳銃の「ベレッタ 90-Two」、超振動マチェットなどのブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士が装備していた武器が入っており、騎士達は見た事のない武器を興味津々で見つめながら手に取る。その光景を見てラピュスはヴリトラの隣にやって来る。


「今日はあの四人しか連れて来ていないが、来ていない騎士達にも当然渡すんだろう?」

「ああ。だけど全員で此処に来られちゃあ、狭くて仕方がない。だからと言って、騎士団の詰所に武器を持っていくのも色んな意味で面倒になる・・・」

「じゃあ、どうするんだ?」

「そうだなぁ・・・」


 今後、何処で武器を渡し、その使い方を教えようか考えるヴリトラ。そんな時、ズィーベン・ドラゴンの庭の入口の方から声が聞こえてきた。


「お~い!ヴリトラ~、皆~!」


 聞こえてきた声に反応して入口の方を向くヴリトラとラピュス、リンドブルムにラランとニーズヘッグ、そして武器を見ていた騎士達も声に気付いて振り向いた。そして入口の方からジルニトラが走って来る姿とその後ろを歩いてくるオロチの姿があった。二人は買い物に行って帰って来たところだったのだ。


「ジル、オロチ、おかえり」

「ただいま。あら、ラピュスとラランも来てたのね?」


 帰って来た二人を見て手を振るリンドブルム。ジルニトラはヴリトラ達のところまでやって来ると、訪ねていたラピュスとラランに軽く挨拶をした。


「買い物、お疲れさん」

「いや、買い物どころじゃないわよ?コレ見て」


 ジルニトラは買ってきた物が入っている紙袋の中から一枚のチラシの様な物を取り出してヴリトラ達に見せた。チラシを受け取ったヴリトラはそれを見つめ、リンドブルム達も覗き込む。既にヴリトラ達七竜将はファムステミリアの文字をある程度読めるようになっていたのでチラシに何が書いてあるのかが分かる。


「なになに、『強き力を持つ者達よ集え!レヴァート王国武術大会開幕!』だって?」

「そうそう、さっき市場で買い物してた時に配られてたのよ」

「何でも一週間後にこのティムタームの町にある大闘技場で武術大会が行われるようだ・・・」


 ジルニトラの後ろで詳しい内容を話すオロチ。ヴリトラは「ほぉ~」という様な顔で頷きながらチラシを見ている。


「ああぁ、この大会か。確か団長がストラスタ公国との戦争でしばらく重い空気が流れていたから、何か明るい話題を作る為に王宮が開催すると言っていたな」


 ラピュスがチラシを見ながらガバディアから聞いた事を思い出してヴリトラ達に話す。それを聞いたジルニトラやリンドブルムがラピュスの方を向いて数回頷きながら納得する。


「何でもレヴァート王国中の猛者達が集まるようにすると言っていたな・・・」

「・・・へぇ」


 ラピュスの話を聞いてヴリトラが何処か楽しそうな顔を見せ、リンドブルムやニーズヘッグ興味のありそうな顔を見せて小さく笑った。

 ストラスタ公国との戦争も終わり、しばらく平和が続いていたレヴァート王国に武術大会の開催が広がる。それを聞いたヴリトラをはじめとする七竜将に何やら意味深な笑みが浮かぶのだった。


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