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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第四章~祖国の為に刃を向ける~
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第六十四話  ブラッド・レクイエム製機械鎧

 ブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士を半分以上撃破したヴリトラ達。一度合流して今後の事を話し合おうと通信を入れた矢先、リンドブルムのチームの前にエントが現れる。そしてリンドブルム達の救援に向かおうとしたヴリトラ達の前にもBL兵達が立ち塞がった。遂にフォルモントの森での戦いも終わりを迎えようとしていた。

 エントの隙を突いてAS12を破壊する事に成功したリンドブルムはダークゴモラをエントに向ける。だが、エントは焦る様子も見せずに目の前で銃を構えている小さな少年兵を見下ろしていた。


「・・・潔く投降する気はありませんか?」


 ダークゴモラを向けながらリンドブルムはエントに投降する事を勧める。だが、ブラッド・レクイエム社の幹部、それも機械鎧兵士が銃を突き付けられたくらいで投降する筈もない。エントはリンドブルムを見て鼻で笑った。


「フッ、ブラッド・レクイエムの幹部をナメてもらっては困るな」


 そう言ったエントの右腕の内側前腕部から鎌の様な形の刃が飛び出し、そのまま勢いよくその刃で切り掛かってきた。リンドブルムは咄嗟に後ろに跳んで刃を回避すると後ろに跳びながらダークゴモラを撃ち反撃する態勢に入る。それを見たエントは素早く左腕を顔の前まで持ってきて後前腕部をリンドブルムに向けた。すると機械鎧の装甲が開き、後前腕部からひし形の水晶の様な物が現れ、その直後にリンドブルムは引き金を引いてダークゴモラを撃つ。弾丸は真っ直ぐエントの左腕に向かって飛んで行き命中すると思われたが、ひし形の水晶が水色に光りだし、弾丸は当たる直前に軌道を変えて逸れていった。


「えぇ!?」


 目の前で弾丸が逸れたのを見て驚くリンドブルム。その反応にエントはニッと笑いながら左腕を下した。足が地面に付くとリンドブルムはホルスターに収めていたライトソドムも抜いて二丁の愛銃をエントに向ける。


「何ですか、今のは?」

「フフフ、弾が逸れた事に相当驚いているようだな?」

「やっぱり貴方の仕業なんですね?」

「ああ、コイツのおかげでな」


 エントはそう言いながら下ろした左腕をもう一度上げて後前腕部に付いているひし形の水晶を見せる。するとまた水晶は水色に光り出した。それと同時に後前腕部の前に半透明なひし形の水色の光の板の様な物が薄らと現れたのだ。それはまるで左腕が光の盾を付けた様にも見える。

 突然現れた光の盾を目にしてリンドブルムは更なる衝撃を受けて目を丸くした。


「光の、盾?」

「『電磁壁収縮発生装置』、俺達は単純に『電磁シールド』と呼んでるけどな」

「電磁シールド?」

「最近、アメリカ軍が完成させたという防衛装置だ。強力な電磁波を発生させ、それを収縮させて電磁波の壁を作りだし弾丸の軌道を逸らす事が出来る代物だ。更に剣や刀、飛んで来る石なんかも防ぐ事が出来る」


 自慢げに話すエントを見ながら愛銃を構えるリンドブルム。だがそんな時、リンドブルムはある違和感を感じた。


「ちょっと待ってください。貴方さっきこう言いましたよね?『最近、アメリカ軍が完成させた』、て?」

「ああ、確かにそう言ったが?」

「最近って、何時頃ですか?」

「・・・なぜそんな質問をする?と言うよりも、敵の質問にホイホイと答える奴がいると思うか?」


 連続で質問をしてくるリンドブルムをジッと見ながら言うエント。リンドブルムも敵がそんな簡単に質問に答えてくれるとは思っていないが、訊きたくて仕方がなかったのだ。

 ブラッド・レクイエム社が元の世界で消息を絶った、つまりこの異世界ファムステミリアに来たのは一年前、なのに最近開発されたと言う電磁シールドを彼等が所有しているのは変だと思ったからだ。ヴリトラ達は半年前まで世界中で開発された新兵器を知っている。だが彼等が電磁シールドの事を知らないのなら、開発されたのは少なくとも半年前になる。そんなヴリトラ達が知らない兵器の存在を一年前にファムステミリアに来たブラッド・レクイエム社が知っているのは不自然だ。リンドブルムはエントをジッと見つめ、真面目な表情を向けた。


「確かに、答えるとは思えません・・・・・・それなら、貴方を捕まえて訊き出すまでです!」

「やってみろ、出来るのならな?」


 リンドブルムを挑発するエントは地を蹴り、リンドブルムに向かって走り出す。リンドブルムもエントに向かってライトソドムとダークゴモラを連射して応戦する。だが、全ての弾丸はエントの起動させている電磁シールドによって軌道を逸らされて一発も当らなかった。リンドブルムの目の前まで近づいたエントは右腕を横に振り、刃で襲い掛かる。リンドブルムは姿勢を低くして刃をかわし、がら空きになっている腹部を銃で狙い撃とうとした。だがそこへエントの右膝が迫り、リンドブルムの脇腹に命中した。


「ぐうぅ!」


 脇腹に伝わる痛みに声を漏らすリンドブルムはそのまま後ろに飛ばされた。地面に叩きつけられて仰向けに倒れるリンドブルムにエントが一歩一歩近づいて来る。それに気づいたリンドブルムは体を起こしてライトソドムで攻撃するも、やはり全て電磁シールドによって防がれてしまう。


「何度やっても同じだ、俺に銃の類は通用しない」

「クッ!」


 自分の使い慣れている拳銃が通用しないという現実を突き付けられたリンドブルムは悔しそうに歯を食いしばる。エントは笑いながら歩いて右腕から飛び出している刃を光らせリンドブルムに迫って行く。リンドブルムも今回は流石に危機感を感じたのか、額から少量の汗を垂らした。そんな時、突然エントの背後からギガントパレードを振りかぶりながら跳んで来るファフニールが現れた。


「・・・ッ!しまった」

「ヤァーーーッ!」


 気配に気づいたエントが振り返り回避行動に移ろうとするも、既に目の前まで近づいて来ているファフニールは勢いよくギガントパレードを振り下ろした。エントは左腕をファフニールの方に向けて電磁シールドでファフニールのハンマー攻撃を防ごうとする。ギガントパレードと電磁シールドがぶつかり周囲に電気が流れる様なバチバチとした音と衝撃が広がる。ファフニールとエントはお互いに力を入れて相手を押し戻すうとしていた。だが徐々にエントが押されていき、流石に危険だと感じたエントは大きく後ろに跳んだ。対象を失ったギガントパレードはそのまま地面に振り下ろされて轟音を森に響かせる。


「ううぅ!もう少しだったのに!」


 攻撃をかわされて悔しがるファフニールは跳んで行ったエントの姿をジッと睨んでいる。


「・・・ホント、もう少しだったよ・・・」

「え?」


 前から聞こえてくるリンドブルムの声にファフニールは視線を前に向ける。ギガントパレードが地面を叩いた事により舞い上がる砂煙の中でリンドブルムは顔を青くしながら大量の汗を掻いている。彼の視線の先には大きく足を横に広げている自分の下半身があり、股の間ではギガントパレードの頭が地面に埋もれていた。どうやらエントが攻撃を回避して行き場を失ったギガントパレードがそのままエントの後ろにあったリンドブルムの両足目掛けて落ちて来たのだろう。そしてリンドブルムは咄嗟に足を広げてそれをギリギリでかわしたという事らしい。

 まばたきをしてリンドブルムの下半身とギガントパレードを見たファフニールは現状を理解し、リンドブルムの方を向いて苦笑いをする。


「ア、アハハハ・・・」

「アハハハ、じゃないよ。もう少しで僕の足がペチャンコになるところだったよ!」

「ゴメンゴメン・・・」


 汗を掻きながら怒るリンドブルムを見て苦笑いのまま謝るファフニール。二人がそんなやり取りをしていると、二人の側面からエントが飛び出して来た。


「「!」」

「お喋りとは随分余裕なんだな?」


 二人を見つめて右腕の刃を光らせるエント。ファフニールがギガントパレードを構えて迎撃の体勢に入り、リンドブルムも態勢を直してライトソドムとダークゴモラを構える。だが今度はエントの左側から大きな影が飛び出して来た。それは鋭く爪を光らせるドレッドキャットだった。突然飛び出して来たドレッドキャットに反応してエントは電磁シールドを張ろうとするも、間に合わずにドレッドキャットの鋭い爪がエントの機械鎧に当たり高い金属音を鳴らした。


「この化け猫がっ!」


 左腕の爪を払い、また大きく後ろに跳んでリンドブルム達から距離を作るエント。ドレッドキャットはリンドブルムとファフニールの近くに立ち、離れているエントを睨みながら唸っている。そして木の陰からガズンともう一匹のドレッドキャットが姿を現してリンドブルム達の近くに寄って来た。


「よぉ、平気か?」

「ガズンさん」


 ガズンの顔を見て笑みを浮かべるリンドブルム。ファフニールは自分の横にいるドレッドキャットに姿勢を低くして近づき頭を撫でた。


「ありがとうございます、助かりました」

「いんや、礼なら俺じゃなくてミルバに言ってくれ」


 ガズンはファフニールが撫でているドレッドキャット、ミルバを見ながらニヤリと笑う。リンドブルムはミルバの方を見て微笑み、ファフニールは顔を近づけて笑顔を見せていた。


「ありがとうミルバちゃん」


 笑いながらミルバの頭を撫で続けるファフニール。そんな彼女を見てガズンはちゃん付けの事でツッコムの気が無くなったのか苦笑いでファフニールとミルバを見ていた。


「敵を目の前にして随分と和やかの空気を作るじゃねぇか?それだけ余裕なのか、それとも俺をナメてるのか?」


 楽しそうな空気をぶち壊すかの様にエントが三人に向かって声を掛けてくる。三人も笑顔から真剣な表情へと変わり遠くにいるエントを見つめた。リンドブルム達とエントの間の距離は約50m程でどちらが動いても直ぐに攻撃を仕掛けられる距離だ、その為どちらも迂闊に動けないでいる。しかしエントには電磁シールドと言う防衛兵器がある為、リンドブルム達が先に攻撃を仕掛けて来てもある程度の攻撃なら防げる為、若干有利だった。

 その事を知っているリンドブルムとエントの機械鎧の性能を見ていたファフニールとガズンは動かずにエントを見て動くのを待っている。


「どうすんだ?アイツの左手、何か光で出来た盾の様なモンがあるけどよぉ、お前達の使う銃とかそのデカいハンマーで壊せねぇのか?」


 既に機械鎧や機械鎧兵士を何度も見てきたガズンはラピュス達の様にスッカリ慣れてしまい普通にリンドブルムとファフニールに尋ねた。


「あの人の使う電磁シールドはとても強力です、何しろファフニールのギガントパレードまで止めてしまったんですからね」

「私もまさかあんな重い攻撃を止めちゃうなんて思わなかった・・・。機械鎧の性能のおかげだって分かっててもビックリ・・・」

「おまけにあの電磁シールドの事は僕達は何も知りません。ですから弱点も分からないし、作戦の練り様がないんです」

「何ぃ?じゃあどうするんだよ?」

「・・・・・・」


 リンドブルムは頭の中で必死にどう攻撃するかを考える。自分の銃を通用せず、ギガントパレードも止める程の出力を持つ電磁シールド。そしてどうやってあのシールドを突破しエント自身に攻撃を加えるのかを頭の中で整理しながら作戦を立てる。


(あの電磁シールドも面倒だけど、あの左肩から見える大砲の様な物も気になる・・・)


 リンドブルムは心の中でエントの左肩甲骨部分に取り付けられて上を向いている大砲の事も気に掛けていた。エントが機械鎧の内蔵兵器を使ってから、彼は肩の大砲の様な兵器は一度も使っていない。間違いなくあの大砲も機械鎧と連動している特殊な兵器だ、リンドブルムはそう直感していた。

 エントは自分を見て一歩も動けず、ただ武器を構えているだけのリンドブルム達を見て更に余裕の表情を見せる。そして自分の左肩甲骨部分に装着されている大砲をチラッと見るともう一度リンドブルム達の方を向く。


(ほぉ?・・・あの小僧、俺の大砲の事が気になっているようだな。電磁シールドの力を目にしてコイツにだけ意識がいき他の兵器には注意が回ってないと思っていたが、意外と冷静な野郎だ・・・)


 冷静さを失わずに電磁シールド以外も警戒しているリンドブルムをエントは少し見直す。幼くして七竜将の一員であるリンドブルムの大人顔負けの洞察力と技術にエントは興味を抱いた。そして大砲に注意を向けているリンドブルムを見てエントは構えている両腕を下ろし、リンドブルムを見つめながら口を開く。


「俺の電磁シールドだけでなくこの大砲の事もしっかりと警戒しているようだな、小僧?」

「!」


 自分が大砲の事を気にしている事を見抜かれて一瞬驚くリンドブルム。彼と隣と後ろでもファフニールとガズンがエントに警戒心を向けている。


「・・・そんなにこの大砲の事が気になるのなら、特別に見せてやるぜ?・・・コイツの威力をなぁ!」


 力の入った声でそう言い放つエント。その直後に左肩甲骨部分の大砲がゆっくりと前に倒れて砲口をリンドブルム達の方に向ける。砲身の斜め上に付いている小さな筒状の機械からは赤く光る細長いレーザーが出て、赤い点がリンドブルムの額からゆっくりと腹部まで降りていく。その点を目で追っていたリンドブルムはハッと何かに気付いてエントの方を向く。


「レーザーサイト!?」


 そう、砲身の装置から出ていた赤いレーザーは銃器などで狙いをつける為に使う照射装置だったのだ。リンドブルムの言葉を聞き、ファフニールは驚きの顔を浮かべ、ガズンは理解できない様な顔を見せた。


「皆、避けて!!」


 直ぐに危険だと判断したリンドブルムはファフニールとガズンに回避行動に移るよう叫ぶ。だが既にエントは大砲の発射準備を終えていつでも発射できる状態だった。


「遅い!」


 エントのその言葉を合図に、大砲から砲弾が発射される。砲弾はリンドブルム達に向かって真っ直ぐもの凄い速さで飛んで行き、それを見たリンドブルム達は目を見張る。回避行動に移るのが遅れてしまった三人に砲弾は容赦無く迫って行く。砲弾を見てリンドブルムは咄嗟にライトソドムで砲弾を撃った。そして弾丸が砲弾に当たった瞬間、砲弾はリンドブルム達の10m程前で大爆発を起こした。


「「「うわああああああっ!!」」」


 砲弾の爆発によって起きた爆風と爆炎が三人に襲い掛かり、彼等を吹き飛ばす。勿論三人の後ろにいたガルバとミルバも同じ様に吹き飛ばされてしまった。爆音は静かなフォルモントの森全体に広がっていく。

 爆発が起きたのと同時刻、BL兵達の相手をしていたヴリトラ達も爆音に気付いてふと上を向く。


「何だ、今の爆音は!?」

「何処かで何かが爆発したのか!?」


 聞こえてきた爆音にヴリトラとジャバウォックは驚き周囲を見回す。ララン達も武器を手にして驚きながら周りを見ている。ヴリトラ達の近くでは彼等に襲い掛かって来たBL兵四人が倒れたり岩にもたれ掛るなどして動かなくなっており、既に戦いは終わっているよ。


「・・・あまり苦戦しなかった」

「それはそうよ?七竜将の皆さんは強いもの」


 倒れているBL兵達を見ながら呟くラランに七竜将の強さをアピールするアリサ。二人の近くではオロチが斬月を肩に担ぎながら立っており、彼女は静かに目を閉じて口を開く。


「五人以上の部隊でも私達を止められないのに立った四人で足止めをしようとは、私達も軽く見られたものだ・・・」

「確かに、いくら機械鎧の内蔵兵器をフルに使ったとしても、無謀と言えるな」


 オロチに同意してジャバウォックがデュランダルを背負いながら言った。そこへヴリトラがジャバウォック達の方に振り返り、真剣な表情を彼等に向ける。


「そんな事より、さっきの爆音、きっとエントが何かをしたに違いない!リンドブルム達の事が心配だ、急いで救援に向かうぞ!」


 ヴリトラの話を聞いてジャバウォック達は頷く。倒れているBL兵達の死体をそのままにしてヴリトラ達は爆発のした方へ全力で走った。

 そしてラピュス達も爆音を聞いて周りを見回しながら驚きの表情を見せている。


「な、何ださっきの大きな音は!?」

「何かが爆発する音だな、それもかなりデカイ!」

「・・・ちょっと、あれ見て!」


 上を見ていたジルニトラが指を指してラピュスとニーズヘッグを呼ぶ。二人はジルニトラの指差す方を見ると、空に向かって灰色の煙が薄らと上がっている光景が見えた。


「あの煙は・・・」

「きっとさっきの爆発で起きた煙だろう」

「あっちで何か遭ったのか?」


 ラピュスがニーズヘッグとジルニトラの方を向いて尋ねると、ニーズヘッグは腕を組みながら考え込み、しばらくして煙の上がった方を見ながら答えた。


「ヴリトラ達のいる方から聞こえてきた銃声と爆音が気になって向かっていた時に今度は違う方向から大きな爆音。・・・もしかすると、リンドブルム達の方でも何か遭ったのかもしれない」

「リンドブルム?」

「ああ、リンドブルム達の向かったストラスタ軍の本拠点がある広場は俺達が来た西の出入口とは正反対の東の出入口の近くにある。ストラスタ軍はそっちに東の出入口からこの森に入って来たんだ、それなら当然ブラッド・レクイエムの連中もそっちの入口から入って来た、つまりブラッド・レクイエムの本隊が近くにいると考えられるって事だ」

「それって、リンドブルム達が敵の本隊と交戦してるって事?」


 嫌な予感がするのかジルニトラは緊迫した様な表情でニーズヘッグに尋ねると、ニーズヘッグは鋭い表情で頷く。それを見てラピュスの顔にも緊張が走る。


「マズいんじゃないのか?あのエントとか言う男の機械鎧の力を私達は全く理解していないのだろう?」

「ええ、アイツの機械鎧にどんな兵器が内蔵されているのか、どんな性能なのかも全く分かっていないわ。そんな状態で戦ったらいくらあたし達七竜将でも苦戦する。ましてや相手はブラッド・レクイエムの幹部よ?勝てるかどうかすらも分からない・・・」

「そんな・・・」

 

 七竜将でも勝てるかどうか分からない、ラピュスは汗を垂らしながら握り拳を作り手に力を入れる。そこへニーズヘッグが二人に力の入った声で喝を入れる様に語りかけた。


「おい、何をへこたれている?こんな所で暗くなっているよりも俺達にはやる事があるだろう!」

「・・・リンドブルム達の所へ行く?」

「そうだ、アイツ等はこうしてる間にも戦っている筈だ!急いで助けに行くぞ!」


 ラピュスにリンドブルム達を助けに行くと力強く告げるニーズヘッグ。そんな彼を見てジルニトラは目を閉じて小さく笑う。


「フフッ、確かにそうね。こんな事でへこんでたらヴリトラに嫌味を言われちゃうわ」

「そうだ。そんなのゴメンだろう?」

「ええ、ゴメンよ」

「・・・お前達はリンドブルム達の心配をして言ってるのか?それともヴリトラにバカにされるのが嫌で言ってるのか?」


 ラピュスは救援に行く理由が滅茶苦茶な二人をジト目で見ながら呆れる様に尋ねる。


「そんな事よりも急ぐぞ?」

「そうよ、早く行かないと!」


 そんなラピュスの質問をさり気なく流して二人はラピュスの方を向いて言った。ラピュスは「やれやれ」と顔を横に振り、三人はヴリトラ達と同じようにリンドブルム達のいる方へ向かって走り出しのだった。

 一方、リンドブルム達が戦っていた場所では砲弾の爆発でそこを中心に半径3m以内の草や落ちている小枝が焦げて周囲の石などを吹き飛ばしていた。周囲には煙が広がっており離れた所ではエントが笑いながら爆発地点を見つめている。


「ハハハハ、あの砲弾は命中した場所から半径3m以内を吹き飛ばし、そこから更に5mを爆風で吹き飛ばす代物だ。当たる直前で砲弾を撃ち、直撃は免れたとしても爆風で吹き飛ばされたダメージはある。まず無傷ではないな」


 エントは自分の砲弾を撃ったリンドブルムの行動を分析しながらリンドブルム達が無傷ではないと確信して爆発地点を見続けた。やがて煙が晴れていき爆発地点の奥が見える様になった。エントが奥をジッと見ると、そこには爆風で飛ばされて土手にもたれて頭を擦っているリンドブルム、ドレッドキャット達に支えられながら彼等にもたれているガズン、そして二人の前ではギガントパレードを握りながら俯せになっているファフニールの姿があった。三人とも大した怪我はしていないが体中、土や掠り傷だらけだった。


「フッ、やはり吹き飛ばされた時のダメージは受けていたか」


 リンドブルム達を鼻で笑うエント。三人はゆっくりと体を動かしながら態勢を立て直そうとする。


「イタタタタッ、凄い爆発だったなぁ・・・」

「あ、あんな武器を使うなんて、ブラッド・レクイエムの連中は化け物ばかりかよ・・・」


 体に走る痛みに耐えながら呟くリンドブルムとガズン。二人の前で倒れていたファフニールもゆっくりと起き上がりギガントパレードを構え直した。


「大丈夫?二人とも」

「うん、僕は大丈夫」

「ヘッ、こんなの怪我の中にも入らねぇよ」


 そう言って立ち上がろうとするリンドブルムとガズン。だがそこへファフニールが二人の方を向いて真剣な顔で意外な事を言ってきた。


「二人はそこで休んでて」

「え?」

「何だと?」


 ファフニールの言葉を聞き、思わず聞き返した二人。ファフニールは遠くにいるエントを見つめ、ギガントパレードを両手で持ちながらその手に力を入れる。


「あの人は、私が一人でやっつけるから・・・!」

「・・・ええっ!?」

「・・・はあぁ!?」


 突然一人でエントと戦うと言いだすファフニールにリンドブルムとガズンは声を上げて驚いた。

 エントの機械鎧の内蔵兵器に押されて追い込まれていくリンドブルム達。戦闘音を聞いてヴリトラ達とラピュス達が急いで救援に向かう中でファフニールが口にしたエントとの一騎打ち。一体ファフニールは何を考えているのだろうか!?


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