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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第四章~祖国の為に刃を向ける~
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第六十三話  エント再襲!

 ヴリトラのチームがジャバウォックのチームと合流し、他の二チームとも合流する為に再び森の中へと入っていく。既に各チームによってブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士達の大半が倒され、敵部隊はほぼ壊滅と言っていい状態になっていた。だが、まだブラッド・レクイエム社側には幹部クラスの機械鎧兵士が残っている。

 BL兵を警戒しながら森の中を探索しているラピュス達。彼女達は今、高台のエリアを抜けて川のあるエリアへやって来ている。大きな川が流れており、その近くでは野兎や鹿の様な生き物が水を飲んでいる姿があり、それは戦いでこの森に来なければ心地よい気分で眺められるような光景だった。


「さっきの戦いからしばらく経つが、敵とは遭遇してないな・・・」

「ああ。既に全員が俺達に倒されてこの森には敵がいないのか、それともかなり遠くにいるのかのどちらかだな」


 敵の気配を探りながら進んで行くラピュスの後ろでニーズヘッグがアスカロンを握りながら言った。ラピュスと肩には先程のBL兵との戦いで戦利品として手に入れたMP7が負い紐を通して掛けられており、ニーズヘッグもMP7を片手に持っていつでも発砲できるようにしていた。そして二人の後ろではジルニトラがサクリファイスを肩に掛け、戦利品のMP7を握りながら進んでいる。恐らくサクリファイスの弾薬を節約する為にMP7を使っているのだろう。


「でもさぁ、この森での戦いが始まってからもう一時間近くは経ってるわよ?そろそろ何か変化があってもいいと思わない?」

「確かにな。情報交換なんかの通信があっても不思議じゃなねぇし、少し心配だ」

「ヴリトラはいつも滅多の事がない限り通信してこないけど、ジャバウォックとリンドブルム達も通信を入れてこないのは変よ」


 ニーズヘッグとジルニトラは長い付き合いであるヴリトラ達が何の連絡も入れてこない事に少しずつ不安を感じ始めてきている。二人の会話を聞いていたラピュスも不安の表情を浮かべていた。三人は足を止めて川の近くで立ち止まる。その時、ニーズヘッグとジルニトラの小型通信機からコール音が聞こえてきた。二人は反応し、急いで小型通信機のスイッチを入れる。


「・・・こちらジルニトラ」

「俺だ、ヴリトラだ」

「ヴリトラ?」


 ジルニトラがヴリトラの名を口にし、それを聞いたラピュスは驚きの表情を見せてジルニトラの方を向く。ニーズヘッグとジルニトラは小型無線機から聞こえてくるヴリトラの声を聞き少しだけホッとする。


「そっちは大丈夫か?」

「ええ、こっちは大丈夫。ついさっきブラッド・レクイエムの連中と一戦あったけど、全員無事よ」

「そうか」

「それよりも、今までどうしてたのよ?何の連絡も入れないで」

「ああ、何か遭ったんじゃないかと思ったぜ」


 小型通信機の向こう側にいるヴリトラにジルニトラとニーズヘッグは連絡を入れなかった理由を少し力の入った声で尋ねる。それを聞いたヴリトラは困っているような声で質問に答えた。


「あ、あぁ~・・・実は西の出入口に陣取っていたブラッド・レクイエムを倒した後に相手の装備品やバンは無事なのかを確かめるなどしてたんだよ。その後にジャバウォック達から救援を受けてそのままそっちに行ってなぁ、連絡を入れられなかったんだ・・・」

「ジャバウォックから救援?」


 ジャバウォックとラランに何か遭ったのかと心配するジルニトラとニーズヘッグ。ラピュスもヴリトラの声は聞こえないが二人の反応を見てどんな内容なのか察し心配する。するとヴリトラの陽気な声が二人の耳に入って来た。


「あぁ~大丈夫だよ。ジャバウォックもラランも無事だ。俺達の救援が間に合ってブラッド・レクイエムの連中も全員倒した。今は合流して一緒に動いてるよ」

「そうか・・・」


 ジャバウォック達も無事だと聞いて安心するニーズヘッグ。いくら名高い七竜将と言えど決して無敵ではないので、怪我をしたりやられてしまったりなど心配してしまうのだろう。だが、仲間達の無事を知りラピュス達は微笑みを見せる。


「俺達はこのまま森の中に戻って敵兵の捜索に移るけど、お前達はどうする?」

「あたし達も捜索を続けるつもりだけど、もう一時間近く経って敵の数も減ってきてる筈よ。もうまとまって行動しても大丈夫そうだし、一度合流してこの後どうするかを話し合った方がいいんじゃない?」

「確かにそうだな。敵が多い時はともかく、敵兵の数が減ってきた今なら集まっても囲まれる心配はないだろう。・・・分かった、一度落ち合おう」


 ジルニトラの合流すると言う提案を承諾するヴリトラ。それを聞いたジルニトラとニーズヘッグは互いの顔を見て頷く。だがラピュスはヴリトラの声が聞こえない為、理解出来ないでいた。


「おい、どうする事になったんだ?」


 ラピュスが二人に今後の事を尋ねると、ニーズヘッグがラピュスの方を向いて質問に答える。


「一度合流する事になった。そこでこの後にどう動くかを話し合うみたいだ」

「そうか・・・」


 一先ず集まる事になった事を聞いて少しだけ安心したのかラピュスは小さく息を吐いた。前の戦闘でBL兵に勝てたとはいえ、次も必ず勝てるかどうか心配なのだろう。そんな不安を感じている彼女には嬉しい情報と言える。

 ラピュスに内容を伝えた後にニーズヘッグは再びヴリトラと会話を始める。


「それで、集合地点は何処にする?」

「そうだなぁ・・・・・・俺達が最初に着いたあのY字の分かれ道はどうだ?」

「OK、じゃあそこで落ち合おう」

「ああ、リンドブルム達の方には俺達から伝える」

「分かった、それじゃあ分かれ道で会おう」

「了解」


 そう言ってヴリトラは通信を切った。ニーズヘッグ達も集合場所であるY字の分かれ道に向かって歩き出すのだった。

 一方、リンドブルム達はストラスタ軍の本拠点がある広場から出てもう一度森の中に入っていた。リンドブルムとファフニールが並んであるき、その後ろをガズンとガルバ、ミルバの二匹がついて行っている。


「敵の姿が無いね?」

「もう殆ど倒しちゃったのかな?さっきも遠くで銃声が聞こえてたから・・・」

「ヴリトラ達がブラッド・レクイエムの兵士と戦ってた音だろうね」


 リンドブルムとファフニールが前を向きながら話をしてヴリトラ達の事を考えている。そこへガズンが二人の背中を見て声を掛けてきた。


「おい、これからどうするんだ?さっきから森の中をウロウロしてるけどよぉ」

「とりあえず他にも敵が森にいないかもう少し調べてみましょう。僕達の姿を見たらきっと真っ直ぐ襲って来る筈です。まずは安全を確保しないと」


 ガズンの方を向いて的確な判断をするリンドブルムを見てガズンは改めて目の前の少年が優れた傭兵であるという事を実感する。その隣で巨大ハンマーを握りながら歩いているファフニールも周囲を警戒しながら歩いており、その表情を大人の兵士も顔負けと言える位しっかりとしていた。

 リンドブルムとガズンが会話をしながら歩いていると、リンドブルムとファフニールの小型無線機からコール音が響いてきた。恐らくヴリトラからの呼び出しだろう。二人は立ち止まり、急いで小型通信機のスイッチを入れた。


「・・・こちらリンドブルム」

「リンドブルムか、俺だ」

「ヴリトラ!そっちは大丈夫なの?」

「ああ、皆大丈夫だ。ジャバウォックとラランは一緒にいるし、さっきもニーズヘッグ達に連絡を入れた。アイツ等も無事だぜ」

「よかったぁ~」


 ヴリトラから知らされた仲間達の安否を聞いたファフニールは緊張が解けたのか力の抜けた様な声を出す。そんなファフニールを見てリンドブルムはニッと笑い、ガズンは頭を掻きながら彼女を見ていた。その後ろではガルバとミルバがファフニールをジッと見つめながらまばたきをしている。


「おい、ファフニール。まだ戦いの最中なんだ、最後まで安心するなよ?」


 小型無線機から今度はジャバウォックの声が聞こえてきた。最年長である彼はある意味で七竜将の保護者的存在、仲間の事を人一倍心配し、常にヴリトラ達に注意をしている。

 ジャバウォックの声を聞いたファフニールは笑いながら返事をした。


「分かってるよ。最後まで油断しませ~ん」

「やれやれ・・・。それよりもそっちはどうなんだ?怪我とかは無いか?」

「大丈夫だよ。僕もファフニールも、あとガズンさん達も無事」

「そうか。・・・いいか、よく聞け?これから今後の事を話し合う為に一度集合する事になった」

「集合?」


 ジャバウォックが集まる事を話し、それを聞いたリンドブルムは聞き返す。ファフニールも笑顔から真面目な顔に戻って耳を傾ける。ガズンは何と会話をしているのか分からずに小首を傾げていた。すると、またヴリトラの声が聞こえてきた細かい内容は話し出す。


「ああ、俺達が最初に見つけたあのY字の分かれ道に集まって作戦を練る事にした。既にラピュス達にも伝えてある、お前達も一度そこへ向かってくれ」

「Y字の分かれ道だね?分かった、直ぐにそっちに・・・」


 ガサ・・・。


「「!」」


 ヴリトラに移動する事を伝えようとしたリンドブルムとファフニールは何処からか聞こえてくる草の揺れる音を聞き、二人の顔に緊張を走る。突然表情を変えた二人を見てガズンも不思議そうに思い二人の顔をジッと見つめた。


「・・・おい、どうした?」


 ガズンが訊ねるも二人は表情を変えずに黙り込んだままだった。二人は一見固まっている様にも見えるが、実際は神経を集中させて音のした方角を調べているのだ。そして再び草の揺れる音が聞こえた。そしてその音が誰かが茂みを掻き分けて歩いている音である事に気付く。

 リンドブルムとファフニールは音のした方へ視線を向けると、そこには低めの台の上から自分達を見下ろしているエントとその左右に立つ二人のBL兵の姿があったのだ。突然現れた敵にリンドブルム達は驚きを隠せないでいた。


「どうした、リンドブルム?」


 声が途絶えた事に違和感を感じたヴリトラはリンドブルムに尋ねるが、リンドブルムは返事をしない。リンドブルムは目の前でAS12を握っているエントを見て自分が持っているライトソドムとダークゴモラを握る手をより強くした。


「見つけたぜ?おチビちゃん達」


 笑いながらそう言うエントはゆっくりとAS12の銃口をリンドブルム達に向け、隣ではBL兵達がMP7の銃口を向けている。そして銃口がリンドブルム達に向けられた直後、リンドブルムは高く跳び上がった。突然跳び上がったリンドブルムを追って顔を上げるエントとBL兵達。リンドブルムはエント達の視線が自分の向いた瞬間に愛銃二丁を連続で撃ちエント達を攻撃する。BL兵達は突然の発砲に対応できずに体や額に無数の銃撃を受けて倒れる。だがエントは大きく後ろに跳んで銃撃を回避。地面に着地したリンドブルムは隙の出来たエントを見た後、直ぐにファフニール達の方を向いて叫んだ。


「隠れて!!」


 リンドブルムの言葉を聞き、ファフニールがガズン達に合図を送り、急いで走り出した。ガズンもいまいち状況が分からないが、危険な状況だという事は理解したのかその場から移動して何処かへ隠れようと走り出す。ガルバとミルバもガズンに続いて走り出した。そしてリンドブルムも直ぐに近くにある大きな岩の陰に身を隠す。

 態勢を直したエントはゆっくりと歩いて台の上から周囲を見渡し、リンドブルム達の姿が見えない事を確認した。


「隠れたか。だが遠くには行っていない筈だな」


 まだ近くにリンドブルム達が隠れていると確信しているエントはAS12を周囲に乱射し、木や茂み、岩などに散弾で削り飛ばしていく。隠れているリンドブルム達は目の前で飛び散る木片や石片を見てエントの攻撃力を改めて実感した。

 ヴリトラ達もリンドブルムとファフニールの小型無線機を通して聞こえてくる無数の銃声に反応して一瞬驚きの顔を見せていた。


「何だ、今の銃声は!?」

「あれはサブマシンガンやアサルトライフルの銃声じゃない、あれはショットガンの銃声だ!」


 銃声に反応したジャバウォックと銃声から銃の種類を割り出すヴリトラ。同じ様に小型通信機を通して銃声を聞いたオロチと話を聞いていたラランは無表情で二人を見つめ、アリサは不思議そうな顔をしていた。


「ショットガン?・・・て事はまさか!」

「ああ、エントが現れたんだ!」


 驚くジャバウォックをヴリトラが鋭い表情で見つめながら答えた。二人と周囲のララン達にも緊張が走るのと同時に敵の幹部がリンドブルム達の前に現れたという新たな問題が発生してしまった。


「マズイな、アイツ等はエントの使っている武器の事は知ってても奴の機械鎧の性能までは知らない。情報が少ない状態で戦うのは危険だ・・・」

「分かってる、集合は後だ。・・・と言うか敵の大将が出て来たんだ、アイツを倒せばこの戦いは終わる。リンドブルム達と合流して敵の本隊を叩くぞ!」


 リンドブルム達が危ない事を話すオロチを見てヴリトラも彼等の救援に向かう事を皆に告げる。ジャバウォック、オロチ、ラランの三人は黙って頷き、アリサは少し戸惑う様な表情を見せるも頷く。


「・・・隊長はどうするの?」

「ラピュス達にはリンドブルム達の所へ向かいながら通信で伝える。俺達は急いでストラスタ軍の本拠点の方へ向かう」

「・・・分かった」


 ラランはラピュス達にも伝える事を知り、無表情のまま頷いた。話がまとまりヴリトラ達は本拠点のある方向を向いて走り出そうとした時、突然ヴリトラ達の近くにある大きな木が爆発した。


「な、何だ!?」


 いきなり木が爆発した事で驚くジャバウォック。木は根元に大きな穴が開き、姿勢を保てなくなった木はゆっくりと倒れて大きな音を立てる。幸いヴリトラ達の立っている位置とは違う方向へ倒れた為、ヴリトラ達が木の下敷きになる事はなかった。倒れた木を見た後に自分達の武器を構えて周囲を警戒する一同。そして本拠点のある方角に四つの人影があるのを見つけた。そこにはマチェットやMP7を持って左腕を前に突き出す四人のBL兵の姿があった。因みに彼等はエントに付いていた六人のBL兵の中の四人で、残りの二人はついさっきリンドブルムに倒された二人だったのだ。

 四人の左腕の機械鎧の中から内蔵小型ミサイルが姿を見せている。どうやらさっき木の根元で起きた爆発はその小型ミサイルの仕業の様だ。ヴリトラ達は自分達に向かって小型ミサイルを向けるBL兵をジッと見つめて驚き咄嗟に武器を構える。


「ブラッド・レクイエム!?クソォ、まだいやがったのか!」

「敵も今度は最初から機械鎧の内蔵兵器を使ってきている。油断するな・・・」


 BL兵達の姿を見て驚くヴリトラの隣で冷静な態度を見せるオロチ。一同はBL兵達が最初から全力で襲ってきた事でより強く警戒する。その中でアリサが騎士剣を強く握りながらヴリトラに静かに声を掛けた。


「あの四人、もしかして私達を足止めする為に襲って来たんでしょうか?」

「足止め?」

「ハイ、既に私達は多くの機械鎧兵士を倒しました。さっきの通信で敵の隊長が前線へ出て来たという事は既に敵戦力が壊滅的な痛手を負っていると思うんです。ですから・・・」

「エントがリンドブルム達を倒すまで俺達を合流させない為に足止めとしてコイツ等を向かわせたと?」

「私はそう思っています」


 アリサの推理を聞きヴリトラは少し驚いた様な顔を見せたが、直ぐにBL兵達の方を向き真剣な顔に戻った。ヴリトラはアリサの推理が当たっていると思い、目の前で自分達に小型ミサイルを向けるBL兵達を見て森羅を握る手をより強く握る。


「奴等は俺達を確実に足止めする為に内蔵兵器も惜しみなく使って来たんだろう。皆、今度は今までの奴等よりも面倒な相手だ。こっちも全力で行くぞ、内蔵兵器もバンバン使っちまえ!

「言われるまでもねぇ!」

「当然だ・・・」

「ラランとアリサも無理するなよ?危険だと思ったら直ぐに何処かに隠れろ」

「・・・分かった」

「ハ、ハイ!」


 ヴリトラは自分の後ろに立つジャバウォック達にそう伝えると森羅を前に持ってきて中段構えに入る。ジャバウォックとオロチもデュランダルと斬月を構え、その後ろでラランとアリサも突撃槍と騎士剣を両手で握りながら構えた。ヴリトラ達が構えたのを見ていたBL兵の一人が小型ミサイルをヴリトラ達に向けて発射して来た。ヴリトラは地を蹴り、飛んで来る小型ミサイルに向かって行き、勢いよく森羅を横に振る。

 その頃、リンドブルム達のチームはエントのAS12の乱射に押され続けていた。既にエントの視界に入っている木や岩は最初とは比べものにならない位に削れ、穴だらけになっている。そして足元には大量の散弾の空薬莢が転がっていた。


「ハハハハ!どうした?隠れてばかりじゃ俺には勝てないぞ!」


 笑いながらAS12を乱射し続けるエントは隠れているリンドブルム達を挑発する。エントはAS12に装填されているドラムマガジンが空になると直ぐに新しいドラムマガジンを叩き込んで再び乱射した。

 リンドブルム達はそれぞれバラバラに隠れており、リンドブルムはエントから見て低い位置にある土手の陰に身を隠しており、ガズンはガルバとミルバを連れて盛り上がっている土の台の隠れている。そしてファフニールは大きな岩の陰に隠れていた。今彼女が最もエントに近い位置にいる。


「とんでもない乱射だなぁ。これじゃあ迂闊に動けないよ・・・」


 土手の陰に隠れながらリンドブルムは周囲に散弾をばら撒くエントの方を向いて鬱陶しそうな顔を見せた。だが、実際リンドブルム達は一歩もその場から動けないでいる。どうにしかして反撃のチャンスを作らないといけないと思うリンドブルムは周りを見て何か使えそうな物を探し出す。そして足元に転がっている野球ボールほどの大きさの石を見つけ、それを見てニッと笑った。

 リンドブルムが何か行動を起こそうとしている事に気付いていなエントはAS12を撃ち続けている。もはや機械鎧兵士と言うよりもその姿は狂ったガンマニアと言ってもよかった。エントが乱射を続けていると、突然視界に何がか下から打ち上げられる光景が目に入る。それに気づいてエントは乱射を止めて打ち上がった物体をAS12で撃つ。散弾が命中したその物体は高い音を立てて粉々になる。しかし、その物体を見てエントは目を鋭くした。


「あれは、石?」


 実はエントが撃ち砕いた物体はさっきリンドブルムは見つけた石だったのだ。突然石が飛んで来てそれを撃ち砕き、ほんの一瞬隙だ出来た瞬間、リンドブルムが土手の陰から高くジャンプして飛び出して来た。リンドブルムはライトソドムをホルスターに戻し、ダークゴモラを両手で持ってエントに狙いをつける。すると、ダークゴモラの銃身が突然青白い電気を纏いだし、その電気が銃口へと集まりだす。飛び出して来たリンドブルムに気付いたエントが銃撃を警戒して回避行動に出ようとする。だが次の瞬間、リンドブルムはダークゴモラの引き金を引いた。それと同時に銃口から電気を纏った弾丸がもの凄い速さで吐き出され、エントの持っていたAS12を撃ち貫いたのだ。AS12は貫かれた部分から低い音を立てながら粉々に破壊されてエントの足元に破片がこぼれ落ちる。


「なん、だと・・・?」


 突如自分の散弾銃が粉々になり驚きを隠せないエント。リンドブルムはエントの立っている高台と同じ所に着地してエントに銃口を向ける。


「僕の使う銃、ライトソドムとダークゴモラは『電磁拳銃レールハンドガン』なんですよ。銃の中に小型のメトリクスハートを取り付けてそこから作り出される電気を使い磁場を発生させ、それを使い超高速の弾丸を撃つ出す事が出来るんです。その威力は最新型のボディアーマーすらも紙の様に貫通する程ですよ」


 自分の愛銃の説明を丁寧にするリンドブルム。乱射が収まり、ファフニールとガズン達も隠れるのを止めて姿を現した。そして高台の上で睨む合っているリンドブルムとエントの姿を見つける。


「・・・ガキとは言え、やはり七竜将の一人か。油断したぜ」


 目の前で銃を突きつけるリンドブルムを見下ろしてエントは低い声を出した。

 エントの襲撃を受けたリンドブルム達であったが、リンドブルムによってAS12は破壊されて勝機が見えてくる。だがこの時、リンドブルム達はまだエントの機械鎧の性能を知らず、まだ自分達が不利であることに気付いていなかったのだった。


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