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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第四章~祖国の為に刃を向ける~
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第六十一話  広がる戦いの火種


 ブラッド・レクイエム社の森林隠密部隊から襲撃を受けたリンドブルム達はなんとかBL兵達を倒してその場を凌ぐ事に成功する。そして急ぎストラスタ軍の本拠点へ向かうも、そこは既に襲撃を受けてストラスタ兵達は全滅していた。その光景を目にしたリンドブルム達はブラッド・レクイエム社が危険な組織だという事を改めて実感するのだった。

 リンドブルム達が本拠点に到達した時と同時刻、ジャバウォックとラランもヴリトラ達が最初に制圧した予備拠点に到着していた。だが、二人が予備拠点に着いた時、既に投降したストラスタ兵達は皆ブラッド・レクイエム社によって射殺されていた。


「・・・遅かったか」


 予備拠点のテントの前で仰向けになって息絶えているストラスタ兵の近くで膝をつき悔しそうな顔を見せるジャバウォック。そのすぐ後ろではラランが無表情でストラスタ兵を見つめている。


「全員が射殺、か・・・。迎撃する前に殺されたか、戦ったが何も出来ずに殺されたかのどちらかだな」

「・・・近くに武器を落ちていない。多分戦ってはいないと思う」

「そうだな。なら、やっぱり動く前に殺されたって事になるか」


 ゆっくりと立ち上がったジャバウォックは小型無線機のスイッチを入れて誰かに連絡を入れる。しばらくコール音が鳴っていると、誰かが通信に出たのか声が聞こえてきた。


「・・・こちら、ヴリトラ」

「ヴリトラか?ジャバウォックだ」

「ジャバウォック、無事だったか?」

「ああ、俺もラランも無傷だ」


 通信に出たのはヴリトラだった。ジャバウォックは自分達の予備拠点に残っているストラスタ兵の残党が無事なのかを確認するという目的を達したのでその報告をヴリトラにする為に通信を入れたのだ。


「そっちは大丈夫なのか?森の中を通ってた時に銃声が聞こえたが?」

「ああ、大丈夫だ。西の出入口前の敵は全部倒した。オロチとアリサも怪我はしてない」

「そうか、二人も無事かぁ」


 オロチのアリサの無事を聞かされてホッとするジャバウォック。ラランもジャバウォックの言葉を聞き、アリサが無事なのを知ってホッと胸を撫で下ろす。


「それで、そっちはどうだ?ストラスタ軍の連中は無事だったか?」


 ヴリトラがストラスタ兵の安否を尋ねると、ジャバウォックは沈んだような表情になり低い声で質問に答える。


「・・・いや、全員殺されてたよ」

「・・・そうか」


 小型通信機からヴリトラの低い声が聞こえてくる。


「生き残ったストラスタ兵の何人かは俺のオートマグで撃たれて傷を負ってたからな、まともに動く事が出来なかったんだろう。・・・申し訳ない事をしちまったよ」


 予備拠点を制圧する時にヴリトラが弓兵をオートマグで撃ち負傷させた事を口にし、少し暗い声を出す。それを聞いていたジャバウォックの顔は沈んだような表情から真面目な表情へと変わった。


「そういう事なら仕方がねぇさ。こうなるなんて誰も予想できなかった事なんだからな」

「ああ・・・」

「・・・ヴリトラ、分かっているとは思うが自分を責めるなよ?後悔なんかすれば人はネガティブになって前を向いて歩けなくなる。此処は戦場だ、自分の身は自分で守らないといけない。運や相手の優しさなんかに期待してたら命が幾つあって足りない、奴等ストラスタだってそれを理解して戦場に来ているだろうからな」

「・・・分かってるよ。俺だって伊達に何年も戦場にいるわけじゃないからな?」


 ジャバウォックの忠告にヴリトラは真面目そうな声で答える。ヴリトラもジャバウォックも長い間戦場を行き来して来た男だ、戦場で今回の様な状況に出くわした事も一度や二度ではない。戦場では何が起きるか分からない、それは全ての戦士が戦場に出て最初に知る事だった。


「フッ、釈迦に説法だったか?」

「いいや、忠告ありがとう」


 友達と会話をする様な楽しそうな喋り方で話し合うジャバウォックとヴリトラ。互いに相手の事をよく知ってるからこそ、深刻な話をした後に気持ちを切り替えて会話をする事が出来るのだろう。

 小型通信機を使いヴリトラと話をしているジャバウォックを見てまばたきをするララン。彼女もジャバウォックの話を聞いて戦場の厳しさを改めて理解した。無表情ではあるが目には強い意思が宿っている様にも見える。


「とりあえず、俺達がこのまま森に戻って敵の捜索と殲滅に移る」

「分かった、こっちも一通り片付けたら森へ戻るよ。後でラピュス達の方にも連絡を入れてみる」

「了解した」


 ジャバウォックが通信をしながら森の方を向きどの方角へ進もうか考える。そんな時、ジャバウォックは木の枝の上で何がか光ったのを見つけて表情を鋭くした。ラランも突然表情を変えたジャバウォックを見て表情に少し鋭さが出る。


「・・・どうしたの?」

「・・・・・・」


 ラランの質問に答えず鋭い表情のまま光の見えた方を見つめているジャバウォック。次の瞬間、ジャバウォックが突然上半身を横へ反らした。そして体を反らした直後に銃声が森に響き、ジャバウォックの後ろにあったテントに穴が開いた。


「・・・ッ!?」

「ララン、隠れろ!」


 ジャバウォックがラランの方を向いて叫ぶと、ラランも急いで近くにある大きな木の陰に隠れた。ジャバウォックも倒れている木の陰に俯せになって隠れる。そしてその直後に二人の隠れている木に一発ずつ弾痕が生まれた。


「おい、どうした!?」


 まだ通信が切れていなかった為、ジャバウォックの声と銃声に異変を感じたヴリトラがジャバウォックに声を掛ける。ジャバウォックも小型通信機に指を当ててヴリトラに返事をした。


「ヴリトラか」

「ジャバウォック、何だ今の銃声は!?敵か?」

「ああ、そうみたいだ。それも狙撃手スナイパーだ」

「何だって?」

「マズイな、俺の装備には狙撃手を倒せるような装備は無い。それに他にも敵が隠れている可能性もある、そんな状態でラランを守りながら戦うのは無理だ」

「確かに、普通の機械鎧兵士だけならまだしも、狙撃手がいるんじゃまともに動く事も出来ない」


 ジャバウォックとラランの状況と敵の戦力を分析するヴリトラ。明らかに二人が危険な状況だという事が分かる。


「分かった、直ぐにそっちへ救援に行く!俺達が行くまで持ち堪えてくれ!」

「頼む!出来るだけ急いでくれよ」

「分かった!」


 その言葉を最後に通信が切れ、ジャバウォックはゆっくりと木の陰から顔を出して敵の位置を確認しようとする。しかし、顔を出した瞬間に狙撃されて木に弾痕が出来る。顔の近くを狙撃され、驚いたジャバウォックは再び顔を引っ込めた。


「チッ!狙撃手には俺達の居場所がバレてるか。それに恐らく敵は狙撃手以外にも数人の機械鎧兵士で構成された部隊だろう。狙撃手で俺達の動きを封じ、残りの兵士が少しずつ距離を詰めて行く。そんな作戦だろう・・・」


 ジャバウォックは身を隠しながら敵の作戦を分析し、相手が次にどう動くかを考える。実際、ジャバウォックの予想通り、ジャバウォックとラランから約300m離れた所に生えている木の枝からPSG1を持ったBL兵が二人を狙っており、その直ぐ下の根元ではMP7やマチェットを構えたBL兵四人がゆっくりと二人のいる予備拠点の広場に近づいている姿があった。

 木の陰に隠れながらジャバウォックは離れた所で木の陰に隠れているラランを呼んだ。


「ララン、敵の中に狙撃手がいる。迂闊に動くな、狙い撃ちにされるぞ!」

「・・・スナイパー」

「遠くから銃で狙って来る兵士だ。トコトムトの村でリンドブルムが狙撃銃を使っているのを見ただろう?」

「・・・ッ!アレ・・・」


 ラランはトコトムトの村でリンドブルムが崖の上からストラスタ軍を狙撃する為にリンドブルムが見せた狙撃銃を思い出して顔をハッと上げる。ラランが狙撃銃を思い出した事を確認したジャバウォックは敵のいる方を指差して話を続ける。


「敵の中にその狙撃手が紛れてるんだよ。いいか、絶対に動くなよ?」

「・・・敵がこっちに来たら?」

「その時は俺が囮になって敵の注意を反らす!」

「・・・それじゃあジャバウォックが危ない」

「そうならない事を祈るさ。ヴリトラ達が早く来てくれることを願うしかないな」

「・・・運をあてにするなって、さっき言ったのに・・・」


 ジャバウォックに聞こえないような小さな声でさっきジャバウォックがヴリトラに言った言葉を口にするララン。その言葉が聞こえていないジャバウォックは木の陰に隠れながらBL兵達の気配を探っていく。

 ジャバウォックとラランがBL兵の攻撃を受けているのと同時刻、ラピュス達のチームは森の中を探索しながらBL兵の部隊を捜索していた。作戦が始まってから随分森の中を探しているが、未だに敵と遭遇していない。


「この辺にもいないな」

「誰かが通った跡はあるが姿は無い。恐らくもう遠くへ移動したんだろう」


 ラピュスとニーズヘッグが自分の愛剣を握りながら周囲を警戒して茂みの中を進んで行く。草が踏まれて誰かが茂みを通った形跡はあるも、既に姿は無い。だが、草の踏まれ具合から、およそ十数分ほど前でまだ形跡は新しかった。つまり、ついさっき誰かがこの茂みを通ったという事になる。


「見た感じからして、人数は五、六人位ってところね。しかも足跡はクッキリと残ってる、それだけ体重が重いか重武装をしてる連中って事になるわ」


 足跡の形や深さを見てジルニトラが足跡の主の体型や装備の状態を推理する。それを聞いていたニーズヘッグを周りを見て他に足跡が無いか探し始めた。そして茂みの近くにある小さな泥の中にも足跡があるのを見つけ姿勢を低くして足跡に顔を近づける。


「此処にもあるぞ。きっと連中はこっちから来てその茂みを通り、あっちの方へ歩いて行ったんだろう」


 ニーズヘッグが低い姿勢のまま茂みの中で見つけた足跡が向かっている方を指差してBL兵達が進んだと思われる方角を指差した。ラピュスとジルニトラも茂みの中からBL兵達の向かった方角を向いて真面目な顔を見せる。


「あっちには確か高台があるんだったな?」

「ええ、ガズンの話ではそのエリアに高台は高さの差が殆どなくて上から飛び下りられる位の高さでしかないって話よ」

「つまり、高台から飛び下りる事が出来て行動には殆ど制限が無いという事だな?」

「そう。敵に追われている時に高台から飛び下りて逃げる事も出来るし、逃げてる敵に追いつく為にショートカットも出来るってわけ」

「ショート、カット?」


 ラピュスはジルニトラの言葉に小首を傾げる。久しぶりにヴリトラ達の言葉を聞いて不思議そうな顔を見せるラピュスを見てジルニトラは頬を指で掻きながら苦笑いを見せた。そこへニーズヘッグが近寄り二人の会話に参加してする。


「もしブラッド・レクイエムの連中がこの先にいるとしたら間違いなくその高台に身を隠して俺達を待ち伏せしてるだろうな」

「ええ、それに高台って言うんだからあたし達よりも高い位置から見てるって事でしょう?狙撃手がいる可能性もあるわよ」

「ああ、絶好の撃ち下ろしポジションだ。高台が見えたらまずは何処かに隠れて敵を探し、位置を確認しておいた方がいい」


 ラピュス達はBL兵の足取りを追う為に足跡の向かっている方へ歩き出す。しばらく進んで行くと、岩の台に挟まれた狭い道の前にやって来る。狭い道を前に三人は足を止めた。


「足跡はこの道の前で消えてる。きっとこの先にブラッド・レクイエムの兵士がいる筈だ」

「ええ、間違いなさそうね」


 ラピュスとジルニトラが岩と岩の間の道を見て敵がいると確信し真面目な顔を見せる。騎士剣とサクリファイスを握り二人は歩き出そうとした、その時・・・。


「待て!」


 突然のニーズヘッグの声に二人は足を止めてニーズヘッグの方を見た。


「どうしたの、ニーズヘッグ?」

「・・・見てみろ」


 ニーズヘッグは二人の足元を指し、二人は不思議そうな顔で自分達の足元を見た。すると、自分達の足首の数cm前に目では見えないくらい細長い糸が一瞬光ったのが見え、二人は目を見張って驚き後ろに二歩下がる。その糸は道を挟む岩と岩の間を結ぶ様に真っ直ぐ伸びており、ニーズヘッグはゆっくりと近づきその糸に顔を近づける。


「・・・・・・」

「ちょっとニーズヘッグ、それってもしかして・・・」

「ああ、間違いない。ブービートラップだ」

「トラップ!?罠か?」


 罠が仕掛けてあった事を聞いて驚くラピュスとジルニトラ。もしニーズヘッグが二人を止めなかったら二人の足によって糸は切れ、罠が起動していたところだった。それを想像して二人は汗を掻く。

 ニーズヘッグは糸を辿ってどんな罠が仕掛けてあるのかを調べ始める。周りを見て木や茂みの中に罠が仕掛けてあるのかを調べて行き、そして上を見上げるとニーズヘッグは何かを見つけたのか目を見張った。


「・・・二人とも、ちょっと端に移動しろ」

「分かったわ・・・」

「ああ・・・」


 ニーズヘッグの指示を聞き、ジルニトラとラピュスは道の出て端にある茂みの中に移動した。二人が道から出たのを確認したニーズヘッグは自分も道の真ん中から移動しアスカロンで糸を切った。その直後、突然前から木の蔓で吊るされた丸太が振り子の様に振ってきたのだ。しかもその丸太には鋭く尖った棘が付けられており、もし道の真ん中に立っていたらその丸太の直撃を受けて大怪我をしていたところだった。

 目の前で大きく揺れる丸太を見て驚くラピュスとニーズヘッグ。丸太は次第に勢いを弱めていき道の真ん中で吊るされたまま動かなくなった。茂みから出たラピュス達は棘だらけの丸太をまじまじと見ている。


「こ、これは・・・」

「危なかったわねぇ。もしあのまま進んでたらあたし達は丸太をもろに受けて全身に打撲傷と深い切傷を負ってたわ。最悪、骨折してたかもね」

「う・・・」


 衛生兵であるジルニトラは丸太を受けていたらどうなっていたかを冷静に想像し、それを聞いたラピュスは顔を青くした。

 二人の会話を聞いていたニーズヘッグは道の先を見ながら低い声を出して二人に話しかけた。


「この先にもまだこんな罠があるかもしれない。より慎重に進むぞ」


 ニーズヘッグの言葉に二人は頷く。そして三人は岩の間の道を通り先へと進んで行った。

 しばらく進んで行くと、ラピュス達は木や茂みの少ない広い場所へ出た。上からは木と木の隙間から太陽の日が照らされて広場を明るくしている。三人は広場に入る手前で足を止め周囲を調べて始める。そんな中、ラピュスは200m程先にある高台を見て目を細くし、高台の上を見た。高台の上には茂みがあり、俯せになれば人一人が隠れられる位の大きさの物だった。目を凝らしてその茂みを見ていると、茂みの中で俯せになり、PSG1を構えているBL兵の姿を見つける。


「・・・ッ!二人とも、あそこを見ろ。あの高台の茂みの中を」


 小さな声でニーズヘッグとジルニトラに見つけたBL兵の事を伝えるラピュス。二人もラピュスの見る先の高台を見てBL兵の姿を確認すると表情を鋭くし、一番近くの木の陰に身を隠した。幸いBL兵には気付かれておらず、三人は狙撃されずに済んだ。


「やっぱりいたな、狙撃手」

「ええ。多分他にもいるでしょうね、少なくともあと一人・・・」


 足跡から人数を調べ、敵部隊の構成を考え始めるジルニトラ。ジルニトラ達は敵部隊の人数は少なくとも五人はおり、その内の二人は狙撃手だと推理する。だがそれはあくまでも彼女達の推測、確実にそうだとか決められない。三人は木の陰から周りを見回して他にも敵がいないか探し出した。そして高台の真下にMP7を装備したBL兵が四人いるのを見つける。


「MP7を持った奴が四人、そして狙撃手が一人。狙撃手が二人である可能性は低くなったわね」

「いや、分からないぞ?もしかして五人じゃなく六人の部隊構成になっていてもう一人、狙撃手が何処かに隠れているのかもしれない」

「どちらにせよ、この状況では迂闊に飛び出す事は出来ないわね。飛び出した瞬間に狙い撃ちにされてTHEENDジ・エンドよ?」

「ああ、敵の注意を引きつける必要がある」


 ジルニトラとニーズヘッグがこの後にどう動くかを考え始める。そして二人は自分の後ろで敵を覗き見ているラピュスの方を振り向く。


「・・・・・・ん?」


 突然自分の方を向く二人にラピュスは不思議そうな顔を見せる。


「・・・ラピュス、俺とジルニトラが敵の注意を引きつける。お前はその間に回り込んで高台に昇ってあそこに隠れている狙撃手を倒してくれ」

「・・・はあぁ?」


 いきなり狙撃手を倒してほしいと言う頼みにラピュスは思わず聞き返した。実は高台から少し離れた所には坂道があり、その坂を上っていけば狙撃手のいる高台まで辿り着く事が出来るのだ。だがそこに行くまでの間、身を隠すところは無く敵に直ぐ見つかってしまう。もしBL兵達に見つかればかっこうの的とされてしまいとても危険だ。


「わ、私が行くのか?」

「ああ、俺達が囮になって奴等を引きつけているから、その内に狙撃手を無力化してくれ」

「い、いや、その様な重要な作戦なら私ではなく二人のどちらかが行った方が・・・」

「いや、お前の方がいい。それにこの作戦はお前のポジションが一番安全なんだぞ?」

「え?」


 この作戦、一見ラピュスが一番危険な役割と思われるが実際はニーズヘッグとジルニトラの方が危険なのだ。もし代わりに二人のどちらがか狙撃手の所へ行くとなるとラピュスはその間に全てのBL兵達から狙われてしまう。機械鎧兵士でない普通の騎士であるラピュスがMP7とPSG1を持つ機械鎧兵士の計五人を相手にするの無謀に近い。だからこそ、囮は同じ機械鎧兵士であるニーズヘッグとジルニトラがやるべきだと考えて、狙撃手の無力化をラピュスに託したという訳だ。

 二人からその説明を聞いてラピュスは黙って考え込む。そしてゆっくりと顔を上げて二人の顔を決心の付いた表情で見つめる。


「分かった!」

「よし、それじゃあ、俺とジルニトラが敵の前に出てアイツ等の注意を引く。お前は俺が合図したらあの坂を駆け上がって狙撃手を倒してくれ」

「・・・ああ!」

「それじゃあ、行くわよ!」


 ジルニトラの言葉を合図にニーズヘッグとジルニトラは木の陰から飛び出しBL兵達の方へ向かって走り出した。BL兵達も突然現れた二人に一瞬驚くも、直ぐに銃口を二人に向けて発砲する。二人は出来るだけラピュスが行動しやすい様に坂道のある方とは逆の方角に向かって走り、BL兵達もそんな二人に発砲し続ける。高台の上にいる狙撃手も二人に狙いをつけて引き金を引くが、足元に当たるだけで二人にダメージは無い。

 ある程度まで走り、BL兵達の注意を引いたニーズヘッグとジルニトラ。それを木の陰から見ているラピュス。ニーズヘッグはBL兵達の銃撃をかわしたりアスカロンで防ぎながら状況を確認し、そろそろいいと感じたのかラピュスの方を見て頷く。


「・・・よしっ!」


 ニーズヘッグの合図を見たラピュスも木の陰から飛び出して坂道へ向かって全力で走った。BL兵は全員が二人の方に意識がいっており、ラピュスには気付いていなかった。まさに絶好のチャンスと言える状況だ。

 ジャバウォックのチームとラピュスのチームがそれぞれ敵と遭遇、戦闘を開始した。始まったばかりの両チームの戦い、フォルモントも森が次第に銃声と煙に包まれていく。戦いはまだ始まったばかりだった・・・。


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