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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第四章~祖国の為に刃を向ける~
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第六十話  新しい戦友と絆


 ブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士部隊を倒す為に行動を起こしたヴリトラ達。四つのチームに別れた彼等は自分達の役割を全うする為に動き出すのだった。だが、敵の戦力が未知数で自分達との戦力にどれ程の差があるか分からない以上、油断出来ない。ヴリトラ達の警戒は常に最高の状態であった。

 ヴリトラのチームが西の出入口のBL兵達を倒したのと同時刻、リンドブルム達のチームは茂みを掻き分けながら慎重に進んでいた。リンドブルムを先頭にガズンが短剣を握ってリンドブルムに続き、その後ろをガルバとミルバがズシズシと歩いている。そして殿にファフニールが付いていた。


「もう少し進めば大きな道に出る。その先に俺達の本拠点がある筈だ」

「此処まで一人のブラッド・レクイエム兵と出くわしていませんけど、何だかそれが却って不気味ですね・・・」

「なぁ、ブラッド・レクイエムの連中はそんなにおっかねぇ連中なのか?」


 ガズンが目の前を歩くリンドブルムにブラッド・レクイエム社の事を尋ねると、リンドブルムは歩いたままガズンの方を向いて頷く。


「彼等は悪名高い傭兵派遣会社で犯罪や誘拐と言った様々な悪行に手を染めてきました。更に依頼人が報酬を払わなかった場合は容赦なく依頼人を消します」

「消すって、それは殺すって事なのか?」

「ええ」


 ブラッド・レクイエムの恐ろしさを聞いたガズンは汗を垂らす。その後ろでは二匹のドレッドキャットがガズンとリンドブルムを見つめながら静かに歩いている。その後ろでファフニールが周囲や後ろを警戒しながら歩く。ギガントパレードを握るその手には力が入り、何時でも戦闘に入れるようにした。


「・・・そう言えばさっき、西の方で銃声が聞こえたよね?」

「うん。多分ヴリトラ達が西の出入口にいたブラッド・レクイエムの兵士と戦ってるんだと思うよ」


 先頭を歩くリンドブルムにファフニールが話しかけるとリンドブルムも彼女の方を向いて頷きながら答える。


「銃声が聞こえなくなったって事は、ヴリトラ達が勝ったって事だね」

「だろうね。と言うよりも、ヴリトラ達が普通の機械鎧兵士相手に負けるとも思えないけど」


 笑いながら会話をするリンドブルムとファフニール。ヴリトラ達の力を知っているからこそここまで余裕のある表情を見せる事が出来るのだろう。二人の顔を見てガズンは目を丸くしていた。だが直ぐにリンドブルムの表情が笑顔から真面目な顔に戻る。


「でも、此処まで銃声が聞こえたんだから森中にいるブラッド・レクイエムの連中もそれに気付いて西口の方へ向かうかもしれない・・・」

「つまり、私達も西口へ向かうブラッド・レクイエムの機械鎧兵士と出くわす可能性が高くなったって事・・・」


 リンドブルムの様に真面目な顔で言うファフニール。そんなファフニールを見てリンドブルムはもう一度頷く。ガズンも二人の話を聞いて緊張を走らせる。そんな時、ガルバとミルバが立ち止り、上を見ながら唸り出した。


「どうした、ガルバ、ミルバ?」


 突然唸り出す二匹にガズンは不思議そうな顔で尋ねる。リンドブルムとファフニールも二匹を見て小首を傾げていた。だがその直後に二人は何者かの気配を感じ、ハッとして自分の武器を構えて周囲を警戒し始めた。すると木の上から何者かが飛び降りてリンドブルム達を取り囲む。数は六つ、それは超振動マチェットと特殊警棒を握ったBL兵だった。フルフェイスマスクで表情は見えないが六人全員がリンドブルム達を見つめている。

 いきなり囲まれてピンチの状態となってしまったリンドブルム達。ガルバとミルバに背を向けて二匹を守る様な態勢で自分達を取り囲むBL兵達を見て構えるリンドブルム、ファフニール、ガズンの三人。ガズンは勿論、リンドブルムとファフニールの顔にも若干緊迫した様子が見られた。


「やっぱり出くわしちゃったかぁ・・・」

「どうする、リンドブルム?六人だよ?」

「どうするって、戦うしかないでしょう?敵さんは逃がしてくれそうにないし」


 BL兵達の様子を伺いながら話し合っているリンドブルムとファフニール。そんな話をしている間もBL兵達はジリジリと距離を縮めて行く。そんな時、ガズンが短剣を強く握りながら二人に声を掛けてきた。


「おい、そんな事話してる場合じゃねぇだろう。まずはコイツ等を倒す事が先じゃねぇのか?」


 少し力の入った声を出すガズンを見て二人は少し意外そうな顔を見せる。二人はガズンの言うとおりだと目で互いを見た後に頷き合い、目の前で武器を構えるBL兵達の方を見た。


「確かにそうですね。貴方の言うとおりです!」

「さっさとこんな奴等やっつけちゃいましょう!」


 小さく笑いながら気合を入れるリンドブルムとファフニールにガズンもニッと笑って短剣の切っ先をBL兵達に向けた。


「ガズンさん、相手は機械鎧兵士ですけど、貴方も戦力に数えていいんですね?」

「ヘッ!誰に言ってるんだ、ボウズ?俺はこう見えても元はストラスタ公国の騎士団にいたんだぜ?それにガルバとミルバもいる。コイツ等の強さはお前等もその目で見た筈だ」


 ガズンの言葉を聞いてリンドブルムとファフニールはドレッドキャットとの戦いを思い出す。確かにドレッドキャットは機械鎧兵士である自分達ですら手こずる相手、戦力として申し分ない。


「確かにそうですね。この子達がいれば安心です!」

「ハハハ、お嬢ちゃんは分かってるみてぇだな?」

「それに、その子達は私が守りますから・・・」


 嬉しそうに、そして何処か懐かしそうな声で呟くファフニール。そんな彼女をリンドブルムとガズンは親が子を見守る様な表情で見つめた。

 二人がファフニールを見つめていると、リンドブルムの前に立っていたBL兵がマチェットを握りながらリンドブルムに向かって走り出す。自分達をほったらかしにして会話をしているリンドブルム達に少しだけ機嫌を悪くしたのか、力の入った走り方でリンドブルムに向かって行く。BL兵がファフニールの方を向いているリンドブルムに向かってマチェットを振り下ろそうとした、その時、リンドブルムは顔の向きを変えずにライトソドムをBL兵に向けて引き金を連続で三回引いた。それと同時に銃口から三発の弾丸が吐き出されてBL兵の体に全て命中。リンドブルムに攻撃を仕掛けたBL兵は何も出来ずに仰向けに倒れて動かなくなった。


「「「「「!!」」」」」


 いきなり仲間の一人が倒された事に驚く他のBL兵。そこへガズンが短剣を持って目の前のBL兵に攻撃を仕掛けた。


「うぉりゃあーーーっ!」


 大声を出しながら短剣をBL兵に向かって振り下ろすガズン。BL兵は咄嗟にマチェットを横にして短剣を止める。短剣とマチェットの刃が交わりそこから火花が周囲に飛び散りながら金属が削れるような音が響く。ガズンが火花と音に一瞬驚くも直ぐに表情を戻して短剣を持っている腕に力を入れる。しかし自分よりも身長の低いBL兵はガズンの力をもろともせずに片手でマチェットを握り、ガズンの短剣を止めていた。


(な、何て野郎だ!片腕で俺の力の籠った短剣を止めるなんて・・・これがマシンメイルソルジャーとか言う奴等の力なのか!?)


 ガズンは心の中で機械鎧兵士の力に驚きながら更に腕に力を入れる。短剣を持つ腕には血管が浮き上がり、ガズンが限界まで力を加えているのがよく分かる。だがそれでもBL兵がマチェットを持っている腕をピクリとも動かさずに片腕のまま短剣を止めている。

 BL兵が相手いるもう片方の手で拳を作り、ガズンに殴り掛かった。しかしガズンもBL兵のパンチに気付き、咄嗟に短剣をマチェットから離して後ろに下がりパンチをかわした。下がった後にガズンはBL兵を警戒しながら自分の短剣を見る。すると、短剣の刃でマチェットの交わっていた部分が小さく欠けているのを見つけてガズンは驚いた。


「な、何だと・・・。短剣が刃こぼれするなんて、どんだけ固くて切れ味がいいんだよ、あの鉈は!?」


 ガズンはBL兵の持っている超振動するマチェットを見ながら更にBL兵の強さを実感する。そこへ今度はBL兵がマチェットを構えてガズンに向かって来た。咄嗟に短剣を構えるガズン、だが次の瞬間にBL兵の持っていたマチェットが銃声と共にいきなり弾き飛んだ。BL兵とガズンが突然の出来事に驚く。ガズンが銃声のした方を向くと、そこにはダークゴモラをBL兵に向けているリンドブルムの姿があった。

 ガズンは好機と気付いて丸腰となったBL兵に再び短剣で攻撃を仕掛ける。だが武器を失っても相手は機械鎧兵士、機械鎧の腕でガズンの短剣を防いだ。しかしガズンもさっきとは違い、空いている方の腕でBL兵の腹部に強烈なパンチを撃ち込んだ。BL兵は腹部の痛みと衝撃にその場に膝を突き俯せに倒れて気絶した。


「ヘっ、手こずらせやがって・・・」


 なんとかBL兵の一人を無力化する事に成功したガズンは少しだけ安心して表情を和らげる。だがその直後に別のBL兵が特殊警棒を持ってガズンに襲い掛かった。油断していがガズンはBL兵の奇襲に直ぐに反応できず、完全に隙だらけだった。ガズンは攻撃を受ける覚悟をして片目を閉じる。そこへ再び銃声が響き、BL兵はガズンに攻撃する前に銃撃を受けて仰向けに倒れる。ガズンが再び銃声のする方を向くと、やはりそこには愛銃を構えるリンドブルムの姿があった。


「全ての敵を倒すまで油断しちゃダメですよ?」

「ハハハ、御見それしやしたぁ・・・」


 注意するリンドブルムの方を向いて苦笑いをするガズン。これで三人のBL兵が無力化された。

 リンドブルムとガズンがBL兵と戦っていると、ファフニールはギガントパレードをでBL兵達のマチェットや特殊警棒の攻撃を防いでいた。攻撃を防ぐと直ぐに反撃をするファフニールであったがBL兵達もファフニールのハンマー攻撃を後ろに跳んで回避している。そのせいで中々決着がつかない。


「素早いですねぇ、でも、私は負けませんよ!」


 攻撃をかわされても決して動揺せずに攻撃を続けるファフニール。BL兵の一人がマチェットを構えてファフニールに攻撃を仕掛けてくる。ファフニールはギガントパレードの柄の部分でマチェットの斬撃を防いだ後にマチェットを払い、ギガントパレードで反撃した。ギガントパレードの頭はBL兵の脇腹に命中、その重さでBL兵を殴り飛ばしそのまま木に叩きつけた。BL兵の一人を倒してファフニールが態勢を整えようとした時、特殊警棒を持ったBL兵がファフニールの隙を突いてファフニールの左腕を特殊警棒で殴打する。


「ううっ!!」


 左腕に伝わる痛みにファフニールを歯を食いしばる。しかも殴打されたところから電気が走る様な痛みも広がる。ファフニールが特殊警棒を払いBL兵の方を見て構え直すと、BL兵は距離を取り特殊警棒を構えてファフニールを見ている。

 ファフニールが痛みに耐えながら特殊警棒を見ると、BL兵の持っている特殊警棒にバチバチと電気が纏われているのが映った。実はBL兵が使っている特殊警棒は電圧をかける電気警棒スタンロッドだったのだ。相手に当たれば打撃と電圧による二つのダメージを与えられるため警察や警備会社には多く採用されている代物。勿論ブラッド・レクイエム社も例外ではない。


「電気警棒・・・なんて面倒な武器を使ってるの・・・」


 ファフニールはギガントパレードを握りながらBL兵を見つめる。左腕の痛みはそれ程ひどくないが、何度も攻撃を受ければ流石にファフニールも不利になって行く。ファフニールは次に相手がどう動くかを予想しながらギガントパレードを構えた。

 BL兵はファフニールを見ながら一歩、また一歩と彼女に近づいて行く。BL兵も仲間を殴り飛ばしたファフニールの力を警戒しているのだろう。BL兵がゆっくりと電気警棒を振り上げて再び攻撃を仕掛けようとした、その時、突然BL兵を大きな影が包み込んだ。その影に気付いたファフニールとBL兵が上を見ると、そこには高く跳び上がっているドレッドキャットの姿があったのだ。驚いたBL兵が後ろに跳びドレッドキャットから離れた直後、BL兵の背後からもう一匹のドレッドキャットが茂みから飛び出してBL兵の背中を鋭い爪で切り裂いた。背後からの奇襲を避けられなかったBL兵が電気警棒を落し、その場に倒れ絶命した。


「・・・ありがとう、助けてくれて」


 

 ファフニールが自分を助けてくれたドレッドキャットを見て微笑みながら礼を言う。その時、ドレッドキャとの背後に最後のBL兵が姿を見せ、マチェットを振り上げてドレッドキャットを攻撃しようとする。それを見たファフニールは目を見張って驚く。それと同時にファフニールの脳裏に一匹の黒猫が自分の顔を舌でを舐めるが映像が浮かんだ。


「ミーちゃん危ないっ!!」


 咄嗟にそう叫んだ直後にギガントパレードを大きく横に振り、BL兵を殴打しそのまま殴り飛ばした。BL兵は数m飛ばされた後に木に叩きつけられ、地面に俯せに倒れる。


「ハァハァ・・・」


 ファフニールは自分が殴り飛ばしたBL兵の方を見ながら息を乱す。全てのBL兵を倒してリンドブルムとガズンもファフニールの下に駆け寄って来た。


「ファフニール、大丈夫?」

「今スゲェ攻撃だったなぁ」


 リンドブルムとガズンがファフニールに声を掛けるが、ファフニールは汗を掻き、乱れた呼吸のままジッと同じ方向を見ていた。まるで二人の声が聞こえていないかの様に。そんなファフニールを見てリンドブルムが彼女の肩に手を置く。


「ファフニール!」

「・・・え?」


 リンドブルムの力の入った声に反応してようやく二人の方を向いたファフニール。少し驚いた表情で二人の顔を交互に見ると、汗を拭って大きく深呼吸をした。


「スーーハァーー・・・大丈夫、何ともないよ・・・」

「それならいいけど、さっき特殊警棒で左腕を殴られたでしょう?」


 ファフニールを心配しながら左腕を指差すリンドブルム。ファフニールの殴られた部分は若干赤くなり、微量ではあるが出血している。その傷を見たファフニールは小さく笑いながら顔を横に振った。


「大丈夫。ナノマシンで直ぐに血は止まるし、これくらいなら直ぐに痛みも引くうよ」


 笑いながら気にしないようリンドブルムに伝えるファフニール。だがそれでも心配そうな表情を見せるリンドブルム。左腕の傷は勿論、ミーちゃんと叫びながら乱れていたファフニールを見て心配するのは当然だ。彼女の過去を知ってる人間なら尚更である。

 ファフニールが笑いながら二人の方を見ていると、ドレッドキャットがファフニールに近づいて来て彼女の左腕の傷口を静かに舐めた。


「え?」


 突然自分の傷を舌で舐めるドレッドキャットにファフニールは思わず驚く。猛獣と恐れられたドレッドキャット、しかも敵であった自分の敵であった存在が自分の傷口を舐めているのだから驚くのも無理はない。リンドブルムもドレッドキャットを見て目を丸くしている。だがガズンはニッと笑いながらドレッドキャットの頭を撫でた。


「ハハハハ!お嬢ちゃん、どうやらミルバに気に入られたらしいな?」

「え?私が、ですか?」

「おうよ。お嬢ちゃんさっきミルバが襲われた時にコイツを助けただろう?それできっとお嬢ちゃんの事が気に入って礼をしてるんだよ。ドレッドキャットは獰猛な性格だが賢い生き物だ、だから助けてくれたお嬢ちゃんに感謝してるんだろうぜ」

「敵である私に感謝を・・・?」

「確かにさっきまでは敵だったが、今では共闘する存在だ。感謝するのは変な事じゃねぇだろう?」


 ガズンはファフニールを見下ろしてながらニヤニヤしながらそう話す。普通の子供が見れば直ぐに怖がって離れてしまう様な顔の大男をファフニールは意外そうな顔でガズンを見ながら黙り込む。そして気付いた、目の前の魔獣使いの男の中にある小さな優しさに・・・。


「・・・そうですね。貴方の言うとおりです。ありがとう、ミルバちゃん」


 ニッコリと笑いながらミルバを見て礼を言うファフニール。ミルバは傷口を舐めるのを止めてファフニールの黙って見つめた。


「なぁ、お嬢ちゃん。出来ればちゃん付けするのは止めてくれねぇか?それじゃあ可愛らしさが出て迫力が欠けちまう様な気が・・・」

「えぇ~?可愛いじゃないですかぁ」

「いや、だから可愛いって言うのは・・・」


 名前の呼び方で言い合いを始めるファフニールとガズン。頬を少し膨らませるファフニールと困り顔のガズン。その光景はさっきまで敵対し合っていた者同士には見えない光景だった。そんな二人を見てリンドブルムが手を叩きながら声を掛ける。


「話は後にしてください、早くここを離れて本拠点に向かいましょう。今の戦いで敵の僕達の位置がばれてしまいました、次の敵部隊が来る前に離れないと!」

「・・・そうだな、ボウズの言うとおりだ。お嬢ちゃん、一先ず此処を移動するぞ?」

「あっ、ハイ。分かりました」

「ガルバ、ミルバ!行くぞ!」


 ガズンはミルバと離れた所にいるガルバを呼んで移動を指示する。リンドブルム達は敵に見つかる前にその場を移動してストラスタ軍の本拠点がある場所へ急いだ。リンドブルム達が移動してから五分後、近くにいたブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士部隊がやって来て倒された仲間達を目にして周囲を警戒しながら捜索に戻った。勿論、エントにその事をしっかりと伝えて。

 リンドブルム達は先程戦闘を行った場所から600m離れた場所にいた。敵と遭遇しないようにする為に此処まで真っ直ぐ走って来たのだ。ある程度距離を取って敵に見つかる心配もないと感じた彼等は走るのを止めて再び慎重に歩き出した。


「流石に此処まで来れば大丈夫だろう」

「敵はさっき僕達が戦闘を行った場所に集まっている可能性がありますから遭遇する可能性は低いかもしれませんが、それでも油断できませんよ?」

「分かってるぜ」


 前に進みながらガズンに忠告するリンドブルム。ガズンはリンドブルムの方を向いて笑いながら軽く受け答えした。ファフニールはガルバとミルバを見ながら何処か嬉しそうな表情を浮かべている。ガルバとミルバもファフニールに対して警戒心が無くなったのか唸る事無く普通にファフニールの側を歩いていく。リンドブルムはそんなファフニールを見て微笑んだ後、ガズンの方を向いて声を掛けた。


「ガズンさん、本拠点はどの辺りですか?」

「もうすぐだ、あと少し進めば見えて・・・んん?」


 前を見ていたガズンが何かを見つけたのか足を止めて目を少しだけ鋭くする。リンドブルムもつられる様に歩くのを止めて前を見た。200m程先に広場の様なものが見え、そこから灰色の煙が出ていたのだ。二人の後ろにいたファフニールもその光景を目にして驚いている。


「あれは!?」

「クソッ!遅かったのかよ!」


 驚くファフニールと襲撃を受けたと気付いて歯を食いしばるガズン。


「行きましょう!もしかしたら生き残ってる人がいるかもしれない!」


 リンドブルムの言葉に全員は急ぎ本拠点へ向かって走る。ガルバとミルバも三人に続いて走り出した。木や茂みを掻き分けて本拠点へ近づいて行く三人。そして木の間を抜けて本拠点のある広場に飛び出した三人は目の前の光景に言葉を失った。ストラスタ軍のテントは全て切り裂かれたり焼かれたりしてボロボロになっており、周りにはストラスタ兵達の死体が幾つも転がっていた。その殆どが銃器によって射殺された死体ばかりだ。

 倒れているストラスタ兵に近づく三人は周囲を見回して生きている者がいないかを探し始める。だが全てのストラスタ兵を調べたが全員死んでいた。


「クッソォ・・・皆殺しかよ・・・」

「奴等は敵に対して一切情けをかけない連中です。しかも見たところ、抵抗した様子の無い人もいます。きっと降参したのに容赦なく殺されてしまったんでしょう・・・」

「奴等、本当に人間かよ!」


 騎士団の人間であまり気が合わなかったとは言え、同志を無残に殺された事にガズンは腹を立てる。悔しがるガズンをリンドブルムとファフニールはただ黙ってジッと見つめていた。


「此処はストラスタ軍の中でも持っとも戦力の大きかった所、そこがここまでやられているとなると・・・」

「予備拠点に残して来た人達も多分・・・」


 更に嫌な結末を想像して暗い顔を見せるリンドブルムとファフニール。ガズンは近くで周囲の匂いを嗅いでいるガルバとミルバの姿を見て頭を撫でながら舌打ちをする。

 遭遇したBL兵の部隊を倒して本拠点のある広場にやって来たリンドブルム達であったが、そこは既にブラッド・レクイエム社の手によって全滅させられていた。倒れているストラスタ兵達を見てリンドブルム達はブラッド・レクイエム社の者達の残虐性を理解する。


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