第五十九話 森林戦の序曲
エントを撃退したヴリトラ達は態勢を立て直したエントと森に潜伏しているブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士達からの集中攻撃を避ける為にバラバラに散らばる。そして散開した一同はそれぞれブラッド・レクイエム社との戦いを始めるのだった。
避難小屋から離れた散開した一同の内、ヴリトラはオロチとアリサの二人と行動を共にしていた。三人は姿勢を低くして大木の陰に身を隠している。
「・・・今のところ敵の姿は無いな」
「だが、いずれは見つかってしまうぞ・・・」
「ああ、分かってる。直ぐに移動しよう」
ヴリトラとオロチは大木の陰から周囲を警戒しながら直ぐに次の場所へ移動する事を決める。そんな二人の間でアリサは騎士剣を握って落ち着きの無い表情で周りを見回していた。
「おい、アリサ。そんなに動揺するな、お前はエリートの姫騎士だろう?」
「そ、そんな事言っても、あのマシンメイルソルジャーって言う敵は七竜将の皆さんと同じ位の強さを持ってるんでしょう?隊長やラランは戦った事があるから大丈夫かもしれませんけど、私は経験がありませんし・・・」
アリサはラピュスとラランから機械鎧兵士の強さを聞いていたらしく、初めて戦う未知の敵の強さとプレッシャーに動揺を隠せずにいる。それを見て、オロチは姿勢をアリサの顔に自分の顔を近づけ、彼女の顎を掴んで自分の方を向かせる。
「取り乱すな。戦場では冷静さを失った者が一番最初に命を落とす、未知の敵と戦うからと言って冷静さを失えば的確な判断も出来なくなる。平常心を保て・・・」
「ハ・・・ハイ・・・」
オロチの冷たくも説得力のある言葉にアリサは表情を少しだけ和らげながら返事をする。その後に数回小さな深呼吸をして落ち着くアリサを見てオロチは無表情でアリサを見つめ、ヴリトラも二人を見ながら苦笑いを浮かべた。そんな時、ヴリトラとオロチの耳にはまっている小型無線機からコール音が聞こえ、それに気付いた二人は小型無線機のスイッチを入れる。
「・・・こちらヴリトラ」
「ヴリトラ?俺だ、ジャバウォックだ」
「ジャバウォックか、そっちは大丈夫か?」
小型通信機から聞こえてきたジャバウォックの声を聞いてホッとするヴリトラ。状況を尋ねるとジャバウォックの少し低い声が聞こえてきた。
「こっちは問題なよ。ラランも無事だし敵とも遭遇していない」
ジャバウォックは小型通信機に指を当てて周りや上を見ながら現状をヴリトラに知らせる。ジャバウォックの隣ではラランが突撃槍を地面に置いて大きな岩にもたれながら座り込んでいた。
「今お前達は何処にいるんだ?」
「あの避難小屋から北東に1K行った所にある大きな岩の下だ。敵には遭遇しかったが、姿も見ていない」
聞こえてくるヴリトラの質問にジャバウォックは周囲を警戒したまま質問に答えた。すると今度はヴリトラの低い声が小型通信機から聞こえてくる。
「だとしたらちょっと面倒だな。これだけ広い森だから俺達は敵に気付かれる事はなかった。敵には見つからなかったが逆に言えば俺達もブラッド・レクイエムの連中を見つけ難くなってるって事だ」
「長期戦になるのは間違い無しか・・・」
深刻な現状を話し合っているジャバウォックとヴリトラ。そこへラランがジャバウォックの手を指で軽く突いて彼を呼ぶ。気付いたジャバウォックは自分を見上げているラランの方を向いた。
「何だ、ララン?」
ジャバウォックは通信中に自分を突いたラランを見下ろしながら尋ねる。ラランは周囲を見回しながら静かに口を開いた。
「・・・この森は凄く大きい。さっきの避難小屋以外にも川や高台、あと広場とか色んな所で構成されている。騎士団や地元の人達でも迷う事がある」
「迷いの森って事か・・・」
「・・・それから大きな木や岩や茂みも多いから隠れる所が多い」
ラランからフォルモントの森の構成を詳しく聞いたジャバウォックは小型無線機の向こう側にいるヴリトラ達に森の詳しい情報を伝えた。
「皆、聞こえるか?ラランからこの森がどんなエリアで構成されているのかを聞いた。かなり広く、地元の人間ですら迷うと言われてる位の森らしい。俺達はこの森の事を何も知らない、だが奴等は森での戦闘を得意としている部隊だ。つまり、今の状況でも俺達は不利に立場にあるって事になる」
「しかも奴等は俺達がこの森に来ることを予想していた。俺達を倒す為に十分な装備をしているって事になる」
ジャバウォックが小型無線機を使って七竜将全てのメンバーに情報を伝えると、今度はニーズヘッグの声が聞こえてきた。
ニーズヘッグはラピュスとジルニトラの二人と共に避難小屋から東に800m行った所にある大きな茂みの中で姿勢を低くして周囲を経過している。ラピュスは騎士剣を握り、ジルニトラはサクリファイスを構えて茂みの中で敵を警戒した。
「恐らく敵も俺達みたいに幾つものチームに分かれて行動しているだろう。半分は俺達を捜索するチームとして森を巡回し、もう半分は森の色んな場所に身を隠して俺達を待ち伏せしている可能性が高い。戦いが長引けばそれだけこっちが不利になる」
ニーズヘッグのより細かい状況を聞かされてヴリトラ達は真面目な顔で黙り込む。この森での戦いは最初からヴリトラ達が不利な状態であった為、迂闊に動けない。下手に動けば直ぐに敵に見つかってしまう。しかも敵側にはまだエントと言う主戦力が残っている上に敵の正確な人数も分からない。戦力でも情報力でもヴリトラ達はブラッド・レクイエム社に劣っていた。
不利な現実を突きつけられ、七竜将は深刻そうな表情を浮かべ、姫騎士達やガズンは苦虫を噛むような顔をする。だがそこへヴリトラの力の入った声が聞こえてきた。
「確かに、情報も戦力も俺達は奴等より劣ってるかもしれない。その上、森での戦いは慣れていないからどう動けばいいのかも分からないだろう。だが、だからと言って諦めたらそれで終わりだ。俺達は今まで多くの修羅場を潜りに抜けてきた、その修羅場に比べたらこんなのはまだ序の口さ」
ヴリトラの言葉を聞いたラピュス達は自分達の過去の戦いを思い出す。七竜将は向こうの世界で経験した多くの戦い、姫騎士達はトコトムト村、ゴルバンの町での戦いを振り返る。激しい戦いで自分達は命を落とすかもしれない経験だってした。だがそれでも自分達は生き残って今を生きている。その現実がヴリトラ達に活力を与えたのだった。
「まったく、お前ってどんなに不利な状況でもいつも前向きだったよな?」
「そうそう、でも何ぜかヴリトラが話すと勝てる気がするって感じになっちゃうんだよね」
話を聞いたジャバウォックとリンドブルムが小さく笑いながらそう言い、他の七竜将も静かに微笑む。七竜将の話を聞いていたラピュス達は不思議そうな表情で七竜将を見つめていた。
(・・・彼等はいつも自分達が不利な状態なのに殆ど不安そうな顔を見せない。彼等のこの自信は一体何処から出て来るんだ?)
ラピュスは七竜将の不思議な自信を目にして心の中で考えながら呟く。離れた所にいるラランやアリサも同じように考えている。
姫騎士達が七竜将の精神の強さに驚いている中、七竜将は話を進めて行く。
「まぁ、そんな俺達にもこの森に詳しい仲間がいるからまだ完全に不利になったと決まった訳じゃないしな」
ヴリトラのその言葉を聞いて七竜将は不思議そうな顔を見せる。だがその中でリンドブルムとファフニールだけはヴリトラの言葉の意味を理解していた。
リンドブルムとファフニールはゆっくりと振り返り、自分達の後ろでガルバとミルバの頭を撫でながら話を聞いているガズンの顔を見た。自分の方を向く幼い少年と少女にガズンも二人の方を見て小首を傾げる。
「成る程ね、ガズンさんとドレッドキャットがいればこっちも相手と条件が同じになるね」
「それに私達が来る数日前にこの森に来てるから森の何処に何があるのかも分かるし」
二人は微笑みながらガズンを見て小型通信機の向こう側にいる仲間達に話しかける。ガズンは二人の話を聞いて何の話をしているのかを察してゆっくりと立ち上がる二人の方へ歩いて行く。
「おいおい、勝手に話を進めないでくれよ。俺達は休戦するがお前達に協力するとは言ってねぇぜ?」
二人は目の前で自分達を見つめるガズンを見上げてまばたきをする。休戦協定を結んだが仲間になるとは言っていないガズンはリンドブルムとファフニールを見下ろしながら困ったような顔で言う。そんなガズンをファフニールは無表情で見上げながら静かに口を開いた。
「確かに私達は休戦をしただけで仲間になった訳ではありません。でも、聞いたはずですよ?エント達は私達だけじゃなくて貴方とその子達も殺すつもりです」
ファフニールは地面で寝ながら自分達の方を向いているガルバとミルバをチラッと見つめて言う。ガズンも二匹のドレッドキャットの方を向いて難しそうな顔をした。
「奴等は僕達を始末した後に目撃者である貴方も必ず殺します。アイツ等は自分達の情報を他の国や人達に知られるのを望んでいない筈ですから」
「だから、アイツ等は貴方達を見逃しません。無事に此処から抜け出す為にも協力し合いましょう」
ファフニールとリンドブルムの説得を聞き、ガズンはしばらく黙り込んで考えた。そして答えを出したのか二人を真剣な顔で見つめる。
「・・・いいだろう。ブラッド・レクイエムとかいう連中が危険な奴等だって事は避難小屋の戦いで理解した。そして俺達だけじゃ勝ち目がねぇって事もな」
「それじゃあ!」
「ああ。それにお嬢ちゃんにはガルバとミルバを守ってもらった借りもあるしな」
「ありがとうございます!」
共闘を受け入れたガズンにファフニールは笑顔で礼を言う。ファフニールとガズンの会話を見ているリンドブルムは小型無線機でヴリトラ達に事を説明する。
「皆、ガズンさんが一緒に戦ってくれることになったよ」
「そうか。それじゃあ、早速この森の事についてガズンのおっさんに教えてもらうか」
小型無線機の向こうでヴリトラが笑いながらガズンに森の情報提供を要請する。リンドブルムはその事をガズンに伝えるとガズンは森の細かい場所などを説明し始める。小型通信機を通して全員に情報が行きわたると、ヴリトラが各チームに指示を出して行く。
「よし、それじゃあ確認するぞ?俺達の最終目的はブラッド・レクイエムの機械鎧兵士部隊の殲滅、もしくは撃退だ。だがその前に安全圏を確保しておく必要がある。まずは俺達は森に入る時に通った西の出入口へ戻ってそこを確保する。リンドブルムとファフニールはガズンのおっさんと一緒に出会う敵を倒しながらストラスタ軍の本拠点のある所へ向かってくれ。もしかしたら生き残りがいるかもしれない」
「分かった!」
「了解!」
リンドブルムとファフニールはヴリトラの指示を聞いて力強く返事をする。
「ジャバウォックとラランはあの予備拠点へ戻ってストラスタ兵達の保護を頼む」
「ブラッド・レクイエムに殺されてなかったら、な・・・」
最悪の結果も予想しながらジャバウォックは低い声でそう言った。それを聞いたヴリトラもジャバウォックと同じように悪い状況を予想しているのか鋭い表情で上を見る。
「残ったニーズヘッグ達は森の中を回ってブラッド・レクイエムの連中を探してくれ。もし不利な状況だと感じたら直ぐに後退しろ。俺達も自分達の役割が終ったら直ぐに敵の捜索に移る」
「分かった」
「了解・・・」
ニーズヘッグとオロチも自分達に与えられた役割を聞き返事をする。各自、自分の役割が決まると自分達の武器を手に取り、真面目な表情を浮かべる。
「ではこれより、フォルモントの森脱出及びブラッド・レクイエムの撃退作戦を開始する。もう一度言うけど絶対に無茶はするな、戦士としてのプライドなんかよりも自分の命を大切にしろ。死んじまったら元も子もないんだからな」
「「「「「「了解!」」」」」」
ヴリトラの言葉に七竜将は一斉に声を揃えて返事をする。ラピュス達は小型通信機を通して会話をしている彼等の話の内容は聞こえておらず、返事をする七竜将を見て少し驚いていた。そしてヴリトラ達は各自、行動を開始した。
まず最初に動いたのはヴリトラ達のチームだった。ガズンから得た情報を頼りに森を進んで行き自分達が通った西の出入口へと向かって進んで行く。BL兵達の姿がないか警戒しながら慎重に茂みの中などを進んで行くと見覚えのある道の前に出た。
「この道、確か私達が分かれたY字の道ですよ!」
見覚えのある道にアリサのテンションが少しだけ上がる。ヴリトラとオロチも道を見て周囲を見回しながら思い出していく。
「確かのこの道は私とリンドブルム達が通った道だ・・・」
「それじゃあ、この道を戻って行けばあのY字の分かれ道へ戻れるって事だな」
「そういう事になる・・・」
「ならこの道を辿ってさっさと戻ろう」
ヴリトラが分かれ道のある方へ歩こうとするとオロチがヴリトラの特殊スーツの襟を掴みヴリトラを止める。
「ぐえぇ!?」
突然襟を引っ張られて首をガクンとしながら声を漏らすヴリトラ。体勢を直して振り返り無表情のオロチをジッと見た。
「いきなり何するんだよ、オロチ!?」
「ズンズン突っ込むな。偵察兵の私がいるんだ、まず私が先に行って様子うかがって来る・・・」
「先に行くって、大丈夫なのか?」
「私を誰だと思ってる・・・?」
そう言ってオロチは斬月を担いで高くジャンプする。近くに生えている高い木の枝の上に飛び乗り周囲を見回して敵の姿が無い事を確認すると、直ぐ真下にいるヴリトラとアリサを見下す。
「私が入口の方を見てくる。お前達は私が行った後に入口へ来い。何かあったら無線機で連絡する・・・」
「・・・分かったよ。でも、さっきも言った通り、無茶はするなよ?」
「了解した・・・」
簡単な会話をするとオロチは別の木の枝に跳び移り、それを繰り返して西の出入口の方へ向かって行く。その姿を見送るヴリトラと心配そうな表情でオロチの背中を見つめるアリサ。アリサは隣でジッとオロチの向かった方を見つめているヴリトラに声を掛けた。
「あのぉ、オロチさん、大丈夫なんですか?」
「心配ねぇよ。アイツは感情を殆ど感情を表に出さなくて何考えてるのか分からない事があるけど、強さは本物だ。それに、クールに見えて優しい一面もあるんだ、俺達の事を心配して先に偵察に行ったんだよ」
「そ、そうなんですか・・・」
オロチの意外な一面に少し驚くアリサ。二人がそんな話をしている時、移動中のオロチは小さなクシャミをしていたのだった。
枝から枝へと飛び移り西の出入口に近づいて行くオロチはようやく出入口を視界に入れる。出入口の一番近くに生えている木の枝に飛び移り姿勢を低くするオロチは出入口の前を見る。そこには武器を持ったBL兵が五人、出入口の前で横一列に並んで周囲を見張っている。敵の姿を確認したオロチは耳の小型無線機のスイッチを入れてヴリトラ達に連絡を入れる。しばらくコール音が鳴っていると音が切れてヴリトラの声が聞こえた。
「・・・こちらオロチ。ヴリトラ、聞こえるか・・・?」
「ああ、良好だ。で、そっちはどうだ?」
「やはりこっちの出入口にもブラッド・レクイエムの兵士が見張っている。数は五人、MP7を装備した奴が三人と『モスバーグ』を持つ奴が二人だ。他には見当たらない・・・」
「そうか。分かった、俺達も直ぐ行く。それまで待ってろ」
「了解・・・」
そう言い小型通信機のスイッチを切ったオロチは入口前にいるBL兵達を見張る。MP7を持つBL兵達が前に出て、その後ろに「モスバーグ M500」を持つBL兵達が立ち前に立つ三人をバックアップする様な態勢に入った。
しばらくして、ヴリトラとアリサも西の出入口の近くまでやって来た。二人はBL兵達に気付かれないように近くの茂みに隠れながらBL兵達の様子を伺う。そして木の枝の上に立ち自分達を見下ろしているオロチを見つけて小さく手を振って合図を送った。オロチは枝の上からBL兵達を指で指して何かの合図を送る。それを見たヴリトラもBL兵達の方を見た後に親指を立ててグーと合図をした。するとヴリトラは隣で茂みに隠れているアリサに小声で話しかける。
「アリサ、俺とオロチで敵を黙らせる。お前は此処に隠れてろ」
「え?でも、私も一緒に戦って・・・」
「アイツ等がマチェットの様な近接戦闘の武器を使っているのならともかく、アイツ等が銃器を使ってるんだぞ?斬る為に相手に向かって走って行ったら狙い撃ちにされてアウトだ。だからお前は此処に隠れてろ、いいな?」
「・・・ハ、ハイ」
自分にとって初めて戦うブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士、そして初めて目にする銃火器。敵の情報や戦い方を全く理解していない自分が行っても足手纏いにしかならない、その事に気付いたアリサは渋々頷いた。アリサが頷くのを見たヴリトラはもう一度オロチに合図を送る。その合図を見て頷いたオロチはゆっくりと体勢を直し斬月を両手で持つ。それと同時にヴリトラは茂みから飛び出して出入口前に立つBL兵達の前に躍り出た。
突然目の前に飛び出て来たヴリトラを見つけ、驚いて銃を構えるBL兵達。ヴリトラとBL兵達の距離は約50m、どちらも走れば直ぐに相手の目の前まで到達できる距離だった。ヴリトラは森羅を抜いて両手で持ちながら勢いよく走り出した。突然自分達に向かって走って来るヴリトラにBL兵達はMP7とモスバーグを発砲して応戦する。だがヴリトラは森羅で弾いたり、ジグザグに走りながら銃撃を回避し徐々に距離を詰めて行く。そしてBL兵達の前まで到達すると勢いよく森羅を横へ振ってBL兵達に斬る。五人の内、MP7を持つ三人は斬られてその場に倒れるがモスバーグを持つ二人は後ろに跳んで斬撃を回避する。
「かわされたか!」
斬撃をかわされてBL兵に反撃のチャンス与えてしまったヴリトラは悔しそうな顔をする。そして回避したBL兵達はモスバーグの銃口をヴリトラに向けて引き金に指を掛ける。引き金を引こうとした直前に木の上から回転する斬月が飛んで来てBL兵二人の体を横から真っ二つにした。BL兵達は反撃も出来ずにその場に倒れる。
「助かったぜ!」
ヴリトラは木の枝の上から自分を見下ろしているオロチの方を向いて礼を言う。オロチも枝から飛び下りてヴリトラの隣に着地する。そして飛ばされた斬月は回転しながらオロチの手の中に戻った。茂みの中に隠れていたアリサも安全を確認すると二人の下へ駆け寄る。
「終わったんですか?」
「ああ、確認出来た敵はな」
「まだ他にもいるかもしれない。確認する必要がある・・・」
オロチは辺りに気配が無いかを確認しながら歩きだし、ヴリトラも倒れているBL兵達の持ち物を調べ始めた。
ヴリトラ達のブラッド・レクイエム攻略作戦が始まった。確認できない敵の人数と装備、そして未だに未知であるエントの機械鎧の性能。ヴリトラ達の作戦は始まったばかりだった。




