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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第四章~祖国の為に刃を向ける~
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第五十四話  ドレッドキャットの猛攻!

 自分達の潜入がストラスタ軍にバレたヴリトラ達は態勢と整える為に近くの敵拠点を制圧する事にする。だが、敵の予備拠点を制圧したヴリトラチームの前に今回の戦いにおける敵戦力の要と言えるドレッドキャットが姿を現すのだった。

 ヴリトラ達は自分達の武器を手にし、目の前で自分達を睨みながら唸っているドレッドキャットを見て構えた。生き残ったストラスタ兵達も驚いてテントの隅に移動している。


「コイツが、ドレッドキャットか・・・」

「本当にライオンみたいな生き物だな」


 ドレッドキャットの姿を見て改めてその大きさと迫力を理解するヴリトラとジャバウォック。ジリジリと自分達に向かって距離を詰めて行くドレッドキャットは何時ヴリトラ達に跳びかかって来てもおかしくない程興奮している。


「気を付けろ、ドレッドキャットの力は強く、その力で引っ掻けば厚さ3cmの鉄板すらも引き裂いていしまう!」

「マジかよ?確かにあの鋭い爪には注意しなくちゃな・・・」


 ラピュスの説明を聞いてドレッドキャットの爪に注意するヴリトラ。すると今度はアリサが騎士剣を強く握り七竜将の方を向く。


「気を付けるべきなのは爪だけじゃありませんよ?ドレッドキャットの一度獲物に噛みついたら簡単には放しませんし、その噛む力は人間の腕なんて簡単に噛み千切ってしまう程です!」

「・・・やっぱりライオンと同じか」


 アリサの話を聞いたジャバウォックが目の前の猛獣をライオンと同じだと断言する。その隣ではファフニールが何処かもの寂しげな表情でドレッドキャットを見ていた。


「・・・ん?」

「・・・・・・」


 黙ってドレッドキャットを見ているファフニールに気付くジャバウォック。ファフニールはギガントパレードを握ったまま立っている。その姿にジャバウォックは目を細くして彼女を見下ろした。


「・・・おい、ファフニール」

「・・・え?」


 声を掛けられてハッとするファフニールはジャバウォックの方を向いた。


「大丈夫か?」

「う、うん!大丈夫・・・気を付けないとね・・・」


 少し動揺する様な顔を見せながら頷いて気を引き締め直すファフニール。その表情にはどこか迷いの様な感情があると感じ取るジャバウォックは表情を変えずにファフニールを見ていた。


(ファフニールの奴、この猛獣を見て『昔』を思い出したな・・・。戦闘に差支えなければいいが・・・)


 心の中でファフニールの過去の事を思い出して難しい顔へ変わるジャバウォック。するとそこへ耳に付けてある小型通信機からコール音が鳴る。七竜将はドレッドキャットに注意して小型通信機のスイッチを入れた。


「・・・こちらジャバウォック」

「こちらリンドブルム、皆聞こえる!?」


 小型通信機から聞こえてくるリンドブルムの少し慌てた様な声にヴリトラ達の表情が鋭くなる。


「ジャバウォック?・・・そこにヴリトラ達はいるの?」

「ああ、全員いるぜ。一体どうしたんだ、慌てるなんてお前らしくねぇぞ?」


 ジャバウォックがドレッドキャットを見てデュランダルを構えながら尋ねると、今度はジルニトラの声が小型通信機から聞こえてきた。


「慌てるのも当然よ、いきなり目の前にドレッドキャットが現れたのよぉ!?」

「ととっ・・・ジルニトラ、会話中に割り込むのはやめろって前にも言ったじゃ・・・何?ドレッドキャット?」


 リンドブルムとの会話に割り込んできたジルニトラに注意しようとするジャバウォックだったが、彼女の最後の言葉を聞いて思わず聞き返した。するとリンドブルムと同じ様に少し慌てたジルニトラの声が聞こえてくる。


「そうよ、避難小屋を制圧した直後にいきなりドレッドキャットが出て来たのよ!」

「そっちもか?実は俺達もそのドレッドキャットさんから睨まれてるところだ」


 ジルニトラの話を聞いてヴリトラが自分達の現状を伝える。それを聞いて今度はリンドブルムの声が小型通信機の向こう側から聞こえてきた。


「そっちも?両方のチームの前にほぼ同時にドレッドキャットが姿を現すなんて、タイミングが良すぎるよ」

「ああ、まるでドレッドキャットが俺達の動きを見張って仲間に何かしらの方法で状況を伝えた様だ・・・」

「僕達みたいに通信機を使うでもしない限り無理だよ、そんな事」


 小型通信機を通して話をしているヴリトラとリンドブルムはドレッドキャットの行動の効率の良さに驚くのと同時に不審に思う。そんな会話をしていると、ラピュスがヴリトラの隣まで来て彼の腕を軽く突く。ヴリトラはラピュスの方を向いて耳を傾けた。


「それはきっと魔獣使いの調教のせいだと思うぞ?」

「調教の?」

「前にも言ったように魔獣使いに調教された猛獣達は野生の猛獣よりも強くなる。それは力だけでなく頭も良くなり知恵も回るという事だ。前もって敵がどう動いたら自分達はどの様な行動するかを魔獣使いに教えられていたのだろう」

「だから、ほぼ同時に敵の拠点を制圧した俺達を見張っていたドレッドキャット達が同時に俺達の前に現れたって事か?」

「ああ、少なくともドレッドキャット達には遠くにいる仲間に相手の状況を知らせる様な連絡手段は無い」


 ラピュスからドレッドキャットの生態を聞いて頭の中を整理するヴリトラ。周りでもジャバウォック、ファフニール、アリサ、そして小型通信機を通してリンドブルム達がラピュスの話を聞いている。


「つまり、俺達とリンドブルム達の所に同時に出て来たのは偶然だって事か?」

「多分な?だが、奴等がとても厄介な相手だという事が間違いない」

「気は抜けないって事か・・・」


 ヴリトラとラピュスは自分達の前のドレッドキャットを見ながら話しをし、ヴリトラはドレッドキャットから視線を変えずに小型通信機の語りかけた。


「聞こえたか、リンドブルム?奴等が出て来たタイミングは偶然だが、手強い事は間違いない。初っ端から全力で行け」

「分かった。そっちも気を付けてね?」

「ああ、そのつもりだ」


 ヴリトラは小型通信機のスイッチを切り、戦いを始めようと構え直した、その時、ドレッドキャットが突然ヴリトラに向かって飛びかかって来たのだ!それを見て驚くヴリトラとラピュスは目を見張って驚いた。咄嗟にラピュスを庇うように大きく跳んでその場を離れ、ドレッドキャットの奇襲を回避する事に成功する。ドレッドキャットは二人が立っていた所に鋭く伸びる爪を押し当て、爪は地面にめり込む様に刺さっていた。


「あっぶねぇ~!大丈夫か?ラピュス」

「あ、ああ。助かった・・・」


 ヴリトラに抱かれながら地面に倒れているラピュス。二人は上半身を起こしてこちらを睨んでいるドレッドキャットを鋭い目で見つめる。


「ったくぅ!さっきまで大人しく聞いてたんだから、最後まで待ってろよなぁ!」

「まぁ、いくら知性が有っても敵を待つほどアイツ等は甘くは無いという事だな」


 立ち上がって地面の落ちている森羅と騎士剣を拾って構え直すヴリトラとラピュス。ドレッドキャットの後ろではジャバウォック達が自分達の武器を握って構えている。


「お二人さん、大丈夫か!?」

「ああ、なんとかな」

「敵はコイツ一匹でもかなり厄介だ。何しろ魔獣使いに育てられた猛獣だからな、野生の獣より立ちが悪い。気を抜くなよ!」

「ハ、ハイ!」


 ジャバウォックの忠告を聞いて返事をするアリサ。ヴリトラとラピュスもドレッドキャットに意識を集中させて次にどう動くかを推理し始める。だがその中で一人、ファフニールだけは黙ってドレッドキャットの背後を見つめていた。それに気づいたジャバウォックはファフニールに喝を入れる。


「ファフニール!油断するなよ?」

「ッ!・・・う、うん!」


 ボーっとしていたファフニールはジャバウォックの言葉で我に返り頷く。そして全員の準備が整った直後に、ドレッドキャットは再び動き出す。ドレッドキャットはさっき攻撃が避けられた事が気に入らなかったのか再びヴリトラとラピュスに向かって走り出す。


「ラピュス、別れるぞ!アイツをかく乱させるんだ!」

「ああっ!」


 ヴリトラとラピュスはそれぞれ左右に跳んで走って来るドレッドキャットをかく乱させる作戦に出た。ドレッドキャットは左右に別れた二人を見て足を止める。ヴリトラは左に、ラピュスは右に跳んだ後にドレッドキャットの側面へ移動し、ドレッドキャットを挟む位置に立つ。


「ハアッ!」

「タアァ!」


 ヴリトラとラピュスはドレッドキャットの側面から一気に走って近づき、森羅と騎士剣を上段で構えて攻撃を仕掛けようとする。だがドレッドキャットは二人が森羅と騎士剣を振り下ろす直前に高くジャンプしてヴリトラとラピュスの視界から移動した。


「なぁ!?」

「何だってぇ!?」


 消える様な速さで跳び上がり自分達の視界からいなくなったドレッドキャットに驚いたラピュスとヴリトラは武器を振り下ろすのを止めて上を見上げる。ドレッドキャットはまるで空中にバク転をするかの様に回りながら後ろに移動し、二人から離れた位置に華麗に着地した。そしてその直後に再び地を蹴りヴリトラとラピュスに向かって突っ込んで来る。


「グワァーーーッ!」

「ヤバい!」


 大きな声で吠えながら走って来るドレッドキャットを見て危険を察知したヴリトラは隣に立っているラピュスを突き飛ばした。


「うわあぁ!?」


 突然突き飛ばされてその場に座り込むラピュス。ふとヴリトラの方を向くとドレッドキャットヴリトラに飛び掛かり、鋭い爪がヴリトラに迫って来る光景が目に飛び込んだ。その光景を見てラピュスは思わず驚いて表情を固めた。ヴリトラはあまりにも敏捷なドレッドキャットの速さに対応が遅れてしまい、ラピュスを助ける為に彼女を突き飛ばしたのだ。


「ヴリトラ!」


 回避する事が出来ないヴリトラを見て思わず名を叫ぶラピュス。ドレッドキャットの鋭い爪がヴリトラの側顔に触れそうになった瞬間、ヴリトラの左腕がドレッドキャットの爪をギリギリで止めた。ドレッドキャットの爪がヴリトラのコートに食い込んでいくが、彼は表情を変えない。それもその筈、彼の左腕は機械鎧なのだ。つまり痛みなどは一切感じないという事。機械鎧兵士達にとって機械鎧は義肢であると同時に盾でもあるのだ。

 ヴリトラは後ろ足二本で立ち、全体重を自分に掛けてくるドレッドキャットを見上げて右手に持つ森羅を強く握る。


「・・・確かに強くて敏捷な猛獣だ。だけどなぁ、相手の動きや攻撃を読んで行動しない点を考えれば、やっぱり動物だな!」


 力の入った声で言うヴリトラは森羅をゆっくりと上げてがら空きになっているドレッドキャットの脇腹を斬ろうとする。その時、突然一本の縄の様な物が茂みから飛んで来て森羅の刃に巻き付いた。これによりヴリトラは森羅を動かす事が出来なくなり、攻撃を封じられてしまう。


「!?」

「あれは・・・!」


 突然森羅に巻き付いて縄状の物に驚くヴリトラとラピュス。よく見るとその縄状の物は革で出来ている事に気づき、二人は、そして戦いを見ていたジャバウォック、ファフニール、アリサの三人もそれが鞭だという事を理解した。


「悪いが俺の可愛い仲間を殺させはしねぇぜ?」


 鞭が飛んで来た茂みから聞こえてくる低い男の声。ヴリトラ達が一斉に茂みの方を向くと、茂みから鞭を握ったガズンが姿を現した。しかもガズンの後ろからもう一匹、別のドレッドキャットが顔も出してヴリトラ達を睨む。

 突然現れたガズンともう一匹のドレッドキャットに驚くヴリトラ達。だが直ぐに落ち着くを取り戻してヴリトラはガズンを睨み、ラピュス達も自分の武器を構える。


「誰だ、お前は?」

「ガッハハハハ!俺はガズン、ストラスタ公国に雇われた魔獣使いさ」

「魔獣使い?それじゃあ、お前がこの森に潜伏している部隊の隊長でこのドレッドキャット達の飼い主って事か?」

「その通りだ。しかし、どんな奴等が侵入して来たかと思ったら、まだガキじゃねぇか。それも女が三人もいやがるとは、レヴァートの連中が相当人手不足なんだなぁ?」


 侵入者であるヴリトラ達が若すぎる事とその中にラピュス達女がいる事に少しガッカリする様な態度を見せるガズン。それを見たラピュスはガズンを睨みつけて騎士剣を構える。


「ナメるな!私達はレヴァート王国の姫騎士だ!普通の騎士と同じように思うと痛い目を見るぞ!」

「私は騎士じゃないけど・・・」


 ラピュスの方を向いて頬を指で掻くファフニール。自分を見て表情を鋭くするラピュスを見てガズンは再び笑い出す。


「ガハハハハッ!中々威勢のいい姉ちゃんじゃねぇか?安心しな、お前達、女は生かしておいてやるからよぉ」

「フン!その余裕の態度がいつまでも続く事を祈る事だな!?」


 ラピュスは騎士剣を構えて自分よりも大柄なガズンを見つめる。そんな気丈な態度のラピュスにヴリトラはドレッドキャットの相手をしながら感心する。ガズンは森羅に巻き付いている鞭を引いてヴリトラの体勢を崩そうとしながらラピュスを見てニッと笑って見せる。


「意気込みはいい。だがな、姉ちゃん?そういう事はこの状況を見て自分達の立場を考えてから、言うかを考えた方が良いぜ?」


 ガズンのその言葉を合図に彼の後ろの控えていたもう一匹のドレッドキャットが高く跳び上がってジャバウォック達の前に着地し唸りだす。

 突然目の前にやって来たドレッドキャットを見てアリサとジャバウォックは自分達の武器を構えて一歩後ろに下がる。


「わわぁ、もう一匹・・・!」

「チイィ!ドレッドキャットが数匹いるという事は分かってはいたが、まさかいきなり二匹お出ましとはな・・・」


 最初に出て来た一匹を倒す前にもう一匹と遭遇してしまった事で一気に不利になった事に驚きを隠せないアリサと動揺するジャバウォック。だがそこへガズンが更に悪い情報をジャバウォック達に伝えてきた。


「ハハハ、ならもっと困らせてやろうか?」

「何?」

「俺達は森へ侵入したのがお前達以外にもあと五人いる事は知ってる。だからそっちにも俺のドレッドキャット達を向かわせた、それも二匹な?」

「二匹だと!?」


 リンドブルム達の所にもドレッドキャットが二匹向かっていると聞いて表情を変えて驚くジャバウォック。ヴリトラ達もその話を聞いて驚きの表情を見せた。さっきの通信ではリンドブルム達はドレッドキャットと遭遇して事を伝えてきた。だが、二匹と遭遇したとは言っていない。つまりその時点でリンドブルム達はまだ一匹目としか遭遇していないという事だ。だがそこへ更にもう一匹が合流したとすれば・・・。


(不意を突かれてリンドブルム達が一気に不利になる!早くこの事をリンドブルム達に伝えないと!)


 心の中でリンドブルム達にもう一匹のドレッドキャットが向かっている事を伝えようと考えるヴリトラ。だが自分は今ドレッドキャットによって左手が、ガズンの鞭で森羅を封じられて右手が使えなくなっている。ジャバウォックもドレッドキャットに見張られて連絡を入れられない状態だった。ヴリトラはガズンを見て悔しそうに舌打ちをする。

 そんなヴリトラに気付いたガズンはまたまた大笑いをしてヴリトラを見た。


「ガーッハハハハ!どうした、ボウズ?動きが取れない上に遠くにいる仲間にもこの事を知らせる事が出来なくて悔しいか?諦めろ、お前達は俺達から逃げられん。仮にこの場を脱したとしてもどうやって遠くにいる仲間にこの事を知らせるんだ?走って行っても間に合わん!」


 勝利を確信したのか大きな態度でヴリトラ達を見回すガズン。そしてガズンはヴリトラ達を睨んでいる二匹のドレッドキャットに指示を出した。


「さあ、遊びは終わりだ!ガルバ、『ミルバ』、ソイツ等を肉の塊に変えちまえ!」


 ヴリトラに体重を掛けているドレッドキャットのガルバとジャバウォック達を睨んでいるもう一匹のミルバと呼ぶドレッドキャットはガズンの指示を聞いて動き出した。

 ガルバはヴリトラの左腕に止められている右前足に力を入れて更に爪を食い込ませようとし、空いている左前足の爪でヴリトラを切り裂こうとする。だが、ヴリトラは取り乱す様子も見せずに左腕を外側に向かって勢いよく振った。突然自分を振り払ったヴリトラにガルバは驚きの表情を見せる。そして勢いを止められずに振り飛ばされたガルバはテントを押しつぶして倒れた。


「何っ?」


 自分のドレッドキャットを腕一本で払い飛ばしたヴリトラを見て驚くガズン。すると今度はミルバが大きな唸る声を上げ、それを聞いたガズンはミルバの方を向く。そこにはミルバの前に立ち、ジッと向かい合っているファフニールの姿があった。ファフニールはジャバウォックとアリサの前に立ち、二人を庇うような位置にいる。ジャバウォックは少し驚きの表情を見せてファフニールの小さな背中を見つめる。


「いきなり前に出て来て、どうしたんだファフニール?」

「・・・ジャバウォック、この子の相手は私がするから、ジャバウォックはリンドブルム達にもう一匹のドレッドキャットが向かっている事を伝えて」

「何?まさか、お前一人でやる気か?」


 ジャバウォックの質問にファフニールは前を向いたまま頷く。その光景を見てたガズンはファフニールを見て愉快そうに笑った。


「ハハハハ!本気かお嬢ちゃん?ミルバの前に立って怯えなかったのは褒めてやるが、それは自分からミルバに『食べてください』って言ってる様なもんだぜ?」

「・・・平気ですよ。だって、私は食べられませんから」

「おいおい、そりゃあミルバに食べられずに勝つって事かぁ?・・・止めておきな、いくらお嬢ちゃんがそんなデカいハンマーを使えるからって、当てられなきゃ意味ねぇだろう」

「・・・そういう意味じゃありません。そのままの意味ですよ?」

「・・・はぁ?」


 理解の出来ない顔表情を見せるガズン。今までずっと笑っていたガズンが初めて別の表情を見せた。そしてファフニールはガズンと目の前のミルバを見て静かに呟いた。


「それから、私はこの子とは戦いません」


 ファフニールの口から出て来た衝撃の言葉を聞いてアリサとガルバの方を向いていたラピュス、そしてガズンは驚きの表情を見せる。しかし、ヴリトラとジャバウォックはファフニールを黙ってジッと見つめている。

 遂に始まったストラスタ軍とドレッドキャットとの戦い。そしてヴリトラチームの前に現れた魔獣使いのガズン。ガズンが操るドレッドキャットのガルバとミルバを前に若干押され気味のヴリトラ達。そん中で戦わないと口にしだしたファフニール。彼女は一体何を考えているのだろうか。


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