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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第四章~祖国の為に刃を向ける~
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第五十話  ストラスタ公国 反撃の牙!

 パティーラムが前日の町の案内の謝礼をする為にラピュス達と護衛の近衛騎士を連れてズィーベン・ドラゴンにやって来た。だがその時、突如叫ぶような声が聞こえてきてズィーベン・ドラゴン内に緊張が走るのだった。

 外から聞こえてきた男の声に反応して七竜将は窓から外を見る。そこには黄金近衛隊の騎士と向かい合っている一人の騎士の姿があった。見たところ遊撃隊の騎士と思われるその騎士は自分の前に立つ近衛騎士と慌てる様な表情で話をしていた。


「此処にガバディア団長がいると聞いて来たんです。団長に会わせてください!」

「ダメだ!今は誰も通す訳にはいかない!」

「非常事態なんだ!頼みます!」


 黄金近衛隊に必死で頼み込む騎士であったが、上級の騎士である彼等に下級の騎士の申し出が通る筈がなく騎士はズィーベン・ドラゴンに入れてもらえずにいた。


「何の騒ぎですか?」


 ズィーベン・ドラゴンの中から出て来たヴリトラが騎士達に尋ねると、騎士達はヴリトラの声に気付いて一斉に彼の方を向く。すると大声を出していた遊撃隊の騎士がヴリトラの顔を見てハッと表情を変える。


「おおぉ!アンタ、七竜将の!なぁ、中に団長はいるんだろう?頼む、団長を呼んできてくれ!」


 ヴリトラの下に駆け寄ろうとする騎士を近衛騎士達が取り押さえる。彼の態度を見てヴリトラは何かよくない事が起きたと直ぐに察しがついた。ヴリトラが真面目な顔で騎士を見ていると、背後からガバディアが姿を見せる。


「何の騒ぎだ?」

「あっ、ガバディア団長」


 外に出て来たガバディアに気付いて彼の方を向くヴリトラ。ガバディアに続いてラピュス達姫騎士も外に出て来る。ガバディアの姿を確認した騎士は更に感情的になった。


「だ、団長!大変です、ストラスタ公国軍と交戦している最前線の部隊から緊急の伝達が!」

「何?」


 ストラスタ軍と戦闘中の部隊からの緊急伝達だと聞かされてガバディアの表情が鋭くなる。それを聞いた七竜将、姫騎士、近衛騎士達の表情も同じように鋭くなった。


「何が遭った?」

「ハ、ハイ。我が国とストラスタ公国の国境付近で戦闘を行っていた青銅戦士隊の二個中隊が壊滅、周囲の部隊も次々と敗れて行き押し戻されていると・・・」

「何だと!?今最前線に出ている部隊はどれも並みの戦力ではない。そんな部隊が連敗とは・・・。一体最前線で何が遭ったのだ!?」


 戦力の高い部隊が敗れた事が信じられないガバディアは騎士に前線で何が飽きたのか尋ねる。周りでも七竜将や姫騎士達が驚いて騎士の方を見ていた。ガバディアの質問に騎士は表情を暗くして答える。


「情報によりますと、ストラスタ軍の中に『ドレッドキャット』が数匹いるとの事で・・・」

「ドレッドキャットだとぉ!」


 生き物の名前らしき言葉を聞いたガバディアは声を上げて驚く。突然声を上げたガバディアに七竜将は驚いて彼の方を一斉に向く。ヴリトラは近くでガバディアと同じように驚きの表情を見せているラピュスに近寄りそっと声を掛けた。


「おい、そのドレッドキャットって何なんだ?」

「・・・ドレッドキャットとは森林などに生息している凶暴な肉食の獣だ。全長は250cmから300cmはあり、四本の脚で走り回って一気に獲物に飛び掛かる。見た目は猫に似ているが、牙が長くて一度噛み付いたら決して離さない恐ろしい猛獣だ」

「それがドレッドキャット、か・・・」


 ラピュスからドレッドキャットの事を聞かされたヴリトラは腕を組んでどんな猛獣なのかを考え込む。すると隣で話を聞いていたリンドブルムも同じように考えて姿を想像する。


「話を聞くとメスライオンみたいな生き物が想像できるね?」

「ライオン?」


 リンドブルムの口にした名前に小首を傾げるラピュス。ヴリトラ達がそう話をしている時、ガバディアはドレッドキャットを連れている敵軍の戦力を分析していた。


「ドレッドキャットは凶暴性が強く、人間なんかは奴等にとって恰好の餌だ。そんなドレッドキャットを従えているという事は・・・・・・奴等の中に魔獣使ビーストテイマーいがいかもしれないな」

「だとしたら、かなり厄介ですね」


 ガバディアの話を聞いていたアリサが彼を見ながら言う。敵軍の中に魔獣使いがいると聞かされた騎士達は深刻そうな顔で俯く。


「おい、どうしたんだよ?」


 突然深刻になるガバディア達を見てジャバウォックが不思議そうな顔で声を掛ける。するとガバディアが七竜将達の方を向いて説明をし始めた。


「魔獣使いとはあらゆる動物や猛獣を調教する事のできる存在だ。ソイツ等の手に掛かればドレッドキャットの様な凶暴な猛獣もそこらへんにいる猫と同じようになってしまうのだ」

「つまり、敵の中にそのビーストテイマーがいて、そのドレッドキャットを使ってレヴァートの部隊を襲ってるって事なんだな?」

「そうだ。しかも魔獣使いに調教された猛獣達はとても強く、そして賢くなる。優秀な魔獣使いに調教された猛獣なら敵の拠点を偵察してその情報を持ち帰る事だって出来るんだ」

「そんな事も出来るんですか!?」

「確かに厄介だな」


 ジャバウォックの隣でガバディアの話を聞いていたジルニトラとニーズヘッグも魔獣使いの凄さに驚く。すると、ファフニールがガバディアを見上げてこう尋ねた。


「あの、レヴァート王国にもそんな魔獣使いはいないんですか?」

「んん?」

「相手が猛獣を使って来るなら、私達も猛獣を使えばいいと思うんですけど?」


 ファフニールの話を聞いて周りにいるヴリトラ達は一斉に彼女に視線を向ける。確かに敵が猛獣を使って戦っているのなら、こちらも同じ様に猛獣、もしくはより強力な猛獣を前線に送り込んで対抗すればいい。ファフニールの考えは一理ある。だが、そんなファフニールにラランが顔を横に振りながら静かに声を掛けた。


「・・・無理。レヴァート王国には魔獣使いの職業を選ぶ事ができないって決まりがある」

「え?それじゃあ、レヴァート王国には魔獣使いはいないんですか?」

「ああ、その通りだ・・・」


 驚くファフニールを見てガバディアが頷く。同じ猛獣をぶつけて戦う事が出来ないと知ってファフニールは「う~ん」と腕を組み考え込む。周りでも敵の驚異的な戦力と自分達の戦力の違いを突きつけられてどうすればいいのか考えるガバディア達の姿があった。そこへヴリトラが知らせに来た騎士の方を向いて口を開く。


「なぁ、そのドレッドキャットを連れている部隊は今何処にいるんだ?」

「え?あ、ああ、今はレヴァート王国の中部にいると報告を受けた。その周りのも中隊規模の部隊が幾つもいると・・・」

「それじゃあ、ドレッドキャットを連れている部隊は今言った一つだけなのか?」

「ああ、そうだ・・・」

「ふ~~ん」


 騎士の話を聞いてヴリトラは腕を組んで少し俯いて考え込んだ。七竜将はヴリトラが何かに気付いたと感じて彼をジッと見ている。だが、ラピュス達は何が何だかサッパリ分からなかった。


「おい、ヴリトラ。どうしたんだ、突然敵部隊の戦力とドレッドキャットのいる部隊の事を聞いて?」


 ラピュスがヴリトラに敵情報を尋ねた理由を訊くと、ヴリトラは顔を上げてラピュスの方を向いた。


「多分、敵の本隊はそのドレッドキャットを連れてる部隊だ。そしてその部隊を撃退すれば敵を一気に押し返す事が出来ると思うぜ?」

「何?」

「どうしてそんな事が分かるんだね?」


 驚くラピュスに続きガバディアが理由を尋ねる。ヴリトラはガバディアの方を見て説明をする。


「今までこう着状態だった戦況がドレッドキャットの部隊が前線に出て来た途端に変わり、レヴァート軍は押し戻されて行った。この時点で戦況が変わった原因がその部隊にあるという事が分かります」


 ヴリトラの説明を聞いてラピュス達が黙ってゆっくりと頷く。そんな話をさっきまで騒いでいた遊撃隊の騎士や近衛騎士達もいつの間にか聞いていた。


「その部隊がレヴァート軍の国境防衛線を突破した途端に他のストラスタ軍の部隊も一気に進撃して来ました」

「恐らく敵はその突破されて穴の開いた所から領内に進軍して行ったのだろう。穴の開いた防衛線から敵の懐に入り込んで隙だらけの部隊に奇襲を仕掛ける。突然の奇襲にレヴァート軍は混乱してまともに対応する事もできずに敗走する事になった・・・」


 ヴリトラの説明を引き継ぐようにストラスタ軍の進撃状況を推測するオロチ。ラピュス達は真面目な顔でオロチの方を向いて話を聞いている。


「強固な守りも一ヵ所の穴から一気に崩れて行き、あっという間に押し戻されてしまった・・・」

「・・・まるで卵の殻」


 ラピュスとラランは突破されてしまった防衛線と敵の制圧力を考えて苦い顔で呟く。周りのアリサやガバディアも悔しそうな顔で黙り込んでいる。


「恐らく敵は直ぐに何処かの大きな町を制圧してそこを補給基地にして補給路を確保しようとする筈だ。それも前の戦いで俺達に基地を制圧された時の様なミスを犯さない為に守りを前回よりも厳重にして」

「そうなったら敵を押し戻すのは前の戦いよりも難しくなる・・・」


 ニーズヘッグが想像する次の敵の行動にオロチもニーズヘッグの方を向いて言った。周りの者達も一斉に前よりも戦況が不利になる事を知らされて緊張を走らせる。


「そうなる前にそのドレッドキャットのいる部隊を見つけて叩かないといけないって事ですね?」

「そういう事だ」


 アリサの答えにヴリトラは彼女の方を向いて頷く。


「よし!それなら直ぐに部隊を編成してドレッドキャットの部隊を叩くぞ。急いで詰所に戻り、優秀な騎士達を・・・」

「待ってください、ガバディア団長」


 ガバディアが部隊編成をする為に騎士団の詰所に向かおうとした時、ズィーベン・ドラゴンの中からパティーラムの声が聞こえてきた。一同が一斉に声のした方を向くと中からパティーラムが静かに歩いて来る。ヴリトラ達はパティーラムの方を向き、報告に来た騎士は突然現れた王女の姿に驚き、そんな騎士をパティーラムは真面目な顔で見つめて静かに質問をする。


「そのドレッドキャットのいる部隊ですが、どれ程の規模か分かりますか?」

「ハ、ハイ!情報によりますと約一個小隊程の人数だったと・・・」

「一個小隊。そこにドレッドキャットが数匹・・・ドレッドキャットは全部で何匹なのです?」

「・・・申し訳ありません。情報を持って来た兵士からは数までは・・・」

「そうですか・・・」


 パティーラムは騎士から敵本隊の戦力を聞き、黙って考え込んだ。そんなパティーラムの姿を見て七竜将は意外そうな顔を見せた。一国の王女が戦争の話を聞き、戦況を分析するなど考え難いからだ。パティーラムを見ていたリンドブルムは小声でラランに声を掛けた。


「ねぇ、ララン。パティーラム様ってもしかして姫騎士なの?」

「・・・違う」

「ええぇ?だって王女様が戦争の話を聞いて考えるなんて普通はあり得ないでしょう?だからてっきり僕はパティーラム様も姫騎士なのかなって思ったんだけど・・・」

「・・・姫様はよく軍の戦略会議なんかに参加して色々なアドバイスをしてくださる。でも、戦場に出た事や戦った事は一度もない。どちらとか言うと軍師みたいな感じ」

「ああぁ、成る程ね。納得・・・」


 話を聞いて納得するリンドブルム。すると考え込んでいたパティーラムがガバディアの方を真面目な顔で見た。


「団長、ドレッドキャットは一匹で騎士数人分の戦力になります。ですがそれは調教を受けていない野生のドレッドキャットの場合です。魔獣使いに調教されたドレッドキャットは騎士十人分の戦力になるでしょう」

「やはりそれ位にはなりますか・・・」

「ええ。そんなドレッドキャットが数匹加わった敵の小隊。規模は小さくてもその総戦力は一個大隊に匹敵するかもしれません。並みの戦力では返り討ちに遭ってしまいます」

「確かに・・・。ではこちらも大隊以上の戦力で対抗するのがよろしいですな?」

「ハイ」


 部隊編成の話をするパティーラムとガバディア。二人の会話を聞いていたヴリトラは黙って考え込んでいる。するとそこへジャバウォックがヴリトラの肩を指で突いた。


「おい、ヴリトラ」

「ん?何?」

「これはあくまで俺の想像何だが、その敵本隊にブラッド・レクイエムの連中が関わっている可能性があるんじゃないか?」

「んん?」


 ジャバウォックの話を聞いて表情を鋭くするヴリトラ。周りのリンドブルム達もその話を聞いて表情に鋭さが増した。


「どうしてそう思うんだ?」

「いくら凶暴な猛獣のいる部隊だからって言ってもよぉ、防衛線のレヴァート軍はかなりの戦力だった筈だろう?それに敵の攻撃に備えて基地なんかを建設して対応していたから補給なんかも出来た。簡単に防衛線が突破されるなんて考え難い」

「・・・ブラッド・レクイエムが後方支援バックアップしていると?」

「俺はそう考えている。それにゴルバンの町の敵指揮官も何らかの方法でブラッド・レクイエムの連中と契約してたんだ、十分考えられるだろう?」


 今回の防衛線突破はブラッド・レクイエム社が関わっていると考えるジャバウォックの話にヴリトラは再び考え込む。周りにリンドブルム達も一理あると真面目な顔で二人の方を見ており、七竜将の様子が変わった事に気付いたラピュスも彼等の方を見ていた。

 ヴリトラがしばらく考えていると、ガバディアとパティーラムが部隊編成の話を進めていた。


「では、私は詰所に行き急いで部隊の編成をいたします」

「お願いします。私はお城に戻り、国王陛下に今の事を知らせてきますので」


 二人がそれぞれ行動をする為にズィーベン・ドラゴンに背を向けて歩き出そうとした。その時、ヴリトラは突如二人を呼び止める。


「待ってください!」

「「?」」


 呼び止められてパティーラムとガバディアは足を止めてヴリトラの方を向く。そこには真面目な顔で自分達を見ているヴリトラとその後ろに同じように真面目な顔をしている他の七竜将の姿があった。


「そのドレッドキャットのいる敵本隊の討伐、俺達に任せてくれませんか?」

「何?君達にか?」


 いきなり討伐に行かせてくれと言うヴリトラにガバディアは意外そうな顔で彼を見つめる。パティーラムや近衛騎士達も少し驚いて七竜将を見ていた。


「ソイツ等の正確な戦力が分からない以上、ただ数を増やしてぶつけても犠牲者が出るだけです。だったら俺達七竜将が行って、そのドレッドキャット達を倒してきます」

「しかし、今度は凶暴な猛獣を引き連れている部隊だ。それも魔獣使いに調教された極めて強力な。今までのストラスタ軍とは訳が違う、いくら君達でも流石に危険だ。今回は止めておいた方がいい、我々が何とかする」

「いいえ、行かせてください。もしかすると、アイツ等が関わってる可能性も・・・」

「アイツ等?・・・・・・!成る程・・・」


 ガバディアはヴリトラの言葉を聞き、そのアイツ等が誰なのか察しが付いたのか表情を鋭くする。彼も一度七竜将からブラッド・レクイエム社の事を聞かされており、その話を思い出したのだ。

 二人の会話の内容が理解出来ないパティーラムは理解できないような顔で二人を見ている。ガバディアはパティーラムの方を向いて真面目な顔で言った。


「姫様、私は七竜将に任せてみようと思います」

「団長?」

「彼等はたった数人で敵に占拠されたゴルバンの町を解放しました。先程は危険だと彼等に言いましたが、彼等の言葉を聞き、目を見て気が変わりました」

「で、ですが・・・」


 いまいち納得ができないパティーラム。そこへヴリトラがパティーラムの方を向いて口を開く。


「パティーラム様、俺達は大丈夫です。騎士団には他のストラスタ軍の部隊の方に向かってもらってください」

「しかし・・・」

「これは俺達が自分から行くと言い出した事、勿論報酬は結構です」

「いえ、私が気にしているのは・・・」

「俺達を信じてください。俺達がストラスタからこの国を守ります。俺達に色んな事を教えてくれた皆がいるこの国を・・・!」


 ヴリトラの決意の籠った目を見てパティーラムは一瞬驚いた。傭兵である彼等が報酬無しで国の為にここまで意志を強くする事が意外に感じたのだろう。パティーラムはこの時心の中で思っていた、「彼等は本当に只の傭兵なのか?どうして傭兵なのにここまでの意思があるのだろう?」と。

 パティーラムはヴリトラの強い意志を感じて、しばらく黙り込んでいると、ゆっくりと七竜将の方を向いて真面目な顔で彼等を見つめる。


「・・・分かりました。七竜将、貴方がたにストラスタ公国軍の本隊の討伐をお願いします」


 パティーラムの頼みを聞いた七竜将は彼女の顔を見て黙って頷く。すると、さっきから黙っていたラピュスが突然話に加わって来た。


「姫様、私も七竜将と同行します」

「え?」

「「「「「「「!」」」」」」」


 突然同行を進言して来たラピュスにパティーラムと七竜将は驚いた。


「・・・私も行く」

「あっ、私も行きます!」


 ラピュスに続いてラランと今度はアリサも一緒に行くと言いだし、七竜将は更に驚く。パティーラムやガバディアも驚いてはいるが七竜将程ではなかった。


「行くって、本気か、ラピュス?」

「当然だ。お前達はまだこの国の事を全て把握している訳ではない、情報を知る私が同行した方が良い事を前の作戦で知った筈だ?」

「うっ・・・」

「それと、私は今後お前達が戦場に出て行く時は必ず同行する事にしたから、よろしく頼むぞ?」

「・・・私も一緒」


 今度自分達と一緒に行動すると言うラピュスとラランにヴリトラは目を丸くしていた。しかし、そんな事で納得するはずがない、ヴリトラは顔を横に振ってラピュスのジッと見つめる。


「あのなぁ!俺達と一緒に行動するって事はそれだけ危険も多くなるって事だぞ?そんな所にお前達を連れて行けるはずがない!」

「そうよ!それにアンタ達には遊撃隊っていう大事な仕事があるでしょう?そっちはどうすんのよ?」


 ヴリトラに続いてジルニトラも同行に反対する。だがラピュスは真面目な顔で二人を見た。


「私とラランはもうお前達と無関係という立場ではない。奴等と一戦交えた以上、彼等は私達にとっても敵だ、自分達の国の敵と戦う為に一緒に戦う。それの何がいけないのだ?」

「い、いけないって訳じゃ・・・」


 ラピュスの力の入った言葉にジルニトラは言葉に詰まる。隣ではヴリトラも苦い表情で黙っていた。そこへニーズヘッグが二人の肩に手を乗せて声を掛けてくる。


「確かに、あそこまで俺達と一緒に戦った以上、もう関係ないとは言えないな?連れて行ってやろうぜ?」

「ニーズヘッグ!」

「ラピュスの言った通り、俺達はまだこの国の事を把握しきえてない。文字も全て読めるわけじゃないし、俺は同行させることに賛成だ」


 作戦参謀のニーズヘッグの言葉にヴリトラとニーズヘッグは黙り込む。他の七竜将もニーズヘッグの言葉に賛成なのか何も言わずに黙って見ていた。

 そしてヴリトラは折れたのかラピュス達の方を向いて一度溜め息をつき、静かに口を開く。


「分かったよ!連れて行く。だけど、無茶だけはするなよ?」

「ああ、分かってる」


 ヴリトラを見てラピュスは鋭い目で小さく笑いながら言った。ラランとアリサも真面目な顔でヴリトラ達を見ている。

 再び攻撃を仕掛けてきたストラスタ軍。そしてその中に凶暴な猛獣を連れている部隊がいると聞き、七竜将は姫騎士達と共にその部隊の討伐に向かう事となった。猛獣ドレッドキャットを引き連れるその部隊はどれ程の戦力なのか、この時の七竜将や姫騎士達はまだ何も知らない。


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