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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第四章~祖国の為に刃を向ける~
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第四十九話  美しき笑顔のパティーラム

 ティムタームの町で起きた王族の抜け出し騒動。その騒動の中でヴリトラ達はレヴァート王国の第三王女であるパティーラムと出会う。王族からも名を知られていた七竜将はこれでよりレヴァート王国中から注目を浴びる事になるのだった。

 高台でパティーラムと別れた後、ヴリトラ達は市場のあった町の表通りで別れる。ラピュスとラランは一日の活動報告をする為に騎士団の詰所へ行き、ヴリトラとリンドブルムはそのままズィーベン・ドラゴンへと帰って行く。その時、既に外は暗くなっていた。


「何だってぇ!?そりゃ本当か!?」

「この国の王女様に会ったのぉ!?」


 ズィーベン・ドラゴンの食堂でジャバウォックとジルニトラが声を上げる。食堂では七竜将のメンバー全員が集まり、夕食を取りながらヴリトラとリンドブルムからパティーラムと会った事を聞かされていた。テーブルに並ぶ食事を囲んで椅子に腰かける七竜将。その中でヴリトラとリンドブルム以外のメンバーが全員二人の方を向いて驚いている。だが、オロチだけはいつも通り冷静なままであった。


「あ、ああ・・・」

「今日のお昼ごろね?ラピュスとラランも一緒だったよ・・・?」


 自分達を驚きの表情のまま見つめて尋ねるジャバウォックとジルニトラにヴリトラとリンドブルムは席に座り、少し引くように答える。ジャバウォックはテーブルを軽く叩いて驚きの顔から残念そうな顔へと変わった。


「くっそ~!惜しい事したぜぇ、お前等と一緒に行けば王女様に会えたのによぉ」

「今更そんな事言っても仕方ないだろう?」

「わぁ~ってるよ、言ってみただけだ」


 悔しがるジャバウォックに食事をしながら言うニーズヘッグ。ジャバウォックもそんなニーズヘッグに軽く受け答えをして食事を再開する。


「ねぇねぇ、その王女様ってどんな人だったの?」


 木製のフォークを握りながらヴリトラとリンドブルムにパティーラムの事を尋ねるファフニール。二人はフォークとスプーンを手に持ったままパティーラムの事を思い出す。


「確かぁ・・・見た目はラピュスやジルと同じ位だったかなぁ?」

「ああ、二十歳そこそこってところだったよ」

「後は、施設の子供達にお菓子をプレゼントするとか優しいところもあったね」


 リンドブルムとヴリトラが昼間にラティーとして自分達と接して来たパティーラムの事を思い出して説明すると、ファフニールは立ち上がって体を乗りだして来た。


「それで、綺麗だった?」

「ん?・・・ああ、なかなかの美人だったぜ?」

「おおっ!マジか!?」

「へぇ?それは少し興味があるな」


 ヴリトラの言葉を聞いてジャバウォックもファフニールの様に立ち上がる。そしてさっきまで静かに食事をしていたニーズヘッグも興味が出てきたのかヴリトラの方を見て話を聞く。


「どのくらい綺麗なの?ジルやオロチよりも?」

「んんっ?」

「・・・・・・」


 ファフニールの意味深な質問にパンを千切って食べているジルニトラと黙ってスープを飲んでいたオロチがファフニールの方を向く。そんな二人に気付いたジャバウォックとニーズヘッグが視線だけを二人に向ける。それと同時に彼等は思った、「ヴリトラとリンドブルムは何か二人の癇に障る事を言うんじゃないか」と。


「まぁ、確かに二人より綺麗だったな?」

「うん!」


 ジャバウォックとニーズヘッグの心配は的中した。二人は「アチャ~」という様に目を閉じて首を横へ振る。そして、オロチは興味が無いのか黙ってスープを飲み続けているが、ジルニトラは眉をピクピクと動かして少し不機嫌そうな表情になってた。そんなジルニトラに気付いていないのかヴリトラとリンドブルムは話を続ける。


「二人と違って物腰もよかったからなぁ?」

「そうそう、それにジルみたいにそばかすも無かったし――」


 二人が笑いながらパティーラムの事を話していると、ジルニトラは持っていた木製のスプーンを指で折った。折れた時の音が食堂に響き、二人も会話を止めてジルニトラの方を向く。視線の先では口元は笑っているが、目が笑っていないジルニトラの顔があり、それを見たヴリトラとリンドブルムは一瞬驚き、顔を青くする。


「・・・フフフ。ヴリトラ、リブル?」

「「ハ、ハイ!」」


 ジルニトラから湧き出る様に伝わってくる恐怖にヴリトラとリンドブルムは背筋を凍らせ、高い声で返事をする。


「空気の読めない男って、嫌われるから気を付けなさいね?」

「「・・・ハイ」」


 笑いながら二人に忠告をするジルニトラと顔を青くしたまま、頭を下げて返事をするヴリトラとリンドブルム。そんな二人をジャバウォックとニーズヘッグはジト目で、ファフニールは不思議そうな顔で見ている。


「おい、ジル。今は食事中だぞ?それにいちいちそんな事で目くじらを立てるな、お前も二人の性格を知ってるなら何を言うかぐらい分かる筈だ・・・」

「・・・分かってるわよ。でもやっぱりあんな事を言われると腹が立つわ」


 オロチに宥められながら何とか落ち着くジルニトラは不機嫌そうな顔でパンを千切って口に中に入れながら答える。顔を上げてヴリトラとリンドブルムも苦笑いをしながら互いの顔を見合っている。


「お前達も少しは女心というものを勉強しろ。デリカシーの無い男は嫌われるからな・・・」

「努力します・・・」

「すみません・・・」


 オロチから注意されて反省するヴリトラとリンドブルム。そんな二人を見てジルニトラも少し機嫌が直ったのか、表情が少し和らぎパンを食べるのを止めて二人の方を見る。


「まっ、何にせよ、王族に顔を知ってもらえたというのは大きいわね。もしかするとあたし達の今後の活動もし易くなるかもしれないし、ブラッド・レクイエムの何かしらの情報も手に入るかもしれないわ」

「ああ、それに元の世界に戻る為の情報もな」


 自分達の活動や情報の力強く味方になってくれるかもしれないと考えて真面目な顔で話すジルニトラとニーズヘッグ。


「あっ、そう言えば王女様、後日お礼に伺いますって言ってたよ?」

「それって、あたし達に会いに来るって事?」

「それは分からないけど・・・」


 リンドブルムがパティーラムの言っていた言葉を思い出してジルニトラ達に話す。だが、ズィーベン・ドラゴンにやって来るのか、町にいる所を目立たないように声を掛けて来るのか、どんな形で接触して来るのか分からない。七竜将は食事の手を止めて考え込む。


「どうやって私達に会いに来るのかが分からなくても、何時かは必ず会えるのだから気長に待つことにすればいい・・・」


 一人だけ食事を続けているオロチをヴリトラ達は一斉に見つめる。彼女に言うとおり、何時かは会えるのだから今どんなふうに再会するのかを考える必要は無い。その考えに納得したのか一同は一斉に頷く。


「確かにそうだな。いつかは会えるんだから」

「その時が来るまで待ってようぜ」


 そう言ってヴリトラとニーズヘッグはフォークを手に取り食事を再開した。リンドブルム達も話が終り食事をする。こうして七竜将の夕食は再開されて一夜が過ぎたのだった。


――――――


 パティーラムと出会った日から二日後の午前、七竜将は全員ズィーベン・ドラゴンにいた。それぞれ武器のメンテナンス、トレーニング、依頼の確認などをしていた。以前と比べて依頼は少しずつ来るようになったが、その殆どが物資の調達や町の外れに出掛ける馬車の護衛などと言う簡単な依頼ばかりで七竜将が皆退屈していた。


「今日も依頼は無しか・・・」

「昨日も馬車の護衛の依頼が一件あっただけで、それからは何もないからねぇ」


 ズィーベン・ドラゴンの部屋ではニーズヘッグとジルニトラが一枚の紙を見て暗い声を出す。紙にはファムステミリアの文字で細かく何かが書かれてある。書かれているのは七竜将に仕事の依頼をしてきたティムタームの住民達の名前だ。その数は数えるほどしかなかった。


「あ~あ、ゴルバンの町を解放して有名人になったってアリサから聞いたのに、どうしてこう依頼の数は増えないのかしら?」

「有名になったからと言ってそうポンポン依頼が来るとは限らないだろう?」

「そうだけどさぁ~」


 つまらなそう顔で腕を組み、手元の髪を見つめるジルニトラ。ニーズヘッグはそんなジルニトラを目を細くして見ている。そこへ椅子に座って本を読んでいたヴリトラが二人の会話に参加して来た。


「でもよぉ?依頼が来なくても金には困ってないんだから、そんなに深刻に考える事ねぇんじゃねぇの?」

「そうだよ。もう少し気長にお客さんを待とうよ?」


 ヴリトラの隣で同じように本を読んでいるリンドブルムもジルニトラとニーズヘッグを見て言う。自分達とは逆に依頼が来ない事に悩んでいないヴリトラとリンドブルムをジルニトラは目を細くして見つめる。


「あのねぇ、お金が有るとか無いとは問題じゃないのよ。あたし達七竜将の事を出来るだけ大勢の人達に知らせる事が大事なの。そうすれば色々な依頼が来てその時に沢山の情報を得る事だって出来るのよ?」

「それに金だったいつかは無くなる。稼いでおくに越した事はないだろう」


 ジルニトラに同意しているニーズヘッグも二人を見て自分達の生活の事を説明する。ヴリトラは開いていた本を閉じて目の前のテーブルに置くとゆっくりと立ち上がって部屋の中を歩き回る。


「確かにそうだけどさぁ、だからと言って依頼を受け過ぎるのもどうかと思うぜ?金は手に入るけど、その分銃器や機械鎧の内蔵兵器の弾薬は減っていく一方だ。バンの燃料だって無駄に出来ない」

「その点については俺も同感だな」


 部屋の奥からジャバウォックが顔を出して部屋を覗き込む。長ズボンと下着姿で首にはタオルが掛けられており、額から少し汗が垂れているどうやらトレーニングをやっていたようだ。


「ヴリトラの言うとおり、武器の弾薬なんかもいずれは無くなる。銃器が使えなくなれば俺達の戦力も大きく削られて、次にブラッド・レクイエムの連中と戦う時に苦戦する可能性だって出てくるだ?」

「まぁ、確かに・・・」


 ジャバウォックの話を聞き渋々納得するニーズヘッグ。


「前のゴルバンの町で戦ったブラック・レクイエムの機械鎧兵士の持っていた武器なんかを回収して少しはマシになったが、安心は出来んぞ」

「そうだよ。それに今はまだストラスタ公国との戦争の真っ最中、次に僕達がまた前線に出ないといけない時だったあるかもしれないんだし、体を休めておこう?」


 本を持ったまま座って言うリンドブルム。三人の意見を聞いたニーズヘッグとジルニトラはしばらく考え、答えが出たのか三人の方を見て口を開いた。


「ハァ・・・。何だか上手く丸め込まれたような気もするけど、確かに弾薬とかも無駄遣いは出来ないわね?」

「ああ。とりあえず今はこれまで通りで行こう・・・」


 無理に七竜将に名を広げる事は止める事にした二人にヴリトラ達も頷く。そんな時、突然入口のドアを強く叩く音が部屋に響いた。


「おぉい!七竜将、いるかぁ?」

「あの声はガバディア団長?」


 ドアの向こうから聞こえてくるガバディアの声にヴリトラは反応して入口の方へ歩いて行く。リンドブルム達も突然のガバディアの訪問に意外そうな顔を見せて入口の方を見ていた。ヴリトラがドアの開けると、目の前にはガバディアが少しヴリトラを見下ろす様に立っている姿があった。


「はよざいます、団長」

「突然すまんな」

「どうしたんですか、団長が一人で来るなんて?」

「いや、一人ではない」


 そう言ってガバディアが後ろを向くと、そこには第三遊撃隊の姫騎士、ラピュス、ララン、アリサの三人が並んで立っていた。


「お前達・・・」

「おはよう」

「・・・おはよ」

「おはようございます」


 ヴリトラの顔を見て挨拶をする姫騎士達。するとヴリトラの後ろからリンドブルムとジャバウォックも顔を出してガバディアと姫騎士達に軽く挨拶をした。ヴリトラは騎士団の団長と姫騎士が三人の来た理由が分からずに首を傾げる。


「それでどうして此処に来たんです?まさかストラスタ公国がまた攻め込んで来て、新しい依頼でも?」

「いやいや、そうではない。今日は君達にお客様を連れて来たんだ」

「お客様?依頼のですか?」

「そうではない。もっと大きなお客様だ。フォーネ達にも関係のあるお客様なのでな、こうして同行してもらったのだ」

「「「?」」」


 ガバディアの言ってる事がいまいち理解出来ないヴリトラ達。すると、ズィーベン・ドラゴンの庭と町を繋ぐ細い道の方から五つの人影がこちらへ歩いて来るのが見えた。人影の内、四つは黄金色の鎧を身に付け、白いマントを羽織った騎士、王族直属の黄金近衛隊の騎士だ。そしてその四人の騎士に囲まれる様に一人の女性が歩いている。白銀のドレスを纏い、頭に黄金にティアラを乗せなすみれ色の長い髪をした美しい女性。

 ドレスを着た女性を見て、ヴリトラとリンドブルムは驚いた。なぜならその女性はこの前出会ったレヴァート王国の第三王女、パティーラムだったのだから。


「ウ、ウソォ!?」

「パ、パティーラム様!?」


 前のワンピース姿から見違える様な高貴な姿をしてるパティーラムに思わず声を上げるリンドブルムとヴリトラ。二人の言葉を聞いてジャバウォックも驚き目を丸くする。奥にいたニーズヘッグとジルニトラも反応して窓から顔を出しを見る。そして全員がパティーラムの姿に釘付けになった。

 パティーラムは護衛の騎士達の間を抜け、騎士達の前で立ち止まり七竜将を見つめる。ラピュス達もパティーラムが立ち止ったのを見て一斉にその場に跪いた。


「御機嫌よう、ヴリトラさん、リンドブルムさん。前日はお世話になりました」


 微笑みながら挨拶をするパティーラムを見て照れ笑いをしながら頭を下げる二人。初対面のジャバウォック達もその美しさに思わず見惚れていた。


(こりゃあ、想像以上のべっぴんさんじゃねぇか・・・)

(これならヴリトラとリブルが言った事も納得が行くな・・・)

(こ、これは・・・確かにあたしの負けかも・・・)


 心の中でパティーラムの魅力を呟くジャバウォック、ニーズヘッグ、ジルニトラ。パティーラムはそんな三人の方を向くと微笑んでゆっくりと頭を下げて挨拶をする。


「と、とりあえず、中にどうぞ」

「ハイ。では失礼します」


 パティーラムをズィーベン・ドラゴンに招くヴリトラ。パティーラムも笑顔でズィーベン・ドラゴンの中へと入っていった。

 来客用のフロアにヴリトラ達は集まっていた。後から来たファフニールやオロチも突然訪ねて来た王女に驚いていたが、ヴリトラが事情を説明すると落ち着いてパティーラムに挨拶をしたのだった。パティーラムの護衛をしていた黄金近衛隊の騎士達はズィーベン・ドラゴンの入口前で外を見張っており、ヴリトラは来着用の椅子に座り、向かい合って座っているパティ―ラムを見ていた。ラピュス達姫騎士とガバディアはパティーラムの後ろや横に控えており、リンドブルム達もヴリトラの後ろや横に立っている。


「どうぞ」


 ファフニールが飲み物の入ったコップをパティーラムの前に置く。


「ありがとうございます」

「えへへ・・・」


 笑顔で礼を言うパティーラムに照れながら後ろに下がるファフニール。ファフニールが下がるのを見ると、パティーラムはヴリトラの方を向いて小さく頭を下げる。


「改めまして、この前は本当にお世話になりました」

「い、いやぁ、そんな大したことはしてませんし・・・」

「いいえ。貴方がたのおかげで本当にあの日は楽しかったです。・・・こちらはお話したお礼です。少ないですが、受け取ってください」


 パティーラムは小さな革製の袋を取り出してヴリトラの前に置く。ヴリトラはその革製の袋を手に取り、感触から中身が硬貨であることに直ぐに気付く。そしてそれをジルニトラに渡してもう一度パティーラムの方を向いた。


「ありがとうございました」

「お礼を言うのは私の方ですよ?ウフフフ」


 報酬を受け取ったのに礼を言うヴリトラがおかしいのかパティーラムは小さく笑い出し、ヴリトラも小さく笑っていた。笑った後、パティーラムは広い部屋に置かれている家具や書物などを見回した。


「それにしても、ここには見た事のない物が幾つもありますね?皆さんに着ている服も変わっていますし、噂では見た事のない武器を使っているとも聞いています」

「え?え、ええ。俺達は遠い所から来ましたので・・・」


 自分達が異世界の人間であることを知られないように苦笑いをしながらさり気なく誤魔化すヴリトラ。そんなヴリトラを見てリンドブルム達は心配そうな顔で彼を見ていた。そして七竜将の正体を知っているラピュス達も同じような顔をしていた。


「遠い所?それはレヴァートとは違う国から来たという事ですか?それともこのヴァルトレイズ大陸とは違う海の向こうの大陸から・・・?」

「そ、そうなんです。この大陸とは違う大陸から・・・」

「成る程、それなら見た事のない武器を使われているのも納得が行きますね。海の向こうの大陸ではそこまで技術が発展しているのですか・・・」


 驚いて考える様な顔を見せるパティーラム。そんなパティーラムを騙している事に心が痛むのかヴリトラは苦笑いのまま彼女を見ていた。他の七竜将も同じような状態だ。ただし、オロチだけは無表情のまま壁にもたれている。そんな時、パティーラムは何かを思い出したのか顔をフッと上げて隣に控えているラピュスの方を向いた。


「そう言えば、まだラピュスさんとラランさんにもお礼をしていませんでしたね?」

「え?・・・いえ、私達は王国に仕える騎士団の一員です。姫様をお守りするのは当然で、礼など・・・」

 

 少し慌てる様にラピュスは顔を横へ振り、ラランも隣で頷いている。するとパティーラムは真剣な顔で二人を見てゆっくりと口を開く。


「いいえ、あの時の私はただの貴族として貴方がたに接しました。王族ではなく、一人の女として私は貴方がたに依頼したのです。お礼をするのは当然の事」

「し、しかし・・・」

「それに、私は普通の女として私と接してくれた貴方がたに感謝しています。ですから、お礼を受け取ってもらわないと困るのです」

「は、はぁ?」


 真面目な顔で王族の言う事とは思えない言葉を口にするパティーラムに少し戸惑いを見せるラピュス。すると、そんなラピュスの肩をポンとガバディアが叩く。ガバディアはラピュスを見て小さく笑って頷く。それは「遠慮なく受け取れ」というガバディアからのメッセージだった。それを知ったラピュスとラランはパティーラムの方を向いて微笑みながら頭を下げる。


「喜んで、お受け取りします」

「・・・ありがとうございます」


 礼を受け取ってくれるラピュスとラランを見てパティーラムも真面目な顔から笑顔へ戻る。その様子を見ていた七竜将やガバディア、アリサも小さく笑っていた。すると、突然外から慌ただしい男の声が聞こえてきた。


「団長ーーーっ!」

「「「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」」」


 突然の声にヴリトラ達は反応し、笑顔に包まれていた部屋に緊張が走る。

 パティーラムがズィーベン・ドラゴンを訪れた事で笑顔に包まれる一同。だがそこへ突然の叫ぶようにガバディアを呼ぶ男の声。この声が七竜将を新たな戦い場へ誘う事をこの時は誰も気付いていない。


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