第四十八話 笑顔の菓子
ティムタームの城からレヴァート王国第三王女のパティーラムが抜け出したと城の騎士から知らせを受けたヴリトラ達はパティーラムの捜索をする為に城下町を探す事にする。だが、捜索を始める直前にとある貴族の女性、ラティーから町の案内を依頼され、ヴリトラはそれを引き受けてしまう。結果、パティーラムの捜索と町の案内の両方をする事になったのだった。
ヴリトラ達はラティーを連れて町の市場を歩いていた。ラティーは最初に菓子を買いたいらしく、ヴリトラ達は一番品揃えの良い店へと案内する。市場には大勢の住民達が買い物をしており、大勢の人の中にはパティーラムを捜索している騎士達の姿もあった。
「此処がこの辺りで一番多くの商品を置いている店だ」
店の前でラピュスはティムタームで自分がよく知っている菓子専門の店を紹介し、ラティーはその店に並べられている沢山の種類の菓子を見て目を輝かせていた。
「凄いですね、色んなお菓子があります!」
「ああ、子供から大人まで大勢の人の好みに合うように沢山の菓子が売られているからな」
感激するラティーにラピュスは無表情で説明している。二人の後ろではヴリトラ、リンドブルム、ラランは横に並んで二人の姿を見つめていた。
「ラピュスってお菓子屋さんとかに詳しいの?」
「・・・よくお母様の為にお菓子を買ったりとかしてるから」
「へぇ~、そうなんだ」
「・・・因みにこの前隊長の屋敷で食べたクッキーも此処で買った」
小声で目の前の菓子屋の事などを話しているリンドブルムとララン。二人の間ではヴリトラが腕を組みながら並べられている菓子の山を見つめていた。
「折角だから俺達も何か買うか?」
「いいね。最近お菓子類とか全然食べてないし」
「それじゃあ、買いますか?」
「うん!」
ヴリトラとリンドブルムは笑いながら菓子を買う為にラピュスとラティーの所へ歩いて行く。そこへラランが小首を傾げながら二人に声を掛けた。
「・・・いいの?町案内をしてる最中なのに個人的な買い物をして?」
「え?どうして?」
「・・・印象が悪くなる」
七竜将の評判が落ちる事を心配して忠告するララン。だがヴリトラとリンドブルムは小さく笑いながら答える。
「大丈夫、向こうの世界ではもっと酷い事をしたことあるし」
「買い物をして評判が落ちることぐらい何とも思わないからさ」
そう言ったリンドブルムとヴリトラはそのまま菓子の並べられている棚の方へ歩き出す。評判が落ちる事を全く気にしない二人を見てラランは目を丸くしていた。彼等の気楽と言うか、呑気と言うかその余裕の態度にラランな呆れるのと同時に小さな尊敬を感じるのだった。
菓子を見ているラピュスとラティーの隣にやって来たヴリトラとリンドブルムはチラチラと並べられている菓子を選び始める。それに気づいたラピュスとラティーは彼等の方を向いた。
「どうした、二人とも?」
「いやな、俺達も何か菓子を買おうかなって思ってな?」
「買うって、今は依頼を受けてる最中だろう?何を勝手に自分達の買い物をしてるんだ?」
「お前もラランと同じような事を言うな?」
「当たり前だ、依頼人に失礼だろう!」
依頼人の前で自由気ままに行動するヴリトラとリンドブルムに注意をするラピュス。二人の後ろではラランも頷きながら二人を見ている。ところがラティーは不機嫌そうな顔をするどころか、笑ってヴリトラとリンドブルムを見ていた。
「お二人もお買い物をされるのですか?でしたらオススメのお菓子を教えていただけます?」
「オススメですか?そうですねぇ~。・・・僕はこれですね」
リンドブルムは目の前に置かれている袋に入って棒で刺してある細長い飴の様な赤い菓子を選んで手に取った。
「これは、何ですか?」
「これは確か・・・え~っと」
菓子の名前を思い出せずに考え込むリンドブルム。すると彼の後ろからラランが顔を出してリンドブルムの持っている菓子を覗き見る。
「・・・それは『ネリーベル』って言うお菓子。砂糖を溶かして、ある程度固まったら棒を刺して乾かす物。果汁が混ぜてあって甘酸っぱい」
「あっ、そうだった!思い出したよ」
「・・・忘れん坊」
「アハハハハ・・・」
自分の代わりに菓子の説明をしてくれたラランの方を見て苦笑いをするリンドブルムとそんな彼をジト目で見つめるララン。話に加わって来たラランを見てラピュスは困り顔を見せる。
「ララン、お前まで・・・」
「・・・リブルが忘れてたから。それに隊長も少し楽しんでた」
「なっ!わ、私は別に楽しんでなど・・・」
「・・・楽しくないのに付き合うのは逆に依頼人に失礼」
「お、お前なぁ・・・」
無表情でラピュスにズバズバと言い放つラランにラピュスは言い返せずに困り顔のままラランの方を見た。二人の間で会話を見ていたヴリトラとリンドブルムは苦笑いを見せている。
「・・・フフ、ウフフフ」
「「「「?」」」」
突然笑い出すラティーに四人は不思議そうな顔で彼女の方を見た。少し俯き、必死で笑うのを堪えているラティーは落ち着くとゆっくりとヴリトラ達の顔を見て微笑む。
「皆さんは仲がよろしいのですね?」
「え?」
「・・・そう見える?」
意外な言葉を口にするラティーに目を丸くするヴリトラと小首を傾げて尋ねるララン。
「ええ。皆さんは自分の思っている事をハッキリと相手に伝える事が出来ますし、もう一人も相手の言っている事の意味をしっかりと理解していらっしゃる。普通の人達にはそこまで出来ませんから」
「はぁ・・・」
ニッコリと笑いながら自分達の絆を褒めるラティーにヴリトラは頬を指で掻きながら頷く。それからヴリトラ達は色々な種類の菓子を買った。だたその量は半端ではなく、大きめの紙袋に溢れる位の菓子が詰め込まれる。それも紙袋三つ分でヴリトラとリンドブルムが荷物持ちとして持つ歩くことになったのだ。
菓子を買い終えた後、ヴリトラ達は市場から少し離れた所にある広場にやって来る。そこにもパティーラム捜索の為に動いている騎士の姿があり、ヴリトラ達はそんな人の多い広場で休憩を取る事にした。
「随分買ったなぁ」
「ええ、あんまり美味しそうなお菓子が沢山あったので買い過ぎてしまいました」
「・・・本当に買い過ぎ」
ベンチに座って紙袋ギッシリに詰められている菓子を見て驚くラピュスとララン。その紙袋の隣ではラティーが笑っており、紙袋を挟んだ隣ではヴリトラとリンドブルムが紙袋の中の菓子を覗き込んでいた。
「それにしてもラティーさん。アンタ一人でこの菓子全部を食べるつもりか・・・?」
「お腹壊しますよ・・・?」
全てを食べるのか、それが気になりラティーの方を見て尋ねるヴリトラとリンドブルム。ラティーはそんな二人の方を向いてクスクスと笑い出す。
「まさか、このお菓子は子供達にプレゼントするんですよ」
「プレゼント?」
「ラティーさんの子供ですか?」
「いいえ、施設の子供達です」
「施設?」
ラティーに訊き返すヴリトラとまばたきをして彼女を見つめるリンドブルム。ラティーの隣に座っているラピュスとラランも意外に思ったのか、少し驚いた顔でラティーを見つめていた。
「ティムタームの西の方に小さな施設があるんです。そこには事故などで家族を亡くした子供達を引き取って育ててるんです。ですが施設が小さいのに子供の数が多く、資金などで困っているらしく、時々お菓子を買ってそこの子供達にプレゼントしてるんです」
ヴリトラ達はラティーがボランティアで子供達に菓子をプレゼントしていると聞かされて驚いていた。貴族の生まれである女性が身寄りの無い子供達に菓子をただでプレゼントするなどという行為を取るなど、この世界ではほぼあり得ない行為だからだ。
ラティーはベンチに座ったまま空を見上げて微笑みながら話を続ける。
「お金を寄付するというのも考えましたが、突然大金を施設に寄付するのは施設の人々を驚かせてしまいますので、お菓子や服などをプレゼントする事にしたんです。と言っても、まだ今回で三回目なのですが・・・」
「そうだったんですか・・・」
既に三回も施設に物品寄付をしている事を聞いてリンドブルムはラティーを見つめながら呟く。ヴリトラ達もラティーの心優しい行動に驚くのと同時に感心するのだった。
話を終えたラティーは紙袋の中から小さな袋を一つ取りだして中から砂糖を塗した小さな小麦色の丸い菓子を指で摘まんで取り出す。その菓子はラティーが自分用に買った物だ。
「そのお菓子は?」
リンドブルムがラティーの持っている菓子を見て尋ねると、ラティーは笑いながら菓子を見つめて答える。
「これは『ターネル』と言うお菓子です。値段も安く、お砂糖を沢山塗してありますから子供達に人気のあるお菓子なんです」
「・・・私もそれ好き」
「あら?そうなんですね?私も大好きなんです」
同じ菓子を好きだと言ったラランにラティーは小さな嬉しさを感じたのかラランの方を向いて笑顔を見せる。そんな時、ヴリトラも自分の上着のポケットの中から同じターネルの入った袋を取り出して中からターネルを一つ取り出した。リンドブルムはヴリトラもターネルを持っている事に気付いて意外そうな顔をする。
「あれ?ヴリトラもそのお菓子買ったの?」
「ああ、店の人が勧めるから気になって買ってみたんだ」
そう言ってヴリトラは指で摘まんでいるターネルを真っ直ぐ上に投げる。投げられたターネルはゆっくりと上がって行き、リンドブルム達はそのターネルを目で追って見上げた。やがてターネルはゆっくりとヴリトラの顔目掛けて落下していき、ヴリトラが大きく口を開けるとターネルはそのままヴリトラの口の中に真っ直ぐ入る。それを見ていたリンドブルムは小さく笑い、ラピュス達は少し驚いてヴリトラを見ている。
「変わった食べ方をされますね?」
「ん?そうか?」
「ええ、私は今までそんな食べ方をした事がありませんから」
「まぁ、貴族の人には考えられない食べ方だけどな・・・」
ヴリトラは苦笑いをしながらラティーの方を見て言った。ラティーはヴリトラの菓子を投げて口の中に入れると言う食べ方に興味が湧いたのか自分の袋からターネルを一つ取り出してヴリトラと同じように空に向かって真っ直ぐ投げる。そして落ちて来るターネルを見ながら口を開けるが、ターネルはラティーの鼻の真横に落ちて、口に入る事無く座っているラティーの膝の上に転がった。
「あら・・・」
「アハハハ、簡単そうで意外と難しいんだよ、これは」
「僕も初めてやった時は失敗ばかりでした」
失敗したラティーを見て笑いながら話すヴリトラとリンドブルム。するとラピュスが笑う二人をつまらなそうな顔を見ながら腕を組んだ。
「何を大袈裟に言ってるんだ、ただ上に投げて口に中に入れるだけだろう?」
「んん?じゃあやってみろよ」
簡単だと言うラピュスを見て若干ムッとするヴリトラはラピュスにやるように言いながら立ち上がり、ラピュスの所まで行くと彼女に自分の持っているターネルの袋を差し出した。
「ああ、いいだろう。簡単だ」
ラピュスは余裕の笑みを浮かべて摘まんだターネルを空に向かって投げた。そして上がったターネルが落ちて来るのを見て口を開ける。だが、ターネルはラピュスの額に当たって地面に転がり落ちた。
「ほら見ろ」
「い、一度失敗したからと言って難しいとは限らんだろう!」
ニッと笑うヴリトラを見て少し頬を赤くするラピュスはもう一度挑戦する。だが何度やってもターネルは口に入らず地面に落ちるだけだった。
「お、おい、もういいだろう?全部地面に落ちちゃってるじゃねぇか」
「ぐぅ~~っ!」
ラピュスの足元に散らばるターネルを見て止めるヴリトラ。既に袋の中には数える位のターネルしか入っておらず、自分の菓子が無くなっていくのを見てられなくなったのだろう。頬を赤くしたまま悔しがるラピュスを見てリンドブルムとラティーは苦笑いを見せ、ラランは無表情のままラピュスの横顔を見ている。
「それでは、そろそろ施設へ行きましょう」
立ち上がったラティーはヴリトラ達の方を見て施設へ出発するよう話す。それからヴリトラ達は菓子を持ってラティーの言っていた施設へ向かい、そこに住んでいる子供達に菓子をプレゼントする。菓子を受け取った子供達は皆笑顔でヴリトラ達に礼を言い、ヴリトラ達も喜ぶ子供達を見て微笑んだ。その後、ヴリトラ達はラティーに頼まれて彼女が一度も行った事のない場所へ案内をし彼女を楽しませたのだった。
「フゥ。もうこんな時間ですか・・・」
ラティーは町全体を見渡せる高台に来てそこから町を見下ろしている。辺りは既に夕日が差し掛かり、町の方では住民達が家に帰ったり、市場で店を閉めたりなどしていた。ヴリトラ達も町を眺めているラティーの姿をジッと見つめている。結局、行方不明になっているパティーラム王女を見つける事は出来なかった。いや、ラティーに町の案内をしていた事により、殆ど捜索する事が出来なかったと言った方がいいかもしれない。
「・・・結局王女様を見つける事は出来なかった」
「そうだね・・・」
無表情でパティーラム王女を見つける事が出来なかった事を呟くラランとその隣で苦笑いを見せるリンドブルム。その二人の近くではヴリトラとラピュスも何やら小声で話をしていた。
「だから言っただろう、町案内をしながら王女様を探す事なんて出来るはずないと?」
「仕方ねぇだろう?彼女が色んな所へ連れてってくれって言って忙しかったんだから。お前だって結構楽しんでたじゃねぇか?」
「うっ、そ、それは・・・」
互いにラティーに聞こえない様に静かに話すヴリトラとラピュス。そんな時、町を眺めていたラティーが四人の方を向いてゆっくりと歩いてくる。歩いてくるラティーに気付いた四人は会話を止めて彼女の方を向いた。ラティーはヴリトラ達の前で立ち止まり、静かに頭を下げる。
「今日は本当にありがとうございました。おかげで今まで見た事がなかった場所を見たり知らなかった事を経験する事が出来ました」
「いや、こっちも喜んでもらえてよかったよ」
笑いながらラティーに言うヴリトラとその隣ではラピュスがヴリトラは目を細くして見ており、リンドブルムとラランはラティーをジーっと見て話を聞いていた。
「お礼の方は後日改めてお渡ししますので、皆さんのお住まいを教えて・・・」
ラティーがヴリトラ達の住んでいる場所を訊こうとすると、ヴリトラ達の背後から無数の気配がする。それに気づいたヴリトラ達は咄嗟に後ろを向いた。そこには数人の騎士の姿があり、その中には黄金色の鎧を身につけ、白いマントを羽織った他の騎士とは雰囲気の違う騎士が二人いる。
「あれは、黄金近衛隊の騎士だ」
「ええ?昼間言ってた近衛隊の?」
ラピュスの方を向いて訊き返すヴリトラ。リンドブルムとラランもジッと騎士達を見ている。ヴリトラ達が話をしていると黄金近衛隊の騎士の一人が四人に近づいて来る。
「我々はパティーラム王女の捜索隊の者だ。お前達、姫様らしき人物を見かけなかったか?」
「あっ、ハイ。我々も王女様を捜索していたんですが、見つける事は・・・」
ラピュスは黄金近衛隊の騎士に若干困ったような顔で説明しよとすると、ヴリトラ達の後ろに立っていたラティーが四人と間を通って騎士の前に立つ。
「これ以上はもう許されそうにありませんね」
残念そうな声を出して被っていた大つば帽子を取るラティー。帽子の下からすみれ色の長く綺麗な髪が広がり、その髪にヴリトラ達は思わず見惚れてしまっていた。帽子を取ったラティーを見て目の前に立っていた騎士達は驚きの顔を見せ、全員が一斉に跪いた。突然跪いた騎士達の驚くヴリトラ達。するとラティーはゆっくりと振り返り、ヴリトラ達の方を見る。
「迎えが来てしまいましたので、私はこれで失礼します」
「え?ラティー、アンタは一体・・・」
少し戸惑ってラティーを見つめるヴリトラ。すると、跪いていた黄金近衛隊の騎士が顔を上げてヴリトラを睨みつけて声を上げる。
「無礼者!パティーラム王女の前で失礼であろう!?」
「「「「・・・え?」」」」
騎士の言葉に耳を疑うヴリトラ達。騎士は目のラティーをパティーラムと呼んで跪いている。上手く状況が呑み込めないでいる四人を見てラティーはゆっくりと頭を下げる。
「黙っていてすみません。改めて自己紹介をいたします。私はレヴァート王国第三王女、『パティーラム・セム・レヴァート』と申します」
ワンピースの端を両手で持ち、少し姿勢を低くして頭を下げて自分をパティーラムと名乗るラティー。その姿を見てヴリトラ達はしばらく黙り込み、状況を整理する。そして・・・。
「「「・・・・・・ええぇ~~~!?」」」
「・・・・・・」
声を揃えて驚くヴリトラ、ラピュス、リンドブルムと黙ったまま驚いているララン。驚くのも無理もない、今までラティーと名乗って行動を共にしていた女性が行方不明になっていたパティーラム王女だったのだから。そして四人は昼間に彼女と接していた時の自分達の態度を思い出して固まる。特にラピュスは大量の汗を掻いており、慌ててその場に跪く。
「し、しし、失礼しました!!姫様とは知らず、あのような無礼な態度を!!」
「・・・すみません!」
ラピュスに続いてラランも慌てて跪き謝罪する。そしてヴリトラとリンドブルムも遅れて跪く。四人を見てパティーラムは微笑みながら四人に声を掛けた。
「お気になさらないでください。寧ろ感謝しています」
「え?」
感謝している、その言葉を聞いたラピュスは思わず顔を上げて訊き返した。
「あんな風に普通の人として接してもらえるなんて、お城ではあり得ない事ですから。王族としてではなく、一人のレヴァート王国の人間として接してもらいたかったのです」
「姫様・・・」
「皆さんには本当に感謝しています。今日の出来事は私にとって素敵な思い出になりました」
笑顔で自分達に感謝してくれるパティーラムに思わず頬を赤くして照れるラピュス。ラランもまばたきをしながら見惚れていた。
「そちらのお二人も本当にありがとうございました。まさか今噂になっている七竜将の人達に町を案内していただけるなんて」
「い、いえ。そのぉ・・・」
「どういたしまして・・・」
ヴリトラとリンドブルムも笑顔のパティーラムに思わず照れてしまう。
パティーラムがヴリトラ達に礼を言っていると、彼女の後ろで跪いていた騎士達が立ち上がりパティーラムに声を掛けた。
「姫様、間もなく日が暮れます。城にお戻りください」
「・・・フゥ、分かりました」
騎士に急かされて溜め息をつくパティーラムはもう一度ヴリトラ達の方を向いた。
「では、私はこれで失礼します。先程も言いましたようにお礼は後日必ず。では、御機嫌よう」
笑顔で別れを告げるパティーラムは騎士達と共に高台を後にした。残ったヴリトラ達はゆっくりと立ち上がり、立ち去るパティーラムの達の姿を見つめていた。
ヴリトラ達が案内をした貴族の女性ラティーの正体は第三王女パティーラムだった。思いも寄らない出合いにヴリトラ達は驚きを隠せずにいた。このパティーラムとの出会いがヴリトラ達七竜将とラピュスとラランの二人の姫騎士に新たな運命をもたらす事になるのだった。




