第四十七話 ティムターム騒動
平和なティムタームの町。人々は市場で買い物をしたり、傭兵やギルドのメンバー達は依頼を受けるなど、何も変わらずにただ日にちが過ぎていく。しかし、変わらないものが他にもあった。最前線で行われているレヴァート王国とストラスタ公国の戦いも進展が無く睨み合いが続いていた。ストラスタ軍を敵の領土へ追い返し、奪われた町や村を取り返したのはいいが、ストラスタ軍の防御力は高く、なかなか突破口を見つけられずにいたのだ。だがそれでもレヴァート軍は領土を守り通していたのだった。
晴天の真昼、ヴリトラとリンドブルムは二人で町を歩いている。昼食を済ませ、ズィーベン・ドラゴンに依頼をしに来る客もおらず退屈だった為、二人は依頼人探しを兼ねて気分転換の散歩をしていたのだ。
「今日も町は平和だねぇ?」
「ああ、こうも平和じゃうちに依頼をしに来る客もいないだろうな」
空を見上げて話をしながら街道を歩いているリンドブルムとヴリトラ。二人の周りには大勢の住民達が出店で食材や武器、本などを買ったり、立ち話をしたりしている。だが、二人が町を歩いていると決まって起きる事がある。それは・・・。
「あっ!見て、あれって七竜将じゃない?」
「ホントだ!ヴリトラとリンドブルムよ!」
「ええっ?あのゴルバンの町を九人で解放したって言うあの七竜将かよ?」
住民達が七竜将の姿を見る度に大騒ぎしだすのだ。前にアリサが言った通り、ティムタームの町では七竜将と二人の姫騎士の僅か九人がゴルバンの町を解放したという話で持ち切りだった。その為、町の住民の殆どが七竜将の姿を見る度にはしゃぎだす。
ヴリトラとリンドブルムは周りで自分達を見ながら騒いだり小声で話をしている住民達をチラチラと見ながら落ち着かない様子で歩いている。
「何だか皆俺達を見てるな?」
「うん、アリサの言った通り持ち切りだね?」
「そう言えばラピュスの家に行った次の日からニーズヘッグ達があまり外出しなくなったけど、これが理由だったんだなぁ・・・」
周りから見られながら小声で話をするヴリトラとリンドブルムは目だけを動かして自分達の周りを見る。すると二人はゆっくりと立ち止まってゆっくりと深呼吸をした。周りの住民達がそんな二人をジッと見つめる。俯いているヴリトラとリンドブルムは顔を上げて表情を鋭くした瞬間、地を思いっきり蹴りもの凄い速さで走り出し、その場から逃げるように去る。突然走り出したヴリトラとリンドブルムに住民達はまだ目を丸くして二人が走り去った方を見つめていた。
街道を走り去ったヴリトラとリンドブルムは人気の少ない路地に逃げ込む様に駆け込み、誰もついて来ていない事を確認すると足を止めて両手を膝に付けた。
「ハァハァハァ、こ、此処まで来れば大丈夫だろう・・・」
「ぜ、全力で走ったし、まず普通の人は追いかけてこれないしね・・・」
「ああ。ところで、どうして俺達って走ったんだっけ?」
「え?そ、そりゃあ、周りの人達が僕達をジロジロ見るから・・・て、どうして見られたくらいで逃げちゃったんだろう?」
冷静になった途端、どうして自分達が街道から逃げてこの路地にいるのかを考え始めるヴリトラとリンドブルム。別に自分達は何も悪い事はしていないのだから、逃げる必要もなかったはず。なのにどうして逃げ出したのか改めて考えると分からなかった。
「別に逃げる必要も無かったんだよな、俺達?」
「うん、そうだね・・・」
苦笑いをしながらヴリトラとリンドブルムはお互いを見つめ合って頭を掻く。二人が笑っていると、二人の背後から何やら声が聞こえてきた。後ろを向くと、そこには大きな広場があり、その奥には何やら学校の様な建物があるのが見える。そして広場ではリンドブルムより少し年下に見える数人の子供が向かい合い、木剣で剣の組み手をしている姿があった。
「何だあれ?学校か?」
「かもしれないね」
ヴリトラとリンドブルムは学校の様な建物と校庭の様な広場を見て建物が何なのかを考えながら見ている。
「そこで何をやってるんだ?」
突然背後から聞こえてきた声に反応する二人。まさか、さっきの街道にいた住民が追いかけて来たのか、と考えながら後ろを振り向く。だがそこに立っていたのはラピュスとラランだった。二人ともヴリトラとリンドブルムの後ろで不思議そうな顔をしている。
「何だ、ラピュスとラランかぁ。脅かすなよ」
「ん?何かあったのか?」
「いや、何でもない」
若干疲れた様な顔を見せて肩を落とすヴリトラを見て小首を傾げるラピュス。その隣ではラランもヴリトラとリンドブルムをジッと見つめていた。
「それより、二人ともどうして此処にいるの?」
「・・・私達は見回り。そっちこそどうしたの?」
「僕達はちょっとした事で街道から此処に走って来たんだ」
「・・・そう」
興味の無さそうな顔で静かに答えるララン。そんなラランを見てリンドブルムは苦笑いをしながら頬を掻く。すると、自分達がさっきまで見ていた学校の様な建物を指差した。
「ところで、この建物は何?学校か何か?」
「ん?・・・ああぁ、此処か。そうだ、此処は町の子供達が通っている学校だ。七歳になってからこの学校に通い、十二歳になったら裏にある別の学校に移ってそこで新しく授業を受けるんだ」
「へぇ~、何だか小学校と中学校みたいだね?」
「ショウガッコウにチュウガッコウ?お前達の世界ではそう呼ぶのか?」
「うん、まぁね」
ラピュスの質問に笑顔で答えるリンドブルム。すると今度はヴリトラが校庭で木剣で組み手をしている子供達を見て尋ねる。
「それじゃあ、あそこで木の剣を持っている子供達は?」
「見ての通り、剣の訓練だ。騎士を目指している子供達にはあんな風に剣の組み手が科目に追加されるんだ」
「成る程なぁ。・・・ところでさぁ、さっき十二歳まであそこで授業を受けて、その後に別の学校で授業を受けるって言ったよな?」
「ああ、学校が変わった後に騎士や兵士になるか、それとも別の仕事をするかを選んで、卒業するまで勉強をするんだ」
「という事は、卒業してからお前達が通っていた騎士訓練学校に行ってそこで騎士になる為の訓練を受けるって事なのか?」
「そうだ」
ヴリトラの連続の質問に答えていくラピュス。するとヴリトラはチラッとラランの方を向いて不思議そうな顔を見せる。
「それじゃあ、どうしてラランは今姫騎士をやってるんだ?確かラランは十一歳だったろう?本来ならまだあの学校に通ってる時じゃねぇの?」
ヴリトラの質問にリンドブルムも「確かにそうだ」と言いたそうな反応を見せてラピュスの方を向く。ラピュスもヴリトラが質問するのも無理はない、という様に頷いた。ラピュスはラランの方を向いてヴリトラの質問に答える。
「ラランは特別だ。八歳の時に学校での成績と木剣の腕をたまたま学校を見学に来ていた騎士に認められてそのまま騎士訓練学校に入学したんだ。そして入学から二年後に訓練学校を卒業し、一年で正式に騎士となり、それから直ぐに姫騎士の称号を得たんだ」
「マジかよ?十歳の時に訓練学校を卒業したのか!?」
「それに八歳の時に訓練学校に飛び入学なんて、ラランって天才少女だったんだね?」
「・・・そんな事、ない」
天才少女、リンドブルムのその言葉を聞いてラランは頬を赤くして照れる。
「いや、リブルの言うとおりだ。通常騎士訓練学校は三年通わないと卒業出来ないものだが、お前は私達よりも一年も早く卒業したんだ。誇っていいと思うぞ?」
「・・・隊長まで」
ラピュスにまで褒められた事により、ラランの顔はますます赤くなる。そんなラランをヴリトラとリンドブルムも笑って見ていた。そんな時、町の表通りの方から何やら騒がしい声が聞けてきた。
「ん?何だ?」
「表通りの方からだな」
「何か遭ったのかな?」
「・・・行ってみる」
ヴリトラ達は声の聞こえる方へ小走りで向かって行く。表通りに出ると、何やら大勢の騎士が表通りを行ったり来たりしている光景があった。
「何か大勢の騎士がいるけど、一体どうしたんだ?」
「何かの訓練か騎士団の催し物でもあるの?」
「いや、私は何も聞いてないぞ?」
「・・・私も」
騎士団が動いている為ラピュスとラランが何かを知っていると思い、ヴリトラとリンドブルムが二人に尋ねるが、心当たりが無く首を横へ振るラピュスとララン。するとそこへ一人の騎士が四人の下へ駆け寄って来た。
「失礼します。我等は黄金近衛隊指揮下の騎士隊です」
「黄金近衛隊!?」
騎士の口にした隊の名前を聞いたラピュスは驚いて声を上げ、ラピュスと黙ったまま目を丸くして驚く。二人の様子を見てヴリトラとリンドブルムは不思議そうな表情を見せた。
「どうしたんだ、ラピュス?」
「ゴルペガード隊って?」
ラピュスの顔を見て尋ねる二人。ラピュスは驚きの表情のまま二人の方を見て説明する。
「黄金近衛隊とは騎士の中でも実力、国への愛国心、王家への忠誠心の全てが認められた者しか入隊する事が出来ない隊だ。そして常に国王陛下や王族の方々の警護についているレヴァート王国最強の騎士隊!」
「・・・つまり、近衛隊」
「「近衛隊!?」」
近衛隊、つまり王族を護衛する隊である事を聞かされたヴリトラとリンドブルムも驚いて声を上げる。今まで二人は精鋭部隊と言われた白銀剣士隊こそがレヴァート王国の最強と思っていた。だが、その上に更なる実力者、それも近衛隊がいると聞かされたのだから驚くのも無理はなかった。
「あ、あのぅ、貴方がたは王国遊撃隊の騎士ですよね?」
取り乱している四人を見ていた騎士がラピュスとラランを見て尋ねる。二人は現状を思い出したのか、落ち着きを取り戻して騎士に敬礼をした。
「・・・失礼しました!王国騎士団第三遊撃隊隊長、ラピュス・フォーネです!」
「・・・同じく第三遊撃隊、ララン・アーナリアです」
「一体何が遭ったのですか?」
明らかに只事ではないと察したラピュスは騎士に何が起きたのかを尋ねる。すると騎士は暗い顔で周りを気にしながらラピュスに説明する。
「じ、実は、少し前に城から王族の方が御一人抜け出されたのです・・・」
「王族が?」
城から王族の人間が抜ける、つまり逃げ出したと聞かされて反応するラピュス。その隣でもラランが話を聞いて反応していた。ヴリトラとリンドブルムも騎士であるラピュスとラランの知り合いという事で一応聞かせてもらっていた。
「抜け出された、という事は・・・」
「城下に行って買い物などをしたいと仰られ、黄金近衛隊の隙をついてお逃げになられたのです・・・」
「それで貴方がたがその王族の方の捜索を?」
「・・・ハイ」
疲れた表情で返事をする騎士にラピュスも同情の眼差しを向ける。するとそこへヴリトラが近づいて来て腕を組みながら少し呆れる様な顔を見せた。
「エリートの黄金近衛隊の隙をついて逃げるなんて、もしかしてその王族の人、前にも城から抜け出した事が?」
「え?あ、ああ。その通りだ。上からの話では今回で三度目らしい」
「マジかよ?三度も逃げられるなんて・・・・」
「それにしても、その王族の人に振り回されるなんて、皆さんも大変ですね?」
更に呆れた顔を見せるヴリトラと逃げ出した王族の事を考えて困り顔をするリンドブルム。
「ま、まぁ、確かにな。我々もそこは同感だ・・・」
リンドブルムの言葉を否定せずに苦笑いで同意する騎士。騎士とヴリトラ、リンドブルムの三人の会話をラピュスはジーっと見ていた。
「あのぉ、それでいなくなった王族の方とは?」
「え?・・・お、おおっ!そうだったな」
任務を忘れて二人の傭兵と話をしていた騎士は我に返りラピュスとラランの方を向く。
「城を抜け出されたのは、我がレヴァート王国第三王女の『パティーラム』様です」
「第三王女のパティーラム様・・・」
「きっとその人、すっごいじゃじゃ馬なんだろうね?」
「お、おい!」
リンドブルムの発言に驚くラピュス。王族に対して遠慮無く思った事を口にするリンドブルムにラピュスは一瞬引いてしまう。
「た、確かにプライベートの時は若干はしゃがれる事もあるが、王族としての嗜みはとても立派な方だぞ?」
「あ、貴方も近衛隊指揮下の騎士でありながら、その発言は問題があるかと・・・」
「あっ!そ、それは・・・す、すみません、私がそう言ったのは他の騎士達には・・・」
「ええ、黙っています・・・」
少し慌てる騎士を見てラピュスは頷き静かに溜め息をつく。そして真剣な表情で騎士の方を見て口を開いた。
「とにかく、私達もパティーラム様の捜索に協力します」
「・・・見つけたらお城に連れて行く」
「ありがとうございます。では、私は捜索に戻りますので」
話を切り替えて騎士達の王女捜索に協力する事にしたラピュスとララン。騎士も敬礼をした後に捜索を再開し、表通りを走って行った。残ったヴリトラ達は立ち去った騎士の方を見て今後の行動について話を始める。
「と、言う事で私達はこれからパティーラム様の捜索に入る。お前達はどうする?」
「そうだなぁ~。俺達はこれと言ってやる事は無いし・・・俺達も王女様の捜索を手伝うかな?リブル、お前はどうする?」
「僕は別にいいよ?もしかすると、王女様の顔を見られるかもしれないしね」
「ハハ、そう考えればよりやる気が出るよなぁ?」
「・・・真面目に探してよ?」
「「ハ~イ♪」」
ラランが細い目で二人に注意すると、ヴリトラとリンドブルムは声を揃えて楽しそうに返事をする。そんな二人にラピュスとラランはまた溜め息をつく。
四人が王女捜索に取り掛かろうとすると、リンドブルムがさっき自分達が通った路地の方から自分達を見ている人影に気付いた。
「ん?」
リンドブルムがその人影の方を向くと、その人影は逃げる様に立ち去った。それを見てリンドブルムは走って細道を通り路地へと戻って行く。
「おい、どうしたんだよ、リブル?」
「さっき誰かがこっちを見てた!」
「何?」
リンドブルムの言葉を聞いたヴリトラ、ラピュス、ラランの三人は反応する。リンドブルムは人影を追って走り出し、三人も互いの顔を見て頷くと、一斉にリンドブルムの後を追って走り出した。
路地ではヴリトラ達を見ていた人影が後ろを気にしながら走っており、息が切れてくると建物の陰に隠れて様子を伺う。その人影は大きな白いつば帽子を被り、白いワンピースを着た若い女性だった。
「・・・フゥ」
女性は誰もついて来ていないことを確認してホッと一安心する。
「どうしたんですか?」
「!?」
突然背後から声を掛けられて驚く女性は振り返るが、そこには誰もいない。そう思い、視線を下ろすと目の前でリンドブルムが自分を見上げている姿があった。
「キャア!・・・あ、貴方は?」
「出会っていきなり人を見て驚くなんて、失礼ですねぇ?しかも僕達を覗き見てたくせに・・・」
「あっ・・・ご、ごめんなさい」
「お~い!リブル~!」
女性が走ってきた方からヴリトラの声が聞こえてきてリンドブルムと女性は声のした方を向き、走って来るヴリトラ、ラピュス、ラランの三人の姿を確認する。三人は女性の前で足を止めてリンドブルムの方を向いた。
「一人でずんずん先へ進むなよ?」
「ゴメンゴメン。それより、この人だよ、僕達を覗いてたのは」
リンドブルムが目の前の女性を指差してヴリトラ達の教える。三人は女性の方をジーっと見て女性の顔を確認する。年齢からして二十歳そこそこと言った綺麗な顔をしていた。
「・・・なぜ私達を覗き見てたんだ?」
ラピュスが女性を見て少し声を出して質問すると、女性は少し驚く様子で答えた。
「い、いえ。何やら表通りの方が騒がしかったので、何か事件でも起きたのかと思ったんです。それで貴方がたが騎士の人と話している姿を見たので・・・」
「なら、どうして逃げるたのだ?」
「そ、そのぉ・・・そちらの男の子が私の方を見たのでつい驚いて・・・」
「え?僕?」
リンドブルムは自分の顔を指差して思わず訊き返す。無垢な少年に見られただけで逃げ出す女性にリンドブルムは若干ショックを感じて俯いた。そんなリンドブルムを見てヴリトラ達は若干苦笑いをする。
「あ、あのぉ・・・貴方がたが傭兵と遊撃隊の騎士の方々ですよね?」
「ん?ああ、そうだけど?」
「実はお願いがあるんです。その・・・町を案内していただけませんか?」
「え?」
突然町の案内を頼まれてヴリトラは訊き返す。
「私、貴族の父の言いつけで殆ど屋敷の外に出た事がなく、時々こうして外に出て町を回ってるんです。ですが、まだ行った事にない所もあり、そこに一人で行くのが不安で・・・」
「それで俺達に町の案内と護衛をしてほしいって事なのか?」
「その通りです。お願いします、お礼の方は十分いたしますので」
頭を下げてお願いする女性にヴリトラとリンドブルムは考え込む。だが、ラピュスは目を閉じて首を横に振る。
「申し訳ないが、私達は今ある人物の捜索をしているのだ。案内と護衛なら別の傭兵や騎士に――」
「OK!引き受けた」
「・・・・・・はぁ!?」
勝手に女性の頼みを引き受けたヴリトラにラピュスは目を丸くして驚き彼の方を向く。
「いいじゃねぇか?彼女の案内をしながら捜索をすればいいんだからさ?」
「お、お前なぁ!町の案内をしながら捜索が出来ると思ってるのかぁ!?」
「何とかなるさ。それに何か別の事をしながら探して、王女様に自分を探していると悟られない様に探すのも一つの手だ」
「そ、そんな適当な作戦が上手くいくのか?」
ヴリトラの考えた作戦の信頼性を疑うラピュスは細い目でヴリトラの顔を見た。リンドブルムとラランはそんな二人を見上げて話がまとまるのを待っている。
「あ、あのぉ、お城とか王女様とか、それは一体・・・?」
「え?い、いやいやいや!何でもないです」
「そ、そうです」
慌てる様子のヴリトラとラピュスにまばたきをする女性。するとラピュスは顔の片手を当てて一度小さく溜め息をついた。
「ハァ・・・分かった。それじゃあ町の案内をしながら捜索を始めよう」
「決まりだな」
「あ、ありがとうございます・・・」
不本意だが案内をしながら捜索する事にしたラピュスと右手の親指を立ててニッと笑うヴリトラ。そしてそんな二人を見て礼を言う女性。
「・・・そう言えば、名前聞いてない」
ラランが女性の名前を聞いていない事に気付いて名前を尋ねる。すると女性はヴリトラ達の方を向いて頭を下げる。
「あっ、申し遅れました。私、ラティー・セムと申します」
「俺はヴリトラだ」
「遊撃隊のラピュスだ」
「僕、リンドブルムです」
「・・・ララン」
それぞれ自己紹介を済ませてヴリトラ達は路地から表通りの方へ歩いて行き、ラティーに町を案内しながら姿を消した第三王女の捜索を始める。
城から抜け出したレヴァート王国第三王女、パティーラムの捜索をしようとした直後にラティーという貴族の女性から町の案内を頼まれたヴリトラ達。ヴリトラの勝手な判断で捜索と案内を同時にすることになったラピュス達は渋々町の案内をする事になったのだった。




