第三十六話 貴族騎士VS平民姫騎士
ゴルバンの町の情報を得るためにブンダの丘に駐留している白銀剣士隊と合流したヴリトラ達。だがその隊の指揮を取っているのは傭兵を手嫌う騎士、ファルネスト・チャリバンスだった。ヴリトラはラピュスと二人だけでチャリバンスと面会する為に駐留基地へと足を運んだ。
ヴリトラとラピュスが基地に入ると、周りには自分達をチラチラと見ながら武器の手入れや作戦の確認などをしている大勢の兵士と騎士の姿があった。突然基地にやって来た自分達を警戒しているのか、その目には僅かに敵意が込められている。しかし二人はそんな事を気にもせずに基地の中を歩いて行く。しばらく歩き、他のテントよりも少し大きめのテントの前までやって来た二人は入口の前で待機している騎士に声を掛けられた。
「どうぞ、こちらです」
騎士がテントの入口を開けると、二人は無言でテントの中へと入っていく。中には大きな木製の机があり、周りには白銀の鎧を身につけ、白いマントを羽織った五人の騎士の姿があった。そして奥には同じ姿をした金髪に後ろに向かって伸びるクセ毛、眼鏡を掛けた二十代の青年が木製の椅子に座っている姿がある。白銀剣士隊中隊長のファルネスト・チャリバンスだ。
ラピュスは机の前で立ち、真面目な顔でゆっくりと敬礼をする。
「第三遊撃隊隊長、ラピュス・フォーネです」
「戦略会議以来だな?」
ゆっくりと立ち上がり、めんどくさそうな声で敬礼をするチャリバンス。精鋭である自分達、白銀剣士隊の下に町の警護などを任されている下級の騎士がやって来た事で若干気分を悪くしているのようだ。
「それで?遊撃隊の姫騎士と傭兵が一体我々に何の用だ?」
チャリバンスは敬礼を終えると直ぐに腰を下ろしてめんどくさそうな声のまま、ラピュスに基地に来た理由を尋ねる。ラピュスはそんなチャリバンスの態度を気にする事なく本題に入った。
「私達はガバディア団長からストラスタ軍の補給基地があるゴルバンの町を解放するよう命を受けてきました」
「何?」
ラピュスの口から出たゴルバンの町解放の任務。それを聞いたチャリバンスは驚いて聞き返す。周りの騎士達も驚いて互いの顔を見て話し合う。ラピュスの後ろではヴリトラが黙ってラピュスとチャリバンス達の会話を聞いていた。
「つきましては、ゴルバンの町を解放する為に町に駐留している敵軍の戦力と町の状態を教えて頂きたいのです」
情報提供を要求するラピュス。それを聞いたチャリバンスは机を両手で叩きながら立ち上がるラピュスを睨みつける。
「ふざけるな!ゴルバンの町の解放は我々が任された任務だ。それをなぜ後からやって来た姫騎士、そして傭兵ごときに我々が苦労して得た情報を提供しなくてはならいないのだ!?」
精鋭の白銀剣士隊である自分達を差し置いて自分より位の低い騎士と自分が嫌っている傭兵に町の解放を任せ、更に情報を教えなければならない事にチャリバンスが納得する筈がない。それは彼の騎士として、貴族としてのプレイ度が許さなかった。周りにいるチャリバンスの部下の騎士達も同じ意見なのかラピュスとヴリトラを鋭い目でジッと見つめている。
チャリバンス達の反応を見てラピュスは小さく溜め息をつく。こうなる事は想定していたが、いざ目の前で見ると疲れるのか、彼女の顔は疲労で若干曇っていた。するとラピュスは懐からエリオミスの町で見せた丸めてある紙を取り出す。それを後ろで見ていたヴリトラは目を見張ってその紙を見つめる。
「ラピュス、その紙は・・・」
「・・・前に話した切り札だ」
ヴリトラの方を向いて小さく笑うラピュス。彼女が前に話した切り札がどんな物なのか気になるヴリトラはラピュスに近づいて背後から覗き込む。そこにはファムステミリアの文字で何やら細かく字が横書きで書かれており、紙の下の方には誰かのサインの様な大きな文字が書かれてあった。
「これを・・・」
広げた紙をチャリバンスに見せるラピュス。近くにいた騎士がその紙を受け取りチャリバンスに手渡す。紙を受け取ったチャリバンスは黙って紙に書かれたある事を読んでいく。すると、最初は普通に読んでいたチャリバンスの表情が次第に険しくなり、紙を持つ手も震え始める。しばらくして、全てを読み終えたチャリバンスは紙を机に叩きつけ、再びラピュスと睨んで声を上げた。
「何だ、これは!?」
「ご覧のとおり、指令書です」
感情的になるチャリバンスに対し、ラピュスは冷静に答えた。実はラピュスの持っていた紙に書かれてあったのはチャリバンス宛てに書いた指令書だったのだ。指令賞の内容はこうだ、「ブンダの丘に駐留する中隊は傭兵隊七竜将と彼等に同行している姫騎士、ラピュス・フォーネ、ララン・アーナリアにゴルバンの町の情報を無条件で提供し支援する事。そして彼等がゴルバンの町に向かった後、貴公等はその場で待機し次の指示を待て。 ガバディア・ロンバルト」と。
指令書を書いたのはガバディア本人だったのだ。団長であるガバディアから下された指令なら白銀剣士隊は逆らう訳にはいかない。指令書を見せる事によってチャリバンス達はガバディアからの命令で動いていると信じさせて揉め事もなく情報を手に入れる。まさにラピュスの言うとおり切り札だった。
「この指令書に書いてある通りなら、我々はお前達が此処を去った後に此処でジッとしているという事なのか!」
「そういう事になります」
静かに眉一つ動かさずに答えるラピュス。一方でチャリバンスは指令書を手で払い地面に落としてラピュスとヴリトラに背を向ける。チャリバンスは苛立ちを何処かへぶつけたいのかジッとできずに両手で紙をクシャクシャと乱し始めた。
「団長は何を考えてらっしゃるのだ?私達白銀剣士隊よりも、こんな何処の馬の骨とも分からない傭兵どもに敵補給基地の制圧を任せるなんて!しかも僅か七人だぞ?一体何が出来ると言うのだ!?」
「・・・そこまで言わなくても」
言いたい放題言うチャリバンスの背中を見てヴリトラは頬を掻きながらジト目で呟く。
「お言葉ですが、チャリバンス殿?貴方は戦略会議の時に団長からお聞きになったはずです。七竜将は僅か七人であの大盗賊団のクレイジーファングを壊滅させ、捕らわれていた子供達を助けた事を。彼等は普通の傭兵隊とは違います、寧ろ私達騎士団を越える力を持つ頼れる者達です。そんな彼等を馬の骨と呼ぶのはいかがなものかと存じます」
七竜将の実力を今までその目で見てきたラピュスはヴリトラ達を庇うようにチャリバンスに言い放つ。それを聞いたヴリトラは少し驚きながら自分を庇ってくれるラピュスを見る。真剣な表情で自分よりも立場が上の騎士に意見をぶつけるラピュスの姿にヴリトラは自然と笑みを浮かべた。
「フン!盗賊と騎士団を相手にするのとでは訳が違う。戦い方や戦力が戦況を分けるのだ、まぐれで盗賊を倒したくらいで調子に乗らない事だな」
「クレイジーファングはまぐれで勝てるような連中ではありませんでした!私はその戦いをこの目で見たんです」
チャリバンスの言葉にラピュスが感情の入った声で言い返す。二人の口論によって次第にテント内の空気が重くなっていく。
「お前がどう思って思っていようと所詮傭兵は金でしか動かない哀れな生き物だ。そんな傭兵の肩を持つとは、やはり平民出の姫騎士は実力も人を区別する目もないという事か」
「!」
ヴリトラはチャリバンスの言葉にピクリと反応する。ヴリトラとラピュスは呆れるような目で見た後に眼鏡を直しながら地図を見るチャリバンス。あまりにも失礼な発言を連続で口にするチャリバンスにラピュスも目を鋭くする。
「チャリバンス殿!貴方はもう少し・・・」
ラピュスがチャリバンスに言い返そうとした時、ヴリトラがラピュスの肩にそっと手を置いてラピュスを止める。振り返るラピュスは真剣な表情でチャリバンスを見つめる姿があり、ヴリトラはゆっくりとラピュスの隣までやって来た。
「・・・流石に今のは聞き捨てなりませんね?」
「ほぉ?傭兵は金でしか動かないと言うのが気に障ったか?だが事実だろう。お前達は報酬次第で仕事を選び、金を払わなければ何もしな欲の塊ではないか」
「・・・そんな事じゃない。ラピュスを侮辱した事が聞き捨てならないと言ったんだ」
ヴリトラの口から出た意外な言葉にラピュスは驚き、チャリバンス達白銀剣士隊の騎士達も意外そうな顔を見せる。周りから見つめられながらヴリトラは静かに口を開いた。
「アリサから聞きましたよ?騎士は騎士訓練学校を卒業した後に実績を積んで初めて騎士の称号を得る事が出来るって。だが、貴族出身の騎士は卒業後に無条件で騎士の称号を手に入れる事が出来る。つまり、平民出身の騎士とは違い何の苦労もせずに騎士になる事が出来るって訳だ」
ヴリトラがアリサから聞いた騎士が正式な騎士になる為の手順を話し、それを聞いているラピュス達は黙ってヴリトラの顔を見続けていた。
「ラピュスやラランも卒業した後に多くの実績をあげてようやく騎士になれた。そしてそこから更に実績を上げて姫騎士の称号を得たってね?・・・家の名前だけで貴族になったアンタとラピュスじゃ、どちらが優秀な騎士なのかは一目瞭然だと思うけど?」
「何だと・・・?」
ヴリトラの話の内容は間接的にチャリバンスは家の名前だけで貴族になり大した実力も持っていない騎士だと言っている事になる。チャリバンスにとってはそれこそ聞き捨てならない言葉だった。
「貴様っ!私が家の名前だけで騎士になった男だと言いたいのか!?剣の腕も戦いの実績も私の方が遥かに上なのだぞ!」
「本当の騎士って言うのは傭兵や位の下の騎士を見下したいしないと思いますけど?」
「き、貴様ぁーーっ!」
頭に血が上ったチャリバンスは腰に収めてある騎士剣を抜いた。それと同時にヴリトラは左手で勢いよく目の前の机を叩いた。すると叩いた所から真っ直ぐ割れ目ができ、木製の机は真っ二つになり内側に向かって倒れた。
目の前で机が真っ二つに割れた光景を目にしたラピュスやチャリバンス達は目を丸くして驚いた。ヴリトラは左手をゆっくりと降ろしてチャリバンスを鋭い目で見つめる。
「いいか、チャリバンスさん?俺は自分が金に汚い傭兵だとか欲の塊だとか馬の骨とか、何と言われよう構わない。実際俺はその通りなんだからな?・・・だがな、仲間や友人を侮辱し、傷つける奴は誰であろうと許さねぇ!例えそれが名門貴族の騎士様だろうとなっ!」
力の入った声でチャリバンスに言い放つヴリトラ。そんなヴリトラの顔を見たチャリバンスや周りの騎士達はヴリトラの迫力に一歩下がる。只の傭兵からとてつもない威圧感を感じて彼等は思わず引いてしまったのだろう。だがそんなヴリトラをラピュスだけはまばたきをしながら見つめている。まるで自分を庇ってくれたヴリトラに見惚れてしまっているかのように。
「もし俺の発言が気に入らないのであれば、相手になりますよ?俺も傭兵の端くれですから、こういう時にどうすればいいのかは分かっているつもりです」
ヴリトラは腰に収めてある森羅に手を掛けていつでも抜けるようにした。それを見て騎士達も騎士剣に手を掛けて構える。ますますテント内の空気が重くなったような雰囲気になってしまった。だが、チャリバンスはヴリトラから目の前の机に目を移してヴリトラの力を悟った。チャリバンスは臆病風に吹かれる様にゆっくりと騎士剣を鞘に納める。
「も、もういい。話しを戻すぞ!」
なかった事にするかのように話しを変えるチャリバンスを見てヴリトラはニッと笑いながら森羅から手を放す。このまま色々言い放ってやろうと思っていたヴリトラだが、これ以上話をややこしくしない為にあえて黙っている事にした。周りの騎士達も騎士剣から手を放しチャリバンスの方へ視線を向ける。
「では、まずゴルバンの町の情報を出来るだけ細かく教えて頂きますよ?」
笑ったままチャリバンスに情報を要求するヴリトラ。チャリバンスは悔しそうな顔でヴリトラを睨みながら地図を拾い上げて説明を始める。
しばらくして情報を得たヴリトラとラピュスはテントの外に出てインドブルム達の下へ戻って行く。テントの外ではヴリトラ達の会話を聞きつけた兵士や騎士達が入口前で構えている姿がある。何かあった時いつでも突入できるようにしていたようだ。真っ直ぐ基地の外へ向かって歩いて行く二人の後ろ姿を見つめる兵士達。すると、テントの中からチャリバンス達も姿を見せて二人の姿を見つめる。
「た、隊長、大丈夫ですか・・・?」
「・・・ああ、問題ない」
心配する兵士はヴリトラの背中をジッと睨みながら低い声で返事をする。
(おのれ、ヴリトラ!この私をここまで怒らせた事、いつか必ず後悔させてやるわ!)
心の中でヴリトラに対する怒りを訴えるチャリバンスは握り拳を震わせる。そんな彼に気付いていないのか、ヴリトラはニヤニヤと笑いながらラピュスの隣を歩き基地を出て行ったのだった。
基地の外では兵士達に囲まれながらバンが停車しており、その中でリンドブルム達が二人の帰りを静かに待っていた。
「遅いね?」
「ゴルバンの町の情報を全て聞いているんだ、時間は掛かるわよ」
リンドブルムがカーナビのテレビ電話を通じて別のバンの中にいるジルニトラと会話をする。他の者達も黙って帰って来るのを待っていた。すると、運転席に座っているオロチが前を見て基地から出て来たヴリトラとラピュスに気付く。
「帰って来たぞ・・・」
「あっ!本当だ!」
オロチの言葉にリンドブルムはカーナビから外に視線を移し、画面の中のジルニトラも外を見て二人の姿を確認した。バンを囲んでいる兵士達の間を通って、二人はバンに乗り込み座席に座った。
「おかえり、どうだった?」
ジルニトラが助手席に座ったヴリトラと隣に座るラピュスに結果を聞く。ヴリトラは周りにいるジルニトラ達、画面に映るリンドブルム達の顔を見て口を開いた。
「色々聞けたよ。最初は協力する気ゼロだったけど、ラピュスの切り札のおかげでアイツも協力せざるを得なくなったようだしな」
「切り札?・・・そう言えばエリオミスの町で言ってたね。それって結局何だったの?」
ジルニトラの隣に座っていたファフニールがラピュスの方を向いて尋ねる。ラピュスは小さく笑いながら指令書を見せた。
「これだ」
「何よそれ?」
ジルニトラが紙を見て小首を傾げながら聞くとヴリトラが笑いながらラピュスの代わりに答えた。
「魔法の呪文が書かれた紙だよ」
「はぁ~?」
「魔法の呪文?」
ジルニトラが「何それ?」と目を細くし、ファフニールがまばたきをしながら聞き返す。ヴリトラの冗談にラピュスは微笑みながらヴリトラの方を見ている。そこへニーズヘッグが髪を掻きながらヴリトラを呆れる様な顔で見て言った。
「しょうもないジョークはいいからさっさと説明してくれ」
「チッ、つまんねぇな?・・・じゃあ説明するから、とりあえず出してくれ。ゴルバンの町は此処から北北東の位置にある。まずは町の手前にある林まで行ってくれ、そこで今後の作戦を立てる」
「了解。オロチ、聞いた通りだ。出発するぞ?」
「分かった・・・」
ニーズヘッグがテレビ電話でオロチに出発を伝えると、オロチは静かに返事をする。二人はエンジンをかけてゆっくりとアクセルを踏み、バンを動かす。突然動き出したバンに驚く兵士達は道を開けて二台のバンを通した。バンはゆっくりと丘を進んで行き、駐留基地を後にする。残るのは去って行ったバンをただ唖然と見つめる兵士達だけだった。
テントの近くではチャリバンスとその部下の騎士達が丘を出て行くバンを忌々しく見つめている姿があった。
「フン、何が七竜将だ。名前だけは立派な奴等め」
「隊長、このまま放っておいてよろしいのですか?」
「構わん。どうせ奴等ではあの町は攻略できん。尻尾を巻いて帰って来るのが落ちだ」
チャリバンス達は七竜将と姫騎士達が失敗する事を願いながらテントの中へと戻って行く。チャリバンスにとって七竜将はもはや目の敵でしかなかった。自分を侮辱した傭兵の無様に失敗する姿を想像する事だけしか彼の頭にはなかった。
一方、ヴリトラ達の乗るバンは丘を越えてゴルバンの町へ続く道に出て、町に向かって真っ直ぐ走っていた。揺れる車内でヴリトラとラピュスはチャリバンスから得た町の情報をリンドブルム達に説明する。
「情報によると、ゴルバンの町にいる敵戦力は約四百人、一個大隊並みの部隊が駐留しているって話だ。既に町にいたレヴァート王国軍は壊滅し、兵士達はほぼ全員が公開処刑された。残ったのはストラスタ軍に監視されながら生きている町の住民だけ」
「・・・酷い」
「ガバディア団長の言ってた通り、ストラスタ軍には本当に捕虜に対して情けは無いのかもね・・・」
ラランとリンドブルムの顔がカーナビの画面に映し出され、二人は真面目な顔で低い声を出す。自分達が今回の依頼を受けた理由、ストラスタ軍の敵に対して容赦のない行為、家族の前で兵士達を処刑した酷さ。七竜将は改めて今回の作戦を成功させようと心に誓うのだった。
「町はティムターム程じゃないけど、町全体が壁に囲まれて出入口以外からは町へ入れないようになってるみたいだ。しかも出入口は大きな門で内側からじゃないと開けられない仕掛けらしい」
「だからと言って、ノックしても開けてくれるとは思えないからな」
「そういう事」
運転をしながら話すニーズヘッグを見て頷くヴリトラ。
「じゃあどうやって町に入るの?今の僕達の装備じゃ、門や壁に穴を開けるのは無理じゃない?」
「ああ、無理だ。でも、一つだけ町に入る方法があるらしい」
「え、本当?」
「そうだよな?ラピュス」
ヴリトラがラピュスの方を向いて尋ねると、周りにいるジルニトラ達や画面の向こう側にいるリンドブルム達もラピュスに視線を向ける。
「ああ、ゴルバンの町の近くに町に繋がる下水道の入口があるらしい。少人数ならそこを通って行けば敵に気付かれずに町に入れる、とチャリバンス殿は言っていた」
「でもなぁ、アイツ俺達の事を嫌ってたみたいだから、テキトーな情報かもしれない」
ラピュスが説明を終えると、ヴリトラがチャリバンスの態度を思い出して情報の信頼性を疑う。ラピュスも同じ意見なのか表情を曇らせてヴリトラの方を見てゆっくりと頷く。するとそこへカーナビからリンドブルムの声が聞こえてきた。
「でも、敵に気付かれずに侵入する方法がそれしかないんじゃ、それに賭けてみるしかないでしょう?」
「リブルの言うとおりだ。まずは林に向かってもう一度情報を整理してから作戦を立てた方がいいんじゃないのか?」
リンドブルムに続いてジャバウォックがヴリトラ達にまずは自分達が何をするのかを話す。画面に映る二人の顔を見てヴリトラは小さく笑って頷いた。
「まっ、確かにそうだな。まずは林に向かってバンを隠してから作戦を考えよう」
「ああ、それに侵入するなら暗い夜の方がいい。作戦が決まったら暗くなるまで林で休む事にしようぜ」
ヴリトラに続くようにジャバウォックが夜に作戦を決行する事を提案する。ラピュス達も見つかりやすい昼間よりは夜の方が効率がいいと思い頷く。そんな会話をしながらヴリトラ達の乗るバンは真っ直ぐ目的地の林に向かって走っていった。だが、この時彼等はまだ気づいていなかった。ゴルバンの町にはヴリトラ達の想像を超える戦力がいるという事を・・・。




