表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十九章~運命の決戦~
333/333

第三百三十一話  緊急作戦会議


 それは突然やって来た。暗くなりかかっている空の下、タイカベル・リーベルト社の会議室で今後の事を話しあっているアレクシア、清美、Dr.GGの下に緊急の入電があり、その内容を聞いた三人は驚きの表情を浮かべる。


「……それは、間違いないのですか?」


 アレクシアが驚きながら報告に来たTR兵に訊き返す。するとTR兵は深刻な表情で頷く。


「ハイ、間違いありません。先程、帝国領に配備されていた我が社の部隊からブラッド・レクエム社の大部隊が移動をしているという報告がありました。そして、その移動している敵部隊は行く先の町や村を襲っていると……」

「何という事でしょう……」

「それと……この情報を知らせてきた我が社の部隊も敵部隊を足止めする為に攻撃を開始すると言っておりましたが、僅か数分後に連絡が途絶えました……」

「恐らく、敵にやられたんだろうな」


 椅子にもたれながらDr.GGはタイカベル・リーベルト社の部隊の末路を口にする。それを聞いたアレクシアと清美は俯きながら暗い顔をした。

 情報によるとブラッド・レクエム社はキャタピラの付いた巨大な戦艦の様な車両を中心に移動しており、その戦艦を囲む様に大量のM1戦車などの軍事車両が走っているようだ。そして空にはアパッチやヴェノムなどの軍事ヘリが護衛に付いており、対地対空共に完璧と言える防御力を持っている。

 遂に動き出して帝国領で暴れているブラッド・レクイエム社にアレクシア達は頭を悩ませる。ジークフリートとブリュンヒルデがティムタームに現れたから僅か一週間たらずで行動を開始したのだから無理もない。


「……とにかく、このままではより多くの被害が出てしまいます。急いで町や村に住んでいる人々を避難所に移動させるよう各地の部隊に知らせてください」

「しかし、まだ避難所は未完成の状態です。避難しても敵の攻撃を防ぐ事は無理かと……」

「町や村にいては敵が近くを通った時に襲われて確実に命を落とします! ですが避難所なら移動せずに留まるよりは遥かに安全です。たとえ未完成でも避難所にいれば助かる確率は大幅に上がるでしょう」

「成る程……」

「すぐに各部隊に連絡を入れてください! 町や村の人達を避難所に移動させる事、そして敵部隊がどう動くかを細かく監視して、常に報告する様にと!」

「了解!」


 例え未完成でも避難所なら町や村にいるようずっと安全だとTR兵に伝えるアレクシア。それを聞いたTR兵は各国のタイカベル・リーベルト社の部隊に人々を避難させるよう知らせに向かう。今アレクシア達にできる事は一人でも多くの命を守る事だった。

 TR兵が会議室を後にすると、アレクシアは椅子にもたれ、天井を見上げながら息を吐いた。


「まさか、こんなにも早く動き出すとは……」

「報告にあった巨大な戦艦って言うのはヴリトラが言っていた移動要塞アレクサンダーに間違いねぇだろうな」

「ええ、多くの車両を輸送でき、大勢の機械鎧兵士が乗り込む事ができる。更にDMまでも搭載されているなんて……」

「まさに移動要塞ね」


 アレクサンダーの大きさ、性能、武装の凄さに頭を抱えながら俯くアレクシア。その後ろで立ったまま暗い顔を知る清美。そして椅子に座ったままめんどくさそうな顔で天井を見るDr.GG。ブラッド・レクイエム社がグランドアヴァロン以外にも巨大な物を造り隠していた事に三人は内心かなり驚いていた。


「奴等は地球からこのファムステミリアに移動した日からその移動要塞を建造していたに違いねぇ。ここまでの事を計算して造っていたとは、まったく見上げたもんだぜ」

「感心してどうするのよ。……Dr.GG、アレクサンダーを止める方法は無いの?」

「いきなりそんな事を言われても分かる訳ねぇだろう! 報告を受けたのはついさっきなんだしよう。それに、アレクサンダーはブラッド・レクイエムが独自で開発した巨大兵器だ。情報がない状態じゃ、弱点を見つける事もできねぇ」

「ハァ……マズいわね」


 清美は顔に手を当てながらよくない現状に疲れた様な声を出す。Dr.GGは席を立つと会議室の窓から外を見て自分の髭をいじくる。すると、アレクシアは顔を上げると真面目な顔で前を向き口を開く。


「……各地に散らばった七竜将を至急呼び戻してください。緊急作戦会議を執り行います!」

「アレクシア?」

「あと、ヴァルボルト陛下や各国の王族の方々もお呼びしてください。そして、ヴァルトレイズ大陸の命運がかかった非常事態だと伝えてください」


 真剣な顔のまま若干低い声を出しながら清美とDr.GGに指示を出すアレクシア。それを聞いた二人はアレクシアに言われた通り、急いで行動に移る。一人会議室に残ったアレクシアは窓から外を見て何かを思う様に空を見上げた。


「……アンジェラ、今度の戦いで私と貴女の遺伝子を持つ者達が戦います。私達にはその戦いを見守る義務がある。貴女も空から見守っていてください」


 空を見上げて、アレクシアは死んだジャンヌに語り掛けるように呟く。そして清美とDr.GGの後を追う様に会議室を後にした。


――――――


 二時間後、ティムタームの城の会議室に大陸中に散らばっていた七竜将と各国の王が集まり、円卓を囲みながら座っていた。

 会議室には七竜将やアレクシアを始め、ヴァルボルトやパティーラムのレヴァート王族、セメリト王、ストラスタ王、オラクルの新大統領、ダークエルフの長老であるギルダルネが集まっている。だが、帝国の代表者の姿は見当たらない。帝都が消滅してしまった為、誰も出席できなくなっていたのだ。全員がブラッド・レクイエム社が動いたという事を聞かされて緊迫した様子だった。

 全員が集まるとアレクシアは現在分かっている事をヴァルボルト達に説明し始める。


「突然お集まりいただいて申し訳ありません。実は二時間前に我が社の部隊が潜伏中だったブラッド・レクエム社の部隊が帝国領内を移動しているのを発見しました。そして、帝国内の町や村を攻撃し多くの人々が命を落としました。その中には我が社の兵士も含まれています……」


 アレクシアの報告を聞いてヴァルボルト達はざわつき出す。先日、帝都が消滅して多くの命が失われたのにそのすぐ後に帝国内でブラッド・レクイエム社が動いて村や町を襲っていると聞かされれたのだから当然の反応だった。


「皆さん、落ち着いてください。ブラッド・レクイエムが帝国内で暴れており、これからどう動くか分からない以上は我々は力を合わせて民達を守るしかないのです。そんな状況で我々が取り乱しては民達を守る事もできません」


 王族達が騒いでいるとヴァルボルトが声をかけて王族達を落ち着かせる。ヴァルボルトの話を聞き、各国の代表者達は落ち着きを取り戻してヴァルボルトの方を見た。

 全員が落ち着くのを確認したヴァルボルトはアレクシアの方を向いて話を続ける様に伝える。それを見たアレクシアも説明を再開した。


「現在、各国に駐留している我が社の部隊が避難所に国中の人々を避難させています。避難所は国中に多く建造していますのですぐに避難は完了するでしょう」

「ですが、避難所はまだ未完成だと聞きましたが、大丈夫なのですか?」


 パティーラムが手を上げて避難所の状態を尋ねるとアレクシアはパティーラムを見て真剣な表情を浮かべる。


「確かに避難所は未完成です。ですが、敵の攻撃を防ぐ事ができる所までは建造が完了していますので問題ありません。しかし、強度の調整が途中ですからDMの様な強力な兵器は防げないかと……」

「そうなんですか……」

「ですが、狙われやすい町にいるよりは避難所に隠れていた方が安全だと思います」

「確かにそうですな。現に帝都はそのDMによって消滅させられたと聞いています。避難所にいた方がまだ狙われる可能性は低いでしょう」


 アレクシアの話を聞いたヴァルボルトが民達が安全な所へ移動させられると聞いてホッと一安心する。他の王族達も安心したのか胸を撫でおろしていた。

 しかしそれでもまだ安心はできない。ブラッド・レクイエム社がこれからどう動くかで各国がどんな被害を受けるか全く見当がつかない以上、常に警戒しておかないといけなかった。これはその為の作戦会議でもある。


「現在、ブラッド・レクイエム社は帝国領内に下り、我が社の部隊が監視しております。すでに帝都や重要都市を失った帝国は崩壊したも同然です。となると、彼等の次の狙いは四つの国のどれかになります」

「奴等は次はどこを狙うのでしょうか?」

「それは分かりません。ですが、私の予想では彼等が最も消したい存在は我々タイカベル・リーベルト社です。だとすると、彼等は帝国からこのレヴァート王国に真っ直ぐ向かってくる可能性が高いかと……」

「我が国に!? だが、そうなると……」

「ええ、彼等はレヴァート王国に向かう為に途中にあるストラスタ公国やセメリト王国を横断するでしょう。その途中で両国の町や村を襲撃する可能性もあります」

「何と言う事だ……」

「我々も何かしらの手を打たなくては……」

「しかし、どうやってブラッド・レクイエムを止めると言うのですか?」


 驚くヴァルボルトやストラスタ王とセメリト王がどう対処するかを相談する。敵は巨大な移動要塞であるアレクサンダーを動かして移動しているのだ。この世界に移動要塞を止めるだけの力は存在しなかった。それでも王達はどうやってアレクサンダーを止めるか必死に考えるのだった。

 アレクシア達は難しい顔をしながら考えているのを見て、ヴリトラは腕を組みながら小さく俯いて何かを考え込んでいる。


(……奴等はこれからどうするつもりなんだ? ジークフリートの目的は向こうの世界へ行って世界中の国を戦場に変え、機械鎧兵士が必要とされる世界を作る事だ。その為には地球へアレクサンダーを転送しないといけない。だが、俺達がそれを黙って見過ごすなどとはアイツも思っていないはずだ。……もし俺がアイツの立場なら、まずは計画の邪魔になる存在を始末してから作戦を開始する。なら、アイツ等がまずやる事は師匠の言った通り俺達、つまりタイカベル・リーベルトの戦力を潰す事だ。奴等もレヴァート王国にタイカベル・リーベルトの拠点がある事は知っているはず……アイツ等がこの国に来る事はまず間違いないだろうな)


 ブラッド・レクイエム社の狙いがタイカベル・リーベルト社である事を確信したヴリトラは敵がどう動いてレヴァート王国に攻めて来るのかを考えた。相手の攻め方などが分かれば対策はいくらでも立てられるからだ。

 会議室でヴリトラ達はどうブラッド・レクイエム社に対抗するかを考えていると一人のTR兵が会議室に飛び込んで来た。扉の開いた音を聞いて一同は一斉にTR兵の方を向く。


「社長!」

「何ですか? 会議中ですよ?」

「先程、ブラッド・レクイエム社を監視していた部隊から連絡が入りました! 敵移動要塞が帝国とセメリト王国の国境を越えてセメリト王国領に侵入したと!」

「な、何だと!?」


 知らせを聞いたセメリト王が驚いて席を立った。他の王族やヴリトラ達もブラッド・レクイエム社が予想以上に早く国境を越えてセメリト王国に侵入した事を知り驚いていた。


「現在、ブラッド・レクイエム社はセメリト王国の南東部から真っ直ぐストラスタ公国との国境に向かっているとの事です」

「セメリト王国への被害は出ているのですか?」

「……国境近くにあった砦が敵移動要塞によって破壊され、駐留していたセメリト王国軍の兵士と我が社の部隊が全滅しました」


 もう犠牲者が出てしまった。その現実が会議室にいた全員に衝撃を与える。このままブラッド・レクイエム社の無差別破壊行為を放っておけばますます犠牲者が出てしまう。それが頭に浮かび、王族達はまた騒ぎ出した。

 騒ぎ出す王族達を見てヴァルボルトがまた落ち着かせようと口を動かした。だが、ヴァルボルトが声を出す前にアレクシアが力の入った声で王族達に声をかける。


「皆さん、落ち着いてください。敵の進路を予測してその先にある町や砦にいる人達を急ぎ避難させれば被害は少なくなります」

「しかし、民達はともかく兵士や騎士達は皆誇りを持っています。敵を前にして逃げ出すなどという事は……」

「残念ですが、今の状態では勝ち目はありません。敵の情報を得て作戦を立てない限りあの移動要塞を止める事はできないでしょう。それに敵前逃亡をしたくないと言って勝ち目の無い敵に突っ込むのは自殺行為です。勇気と無謀は違います」


 アレクシアの言葉を聞いた王族達は一理あると感じたのか黙り込む。その様子を見てヴァルボルトやパティーラムはアレクシアの仲間をまとめる才能に感心した。


「……現在のブラッド・レクイエムの位置はどの辺りですか?」


 王族達が落ち着くとアレクシアは報告に来たTR兵の方を向いて敵の現在地を確認する。TR兵は手元の書類を見て詳しい情報をチェックした。


「監視部隊によると敵軍はセメリト王国に入ってからは真っ直ぐストラスタ公国の国境に向かって進軍しているとの事です。進行方向には幾つもの村があります。今のペースで行けば一番近くの村におよそ一時間後かと……」

「急いでセメリト王国に駐留している部隊に連絡を入れて進軍先にある村の人達を避難させてください!」

「ハッ!」


 敬礼をしたTR兵は急いで会議室から出て行く。

 TR兵が退室するとアレクシアは疲れたのは大きく息を吐いて椅子にもたれる。周りの王族達も落ち着いたのか小さく息を吐いて気持ちを落ち着けた。


「それでアレクシア殿、これからの方針はどうされるのですかな?」


 ヴァルボルトが今後の事を尋ねるとアレクシアは椅子にもたれるのをやめてヴァルボルトの方を向き口を開く。


「敵は真っ直ぐレヴァート王国へ向かっています。間違いなく目的地はこの首都ティムタームでしょう。ここを制圧すればレヴァート王国は彼等の手に落ちたも同然です。ブラッド・レクイエムが首都に到達する前に移動要塞アレクサンダーを止めないといけません」

「しかし、どうやって止めるのですか? 話によるとその移動要塞は全長300m近くある大きさなのでしょう? そんな物をどうやって……」

「……此処をご覧ください」


 立ち上がったアレクシアは円卓の中央にある地図を見てレヴァート王国領の一部を棒で指した。そこには広い場所が描かれており、その広さは東京ドーム八個分ほどで周囲に村なども無い。

 アレクシアが指す場所を見てヴァルボルトは席を立ち体を乗り出した。


「そこは『ナルジアス大平原』ですな?」

「ハイ。ブラッド・レクイエム社がティムタームに向かうのに必ず通る場所です。此処をブラッド・レクイエムとの決戦の地とします」

「決戦の地?」

「ええ、このバルジアス大平原の周辺には民家や村などは無く、少しぐらいなが派手に戦っても大丈夫です。ブラッド・レクイエムがこの大平原に来た時に我がタイカベル・リーベルトの主力部隊と同盟軍の全戦力をぶつけてブラッド・レクイエムを倒します」

「なぜこの大平原を決戦後に? 奴等が此処に来るまでにも戦える場所はあります。わざわざ大平原にくるまで待たずに他の場所で奴等を叩けば……」

「確かに、大平原に向かう途中には渓谷や森など色々な場所があります。ですが、ブラッド・レクイエムが移動に使っているアレクサンダーは巨大で先端には城壁破壊の為に衝角を装備しています。その巨体と衝角の前では渓谷や森も何の意味もありません。しかも渓谷や森の中ではこちらの戦車や歩兵は動き難くなり逆に不利になってしまいます。それなら、障害物が無く、こちらも自由に動く事のできる大平原で最後の戦いを行おうと考えたのです」

「……成る程、そういう事ですか」


 アレクシアの説明に納得したヴァルボルトはゆっくりと腰を下ろす。他の王族達もアレクシアの話を聞いて一理あると言いたそうな顔でアレクシアを見ていた。


「勿論、大平原に来るまでの間、何もせずに待っている訳ではありません。途中にある渓谷や森に罠を仕掛けるつもりです。倒す事はできなくとも、決戦の準備をする為の時間稼ぎをしたり、少しだけでもダメージを与える為に行動します」

「……その仕掛ける罠は奴等に効くのでしょうか?」

「それはまだ何とも言えません。ですが、何もしないよりはずっといいかと……」


 決戦の地であるナルジアス大平原でブラッド・レクイエム社をただ待つのではなく、途中で罠にかけて少しでも敵の力を削ぐと言うアレクシアの考えに一同は黙って考え込む。

 本命の戦いまでに兵士達をあまり動かしたり、物資などを使う事を避けたいのだが、何も手を打たずに戦うのは危険すぎる。それなら、例え効果は薄くても攻撃しておいた方がいいと考えた。


「皆さん、私はアレクシア殿に今度の戦いの全ての指揮権を委ねようと思っています。ブラッド・レクイエムの事を誰よりもよく知り、優れた指揮力を持っている彼女こそ、今度の戦いの総司令官に相応しいと私は確信しました。……皆さんはどう思われますか?」


 ヴァルボルトがアレクシアに全ての権限を与える事に異議は無いか他の王族達に尋ねる。王族達はしばらく考え込み、このままアレクシアに全てを任せるかを悩む。だが、自分達ではブラッド・レクイエム社とまともにやり合う事すらできない。それなら、戦い方を知っているアレクシアに任せた方がいいと考えたのか、王族達はヴァルボルトの方を一斉に向く。


「……反対意見は無いようですな。では、アレクシア殿に全てを任せるという事でよろしいですか?」


 再度王族達に異議は無いか確認するヴァルボルト。王族達は同時に頷いて異議は無いと無言で伝える。

 ヴァルボルトはアレクシアの方を向き、真剣な表情で彼女を見つめた。


「アレクシア殿、今度の決戦はこのヴァルトレイズ大陸の命運がかかっています。我々ではブラッド・レクイエムと対等に戦う事はできず、敗戦するのは目に見ています。どうか、同盟軍の総司令官となり、我々を導いていただけないでしょうか?」

「私が、ですか?」

「ブラッド・レクイエムの事を誰よりもよく知っている貴女にしかお任せできないのです。どうか、この通りです」


 そう言ってヴァルボルトは頭を深く下げた。ヴァルボルトが頭を下げる姿を見てパティーラムや会議室にいる他の王族、そして衛兵達は驚きの表情を浮かべた。

 ヴリトラ達七竜将も目を丸くしてヴァルボルトを見ており、アレクシアは立ち上がって困り顔のままヴァルボルトに近づいた。


「ヴァルボルト陛下、頭を上げてください」

「いいや、貴女にしか任せられない以上は王と言えど頭を下げる必要がある。それに、私は王として、そしてこの大陸に住む一人の人間としてお頼みするのです」

「陛下……」


 王としてだけでなく、一人の人間として頭を下げるヴァルボルトの姿にパティーラムは驚くのと同時に感動した。パティーラムにはヴァルボルトは王として、父としてとても立派の存在に見えたのだ。

 立場がありながらも頭を下げるヴァルボルトにアレクシアは彼を見て黙り込む。ここまでして自分に全てを託すヴァルボルトの頼みを断る事など自分にはできない。そう感じたアレクシアは真剣な表情で頷く。


「……分かりました。お引き受けしましょう」

「おおぉ! 感謝しますぞ!」


 顔を上げてアレクシアに礼を言うヴァルボルト。アレクシアも小さく笑いながらヴァルボルトを見つめ、二人は握手を交わした。その二人のやり取りを見てヴリトラ達も安心と喜びで笑みを浮かべていた。

 それから一同は決戦の時の各戦力の配置と大平原までに仕掛ける罠の数など細かい作戦会議を行う。アレクシアが総司令官に任命されてから一時間の間、様々な作戦が上げられ、どのタイミングで実行するのかを話し合った。


個人的な事情でしばらくの間、決められた日に投降しているこちらを休止させていただきます。再投稿はいつになるかは分かりません。大変申し訳ありませんが、事情が終わり、落ち着くまでお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ