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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第三章~戦場に流れる鎮魂曲(レクイエム)~
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第三十二話  新たな依頼

 トコトムトの村での防衛作戦を終えてティムタームの町に戻ろうとした七竜将と第三遊撃隊の下に団長のガバディアがやって来た。彼は七竜将に侵攻してきているストラスタ軍を押し戻す為の足掛かりとして、ストラスタ軍の補給基地のあるゴルバンの町を攻略してほしいと依頼する。最初は物資や情報の少なさから依頼を断ろうとした七竜将であったが、ゴルバンの町で捕まり、捕虜となったレヴァート軍の兵士達が処刑されたと聞いた途端に表情を鋭くし依頼を引く受けたのだった。

 作戦拠点に入っていきなり鋭い表情を見せたと思ったら、危険な制圧作戦を引き受けると言い出した七竜将にラピュス達は意外そうな顔を見せる。だが、それと同時に七竜将から怒りの様なものと寒気を感じた。


「う、受けるのか?ゴルバンの町の攻略を・・・?」

「ええ・・・」

「じゃが、いきなりどうして?」


 依頼を受ける理由を尋ねるガバディア。ヴリトラは机の上の地図に描かれてあるゴルバンの町を見詰めている。


「・・・いえ、何だか突然その町を奪還してみたくなっただけです・・・」


 低い声でそう呟くヴリトラ。その後ろはリンドブルム達が黙ったまま、呟いているヴリトラの背中を見ている。ガバディアは若干納得のできない理由を聞いて複雑そうな表情を見せるも、七竜将が作戦を引き受ける気があるという事を聞き一応納得する。


「そ、そうか。だが本当にいいのか?引き受けるという事は君達にはこのままゴルバンの町に向かってもらうという事になる。補給も無しに敵の制圧している町に向かうのは危険だ。・・・まだ考える時間はあるんだぞ?」


 正直ガバディアは七竜将がこの作戦を引き受けてほしくないという気持ちだが、心の何処かではこの作戦を引き受けてほしいと言う気持ちもあった。彼等が敵の補給基地を制圧してくれれば敵の補給線は断たれて戦力を維持できなくなる。そうすれば敵を一気に押し戻す事が出来るからだ。

 そんな複雑な気持ちを胸にガバディアはヴリトラの顔を見る。目を閉じて黙っていたヴリトラはゆっくりと目を開きガバディアを見つめた。


「・・・俺達全員が同じ考えです。引き受けます」

「・・・・・・」


 鋭い表情のまま低い声で話すヴリトラを黙って見つめているラピュス。彼女はヴリトラが依頼を引き受けた理由は別にある、そう感じ取っていたのだ。


「・・・そうか、君達がそこまで言うのなら無理には引き止めん。頼んだぞ?」

「・・・はい」


 心に若干の安心を抱きながらガバディアは七竜将に作戦を任せ、それを聞いたヴリトラも静かに頷いた。


「ところで、報酬なんですけど・・・」

「ああ、分かっている」


 作戦の話しが済むと、ヴリトラはいきなり報酬の話しを持ちかけた。ガバディアはヴリトラ達に向けて右手の指を四本立てて見せる。


「報酬は5000ティル。危険な任務でこの額は少ないと思うが、こちらも補給などで資金を殆ど使っておりこれ以上は出せん。どうか勘弁してほしい・・・」


 5000ティルという額を口にしてガバディアは申し訳なさそうな顔で言った。

 ティルとは、ファムステミリアの通貨単位を現したもの。5000ティルは日本円で約90万円程になる。確かに敵の補給基地を制圧する作戦を僅か七人で行うには安すぎる報酬だった。だがヴリトラは目を閉じてゆっくりと首を横に振る。


「十分ですよ。・・・ただ、一つだけお願いがあります」

「何だね?」

「・・・・・・町の奪還の方法は俺達七竜将に一任してもらいたいんです」

「それは保障しよう。今回の作戦は君達七竜将のみで行ってもらうのだ、それ位は当然だからな」

「ありがとうございます・・・」


 作戦を一任されている事を教えてもらい、ヴリトラは軽く頭を下げる。


「ゴルバンの町へ向かうには、まずエリオミスの町を通過し東に向かうんだ。東に3キロ行った所に『ブンダの丘』があり、そこで騎士団の中隊が駐留している。ブンダの丘はゴルバンの町に一番近く、そこの騎士達から町の情報を聞くといい」

「分かりました。じゃあ準備ができ次第出発します」


 ヴリトラがそう言うと、七竜将は出入口へ向かって歩き出す。廃墟を出ると目の前にラランが立っており、いきなり出てきた七竜将に驚いていた。


「・・・あっ」

「おおぉ、ワリィな?ララン」


 前を歩いていたニーズヘッグがラランに軽く謝り、そのまま歩いて行く。残りの七竜将もそれに続くように歩いて行き、出発の準備をしに行った。七竜将から少し遅れてラピュスも作戦拠点から出てきた七竜将の背中を見つめる。


「・・・どうしたの?」

「いや・・・ちょっとな・・・」


 ラピュスを見上げながら尋ねるララン。ラピュスは七竜将の方を見ながら低い声を出し、物思うような表情を見せていた。

 ゴルバンの町の奪還に向かう為に、七竜将はそれぞれ出発の準備をしている。ジャバウォックとジルニトラは騎士から貰った地図の写しを見て自分達の居場所とゴルバンの町までの道筋を確認しており、ファフニールとオロチは荷物をバンに積み込んでいる。そしてヴリトラ、リンドブルム、ニーズヘッグはバンに異常がないか簡単なチェックをしていた。彼等の表情はさっきまでの鋭う表情からいつも通りに戻っている。


「エンジンの方は異常なしだ」

「外傷やオイル漏れもないよ?」

「バンは大丈夫だな・・・」


 それぞれバンのチェックをしているニーズヘッグとリンドブルム。ヴリトラも二人の話しを聞きながらタイヤに異常が無いかを確認している。そこへ荷物を持ったファフニールとオロチがやって来た。


「向こうのバンには積めるだけの荷物を積んだよぉ~」

「残りの荷物はこっちに積むぞ・・・?」

「分かった。こっちが終ったら向こうのバンのチェックをするよ」


 荷物を持って来た二人の方を向いてヴリトラは返事をする。すると今度は地図で場所を確認していたジャバウォックとジルニトラが近づいてきた。


「最短コースが分かったぞ~!」

「団長の言ってた通り、エリオミスの町を通過して東に向かうところまではいいけど、その途中に大きい川があるみたいよ」

「川?」


 ヴリトラはジャバウォックとジルニトラの下へ行き地図を見て確認する。リンドブルム達も二人の所に集まって地図を覗き込む。


「・・・確かにエリオミスの町とブンダの丘の間に川があるな?」

「ええ。この川を渡るには上流へ行って橋を渡るしかないみたいよ」

「バンじゃ渡れない位深いの?」」

「それは見てみないと分からないわね」


 ヴリトラとジルニトラの話しを聞いてファフニールが質問をする。川を渡るには上流にある橋を渡らないといけない。橋までの距離は約1K、遠いと言う程の距離ではなかった。しかし、見つけた最短コースは町から橋の所へ行って丘へ向かうだけでも合計4キロある。バンの燃料にも限りがある、あまり遠回りは出来なかった。

 どう行くかヴリトラ達が悩んでいると、そこへ二人の人物がやって来た。


「ヴリトラ」

「ん?・・・何だ、ラピュス、それにラランも」


 七竜将の下へやって来たのはラピュスとラランだった。突然やって来た二人に七竜将は地図を見るのを止めて二人に視線を変える。


「どうしたんだ?お前達はティムタームへ戻るんだろう、準備は終わったのか?」

「ああ、一通りな。・・・・・・実はお前達に訊きたい事があるんだ」


 ラピュスの顔を見て不思議そうな顔を見せる七竜将。ラピュスはいつも通りの表情をしているヴリトラ達を見てゆっくりと深呼吸をして口を開く。


「お前達は、どうして今回の奪還作戦を引き受けようとしたんだ?」

「どうしてって、言っただろう?突然ゴルバンの町を奪還したくなったって?」

「・・・本当にそれだけか?」


 ラピュスの意味深な質問。それを聞いた七竜将全員の表情が変わる。その表情を見てラピュスは確信した、七竜将が町の奪還作戦を引き受けたのにはまだ理由があると。


「お前達は団長がゴルバンの町の捕虜達が処刑されたと聞かされた時から様子がおかしかった。それにお前達の表情には何処か怒りと言うものが感じられた。・・・他にも理由があるんじゃないのか?」


 真剣な表情でヴリトラを見ながら話しをするラピュス。その隣で聞いているラランも無表情ではあるが、七竜将をジッと見ていた。

 ラピュスの話しを聞いていた七竜将はラピュスからさり気なく緯線を反らしている。だがヴリトラだけは俯いており、その状態のままゆっくりと口を開く。


「・・・・・・まるで俺達の事を何でも知ってる様な言い草だな?」


 突如低い声を出すヴリトラにラピュスとラランはまた寒気を感じ取り、リンドブルム達もそんなヴリトラを見て少し驚いていた。


「あ・・・いや・・・私は別にそんなつもりで言った訳では・・・気に障ったのなら謝る」


 低い声を出したヴリトラを見てラピュスは彼の怒りを買ってしまったと思い、少し慌てながら謝る。そんなラピュスの言葉を聞いて、俯いていたヴリトラは俯いたままハッとする。ゆっくりと顔を上げて顔に手を当てるヴリトラはゆっくりと溜め息をつく。


「・・・いや、俺こそ悪かった。ちょっと頭に血が上っててな、ついお前に当たっちまった」


 怒っているような低い声を出したと思ったら今度は謝って来たヴリトラに目を丸くするラピュス。周りのリンドブルム達もヴリトラを見て気まずそうな表情を見せている。


「・・・一体、どういう事なんだ?」

「・・・ふぅ。そうだな、お前達には話しておいた方がいいかもしれない。皆、いいよな?」


 ヴリトラがリンドブルム達の方を見て尋ねると、リンドブルム達は黙って頷く。やはり何か理由がある、そう思いながらラピュスは七竜将を見つめ、ラランも黙って話しを聞く。


「・・・前にお前達に話したよな?俺やリブルには家族がいないって?」

「ああ・・・」


 前にヴリトラから聞いた彼の過去や家族の話しを思い出すラピュス。ラランも以前リンドブルムから家族はいないという話を聞かされたことを思い出す。


「・・・実はな、俺やリブルだけじゃなく、此処にいる七竜将は全員家族がいないんだ」


 七竜将全員に家族がいない、それを聞かされたラピュスとラランは若干驚きの表情を見せていた。ヴリトラは二人の表情をチラッと見た後に目を閉じて話しを続ける。


「俺達は皆、戦争や事件、事故で家族を亡くし、体の一部まで無くした。特にリブルやファウは実の親の事を殆ど覚えていない。だから俺達は家族を目の前で処刑したっていうストラスタ軍のやり方が気に入らないんだよ」

「それで、依頼を受ける事にしたのか・・・。目の前で家族を殺された人達の気持ちが分かるから・・・」

「まぁ、そんなところだ・・・」


 暗い声で話すヴリトラを見てラピュスも切なそうな顔をする。隣のラピュスは無表情ではあるが両手を強く握り、拳を作っていた。面には出さなくても気持ちは分かるようだ。


「傭兵が感情で仕事を引き受けるっていうのも不思議なもんだろう?」

「そんな事はない。寧ろ、私はお前達の様な傭兵こそ世界には必要だと思っている」

「・・・傭兵は皆お金を出さないと働かない人達ばかりだと思ってた。でも、貴方達は違う」

「ああ。人の苦しむが分かるから、同じ思いをさせないために戦う。そんな傭兵が大勢いればいい、少なくとも私達はそう思ってる」


 ラピュスとラランの言葉を聞き、七竜将は嬉しくなったのか、全員が微笑んでいる。オロチは相変わらず感情を表に出さなかった。

 依頼を引き受けた理由を話し終えたヴリトラはラピュスとラランに背を向け、目を閉じながら腕を軽く回した。


「さて、俺達はこのまま敵補給基地の制圧に行く。ラピュス、お前は遊撃隊を連れて先に町に戻れ。それから、騎士達に伝えておいてくれないか?『飯は俺達が戻ってからおごるから待っててくれ』、てな」

「・・・・・・ああ」


 ヴリトラの頼みを聞いて頷くラピュス。七竜将は地図を見てそのままブンダの丘への最短コースを調べるのに戻った。ラピュスとラランは七竜将に背を向けて歩き出し、自分達の仲間の下へ向かう。その途中、ラピュスとラランはチラッとお互いの顔を見つめ合い、何かの合図を送る様な行動を取っていた。

 それから七竜将はしばらく最短コースを探していたが、結局見つける事が出来ずに橋を渡って川を越えるという道を選んだ。


「はぁ。結局、橋を渡って丘へ向かうっていう遠回りの道になっちゃったわね・・・」

「仕方ないよ、他に短い道が無いんだもん」


 溜め息をつくジルニトラを見てリンドブルムは言った。そんな彼もガッカリした表情を見せており、周りでもヴリトラ達が不機嫌そうな、苦虫を噛む様な顔を見せていた。


「リブルの言うとおりだ。見つからないんじゃあ、それしか道はない」

「わぁ~ったわよ」

「決まったな。いくぞ・・・」


 ニーズヘッグの話しを聞いて仕方なく納得するジルニトラとその隣で低い声を出しながらバンの方へ歩いて行くオロチ。ヴリトラ達もオロチの後を追うようにバンの方へ歩いて行った。

 バンの前までやって来ると、ドアを開いて七竜将が車内に乗り込もうとする。そんな時、七竜将の背後から声が聞こえてきた。


「皆!」


 声に反応した七竜将が振り返ると、そこには少量の荷物と愛用の武器を持ったラピュスとラランの姿があった。そんな二人を見て七竜将は違和感を感じていた。最初は見送りに来たのだと思っていたが、荷物と武器を持っているからしてそうではないとすぐに分かったからだ。


「どうしたんだよ?そんなに荷物なんか持って?」

「・・・私も作戦に参加する」

「・・・私も」

「・・・・・・は?」


 作戦に参加する、その言葉を聞いてヴリトラは思わず声を漏らした。周りにいるリンドブルム達も声は出さなかったが驚きの表情を見せている。


「参加するって・・・まさかついて来るつもりか!?」

「ああ」


 ヴリトラの質問にラピュスは即答する。その答えを聞いたヴリトラは驚きながら口を開いた。


「バカを言うなっ!遊撃隊はどうするんだ?」

「アリサに任せた。彼女は皆を連れて先に町に帰らせた」

「・・・私と隊長が皆について行く為に残った。団長にはもう話した」

「それで、団長は許可したの?」

「・・・うん。自己責任ならついて行っていいって」


 リンドブルムの質問にラランが答える。だがそれで納得できるはずもない。ヴリトラは二人を見て声に力を入れ続けた。


「あのなぁ!これから俺達が行くのは敵の補給基地なんだぞ?言ってみれば、敵の拠点の中で一番重要、つまり守りが固く、戦力が高いという事だ。危険すぎる!」

「そんな事は分かっている。さっきも言ったように私達は自己責任でお前達について行くことにしたんだ」

「そんな簡単に済ませるな。それに俺達七竜将はお前達の知っている戦い方はしない、俺達の戦い方について行けない奴がいても足手纏いになるだけだ!」

「ほぉ~?お前がそれを言うのか?今回の防衛作戦で勝手に私達第三遊撃隊を同行させたお前が?」

「うぐっ・・・!」


 ラピュスに痛いところを疲れて言葉に詰まるヴリトラ。今回のトコトムトの村の防衛作戦はヴリトラが勝手に提案し、ラピュス達を勝手に同行させたもの。この時の彼女達はさっきヴリトラが言ったように戦い方について行かないにも関わらず同行させられた。そんな状態の第三遊撃隊をここまで連れて来ておいた今更足手纏いと言われて引き下がれる筈がない。


「お前は私達をこんな前線に連れて来て自分達の戦い方を私達に見せた。そんな事までしておいて今更足手纏いだからついて来るなと言うのは一方的じゃないのか?」

「あ、いや・・・そのぉ~。お、おい、皆ぁ・・・」


 珍しく押されているヴリトラが後ろにいるリンドブルム達の方を向く。するとリンドブルム達は全員が黙ったままゆっくりと回れ右をしてヴリトラに背中を向ける。


「無視すんなよ!」


 助け船を出してくれないリンドブルム達にヴリトラはツッコミを入れる。そこへラピュスがゆっくりとヴリトラに顔を近づけ、真剣な表情で見つめた。


「私達はお前達の正体や過去を知り、お前達の世界の機械鎧兵士とも戦った。今更関わるなと言われて納得できるはずないだろう。それにお前達はまだこの世界の事を全て把握した訳じゃない。この世界の住人である私やラランを同行させた方がお前達にとっても都合がいい筈だ」

「それは・・・」

「お前達はこの世界の通貨が分かるのか?全ての文字を読めるようになったのか?」

「うう~・・・」


 ズバズバと突いてくるラピュスにヴリトラはもうタジタジだった。リンドブルム達は自分の背後でラピュスに一方的に押されているヴリトラに必死で笑いを堪えていた。

 やがてヴリトラは言い返す事が出来なくなり観念したのか、腕を組んでラピュスとラランに背を向けた。


「・・・だぁ~~~っ!もうっ!分かったよ!連れて行きゃあいいんだろう!?」

「フッ、そうだ」


 観念したヴリトラにラピュスは微笑んで頷く。一方的に押されて折れたヴリトラにリンドブルム達は更に強く笑いを堪える。


「ただし、一つだけ約束してくれ」

「何だ?」

「何があっても絶対に俺達の言うとおりにする事、そして俺達の傍を離れない事。いいな?」

「ああ、分かった」

「・・・うん」


 ヴリトラの条件を聞いて頷くラピュスとララン。リンドブルム達は笑いが治まったのかゆっくりとヴリトラの方を向く。


「ウフフ、アンタが一方的に押されるなんて珍しいわねぇ?」

「うるせぇ~」


 ニヤニヤしながらからかうジルニトラはヴリトラはジト目で言い返す。話がまとまり七竜将はバンの中へ入っていく。ラピュスとラランは近くで大人しくしている馬を見つけてそっちの歩こうとするが、ヴリトラとファフニールが二人の手を掴んで止めた。


「待て待て、馬は置いて行け」

「え?だがブンダの丘に行くのに足は必要だろ?」

「バンに乗ればいいだけじゃねぇか。それに馬とバンじゃこっちの方が速い、馬はかえって荷物になる」

「だから二人も車に乗って一緒に行こう!」


 笑いながら二人をバンの中へ連れて行くファフニール。二人は戸惑いながらも言われたとおりバンに乗って席に付く。その後にファフニールも乗り込みドアを閉めた。確認したヴリトラもバンの助手席に乗り込みドアを閉める。


「よし、それじゃあまずはエリオミスの町を通過してブンダの丘へ向かうぞ!」

「おう!」


 ヴリトラの隣で運転席に座るニーズヘッグがエンジンを掛けてバンを走らせる。その後ろからオロチが運転しているもう一台のバンが後に続くように走り出し、七竜将と二人の姫騎士を乗せたバンはトコトムトの村を出て走り出した。

 防衛作戦を終えた七竜将に出されて敵補給基地の制圧の依頼。それを引き受けた七竜将と彼等について行くラピュスとララン。彼等に一体どんな出来事が待ち構えているのか、この時はまだ誰も知らなかった。


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