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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十九章~運命の決戦~
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第三百二十七話  元素兵士計画 明かされたヴリトラの秘密!


 突如ヴリトラとラピュスの前に現れたジークフリートとブリュンヒルデ。警戒するヴリトラにジークフリートは自分の目的を話す。地球へ戻り、世界中でテロを起こして機械鎧兵士が必要とされる世界を作ると言う驚きの計画にヴリトラとラピュスは耳を疑う。

 静かな戦死者墓地に広がる緊迫した空気にヴリトラとラピュスは固まる。そんな二人をジークフリートとブリュンヒルデは黙って見ていた。


「地球に戻って、地球で大規模なテロを引き起こすだと? お前、正気か?」

「私はいたって正常だ」

「とても正常な人間の考える事とは思えないがな」

「それはお前の考え方だ。私はそれを正常だと考えている」

「狂ってる……」


 ジークフリートの言葉にヴリトラは思わずつぶやく。ラピュスも信じられないと言いたそうな顔でジークフリートを見つめていた。

 驚く二人を見ながらジークフリートは自分の計画を自慢げに話し続けた。


「既に各国からさらった騎士を黒騎兵に改造し、幻影黒騎士団は巨大な戦力と化した。彼等を使えば、一国を楽に落とせる程の戦力を持っている」

「何だと!?」


 黒騎兵の予想外の人数にヴリトラは耳を疑い思わず声を上げた。そのヴリトラの反応を見てジークフリートは楽しそうに笑う。

 ヴリトラが驚いていると、その隣に立っていたラピュスは右手を強く握りながらジークフリートを睨み付ける。


「貴様、それだけの黒騎兵を作るのにどれだけの騎士達を犠牲にした!」

「さぁな、いちいち覚えていない。そもそも彼等の大半は自ら志願して黒騎兵になったのだ」

「何っ? どういう事だ!」

「言葉の通りだ。帝国や共和国の騎士達は強い力を求めて我らブラッド・レクイエムに申し出たのだ。自分達を私達の様に強くしてほしいと。だから私達は彼等の願いを叶えてやったのだ」


 自らの機械鎧の手を見ながらジークフリートは語り続ける。その話をヴリトラ達は黙って聞いていた。


「いつかは衰えてしまう生身の肉体とは違う、衰える事のない鋼鉄の手足と人間以上の身体能力を与えた。そしてナノマシンで五感を強化し、更に死を恐れない強靭な精神力を手に入れ、彼等は最強の騎士となったのだ」

「……お前の言う通り、彼等が自分の意思で志願したのなら文句は言えない。だが、お前達に誘拐されて無理矢理改造された人達だっているのも事実だ。しかも今まで戦って来た黒騎兵は全員が自我を持っておらず、まるで命令どおりに動くだけのロボットの様だった」


 ヴリトラは嘗て、ジークフリートに殺されて改造された黄金近衛ゴルペガード隊の姫騎士、ビビットの事を思い出す。彼女は黒騎兵に改造され、最後には自我を取り戻したが双子の妹であるレレットの手によって命を落とした。それはビビット自身だけではなく、レレットの心に深い傷を残す結果に終わったのだ。

 ジークフリートがビビットにした仕打ちを思い出し、ヴリトラはジークフリートを睨み付ける。そんなヴリトラをジークフリートは冷静な態度で見た。


「自我を奪われて人形のように操られる彼等を見て、お前は何も感じなかったのか! そもそも騎士達は自我を奪われる事を分かってて黒騎兵になる事を志願したのか!?」

「……フッ、知らなかったに決まっている。知っていれば黒騎兵になる事を拒んでいただろうからな」

「わざと黙ってたって事か?」

「そうだ」

「なんて奴だ! 自分達の戦力を増やす為に何も知らない騎士達の人生を奪うなんて!」

「奪うとは心外だな? 私は彼等により相応しい人生を与えたのだ」


 意味不明な事を言い出すジークフリートにヴリトラとラピュスは「は?」という表情を浮かべた。そんな二人を見ながらジークフリートは両手を大きく広げる。


「この戦死者墓地に眠っている騎士達はどんな気持ちで死んでいったと思う? 家族や国の為に戦ったのに自分は家族を残して戦場で命を落としてしまった悲しい騎士がいたはずだ。他にもいろんな者達がいただろう。戦場から帰って恋人と結婚するはずだった者、自分を育ててくれた両親を恩返しの旅行に連れて行こうとした者、大切な存在を残して死んだ者も残されて家族に先立たれた者も非常に無念のはずだ。だから私は国の為、家族の為、そして仕えている主の為に決して敵に負ける事のない体と力を与え、騎士として生き抜く為の人生を与えたのだ!」

「……お前の言っているのはただの詭弁だ」

「何?」

「確かに残された家族や大切な人達は悲しむし、死んだ奴も無念だろうさ。だけど、例え強い体を得て死ぬ事が無くなっても自我を失えば自分で考えて歩く事も大切な人達と触れ合う事もできない。自我を失っている時点でソイツは死んでるんだよ! 生きたたまま死んでいるなんて、逆のそっちの方が苦しいじゃねぇか!」

「フン、考え方が甘いな。例え自我があろうがなかろうが、命を落としてしまえば人間はそこでお終いだ。なら例え自我を失い人形のようになったとしても、生きている事の方が寧ろ幸せだろう」

「俺はそうは思わない。誰だって自分の人生を自分の心で楽しみたいものだ。死にたくないからと言って自分から命や心を作り変えようなんて考える事はおかしい」


 どこか寂しそうな口調で呟くヴリトラ。するとジークフリートは腕を組んで低い声で笑い出す。


「フフフフフフッ……ハハハハハハッ! 自分の人生を楽しむ、まさかお前の口からそんな言葉が出るとはな」

「何がおかしい?」

「これがおかしくないと考える方が逆におかしいだろう? ヴリトラ、残念だがお前には自分の人生を楽しむなんて事はできないのだよ。お前の人生には絶望と虚しさ、そして戦いしかないのだ」

「どういう事だ?」


 ヴリトラはジークフリートの言っている事の意味が分からずにジークフリートを睨みながら訊き返す。ラピュスもジークフリートが何を言っているのか分からずに彼を黙って見つめていた。

 ジークフリートはヴリトラの質問を聞くと笑うのをやめ、腕を組んだままヴリトラを見つめた。


「……どうやら、その様子だとまだ知らないようだな? お前自身の秘密について」

「俺自身の秘密?」

「そうだ……どうせここまで来たのだ、教えてやろう。お前に隠された秘密、そして私とお前の因縁をな」

「何……?」


 ヴリトラはジークフリートの言葉に反応した。自分の秘密や目の前にいる敵と因縁があると言われれば誰だって気になる。ヴリトラは警戒しながらジークフリートの話を聞いてみる事にした。


「……ヴリトラ、お前は『元素兵士計画げんそへいしけいかく』と言う言葉を聞いた事があるか?」

「元素兵士計画? ……いや、ない」

「二十年以上前、アメリカ国防省が極秘裏に進めていた計画の一つだ。最強の戦士を一から作り出そうというものでな」

「最強の戦士?」

「技術、知識、生命力、洞察力、カリスマ性など、戦士に必要なものを全て持ち、なおかつその全てがAランクである存在だ。アメリカはそれを自分達で作り出そうとしていたのだ」


 アメリカでそんな計画が行われていた事を知ってヴリトラは驚いた。彼は師であるアレクシアからアメリカで起きた事件や実験、計画などを全て教えられており、裏世界の事には多少知識がある。だが元素兵士計画などは聞いた事がない。それはつまり、アレクシアでも知らない計画だという事だ。

 驚くヴリトラを見ながらジークフリートは説明を続けた。


「まずアメリカはその元素兵士計画の対象として当時アメリカ陸軍で注目を集めている二人の女将校に目を付けた」

「女将校……まさか」

「そう、ジャンヌとアレクシアだ」

「あの二人が元素兵士計画の対象に……」

「だが、元素兵士計画は一から、つまり赤子から兵士を育てるという方針であった為、既に二十代であったジャンヌとアレクシアは対象にはならなかった。そこで国防省は二人には計画の事を知らせずに遺伝子の研究をする為と言って二人から遺伝子を採取し、その遺伝子を生まれたばかりの赤子に組み込む事にしたのだ」

「他人の遺伝子を生まれたばかりの赤ん坊に移植しただと?」

「そうだ。そしてその遺伝子を組み込まれた赤子こそが……この私だ」

「なっ!?」


 目の前にいるジークフリートが元素兵士計画の対象となった赤子だと知り、ヴリトラは驚きを隠せずにいた。勿論ラピュスとブリュンヒルデもジークフリートの話を聞いて驚愕の表情を浮かべている。


「お前が、元素兵士計画で生まれた戦士?」

「そう、国防省は生まれたばかりの私にジャンヌの遺伝子を組み込んだ。勿論、私の両親には知らせていない。両親はアメリカ政府に利用されている事も知らずに私を育てていった」


 ジークフリートの口調ではまるで国防省に利用されている事を知らない両親を哀れむ様に聞こえた。ヴリトラは自分が生まれた頃にそんな計画が行われていた事に驚き続けている。

 しかし次のジークフリートの言葉でその驚きは別のものに変わった。


「だが、国防省は欲の塊だった。元素兵士計画の情報をより多く集める為にもう一人、元素兵士計画の対象を作ろうと考えた。しかも今度はアメリカではない他国の赤子、それも東洋人の血を流す者に赤子を選んだ」

「アメリカ以外の国の東洋人……ッ!?」


 何かに気付いたヴリトラの顔に緊張が走る。それを見たジークフリートは目を赤く光らせた。


「フフフフ、気付いたか?」

「ま、まさか……」

「そうだ。その二人目の元素兵士計画の対象となった赤子は……お前だ、ヴリトラ!」

「!!」

「ええぇっ!?」


 もう一人の幻想兵士計画の対象である赤子がヴリトラだと言う言葉にヴリトラは衝撃を受ける。隣にいたラピュスも驚いて思わず声を上げながらヴリトラの方を向いた。

 自分が元素兵士計画の対象となった赤子だと知らせれて固まるヴリトラ。とても信じられない、信じられるはずがない。ヴリトラは驚きのあまり、それだけしか考えられなくなっていた。


「そこまで驚くような事か? お前にも心当たりがあるはずだぞ?」


 ジークフリートの言葉を聞き、驚くヴリトラの隣に立っていたラピュスは今までのヴリトラの事を思い出した。

 これまでヴリトラは多くの戦場をその優れた技術と知識え乗り越えてきた。敵が複雑な作戦を立てても優れた洞察力で見抜き、リンドブルム達の心を掴み、そのカリスマ性で束ねてきた。ヴリトラは兵士としての素質が非常に優れている。まさに最高の戦士と言えた。


「ヴリトラの優れた能力、そして彼の言葉の全てに納得してしまった事、その全てがお前の言う元素兵士計画で得られたものだというのか?」

「その通りだ。ヴリトラの力も知識もカリスマ性も全ては元素兵士計画のよって植え付けられたものなのだ」


 ジークフリートが語るヴリトラの秘密にラピュスは表情を鋭くする。その隣ではヴリトラは俯きながら歯を噛みしめ黙り込んでいた。

 現実を受け止めきれていないヴリトラをよそにジークフリートは話を続けた。


「国防省は日本へ渡り、生まれたばかりのお前にアレクシアの遺伝子を組み込んだ。当然お前の親や病院の医師には知らせていない。勝手にそんな事をしたのがバレれば国際問題になりかねないからな」

「クゥッ!」


 ゆっくりと顔を上げるヴリトラはジークフリートを睨み付ける。知る必要のない事を教えて自分を苦しめた事にヴリトラは怒りを感じていたのだ。


「遺伝子を組み込んだ後、国防省はその赤子をしばらく放置した。赤子がしっかりと成長し、遺伝子を組み込んで体に異常が出てないかを確認する為にな。それから赤子が十代になると、国防省は最後の仕事に取り掛かった」

「最後の仕事?」


 ラピュスはジークフリートをジッと見つめながら小首を傾げた。ジークフリートはラピュスの方を向き、再び目を赤く光らせる。


「成長した赤子を誘拐するのさ。優秀な兵士にする為の軍事教育を受けさせる為にな」

「ゆ、誘拐!?」

「『貴方の子供に優秀な兵士の遺伝子を組み込みました。だから子供を渡してください』、何て言っても親が納得するはずがないからな。さらうしか方法がなかったのだろう……。国防省はアメリカの為、そして自分達の評価を上げる為に幼かった私をさらった。勿論、日本にいるヴリトラも誘拐しようと考えていた。アメリカが関係している事を日本政府に悟られないようにする為に傭兵を雇ってヴリトラをさらわせたのだ」

「……傭兵? ……ハッ!?」


 ヴリトラはジークフリートの説明を聞き、中学生の時に実家が襲撃された時の事を思い出す。あの日、学校から家に帰った時、家は謎の傭兵達の襲撃を受けていた。皆藤流剣術の免許皆伝者だった父は必死に抵抗したが、銃火器を使う傭兵達の前に命を落とし、母も共に殺された。それを目にしたヴリトラは慌てて道場へ逃げ込んだが、傭兵の銃撃を受けた左腕に重傷を負ってしまう。そしてその後、ヴリトラは搬送された病院で清美とアレクシアに出会い、機械鎧兵士となった。

 実家が襲撃され、父と母、自身の左腕を失ったのがアメリカ国防省の雇った傭兵のせいだと知り、ヴリトラは機械鎧の左手を見ながら震える。


「あの襲撃は、アメリカ国防省が仕組んだことだったのか……」

「仕組んだというのは少し違うな。奴等は元々学校帰りのお前は誘拐するつもりだった。だが、実家の前で待ち伏せしているところをお前の両親に見つかり、警察を呼ばれる事を襲えれた傭兵どもはお前の両親を殺す事にしたのだ。しかしお前の父から反撃を受けた傭兵達は冷静さを失い、本来の目的を忘れてお前を撃ってしまったのだ。そして冷静さを取り戻した傭兵達は重傷を負ったお前を見て、もう助からないと考え、お前をそのまま残して逃げ出した。そんなところだろうな……」

「そ、そんな馬鹿な……」

「その後、お前はアレクシアと清美の手により一命を取りとも、機械鎧を纏って失った左腕を取り戻し、機械鎧兵士として生きる道を選んだ。だが、国防省はお前が生きている事を聞いて再びお前を誘拐しようと考えていた」

「何っ? 国防省は俺を諦めていなかったのか?」

「ああぁ。だがお前はアレクシアの近くにいた。もしお前を誘拐しようと近づけばアメリカ政府が関わっている事や元素兵士計画の存在、その計画にアレクシアの遺伝子を使っていた事がアレクシアに気付かれてしまうかもしれない。結局、国防省はお前を誘拐する事を諦めた。そして私だけを最強の戦士にする為に軍事的教育を受けさせたのだ」

「……なんて事だ」


 知らされた自分自身と過去の真実、ヴリトラはもう驚く事もできないくらいショックを受けており、俯きながら悔しそうな表情を浮かべた。そんなヴリトラはラピュスは悲しそうな顔で見つめている。


「因みに元素兵士計画に関わった国防省の人間は私がこの事実を知った時に全員殺した。……皮肉な事だな、最強の兵士を作ったのにその最強の兵士に殺されてしまうのだから」

「……お前は」

「ん?」

「お前はなぜ戦いの世界にいる? 国防省によって元素兵士計画の対象に選ばれたという事は、お前も戦士になる気は無かったんだろう? 国防省の関係者を殺したのなら、もう戦いの世界に足を踏み入れる必要もないはずだ。なのになぜ……」

「……ヴリトラ、お前は何か勘違いをしているぞ?」

「何?」

「私は元素兵士計画で戦士にされた事を恨んでもいないし、ショックも受けていない。寧ろ、最高の力を得る事ができて感謝しているくらいだ」

「感謝だと?」

「そうだ。当時最高の軍人と言われていたジャンヌの遺伝子を手に入れ、こうして機械鎧兵士として剣を振る事ができる。私は平凡な生活をして平凡に死んでいくのが嫌いだった。だから元素兵士計画の対象となり、戦士として生きる事ができると聞いた時は胸が踊った」

「クッ……やっぱりお前は狂ってるぜ!」

「フッ、どの口が言う? お前も今日まで多くの人間をその手に掛けてきたではないか。お前も自分では気づいていない様だが、心の中では戦いを楽しんでいるのだ」

「違うっ! お前と一緒にするな!」


 戦いを、殺し合いを楽しむなど普通では考えられない事。それを楽しそうに語るジークフリートを見て、ヴリトラは目の前にいる男が自分と同じ計画で生まれた戦士だと考えると苛立ちを感じていた。自分と同じように計画で遺伝子を組み込まれたジークフリートが自分とは正反対に進んで戦いの世界に足を踏み入れている姿を見て自分もこうなるのかと考えてしまう。それを考えるとどうしても怒りが込み上がって来るのだ。


「いくら否定してもお前が多くの人間を殺してきたのは事実。一度剣を取り、戦いの世界に踏み込んでしまった者は二度と元の生活には戻れない。それは運命だ」

「運命だと? そんな運命、抜け出そうという気持ちがあればぶち壊せる! 俺はお前みたいには絶対にならない!」

「フフフ、本気でそう言っているのか? 心の中では本当に戦いから離れられるのかと不安になっているのではないか?」

「うっ!?」


 ジークフリートの言葉にヴリトラは思わず声を詰まらせる。


「例えお前がどんなに口で否定しても、運命からは絶対に逃れられない。戦いこそがお前と私の存在理由なのだ!」

「そんな事あるはずが……」


 ヴリトラが言い返そうとした時、突如ヴリトラの耳にはめてある小型通信機からコール音が鳴った。ヴリトラは反応し、小型通信機のスイッチを入れる。同じ小型通信機を付けているラピュスもコール音をなり、スイッチを入れて応答する。


「ヴリトラ、聞こえるか!」


 小型通信機から聞こえてきたのはニーズヘッグの力の入った声だった。口調からして明らかに普通ではない。


「ニーズヘッグ、こんな時に何だ?」

「今、タイカベル・リーベルトの拠点から緊急の通信が入った!」

「緊急の通信?」


 緊急通信が入ったと聞かされたヴリトラはジークフリートを警戒しながら訊き返す。

 冷静なニーズヘッグがここまで取り乱しているのを聞き、とんでもない事が起きたのかとヴリトラとラピュスは表情を鋭くする。そして、その読みは的中した。


「……帝都エクセリオンとブラッド・レクイエム社の拠点だったグランドアヴァロンが消滅した!」

「……はあ? どういう事だ?」

「言葉の通りだ! 帝都とグランドアヴァロンが消えたんだ!」

「どういう事だ。もっと分かりやすく言え!」


 声に力を入れてヴリトラはニーズヘッグに分かりやすく説明する事を求める。その様子を見ていたジークフリートとブリュンヒルデはどこか楽しそうな態度を取っていた。

 ヴリトラの言葉を聞き、ニーズヘッグは一度深呼吸をして落ち着きを取り戻し、新ためて説明した。


「エクセリオンとグランドアヴァロンが吹き飛んだ。突然その二つの中心で大爆発が起きて、建物も城も跡形も無く消えてた。残っているのは大きなクレーターのみ、監視していたタイカベル・リーベルトの小隊からそう連絡が入ったんだ」

「何ぃ!?」


 爆発で消滅した、その言葉を聞いたヴリトラとラピュスは目を見開いて驚く。この世界に町や拠点を吹き飛ばすだけの爆発を起こせる物があるはずがない。なのにそんな大規模な爆発が起きるなど、どう考えてもおかしいと思っていた。

 すると二人は目の前にいるジークフリートとブリュンヒルデを見て何かに気付く。そしてヴリトラとラピュスは鋭い目でジークフリートとブリュンヒルデを睨み付けた。


「ジークフリート! お前まさか……!」

「フフフフ、お前達の想像通りだ」


 自分の睨むヴリトラを見てジークフリートは楽しそうな声で笑った。エクセリオンとグランドアヴァロンで起きた大爆発、それはブラッド・レクイエム社が起こした事だったのだ。


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