第三百十八話 燃える闘志! 強者が振る剣
漆黒の夜に帝都への攻撃を開始した同盟軍。帝国軍は奇襲とその総攻撃に隙を突かれ、迎撃態勢に入る間もなく大打撃を受ける。ジャンヌはすでにこの勝負は負けると察し、帝都での戦いをある程度楽しんでから、脱出する事にしたのだった。
四つの門では帝国の防衛隊が同盟軍と激闘を繰り広げていた。だが、奇襲と暗い夜のせいか敵の動きを上手く把握できずに徐々に押さえていく。同盟軍の予想外の攻撃に自分達こそがヴァルトレイズ大陸で最強と思っていた帝国軍の士気は徐々に低下していった。
タイカベル・リーベルト社の用意した90式戦車やコブラは城門前のM1戦車や城壁の上のM51高射砲を次々に破壊していく。だが、ブラッド・レクイエム社側も負けずと90式戦車を破壊し、M51高射砲や遅れて出撃したアパッチでコブラを撃墜していく。双方、少しずつ兵器の数は減って行っているが、同盟軍は四つの国とタイカベル・リーベルト社の兵力が一つになっている為、帝都にいる帝国軍の兵力は上回っている。士気と兵力では同盟軍の方が上を行っていた。
「東門の戦力が不足している! すぐに援軍を回せ!」
「ダメだ! もう別の門に回す戦力は無い!」
「ちくしょう! 此処は帝国で一番安全な場所なんだぞ!? どうしてこんな事に……」
城壁の上から同盟軍を迎え撃つ帝国兵達は自分達が不利に立たされている事が理解できずに混乱し始めている。
帝都は最も防衛力が高く、兵力も多い場所。その場所が攻め込まれ、今自分達が押されているなど、帝国が造られてから今までに一度も無かった事だ。それは帝国の歴史上、最大の事件であり、歴史に泥を塗る大失態と言えた。
城壁上の帝国兵達が動揺している時、門前の同盟軍は正門前を守っていたBL兵や帝国兵達と交戦していた。帝国兵なら簡単に倒せるが、機械鎧兵士であるBL兵達は流石に倒せず、既に何人もの同盟軍兵が倒されている。だが、BL兵達はTR兵達が相手をして倒している為、押し返される事は無い。戦況は完全に同盟軍の有利に傾いていた。
「うおおおおおおっ!」
南門前では声を上げながら騎士剣を振り回すガバディアの姿があった。流石に今回は最後の戦いになる為、騎士団長であるガバディアも最前線に立ち、帝国軍と戦っている。
帝国兵はガバディアの圧倒的な強さに次々に倒されていく。ガバディアは怯んでいる帝国兵達を睨みながら騎士剣を構えた。
「どうした、かかってこないのか?」
ガバディアは帝国兵を睨んだまま挑発をする。しかし、恐怖のあまり帝国兵達は全く動けずに固まっていた。するとそこへ二人のBL兵が近づいて来て超振動マチェットを構える。ガバディアは目の前のBL兵を見て小さく笑い、騎士剣を強く握った。
「ほほぉ? 今度は貴殿等が相手をしてくれるのか。機械鎧兵士と戦うのは初めてだ。お手柔らかに頼むぞ」
冗談交じりで挨拶をするガバディア。BL兵達はそんなガバディアの言葉に反応する事なく超振動マチェットを構える。そして、二人同時にガバディアに向かって走り出した。
BL兵達の予想外の速さに一瞬驚くガバディアだったが、すぐに気持ちを切り替えて迎え撃つ。BL兵の一人が超振動マチェットを振り下ろして攻撃し、ガバディアは騎士剣を横にしてそれを止める。刃と刃が交じり合い高い音と火花が広がる。
「こ、これは……何という力だ! これが機械鎧兵士の力なのか?」
BL兵の振り下ろしが思った以上に重い事に驚くガバディア。そこはもう一人のBL兵が近づき、ガバディアの側面から斬りかかって来た。ガバディアは咄嗟にBL兵のいる方とは逆の方へ跳んで距離を取り、斬撃を回避する。
自分達の攻撃をかわしたガバディアを見てBL兵達は超振動マチェットを下ろしながらガバディアを見つめる。ガバディアは機械鎧兵士の力を実感して改めて機械鎧兵士が強敵である事を知った。
「これはとんでもない強さだ。機械鎧兵士一人で十人以上の戦力と言われるのも納得がいく……じゃが、儂も一国の騎士団を任された身、たった二人の敵に負けるわけにはいかぬのだ!」
ガバディアは自分の立場、祖国の未来の為にも負けられられないと気持ちを強くしてBL兵達に向かって走り出す。BL兵達は自分達の力を知ってもなお向かって来るガバディアに少し驚いた様な反応を見せるが、すぐに超振動マチェットを構え直してガバディアに向かっていく。
BL兵の一人がガバディアに正面から袈裟切りを放つとガバディアは横にずれておその斬撃を回避し、騎士剣で反撃をした。しかし、BL兵もガバディアの斬撃を簡単にかわし、超振動マチェットで突きを放つ。
ガバディアはBL兵の素早い反撃に一瞬驚くもギリギリでその突きをかわした。そこへもう一人のBL兵がガバディアの背後に回り込んで斬りかかろうとする。完全に隙を突かれ、ガバディアはやられてしまう。誰もがそう思える状態だった。だが、次の瞬間、予想もしていなかったことが起きた。
ガバディアは目の前にいるBL兵を睨んだまま騎士剣を逆さまに持ち、後ろにいるBL兵に突きを放つ。マントを貫き、ガバディアの騎士剣を背後にいるBL兵の体を貫いた。BL兵は予想外の反撃を受けた事が理解できないまま持っている超振動マチェットを落として息絶えた。
「……背後を取れば反撃を受けないと思ったか?」
低い声を出しながら騎士剣を引くガバディア。BL兵の体を貫いていた騎士剣は抜かれて刺されたBL兵は地面に倒れる。もう一人にBL兵は仲間が倒された事に驚いていた。その隙を突いてガバディアは目の前のBL兵にも騎士剣で攻撃して倒す。
僅か数十秒で二人の機械鎧兵士を倒した老兵。その姿を見た周りの同盟軍兵や帝国兵は驚きの反応を見せた。
「……機械鎧兵士だからと言って、絶対に負けないという事などあり得ん。どんなに強い力を持つ兵士でも一瞬の油断と隙で敗れる事もあるのだ」
倒れるBL兵達に向かって呟くガバディアは次の敵と戦う為に移動を開始する。ガバディアの勝利は同盟軍でも機械鎧兵士に勝つ事ができるという事を証明した事にもなったのだ。
ガバディアが次の敵を倒しに向かおうとした時、上空を数機のヘリが帝都に向かって入って行くのが見えた。幸い、M51高射砲はほとんど破壊されており、撃墜される事は無かった。
「……あれはヴリトラ達の乗るヘリコプター。遂に帝都に突入されたか……任せたぞ、ヴリトラ、アレクシア殿」
帝都に入って行くヘリを見上がるガバディアはヴリトラ達に託して戦いを続ける。この戦いの勝利の鍵はヴリトラ達にある。彼等が敵の司令官を倒せるように、ガバディア達は敵を引き付ける事に集中するのだった。
帝都の上空を飛ぶ数機のヘリ。チヌークが一機とそれを護衛する様に飛ぶ四機のコブラ。チヌークの中にはアレクシアとヴリトラ達七竜将、そしてラピュスとラランの姿があった。皆、真剣な顔で目的の場所に着くのを待っている。
「……皆、大丈夫かな?」
リンドブルムがライトソドムを握りながら地上で戦っている同盟軍を心配する。そんなリンドブルムの隣に座っているヴリトラがリンドブルムの頭にポンと手を置いた。
「ガバディア団長達も斬っとお前と同じ気持ちさ。と言うか、俺達の方が危険な立場なんだから、こっちが心配するっていうのも何か変だぞ?」
「確かにそうだな……」
苦笑いをするヴリトラと腕を組みながら頷くオロチ。帝都に僅か数人で突入する自分達と地上で大勢で戦っている同盟軍とでは明らかに危険度が違う。それなのにそんな状態で仲間達の事を心配するリンドブルムも大したものと言える。
リンドブルムはヴリトラの言葉を聞き、「それもそうだね」と言いたそうに苦笑いをし、それを見たジルニトラやファフニールは笑った。すると、突然チヌークのが揺れ出し、ヴリトラ達の表情が鋭くなる。
「どうした!?」
ジャバウォックがパイロットに状況を尋ねると、パイロットは操縦かんを強く握りながら前を見て状況の説明をした。
「て、敵の防空戦力です! 数機のアパッチが攻撃を仕掛けてきました!」
「護衛のコブラは!?」
「アパッチに攻撃をしていますが、周囲を飛び回る帝国の飛竜部隊の妨害を受けております」
ヴリトラ達が窓から外を見回すと確かに護衛のコブラの周りを帝国軍の飛竜部隊が飛び回ってコブラの攻撃を邪魔している。おかげでコブラは上手くアパッチを攻撃できずにいた。
アパッチは飛竜部隊によってチヌークから離されたコブラに向けて機銃を撃ち攻撃する。コブラは銃撃をかわしながら同じように機銃を撃って反撃した。コブラの銃撃は飛竜に命中し、飛竜達は次々に落ちていく。アパッチはコブラが飛竜に攻撃している隙に未サルを発射を撃ってコブラを撃墜してしまう。
コブラもミサイルを撃ちアパッチを攻撃して落とし、帝都の上空で何度も爆発が起き、暗い帝都を明るく照らした。
「チイィ! コブラが落とされていく!」
「護衛のコブラが二機落とされてあっという間に半分になっちゃった!」
「マズイな……」
空の戦いを目の当たりにして焦りを見せるヴリトラ、リンドブルム、ニーズヘッグ。
「……チヌークの高度を下げてください。私達は此処で降ります」
「ええぇ!?」
アレクシアはこれ以上はマズいと考え、パイロットに着陸するように指示を出した。パイロットは目的の場所からかなり離れた所で降ろすよう言われて驚きの表情を浮かべる。だが、これ以上近づけば帝都に撃墜される確率も高くなり危険だった為、パイロットは言われた通り、チヌークの高度を下げた。
チヌークは広い街道の真上で高度を下げて後部ハッチを開く。ヴリトラ達は自分達の武器を手に取り、後部ハッチから飛び下りて地上に下り立つ。
ヴリトラ達が下りるのを確認したパイロットは手を上げて「ご武運を」と伝えるとチヌークを上昇させて帝都の外へ飛んで行く。残りの護衛コブラもアパッチを警戒しながら帝都の外へ飛んで行き、チヌーク達が去ったのを見たヴリトラ達は遠くに見える城を見つめた。
「さて、いよいよだな……」
「思ったよりも遠くに下りちまったな」
「……あの攻撃じゃ仕方がない」
「そうね。此処からは自分達の足で行きましょう」
ヴリトラ、ジャバウォック、ララン、ジルニトラが城を見ながら会話をし、自分の武器を強く握る。ヴリトラ達の先頭に立つアレクシアも腰の刀を抜くとヴリトラ達の方を向き真剣な表情を見せた。
「皆さん、此処からは私達だけで城へ向かいます。私達を援護してくれる同盟軍も我が社の機械鎧兵士もいません。自分達の力だけで城を攻略します! 油断しないでください!」
「ハイ!」
アレクシアの忠告を聞き、ヴリトラは強く返事をした。ラピュス達も返事をしながら頷き、それを確認したアレクシアはもう一度城の方を向く。
「では、これより帝都エクセリオンを攻略する為に城へ向かいます。行動開始!」
城へ向かう為にアレクシア達は街道を全速力で走り出す。暗く静かな帝都の中をアレクシア達は進んで行く。
――――――
その頃、帝都から数km離れたところの上空ではブラッド・レクイエム社のヴェノムが一機、帝都に向かって飛んでいた。そのヴェノムの中にはジークフリートと親衛隊のガルーダ、リリムの姿があり、三人はヴェノムの後部座席の座って上部に取り付けられているモニターを見ている。
「……そうか、予定通り事は進んでいるのだな」
「ハイ。ジークフリート様達がお着きになる事には戦いもより激しさを増し、同盟軍は帝都に侵入している事でしょう」
「ウム……」
ジークフリートはモニターに映るブリュンヒルデの話を腕を組みながら聞いており、納得したように返事をする。ジークフリートの隣にはガルーダが同じように腕を組みんでモニターに映るブリュンヒルデは見上げており、通路を挟んだ反対側の席ではリリムは足を組んで両手を後頭部に当てながら話を聞いている姿があった。
「お前は引き続き、城で必要な物資と資料、あと城の宝物庫からできるだけの宝を回収しておけ」
「了解しました」
「あと、例の物は私達が帝都に到着してから三十分後に撃たれるようにしてある。私が帝都に着いたらすぐにお前も作業に掛かれ」
「分かりました。では、お待ちしております」
そう言ってブリュンヒルデはモニターを切った。
モニターに何も映らなくなるとジークフリートは前を見ながら黙り込む。すると隣に座っているガルーダがジークフリートの方を向き静かに口を開く。
「司令、三十分で間に合うのでしょうか?」
「大して時間も食わない。やるべき事をやったらすぐに帝都を出る。三十分もあれば十分だ」
「しかし、七竜将が城に侵入しており、運悪く奴等と遭遇すれば流石に危ないのでは……」
「帝都にはジャンヌがいる。あの女の相手をする事になれば奴等も自由には動けん。そもそも、私が帝都に来ている事に気付かれなければ問題はない」
「はあ?」
「それにジャンヌも帝都を本気で守るつもりはないだろう。適当に同盟軍を相手にした後に脱出するはずだ。七竜将と遭遇する前に全てが終わっている」
ジークフリートはジャンヌが帝都を守る気がない事に気付いており、七竜将と遭遇する前に全てが片付くと考えていた。ジークフリートは帝都へ行き、何をしてそれが済めばさっさと帝都から立ち去ろうと考えている。勿論、同盟軍と戦っている帝国軍を見捨てて。
「それにしても、司令も随分ととんでもない事を考えるよねぇ?」
さっきまで黙って話を聞いていたリリムが楽しそうな声を出しながら会話に加わって来た。ジークフリートとガルーダはリリムの方を向くと黙って彼女を見つめる。
「ここまでは計算通りだけど、一体いつから今回の事を計画してたの?」
「……いつ? 最初からだ」
「ええぇ~? うっそぉ~」
「嘘ではない。私は最初からこの計画を実行する為に動いていたのだ」
「大したもんだよねぇ、司令ってさ?」
楽しそうな、そして意外そうな口調でジークフリートを見ながらへらへらとするリリム。そんなリリムを見てガルーダは呆れた様な顔をしている。ジークフリートは前を見ると赤い目を光らせた。
「さて、遂に時が来た……『オペレーション・ヴィユ・マルシェ』を実行する!」
ヴェノムの中に響くジークフリートの低い声、それを聞いたガルーダとリリムの表情は鋭くなり、三人を乗せたヴェノムは帝都へ向かって飛んで行く。
――――――
帝都では同盟軍と帝国軍の激しい戦いが続いていた。四つの門の内、二つは破られて同盟軍は帝都に侵入していた。残りの二つも必死に門を破壊しようとするがなかなか突破できずにいたがそれでも同盟軍は優勢にある。
同盟軍が門の前で激戦を繰り広げている間、ヴリトラ達は街道を走って真っ直ぐ城に向かっている。幸い、帝国軍の戦力は殆どが四つの門に向かっている為、これまで一度も敵と遭遇していなかった。
「ここまでは順調だな」
「だが、油断できないぞ? 帝国の主戦力は四つの門に向かっているだろうが、まだ一部の守備隊はこの辺りをウロチョロしているはずだ」
「そうだね、油断せずに行こう!」
ジャバウォック、ニーズヘッグ、ファフニールは走りながら話をし、他の者達も周囲を警戒しながら走っている。街道は明りが殆どなく静かだが、いつどこから敵が奇襲を仕掛けて来るか分からない事を考えると少し不気味だった。
そんな時、突如ヴリトラ達の前方の脇道から五人のBL兵が姿を現した。どうやら四つの門のどれかに救援に向かう別動隊の様だ。
BL兵達は走って来るヴリトラ達の姿を見ると咄嗟にMP7を構えて銃口を向ける。ヴリトラ達は突然現れたBL兵達に驚くも走りながら戦闘態勢に入った。
「来たぜ! 皆、立ち止まらず一気に走り抜け……」
ヴリトラは森羅を構えながら叫んでいると、隣を走っていたアレクシアは走る速度を上げて一人BL兵達に向かっていった。一人で敵に向かっていくアレクシアを見てラピュスとラランは驚きの表情を浮かべる。
「ア、アレクシアさん!」
驚くラピュスはアレクシアの名を叫ぶ。早く彼女を止めないと、そう言いたそうな顔でラピュスは周りを見た。だが、ヴリトラ達は立ち止まり、慌てる様子も見せずに冷静にアレクシアを見ていた。
なぜ冷静でいられるのか、ラピュスはヴリトラ達の考えが分からずに驚いている。だが次の瞬間、ラピュスはヴリトラ達が冷静でいる答えを知る事になるのだった。
日本刀を握りながら走るアレクシア。そんなアレクシアにBL兵達は一斉にMP7を発砲した。銃口から吐き出される弾丸はアレクシアに向かって飛んで行き一斉に彼女に襲い掛かろうとする。だが、アレクシアは真剣な表情で弾丸を見つめ、素早く日本刀を振り弾丸を弾き落とす。
走りながら次々に弾丸を弾き落とす姿はまるでヴリトラの様だった。いや、ヴリトラよりも日本刀を速く振り、走る速度を落とす事なくBL兵に向かって走っている。
「う、嘘……」
ラピュスはアレクシアが弾丸を弾き落とす姿を見て目を疑った。それはラランはBL兵達も同じだ。ラピュス達が驚くのも無理はない。何しろアレクシアは機械鎧兵士でもない普通の人間なのだから。普通の人間が弾丸を目で追い、それを日本刀で弾き落とすなど、並の人間にできる事ではない。普通の人間でありながら機械鎧兵士と同じ戦闘能力を持っている、それだけアレクシアが厳しい修行をして来たという事だ。
アレクシアはもの凄い速さで日本刀を振り、徐々にBL兵達との距離を縮めていく。BL兵達は普通に銃撃してもアレクシアを倒せないと感じたのかMP7を捨てて両腕の機械鎧の内蔵兵器を出した。超振動短剣に内蔵機銃、そして内蔵ミサイルを出してアレクシアに攻撃しようする。するとアレクシアは両足に力を入れて高く跳び上がり、BL兵達の真ん中に下り立って日本刀を横に構えた。
「皆藤流剣術四式、聖花乱舞!」
アレクシアはヴリトラが使っている皆藤流剣術の技を発動した。アレクシアは横にした日本刀を勢いよく横に振って高速回転をする。すると周りにいるBL兵達の体に無数の切傷が生まれ、五人のBL兵達は一瞬にして全滅した。
ラピュスとラランは初めて見るアレクシアの戦いを目にし、驚きのあまり言葉を失った。普通の人間が五人のBL兵を一瞬にして全て倒したのだから驚くのも無理はない。
「……どうだ? 師匠は強いだろう?」
驚くラピュスを見てヴリトラはニッと笑いながらラピュスの肩にポンと手を置いた。
ラピュスは肩を叩かれてフッと我に返りヴリトラの方を見て驚きの顔で頷く。
「あ、ああ……機械鎧兵士でもないのにあの実力、驚いた」
「そりゃあ、俺の師匠だしな。しかも皆藤流剣術の免許皆伝だ、俺よりも剣術が優れているからどんな戦況でも対応できる」
「私も地球にいた時に剣を教わって彼女の潜在能力は凄いと感じていたが、まさかこれほどとは思わなかった……」
「まぁ、実戦と訓練じゃ全然違うからな」
ヴリトラはラピュスを見ながら笑い、ラピュスは驚きの表情のままアレクシアを見た。
アレクシアはBL兵達が死んでいるのを確認すると日本刀を軽く振ってからヴリトラ達の方を向く。
「余計な時間を食ってしまいました。急いで城へ向かいますよ!」
「ハイ!」
ヴリトラは力強く返事をして走り出し、ラピュス達も続いて走り出す。アレクシアはヴリトラ達を連れて再び城に向かって走る。この戦いを終わらせる為にも急いでジャンヌとギンガムを倒す必要があり、一同は全速力で城へ向かった。
門の前と帝都の中、どちらでも激しい戦いが繰り広げられている。そんな中、ジークフリートの乗るヴェノムが帝都へ近づいていた。しかしヴリトラ達はその事を知らない。果たしてこの戦いはどうなるのか、そしてジークフリートの口にしたオペレーション・ヴィユ・マルシェとは何なのか。




