第三百六話 悲しみを乗り越えて ヴリトラとラピュスの絆
オルトロズムの城を制圧したヴリトラ達。彼等の活躍で旧オラクル軍は投降し、戦争は遂に終わりを告げる。だが、その為に出た犠牲者の数は計り知れず、その中にはアリサもいた。
同盟軍がオルトロズムを制圧するとすぐにヴリトラ達はレジスタンスのリーダーである元オラクル共和国の要人と会い、今後の事を話しあう。帝国から切り捨てられ、孤立した旧オラクル共和国はコラール帝国の対抗同盟の新たな同盟国として加わり、同盟軍はより戦力を高める。そして、帝国によって資源や食料を奪われてしまったオラクル共和国はしばらくの間、レヴァート、ストラスタ、セメリトの三国から支援を受ける事ができるようになった。
戦争が終わるとすぐに七竜将はティムタームに戻る。そこでパティーラム達にアリサの戦死を報告する。パティーラムはアリサの死を知り酷く悲しみ、ガバディアも悔しさで表情を歪ませた。ヴリトラ達も戦友の死に表情を曇らせ、ラピュスは自分のせいでアリサが死んだと思い、誰よりも深く悲しみを見せる。そんなラピュスを七竜将達は黙って見守るのだった。
その後、七竜将達はタイカベル・リーベルト社の事をパティーラムに尋ねた。パティーラムは七竜将は城へ案内し、そこでアレクシア、清美、Dr.GGと再会する。ヴリトラ達はアレクシアから話を聞いて、タイカベル・リーベルト社がヴリトラ達はオルトロズムに攻撃を仕掛ける前日にユートピアゲートを使ってファムステミリアに来ていた事を聞かされ、タイカベル・リーベルト社がレヴァート王国領に拠点を置き、ブラッド・レクイエム社を倒す為に全力で同盟軍に力を貸す事を話した。
ヴァルボルトも全力で自分達に力を貸してくれるタイカベル・リーベルト社を歓迎し、ティムタームの近くにある丘をタイカベル・リーベルト社の拠点製作の場所として提供してくれた。そして現在、タイカベル・リーベルト社の大部隊は提供された場所に拠点を建造している。
オラクル共和国との戦争が終戦してから三日後、七竜将はタイカベル・リーベルト社が拠点を建造している丘にやって来ていた。丘ではタイカベル・リーベルト社が地球から持って来た工事用車両を使って拠点の建造を進めており、ヴリトラ達から離れた所ではタイカベル・リーベルト社の幹部に案内され、レヴァート王国の貴族達が建造を見学している姿もある。
「……ようやくここまで完成したか」
ヴリトラは遠くで行われている建造作業を見物しながら呟く。既に拠点はいくつかの建物が建てられ、拠点を囲む壁も出来ていた。
だが、拠点として利用するところまでは出来ておらず、完成するにはまだ数日かかる状態だった。
「この調子だとあとどれぐらいで完成するだろうな」
「そうだな……俺の想像だとあと半月は掛かると思うぞ?」
いつ完成するのか考えるヴリトラの後ろでニーズヘッグが同じように建造する光景を見ながら考えている。他のメンバー達も黙ってショベルカーやブルドーザーが地面を掘り、平らにしている光景を眺めていた。
「この拠点が完成するまでコラール帝国とブラッド・レクイエムが大人しくしてくれてるといいんだけどね……」
「そんなに都合よくは行かないんじゃないかしら?」
リンドブルムの呟きにジルニトラが腕を組んで工事を眺めながら答える。リンドブルムはチラッとジルニトラの方を向き小首を傾げた。
「どうしてそう思うの?」
「いい? 今回の戦争であたし達が戦ったのは帝国に寝返っていたオラクル共和国の兵と帝国兵、そしてブラッド・レクイエムの機械鎧兵士部隊の極僅かよ。後で分かった事だけど、オルトロズムの戦力の50%がオラクル軍の兵士で45%が帝国軍の兵士、そしてブラッド・レクイエムの戦力はたったの5%だったの。つまり、ブラッド・レクイエムは殆ど戦力を失ってないって事よ」
「それはつまり、ブラッド・レクイエムは何時でもこっちに攻撃を仕掛ける事のできる状態だって事?」
「そう。要するに帝国軍とは関係なく、ブラッド・レクイエムの戦力だけを同盟を結ぶ四つの首都に攻撃を仕掛ける事もできる状態って事よ」
「な、成る程……」
「それに引き換え、同盟軍の戦力はオルトロズムの戦いでかなり削られているわ。戦力が戻るにはまだ時間が掛かるはず。その状態のあたし達をブラッド・レクイエムが見逃すとは考え難いわ」
同盟軍の戦力が回復するまでの間、ブラッド・レクイエム社が黙って見逃がすとは考えられない。そう考えたジルニトラの言葉にリンドブルムは真剣な顔でジルニトラを見つめる。周りにいるヴリトラ達もその可能性はあると考えたのか緊迫した様な表情を浮かべたい。
すると、ヴリトラ達の表情を見たニーズヘッグが「やれやれ」と言いたそうな顔を見せ、ヴリトラ達の方を向くと両手を腰に当てながら口を開いた。
「そんなに深く考える事はないと思うぞ? 例え拠点が完成してなくてもタイカベル・リーベルトの戦力は自由に動けるんだ。もし、奴らが四つの国に攻撃を仕掛けて来たのなら、タイカベル・リーベルトの部隊が応戦するはずさ」
ニーズヘッグの言葉を聞いたヴリトラ達は一斉にニーズヘッグの方を向く。ヴリトラ達が注目するとニーズヘッグは話を続けた。
「今は各国の首都にタイカベル・リーベルト社の一個大隊が駐留して防衛に当たっている。何か遭っても大丈夫だろう」
「確かにな。一個大隊なら例えブラッド・レクイエムの部隊が来てもなんとかなるはずだな」
「しかも救難信号があればこちらから戦力を送る事も可能だ……」
「ひとまずは、安心なんだね」
ジャバウォック、オロチ、ファフニールがニーズヘッグの説明を聞いて納得する。ニーズヘッグも仲間の不安が無くなりホッとしたのか小さく笑った。だが、七竜将にはまだ不安が残っている。
「……ラピュス、今日はどうしてるかな?」
リンドブルムはラピュスの事が気になり不安そうな顔で遠くに見えるティタームを見つめる。ヴリトラ達もティタームの方を向いてラピュスの事を考えた。
ラピュスはオルトロズムでの戦いでアリサが戦死した事で酷く落ち込み、帰還してからずっと暗いままだった。七竜将もなんとか彼女を元気づけようとしたが、なかなか立ち直れずにおり、今日も七竜将に同行せずに町に残っている。
「あれから三日も経ってるのに……」
「やっぱり簡単には立ち直れないわよ。あの二人、白竜遊撃隊が第三遊撃隊と名乗っていた時からの付き合いでしょう? 隊長と副隊長の関係だったんだから、絆もかなり深かったみたいよ?」
「絆の深い人間が死んだ時のショックからはどんな人間でも簡単には立ち直れない……」
ファフニール、ジルニトラ、オロチの七竜将の女性陣がラピュスの事を心配しながら彼女とアリサとの関係を口にする。ヴリトラ達男性陣もラピュスを心配しているのかティムタームの方を見ていた。
「ラピュス、大丈夫かな?」
「正直、少し心配だな……」
「ああ、機械鎧兵士の体内に入っているナノマシンには精神を安定させる役割を持つナノマシンも入っている。そのナノマシンが入っているのに三日も落ち込み続けているとなると、相当キツイ状態だろう」
「それじゃあ、もしこのままならラピュスはどうなっちゃうの?」
「ナノマシンを体内に入れてるんだから精神崩壊なんて最悪な状態にはならないだろう。だが、立ち直るには時間が掛かるだろうな……」
リンドブルム達はラピュスの事を気に掛けながら話している中、ヴリトラは黙って町を見つめ続けていた。
ヴリトラ以外の七竜将のメンバーがラピュスの事を心配していると、ヴリトラは丘を下りてティムタームの方へ歩き出す。
「あれ? ヴリトラ、何処行くの?」
突然歩き出したヴリトラを見てリンドブルムが尋ねると、ヴリトラは足を止めて振り返りリンドブルム達を見る。
「決まってるだろう? ラピュスのところだよ」
「え?」
「行ってどうするんだ?」
「当然、彼女を立ち直らせるんだ」
「おいおい、本気か? やめておいた方がいいぜ? 今回の一件はラピュス自身の問題だ。アイツが自分の意思で立ち直らない限り、何の意味もねぇだろう」
ラピュスを見守ろうと考えるジャバウォックを見てヴリトラはゆっくりと首を横に振る。そんなヴリトラを見てリンドブルムは少し意外そうな顔を見せた。
「確かにアイツが自分で立ち直らない限り、同じ事が起きればラピュスは何度もショックを受けて今回の様に落ち込むだろう。仲間として見守る事も大切だ。だが、俺は何もせずにただ待つっていうのは性に合わないみたいなんだよ」
「よく言うぜ。戦場とかでは自分達から敵に攻めるより、向こうが攻め込んでくるのを待って身長に戦った方がいいって言うくせによ」
「確かに戦場では俺は攻め込むよりも敵を誘い込む戦術を選ぶ。だけど、仲間を助ける場合は別だ」
「ちぇ、いい性格してるぜ」
「と言うか、自分に都合のいい性格って言うべきじゃない?」
戦場と日常の考え方をコロッと変えるヴリトラにジャバウォックとジルニトラは呆れる様な顔を見せる。リンドブルム達も苦笑いを浮かべたり、「やれやれ」と言う様な顔でヴリトラを見ていた。
「ハハハハ、そんなに褒めるなって」
「「褒めてないっ!」」
ヴリトラはジャバウォック達を見ながらニヤニヤと笑い、そんなヴリトラにジャバウォックとジルニトラはツッコミを入れた。するとヴリトラはヘラヘラとした笑顔から真面目な表情に変わり、それを見たリンドブルム達は少し驚いた様な顔でヴリトラを見つめる。
「俺にとってはラピュスはもう七竜将の一員、心から信頼できる女だって考えてる」
「それは僕達も同じだよ」
「ああ、アイツはもう俺達の仲間、いや、家族と言っていい」
ラピュスを戦友以上の存在だと言うリンドブルムとジャバウォック。ヴリトラはそんな二人の意見を聞き、真剣な顔で頷いた。
「そうだな、アイツは家族同然だ。だからこそ、俺はアイツを支えてやらないといけないんだ」
「……ねぇ、ヴリトラ」
突然ジルニトラは難しい顔をしてヴリトラに声をかけて来た。
「それはアンタが七竜将の隊長として言っているの? それとも別の理由で言ってるの?」
「? ……どういう意味だ?」
「……いいえ、何でもないわ。早く行ってあげなさい」
「ん? ああ……」
ジルニトラの言葉の意味が分からず、小首を傾げるヴリトラはとりあえず、ラピュスに会う為にティムタームへ向かって走って行く。
残ったリンドブルム達は黙って走って行くヴリトラを見守った。すると、ファフニールがジルニトラの方を向いて不思議そうな顔を見せる。
「ねぇ、ジル、さっきヴリトラに言ったのってどういう意味なの?」
「ん? ……ああぁ、子供は気にしなくていい事よ」
「むぅ!? また私の事、子ども扱いしてぇ!」
既に戦場に出ている傭兵の自分を子ども扱いするジルニトラに頬を膨らませて怒るファフニール。そんな二人のやり取りをジャバウォック、ニーズヘッグ、リンドブルムは笑いながら見守っており、オロチは無表情のまま見ていた。
「ところで、ヴリトラの奴、ラピュスに遭いに行くって言ってたが、ラピュスが何処にいるのか知ってるのか?」
「大丈夫だろう。アイツならきっとあそこにいる……」
オロチはティムタームを見つめながら呟き、ラピュスの居場所を知っているオロチをニーズヘッグ達は不思議そうな顔でオロチを見ていた。
――――――
ティムタームの片隅にある広場、こには沢山の墓石が並べられている。そう、此処は墓地。しかもただの墓地ではない。戦闘などで命を落とした騎士や兵士達が埋葬されている、いわば戦死者墓地なのだ。オラクル共和国との戦争で出た戦死者達もここに埋葬されている。勿論、オルトロズムの戦死した者達もだ。
戦死者墓地の真ん中にある墓石の前で俯きながら立っているラピュス。彼女の目の前の墓石の前には小さな花束が置かれており、墓石にはファムステミリアの文字でアリサの名が刻まれていた。ラピュスはアリサが埋葬されてから今日までずっと戦死者墓地に通っており、こうしてアリサに会いに来ているのだ。
「……アリサ」
俯きながらアリサの名を呟くラピュス。今でも彼女はアリサの死の原因が自分にあると思っている。長年苦楽を共にした戦友を助けられなかった事をずっと後悔し続けていた。
「私がもっと早く屋上に辿り着けていれば……クウゥ!」
「ラピュス……」
声を掛けられ、ラピュスは振り向く。そこにはヴリトラが立っており、彼の顔を見たラピュスは悲しそうな表情を見せてヴリトラに駆け寄り抱きついた。
ヴリトラは自分に抱きつくラピュスの肩に手を置いてそっと抱き寄せた。ラピュスはヴリトラの腕の中で小さく震えながらすすり泣く。
「う、うう……」
「ラピュス、前も言っただろう? アリサが死んだのはお前の責任じゃない。悪いのはブラッド・レクイエムなんだ。自分を責めるな」
「いや、私がもっと早く屋上に行っていればアリサ達は死なずにすんだんだ。私が遅れたせいで彼女は……」
「自分を責めても何にもならないだろう。気をしっかり持て!」
「……いっそ、あの時私が死んでいれば」
「……ッ!」
自暴自棄になるラピュスの言葉を聞いたヴリトラはラピュスの両肩を強く掴んで自分の胸から離す。そして涙目になっているラピュスを睨み付けた。
「馬鹿野郎! そんな事、冗談でも二度と言うな!」
「うう……」
初めて自分を鋭い目で睨むヴリトラにラピュスは涙目のまま少し驚いた顔を見せる。ヴリトラは強くラピュスの肩を握って手を震わせた。
「いいか? もし仮にお前がアリサの代わりに死んで、残されたアリサが今のお前と同じ事を言ったらどう思う!?」
「!」
「確かに仲間に死なれて残された者の悲しさは計り知れない。仲間の代わりに自分が死ねばよかったと考える者もいるはずだ。だけどな、死んでもいい人間なんてこの世には一人もいなんだぞ?」
「……」
「どんな人間でもその人間を大切に思う奴が必ずいる。その人間が死ねばその大切に思う奴が悲しむんだ。今のお前のように」
ヴリトラの話を聞いたラピュスはオルトロズムで自分が死んでいればアリサやララン、そして母親であるリターナが悲しむ顔を想像する。この時ラピュスは自分が残された者達がどんな気持ちになるのかに気付いた。
大切な事を理解したラピュスは俯き黙り込む。そんなラピュスを見てヴリトラは肩を掴んでいる手の力を弱めた。
「結局、一番辛い思いをするのは死んだ人間じゃない、残された人間なんだ。少しはその連中の気持ちを考えろ」
「……」
「……俺だって、そんな連中の一人なんだからな」
「え?」
ヴリトラの言葉にラピュスはふと顔を上げる。
「俺だって、お前が死ねば辛くて頭がおかしくなっちまう。俺だけじゃない、リブル達もだ。お前はもう七竜将の一員同然なんだ、もう少し仲間の気持ちも考えてくれ」
「……ごめんなさい」
自分の間違いに気づいたラピュスは謝罪し、ヴリトラはそっとラピュスの頭を撫でた。
「いいか、ラピュス? 確かにアリサは死んでしまった。だけどな、お前にはまだ仲間がいるはずだ。ラランや生き残った白竜遊撃隊の騎士達が」
「ララン達が……」
「そうだ、お前がアイツ等を守ってやるんだ。アリサと同じ目に遭わせない為にもな」
ヴリトラは優しく声をかけてラピュスにはまだ守るべき仲間がいる事を伝える。ラピュスは今の自分にできる事を改めて考えた。いつまでも過去の過ちを悔やんでいても何も変わらない。悔やむよりも大切な事がある事を知り、ラピュスは涙を拭う。
涙を拭ったラピュスは小さく笑い、ヴリトラの顔を見上げた。
「ありがとう、ヴリトラ」
「……竜斗だ」
「え?」
「……皆藤竜斗、それが俺の名前だ」
「竜斗……ッ! もしかして、お前の本当の名前か!?」
ラピュスはヴリトラが自分の本名を教えてくれた事に驚きを隠せなかった。七竜将は秘密を守る為に決して本名を明かさない事にしている。本名を知っているのは同じ七竜将のメンバーと極一部の関係者のみ。その本名を自分に教えてくれた事にラピュスは非常に驚いていた。
目を丸くしながらヴリトラの顔を見つめるラピュス。ヴリトラは少し照れた様な顔でラピュスから目を逸らしている。
「本当はオルトロズムから帰った時に話そうと思ってたんだけど、アリサがあんな事になっちまって、話す機会がなかったんだ」
「そ、そうだったのか……だが、どうして今になって話すんだ。お前達は本名を心から信頼している者にしか教えないんじゃなかったのか?」
「信頼してるさ。だからお前に今教えてんだよ」
「……それはつまり、今まで私達の事を心から信頼していなかったと?」
「い、いや! そういう事だじゃなくて……前々から言おう言おうと思ってたんだけど、毎日忙しくてコロッと忘れちまうんだ……」
「ハァ、七竜将の隊長がなんて事だ……」
呆れた顔で溜め息をつくアリサにヴリトラは申し訳なさそうな顔を見せる。だが、すぐにラピュスは微笑みを浮かべてヴリトラを見た。そこにはアリサの死で自分を責め続けていた時の暗い顔は無い。
ラピュスはヴリトラに一歩近づき、顔をそっと近づける。
「竜斗、貴方には本当に今まで色々な事で助けられたわ。今回もアリサの事で自分を責めていた私を助けてくれた……本当にありがとう」
久しぶりに女口調で話すラピュスを見てヴリトラは頬を赤くする。ラピュスもそんなヴリトラを愛しそうな顔で見つめていた。
二人っきりの状態でお互いを見つめ合うヴリトラとラピュス。アニメやドラマならこのまま口づけをかわしてしまいそうな展開だった。だが……。
「オホンッ!」
「「いいっ!?」」
聞こえてきて咳を聞き、ヴリトラとラピュスは驚いて咳の聞こえた方を向く。そこにはリンドブルム、ジャバウォック、ニーズヘッグ、ジルニトラ、オロチ、ファフニールがジーっと二人を見ている姿があった。
リンドブルム、ジャバウォック、ニーズヘッグ、オロチは呆れた様な顔で二人を見ており、ジルニトラはニヤニヤと笑い、ファフニールは「おぉ~」と驚いた様な顔をしている。
「お前等、こんな所で何いい雰囲気になってるんだよ……」
「此処、一応お墓なんだよ? もう少し場所を考えなよ……」
「全く仕方ねぇな、お前等は」
「フッ……」
「まぁまぁ、いいじゃないの♪本名を明かすくらい親密な関係になったって事なんだからさ」
「大人の関係ってやつなの?」
それぞれ自分達の考えを口にするリンドブルム達を見てラピュスは顔を真っ赤にし、ヴリトラも慌てた表情を浮かべた。
「お、お前等、何時からそこにいたんだよ!?」
「ヴリトラが『冗談でも二度と言うな!』って言ったあたりからかな?」
「ほとんど最初からじゃねぇか!」
「だって、二人っきりのところを邪魔しちゃマズいかなぁ~って思ったから」
「こ、こういう時だけ……!」
リンドブルムの都合のいい正確に歯ぎしりを立てるヴリトラ。そんなヴリトラを見てリンドブルム達はクスクスと笑う。その後、ヴリトラ達はアリサに祈りを捧げて町へと戻って行った。
大切な仲間を失い、悲しみに暮れていたラピュスを救ったヴリトラ。ヴリトラとラピュス、そして七竜将の絆は深くなり、ヴリトラ達は改めてファムステミリアを救おうと決意する。アリサの様な犠牲者をこれ以上出さない為にも……。
十七章はこれで終了です。次の十八章の内容を考える為にまたしばらく投稿を休止します。それまでしばらくお待ちください。




