第三百四話 苦戦からの反撃 ファフニールの策略
サンダーバード姉妹をジャバウォック達に任せてヴリトラ達は城へ突入する。ジャバウォック達もサンダーバード姉妹を足止めする為に戦闘を開始するが、パメラとパルメの電撃攻撃に苦戦を強いられてしまう。一体、彼等はどのようにしてサンダーバード姉妹の戦術を攻略するのだろうか。
ジャバウォック達は城の前で戦闘を開始した頃、ヴリトラ達は城内に侵入し、統治者のラプタンを探していた。城に入るとやはり城の守りに就いているBL兵と遭遇し戦闘になり、なかなか先へ進めないがヴリトラのチームの誰一人も怪我を負う事は無く、確実にBL兵達を倒して先へと進んだ。
城の二階へと上がったヴリトラ達は階段前の廊下に出て周囲を警戒する。そこにBL兵の姿は無く、とりあえず安全を確保できた。
「此処には敵の姿はないか……おい、出てきていいぞ」
ヴリトラが廊下の安全を確認して階段の陰に隠れているラピュス達を呼ぶ。ラピュス達は武器を持って廊下に出ると辺りを見回す。
今、ヴリトラとラピュスが連れているのはアリサと白竜遊撃隊の騎士六名の計七名。城を攻略するには少なすぎるが、大勢で突入して居場所を敵に特定されないようにする為にヴリトラはあえて少人数で城へ入ったのだ。
ラピュスは左右を見てどちらへ進むのか考える。ヴリトラもラピュスの隣に来て彼女と同じように廊下を見回した。
「……さて、どっちへ行く?」
「どの道、この階を全て調べないと上の階には行けないんだ。だったらどっちから進もうと同じ事だ」
「確かにそうだな。それじゃあ、どっちから行く?」
「そうだな……それじゃあ……」
ラピュスがどちらへ進もうか考えていると、廊下が右側から三人のBL兵が姿を現し、ヴリトラ達に向かってMP7を発砲する。
突然の襲撃にヴリトラとラピュスは一瞬驚くも冷静に森羅とアゾットで弾丸を弾く。アリサ達は慌てて階段の陰に隠れて銃撃を逃れた。
「大丈夫か!?」
「ハ、ハイ。平気です!」
ラピュスは隠れるアリサ達に尋ねるとアリサは階段の壁にもたれながら頷く。それを見たラピュスも安心して銃撃して来るBL兵達を睨んだ。
「敵がこちらから来たという事は、向こうの方に戦力が固まっているという事になる。つまり、向こうに戦力を置かなければならない重要な何かがあるという事になるな」
「そっちに敵の幹部がラプタンっていう男がいるって事か?」
「それは分からない。だが、こっちを優先して行った方がいいだろう」
「よし、だったらこっちから行くぞ」
「ああ」
弾丸は弾きながら予定を話すヴリトラとラピュス。銃撃が止むと、二人はその一瞬の隙を突いてBL兵達を倒す為に彼等に向かって走り出す。二人がBL兵達を倒すのに一分も掛からなかった。
――――――
その頃、城の外ではジャバウォック達がサンダーバード姉妹と激戦を繰り広げていた。城の周りにある中庭や馬小屋の近くなどで空を飛ぶサンダーバード姉妹の放つ電撃をかわしながら反撃のチャンスを窺っていた。
「チッ、面倒なことになっちまったぜ……」
城の東側にある倉庫の陰から顔を出すジャバウォック。その後ろにはガズンとガルバの姿もある。二人と一匹は体中ボロボロになっており、さっきまで凄まじい戦いを繰り広げていたのが一目で分かった。
ジャバウォックは自分達が隠れている倉庫から数十m離れた所に立っているパメラを見張っている。パメラは地上に下り立ち、周囲を見回しながらジャバウォック達を探していた。
「……まだアイツはこっちに気付いていない。何とか奴の隙を突いて倒さねぇと」
「だがよ、どうやって倒すんだ? あの女にはお前さん達の使う銃っていう武器も効かないんだろう? そんな奴にどうやって勝つって言うんだ」
「確かに奴に銃器の類は通用しねぇ。アイツが体の周りに張っている電磁シールドで弾丸の軌道を変えちまうからな……」
「そのぉ……デンジ、シールド、ってモンを破る方法はないのか?」
「難しいな。銃器だけでなく、俺のデュランダルの斬撃も止めちまうんだ。正面から攻撃しても破れねぇだろう」
「じゃあ、どうすんだ?」
ジャバウォックは倉庫の壁にもたれながら必死にサンダーバード姉妹の攻略方法を考える。だが、電気を放って攻撃し、しかも電磁シールドで全ての攻撃を防いでしまうサンダーバード姉妹を倒す方法なんてなかなか思いつかなかった。
倒す方法が思い浮かばずに頭を悩ませるジャバウォックをガズンとガルバは黙って見つめている。すると、ジャバウォックの耳の小型通信機からコール音があり、ジャバウォックは小型通信機のスイッチを入れて応答した。
「こちらファフニール。ジャバウォック、聞こえる?」
「ファフニールか! 無事なのか?」
小型通信機から聞こえてくるファフニールの声にジャバウォックは反応し安否を問う。
ファフニールはジャバウォック達が隠れている東側とは正反対の西側にある中庭の中にある休憩所の様な建物の陰にミルバと隠れて通信をしていた。ファフニールとミルバもボロボロでかなりダメージを負っているようだ。
「大丈夫だよ、ミーちゃんも……」
「そうか……それで、そっちの様子はどうなんだ?」
「今はもう一人のサンダーバードを撒いて中庭の中に隠れてるけど、見つかるのは時間の問題かなぁ……」
「こっちも似た様なもんだ。奴は俺達を見失っているが、安全とは言えない」
危機的状況である事に変わらない状態にジャバウォックとファフニールの表情が歪める。
自分達は体力を殆ど削られており、思うように動く事もできない。それに引き換え、サンダーバード姉妹は空を飛ぶ事ができ、体力も十分残っている。どう見てもジャバウォック達の方が不利だった。
「……どうしよう? 電気を操る二人をどうやってやっつければいいか私には全然わからないよぉ……」
「俺だった似たようなもんだ。ただ、奴等はこの町にいるブラッド・レクイエムの部隊を逃がすまでの時間稼ぎをする為に俺達の前に現れたらしいからな。脱出の準備が整えばすぐに引き上げるとも考えられる」
「そんな都合よくいくかなぁ……」
「まぁ、天に祈るしかねぇな……」
ジャバウォックが疲れた様な声を出してファフニールと会話をし、その様子をガズンとガルバは黙って見ていた。そんな時、突如上から何か小石の様な物が落ちて来て、それに気づいたジャバウォック達はピクリと反応する。
「……ジャバウォック、どうしたの?」
突然会話を止めたジャバウォックにファフニールは尋ねる。ジャバウォックは問いかけに答える事無く、ゆっくりと上を向く。そこには倉庫の屋根の上から自分達を見下ろしているパメラの姿があった。
「み~つけた♪」
「「……ッ!」」
パメラに見つかりジャバウォックとガズンの表情が急変する。そんな二人にパメラは右手を向けて電撃を放つ攻撃する。
城の東側から聞こえてくる爆音に中庭に隠れていたファフニールは驚き、フッと顔を上げて東の方を向く。城の反対側から見てる煙とジャバウォックの声が途切れた事からファフニールはジャバウォック達が敵に見つかり襲撃を受けた事に気付いた。
「ジャバウォック達、サンダーバードに見つかったんだ! ミーちゃん、助けに行こう!」
ファフニールが隣にいるミルバに声をかけて背中に乗り、ミルバもファフニールが背中に乗るのを確認すると中庭を駆け抜ける。ファフニールとギガントパレードの二つの重い物を背中に乗せているのにスピードは速かった。
ミルバに乗ったファフニールが中庭を出ようとした時、ミルバの目の前に電撃が放たれて地面に焦げ跡が生まれる。電撃に驚いがミルバが急停止し、ファフニールも電撃が飛んで来た方を向く。ファフニールの視線の先には休憩所の屋根の上で自分を見下ろすパルメの姿があった。
「見つけたわよ、ファフニール」
「……ッ! 見つかった!」
「私達もさっさとアンタ達を片付けて城に侵入したヴリトラ達を始末しに行かなきゃいけないの。だからさっさと死んでちょうだい」
「死んでって言われて素直に死ぬ人なんていないでしょう!」
「フッ、確かにそうね。じゃあ、ゆっくりと痛めつけてから殺してあげる」
パルメは両手をファフニールに向けて電撃を放とうとする。それを見たファフニールはミルバの背中を軽く叩いた。
「ミーちゃん、走って! 落ち着かれないように全力で逃げて!」
ファフニールの指示を聞いたミルバは急いでその場から走って移動する。それを見たパルメは両足のジェットブースターを点火させて飛び上がると逃げるファフニールとミルバの後を追った。
中庭を抜けて城の周りにある道を全力で走るミルバとその背中に乗るファフニール。その後をパルメが追跡し、逃げるファフニールとミルバに電撃を放ち攻撃した。電撃は二人の真横を通過したり足元に命中したりする。パルメはなかなか電撃が当たらない事にイライラしてきたのかジッとファフニールの背中を睨んだ。
「ちょこまかと逃げて、大人しくやられなさいよ!」
パルメは苛立ちの籠った声で挑発すると、ファフニールは振り返り右腕をパルメに向け、内蔵機銃を撃ち応戦する。だが、パルメの周りには電磁シールドが張られており、弾丸は一発のパルメに当たらずに反れてしまう。
「ううっ、やっぱり銃器は効かない!」
銃撃が効かないのを再確認したファフニールは再び前を向いて逃げる事に集中する。
道を走り続けている間、パルメは何度も何度も電撃を放ちファフニールとミルバを攻撃し、その攻撃は二人は必死にかわし続ける。だが、次第にミルバの体力も限界が近づき、走る速度が落ちて来た。
(どうしよう、このままじゃミーちゃんの体力が無くなっちゃう。どうにかしないと……あっ、そうだ!)
何か思い付いたファフニールは小型通信機のスイッチを入れて誰かに連絡を入れる。しばらく呼び出し音が鳴ると誰かが応答し、ファフニールはすぐに話しかけた。
「こちらファフニール。ニーズヘッグ、聞こえる?」
「ファフニールか。どうしたんだ、城へ突入できたのか?」
ファフニールが連絡を入れた相手はニーズヘッグだった。なぜニーズヘッグに連絡を入れたのか、それにはちゃんとした理由がある。七竜将の参謀的存在であるニーズヘッグなら何かサンダーバード姉妹を倒す方法を考えてくれると思い、ファフニールは連絡を入れたのだ。
「お城にはヴリトラとティアマット達が入って行ったよ。私とジャバウォックとガズンさんはブラッド・レクイエムの幹部と交戦中なの!」
「幹部? やっぱりこの町にもいたのか……」
「それで、その幹部が強くて苦戦してるんだ。ニーズヘッグ、何かアドバイスがあったら教えてくれない?」
「アドバイスって言われても、俺は敵の事を何も知らないんだぞ。どうやってアドバイスしろって言うんだ」
「今から情報を教えるから、お願い!」
少し興奮した様な口調でニーズヘッグに助けを求めるファフニール。その間もパルメは電撃を放ち、ファフニールを乗せているミルバを攻撃し続けた。ファフニールはパルメを警戒しながらサンダーバード姉妹の情報をニーズヘッグに説明する。
一通り説明し終わると、情報を聞いたニーズヘッグは難しい顔をして考える。電撃を放ち、空を飛ぶ双子の機械鎧兵士。普通の人間ならそれだけでは何もアドバイスはできないが、七竜将の頭脳であり、機械鎧兵士で頭の回転も良くなっているニーズヘッグなら幾つか方法を思いつく。
「……ファフニール、敵は双子の姉妹で機械鎧から電気を放って攻撃してくるんだな?」
「うん」
「それじゃあ、その姉妹はお互いに触れ合っていたか?」
「触れ合う? 握手をしたり、肩を組んだりとか、そんな事?」
「そうだ。してたか?」
ニーズヘッグの質問に答える為にファフニールはサンダーバード姉妹と出会った時から現在までの事を思い出す。そして、戦闘が開始されてから、パメラとパルメは一度もお互いに触れ合っていない事に気付く。
「ううん、一度もなかった」
「そうか……ファフニール、よく聞け? 一つだけソイツ等を倒す事ができかもしれない方法がある」
「……できるかもしれない?」
曖昧なニーズヘッグの言葉にファフニールは訊き返す。
「そうだ。この方法は俺の予想から考えた作戦だ。もし、俺の予想が外れていればそのサンダーバード姉妹を倒す事はできない。下手をすれば一気に不利になるかもしれない」
「ええぇ! ほ、他の方法は無いの?」
「無い、今の俺が思いつくのはこの作戦だけだ」
「うう~~……」
成功するかは賭けという作戦にファフニールは複雑な顔をする。だが、自分では作戦が思いつかず、唯一の頼みの綱であるニーズヘッグが唯一考えつく作戦である以上、その作戦に賭けるしかなかった。
後方から電撃か飛んでくる中、ファフニールは迷っている時間はないと追いかけて来るパルメを見ながら決意した。
「分かった、その作戦を教えて!」
「よし、手短に話すぞ。その作戦は……」
小型通信機を通してニーズヘッグはファフニールに作戦を説明する。ファフニールは真面目な顔でニーズヘッグの考えた作戦を聞いた。
ファフニールがニーズヘッグと通信をしている事、倉庫の近くではジャバウォックとガズンがパメラを相手に苦戦していた。パメラが放つ電撃をかわしながら近づき、デュランダルで反撃するジャバウォック。だが、彼の重い一撃もパメラの高出力の電磁シールドで止められてしまい、全く傷を負わせられなかった。
「無駄よ、私にはアンタの大剣攻撃も通用しないわ!」
「くううううぅ!」
「いい加減に諦めなさい!」
パメラはデュランダルを電磁シールドで止めながら空いている方の手で電撃を放つ。電撃はジャバウォックに命中し、彼の全身に激痛を走らせた。
電撃を受けたジャバウォックは体から煙を上げながら片膝を付く。そんなジャバウォックに更に電撃を食らわそうとするパメラ。すると彼女の背後からガルバに乗ったガズンが現れて電撃鞭で攻撃する。
背後からの攻撃に気付いたパメラは姿勢を低くして電撃鞭を回避し、振り返りながら電撃を放ち反撃した。電撃はガズンとガルバに直撃し、二人はその場に倒れてしまう。
「う、うううう……」
「なぁに? もうお終いなの?」
動けなくなったジャバウォック達を見回し、パメラはつまらなそうな顔をする。そんな余裕の態度を取るパメラをジャバウォックは顔を上げて睨み付けた。
パメラは自分の髪と整えながらジャバウォックを見つめ、不敵な笑みを浮かべる。
「ウフフフ、さぞ屈辱でしょうね、自分達だけで倒せると言っていた相手にここまで苦戦し、まだ一撃も攻撃を当てられていないんだから」
「フン、まだまだ、戦える。あんまり調子にならない方がいいぜ、お嬢ちゃん」
「あらあら、この期に及んで強がり? 見っともないわよ、おじ様」
パメラはジャバウォックに右手を向け、彼の顔に電撃を放とうとする。ジャバウォックはデュランダルで攻撃しようとするが、デュランダルの刃をパメラが踏みつけて持ち上げる事ができない。距離を取ろうにももう間に合わず、覚悟を決めようとした時、何処からか光弾が放たれてパメラに向かっていく。迫ってくる光弾に気付いたパメラは大きく後ろに跳んで光弾を回避した。
「何っ!?」
驚くパメラが光弾が飛んで来た方を向くと、遠くからミルバに乗って自分を睨んでいるファフニールの姿があった。そう、先程の光弾はファフニールの機械鎧の内蔵兵器である粒子弾砲の弾だったのだ。
「皆、大丈夫!?」
「ファフニール!」
「嬢ちゃん!」
助けに現れたファフニールにジャバウォックとガズンは驚く。パメラは自分の邪魔をしたファフニールを睨みながら舌打ちをした。
「面白いところだったのに邪魔をしてくれちゃって!」
「今度は私が相手になるよ!」
「フン。まぁ、この二人と比べたら少しは手ごたえがありそうね」
ジャバウォックとガズンの相手をする事に飽きたのか、パメラはジェットブースターを点火させ、ファフニールに向かって飛んで行く。
パメラが近づいて来るのを見たファフニールはギガントパレードを捨ててミルバに指示を出し、城の西側へ移動する。
逃げるファフニールを見て、パメラはジェットブースターの出力を上げた。するとそこへファフニールの相手をしていたパルメが空を飛んで現れ、離れていたサンダーバード姉妹が合流する。
「パルメ、まだ始末できてなかったの? らしくないわね」
「ゴメン、アイツちょこまかと動き回ってさぁ」
「まぁ、動き回って倒せないのなら二人で仕留めましょう。アイツは七竜将の中でも最も攻撃力が高いから、先に始末しておいた方がいいわ」
「OK!」
サンダーバード姉妹は先にファフニールを仕留める為にジェットブースターを加速し、ファフニールの後を追った。
ファフニールはミルバに乗りながら西側にある庭園に入り込んだ。そこは長い薔薇のアーチやガーデンテーブルなどが大量に置かれてた障害物の多い場所だった。ファフニールを乗せたミルバは庭園に飛び込み、障害物の間を走って行く。サンダーバード姉妹は低空飛行でミルバの後を追いかける。
「本当にちょこまかと動く奴ね!」
「どうするの? これだけ障害物が多いと思う様の飛べないわよ」
「なら、二手に分かれて庭園の端へ追い込むわよ!」
パメラとパルメはファフニールを庭園の端へ追い込む為に分かれる。パメラがファフニールの後を追い、パルメはファフニールが逃げる先へ回り込もうと移動した。
庭園の中を逃げ回るファフニールにパメラは電撃を放ち攻撃し続け、ファフニールはミルバを操りその電撃をかわす。ファフニールの逃げる先へ回り込んだパルメも電撃を放つ。だが二人の電撃はファフニールには当たらず、庭園の花壇やベンチなどを次々に破壊していき、庭園は形を変えていく。
「ミーちゃん、急いで!」
追って来るパメラを見てファフニールはミルバに速く走るよう指示を出した。ミルバもファフニールの言葉を理解しているのか彼女の言われた通りに速く、そして複雑に庭園を駆け抜ける。
「チッ! あのガキ!」
攻撃してこず、逃げてばかりいるファフニールにイライラしてきたパメラはジェットブースターの出力を上げて速度を上げる。パメラがスピードを上げるとファフニールとミルバは薔薇のアーチの中へ駆け込み、パメラもその後を追う。
その頃、パルメは庭園の中で一番高い木の上からファフニールを探していた。
「何処に行ったの……ッ!」
パルメは薔薇のアーチの入口で止まっているファフニールを確認する。
「見つけたわよ!」
ファフニールを見つけたパルメはファフニールを捕まえる為に彼女に向かって飛んで行く。すると、パルメの姿を確認したファフニールがミルバの背中をポンと軽く叩く。するとミルバはファフニールを乗せたまま前に跳んでその場から移動した。
「今更移動しても無駄よ!」
パルメはファフニールを目で追いながら向きを変えようとする。だが次の瞬間、薔薇のアーチの中からパメラが姿を現した。
「なぁっ!? パルメェ!」
「お姉ちゃん!」
自分に向かって来るパルメといきなり出て来たパメラを見てサンダーバード姉妹はお互いに驚き声を上げる。二人の位置と移動速度から、完全に衝突コースだった。そして電気を纏う双子の機械鎧兵士は衝突する。その瞬間、二人を光が包み込み、大爆発を起こした。
爆発で起きた突風にファフニールとミルバは必死に踏みとどまる。そして突風が治まるとファフニールとミルバはサンダーバード姉妹の方を向く。パメラとパルメは全身が真っ黒に焦げており、炎に包まれながら息絶えていた。
「…………」
倒れているサンダーバード姉妹を見つめながらファフニールはニーズヘッグから聞いた言葉を思い出す。
『二人を接触させる?』
『そうだ。サンダーバード姉妹は機械鎧から電気を放って攻撃するんだろう? つまり、攻撃の際は機械鎧は帯電している状態になるって事だ』
『うんうん……』
『そして、奴等の電気はメトリクスハートから作られた強力な物、言ってみればサンダーバード姉妹の体は強力な電極みたいなものだ』
『つまり?』
『強力な二つの電極が接触すればショートを起こし、その中心や近くにある物体は破壊されてしまう。帯電している奴等の体が触れ合えばそれと同じことが起きるかもしれない』
『あの二人が触れ合えば、あの二人を倒す事ができるの?』
『それは分からない。さっきも言った通り、俺の予測で考えた作戦だ。成功しなければお前達は不利になるかもしれない……』
ニーズヘッグから教えてもらった作戦が上手く行き、ファフニールはホッとする。そんなファフニールの頬をミルバは優しく舐めた。ファフニールもミルバの頭をそっと撫でる。
「フゥ、今回ばかりは本当に危なかった……もし、ニーズヘッグに聞いていなければ……」
ファフニールが安心していると、突然城の屋上から爆発音が聞こえ、驚いたファフニールはフッと顔を上げる。
「な、何っ!?」
屋上で何か起きたのかとファフニールは緊迫した表情で城を見上げる。ファフニールから離れた所にいるジャバウォックとガズンも同じように城を見ていた。
ニーズヘッグのアドバイスでサンダーバード姉妹を倒す事ができたファフニール。だが、戦いが終わった直後に城の屋上で爆発が起きる。その爆発は後にファフニールや他の者達に大きな衝撃を与えるものなるのだった。




