第三百一話 驚きの援軍! 戦況が変わる瞬間
城を制圧する為に街道を走るヴリトラチームの前に機械鎧怪物を従えたBL兵達が現れ、ヴリトラ達を取り囲む。更にパリーエの部隊がいる東門へ救援に向かったオロチとラランの前にも機械鎧怪物と化したバンディットウルフが現れる。町へ突入でき、一気に戦況が変わったと思った直後に追い込まれてしまうヴリトラ達は機械鎧怪物達をどう乗り切るのだろうか。
ヴリトラチームとオロチチームが機械鎧怪物と遭遇している頃、西門の救援に向かっていたリンドブルムとジーニアスは白竜遊撃隊、闘獣戦士隊、そして同盟軍の小隊を率いて西門前と城壁上の防衛隊を一掃し、同盟軍を町の中へ導いていた。リンドブルムの銃撃と闘獣戦士隊が操るグリフォン達によって防衛隊やグリフォン空撃隊は一掃され、西門の内側に待機していた旧オラクル兵と帝国兵の部隊も片付けて西門を開き、同盟軍は町の中になだれ込んだ。それにより、旧オラクル兵や帝国兵達は一斉に敗走し、西門正面前は簡単に制圧された。
「何とか敵は一掃したね」
「これで町の攻略も楽になるのだ」
西門の上空から正門前の広場を見下ろすジーニアスのその背中に乗って同じように見下ろしているリンドブルム。その周りではグリフォンに乗る闘獣戦士隊の姿もあった。
地上では同盟軍が町を攻略をする為の部隊分けをしている姿があり、既に幾つかの部隊が編成を終えて町の制圧の為に出発しようとしていた。
「リンドブルム殿、この後はどうするのだ?」
「とりあえず僕達はこのまま西門の部隊の人達と一緒に町を攻略していこう。彼等をブラッド・レクイエムの部隊から守るのが僕達の役目でもあるからね」
「分かったのだ。とりあえず、上空から周囲を見回して、ブラッド・レクイエムの部隊を見つけたらそこへ向かうのだ」
「うん、そうしよう」
背中に乗るリンドブルムと今後の事を話しあったジーニアスは竜翼を広げて西門周辺を調べようとする。だがリンドブルム達が移動しようとした時、西門から数百m離れた位置から同盟軍兵の悲鳴が聞こえてきた。
悲鳴を聞いたリンドブルムとジーニアスはフッと悲鳴の聞こえた方を向く、表情を鋭くする。
「何なのだ、今の悲鳴は!?」
「分からないけど、何か遭ったのは確かだね。行ってみよう!」
「分かったのだ!」
「皆さんはこのまま此処に残って同盟軍の人達と一緒に町の攻略に当たってください!」
リンドブルムは周りにいる闘獣戦士隊に指示を出して地上で待機している白竜遊撃隊の騎士達を連れ、悲鳴の聞こえた方へ向かった。
悲鳴の聞こえた所へ着くと、そこは広めの街道で、その中心には数人の同盟軍兵が倒れている姿があった。その全員の体には大きな引っ掻いた様な傷が付いており、即死の状態だった。ジーニアスが地上に降りるとリンドブルムもジーニアスの背中から降りて同盟軍兵の遺体に近づき傷を調べる。そこへ遅れて来た白竜遊撃隊の騎士も到着し、倒れている同盟軍兵の遺体を見て表情を固めた。
「な、何だよこりゃあ……」
「あんなデッカイ傷、剣や斧なんかじゃ付けられないぞ?」
「じゃ、じゃあ、一体誰が……」
「静かにしてください。もしかしたら、まだ近くに傷を付けた犯人がいるかもしれませんよ?」
リンドブルムの言葉に白竜遊撃隊の騎士は体に緊張を走らせ、銃器を構えながら周りを警戒する。騎士達に注意をしたリンドブルムはもう一度遺体を確認し、傷の大きさや深さなどを細かく調べる。普通の子供ならできない事だが、機械鎧兵士であるリンドブルムには調べる事など簡単だった。
「……どうなのだ? 何か分かったのだ?」
ジーニアスがリンドブルムに顔を近づけて尋ねると、リンドブルムはライトソドムをホルスターから抜いて周囲の警戒し始めた。
「……傷の深さと大きさから、まず人間の仕業じゃないね。何かこう……大きめの獣が付けた様な傷だよ、これは……」
「獣? グリフォンなのだ?」
「ううん、グリフォンの仕業なら空を飛んでいる時に気付くはずだよ? でも、此処に来るまでグリフォンの姿は確認できなかった。つまり、グリフォン以外に大きな獣がこの町にいるって事になるよ」
「グリフォン以外の大きな獣……」
どんな獣がいるのか、ジーニアスが目を閉じて考えていると、また何処からか同盟軍兵の悲鳴が聞こえ、リンドブルム達は一斉に反応した。すると、街道の隅にある細い道から二人の同盟軍兵が飛び出し、リンドブルム達は一斉に銃器を向ける。
だが、リンドブルムはすぐにライトソドムを下ろして同盟軍兵達を見つめた。同盟軍兵達は明らかに様子がおかしい。まるで何かから逃げている様に見えた。
「どうしたんです!?」
リンドブルムは同盟軍兵達の下へ駆け寄り、何が遭ったのかを尋ねる。すると同盟軍兵の一人が自分達が飛び出してきた細道を指差す。すると細道の奥から何かがリンドブルムに向かって飛んできて、リンドブルムは咄嗟に横へ飛んで回避する。同盟軍兵達も姿勢を低くしたまま丸まっていた為、飛んで来た物に当たる事は無かった。
飛んで来た物は民家の壁に激突した後に地面に落ちる。よく見ると、それは原型が分からないくらいズタズタにされた同盟軍兵の死体だった。
死体を見た白竜遊撃隊の騎士達はショックのあまり声を上げ、中には気分を悪くして座り込む者もいる。ジーニアスも目を丸くしながら死体を見ており、リンドブルムも死体を見ると危険だと感じてライトソドムだけでなく、ダークゴモラも抜いて細道の奥を狙う。すると、暗い奥から獣の唸り声の様な音が聞こえ、リンドブルムは更に警戒心を強くする。二人の同盟軍兵は唸り声を聞いた途端に慌ててその場から走って逃げてしまう。
すると、細道の奥から一匹のグリードベアが姿を現し、リンドブルムやジーニアス達を見て再び唸り声を上げた。
「グリードベア、また厄介なのが出て来たなぁ……しかも体中に機械鎧を纏ってるし……」
リンドブルムはグリードベアの足や背中の一部が機械鎧になっているのを見て目を鋭くした。白竜遊撃隊も現れた猛獣を目にして驚きながらMP7やベレッタ90を構えた。
「まさか、いきなり機械鎧怪物が出て来るとはねぇ……でも、一匹ぐらいならなんとかなるかな?」
敵が一匹だけなら自分一人でも余裕で倒せると考えるリンドブルム。だが現実はそれを無情に打ち砕いた。
リンドブルムがグリードベアを見て愛銃二丁を構えていると、グリードベアの後ろから別のグリードベアが姿を現した。しかもそのグリードベアも機械鎧を纏っており、それを見たリンドブルムの表情が若干変わる。
「もう一匹? 二匹が相手だと、少しキツイかなぁ?」
「リ、リンドブルム殿!」
「!?」
突如ジーニアスが自分を呼ぶ声にリンドブルムは振り返る。そこには何かを見つけて驚きの表情を浮かべるジーニアスの姿があり、リンドブルムはジーニアスの視線の先を見た。そこにはまた別のグリードベアの姿があり、ジーニアスや白竜遊撃隊の騎士達を睨んで唸っている姿があった。
また出現したグリードベアに流石にリンドブルムは驚き目を丸くした。
「ちょ、ちょっとちょっと! 何なの、このアニメで追いつめられている主人公に追い打ちをかける様な展開は!?」
次々に出て来るグリードベアに流石のリンドブルムも思わず声を上げる。ジーニアスは街道の端に移動し、白竜遊撃隊も銃器を構えながらジーニアスにくっつく様に後退していた。
リンドブルムは自分達を取り囲む三匹の機械鎧怪物の位置と仲間の位置、それぞれを確認すると一度深呼吸して落ち着く。そしてジーニアス達の方を向いて指示を出した。
「ジーニアス、僕達がグリードベアを何とかするから、君は上空から攻撃を仕掛けて。あと、他に猛獣を見つけたらすぐに報告して!」
「わ、分かったのだ!」
「皆さん! コイツ等は普通の猛獣とは違います。近づかずに銃器を使って離れて攻撃してください!」
幼くも部隊の中で一番冷静で的確な指示を出すリンドブルム。白竜遊撃隊はそんな外見とは裏腹に自分達以上の精神力を持つリンドブルムを見て感服していた。
白竜遊撃隊がリンドブルムをジッと見ていると、ジーニアスは大きく竜翼を広げて飛び上がり、それを確認したリンドブルムもライトソドムとダークゴモラを構えて一番近くのグリードベアを睨み付ける。白竜遊撃隊も遅れて銃器を構えて、グリードベア達を狙う。
「全員、撃ちまくってください! 全弾撃ち尽くしてもいいですから、生き残る事だけを考えてください!」
リンドブルムが白竜遊撃隊に死ぬなと告げ、白竜遊撃隊も声を揃えて返事をする。そして、その直後に三匹のグリードベアはリンドブルム達に襲い掛かった。
――――――
その頃、ヴリトラ達は城へ向かう為の街道の真ん中で自分達を取り囲むBL兵は機械鎧怪物達と激しい戦いを繰り広げていた。
空中から急降下して来るデビルファルコンの攻撃をギリギリでかわすヴリトラは攻撃をかわてすぐに森羅で反撃する。タイミングを合わせて攻撃した事で森羅はデビルファルコンの片羽を切り落とし、デビルファルコンを倒す事に成功した。だが、それでもまだ一羽しか倒せていない。
ラピュス達もデビルファルコンだけでなく、グリードベアの相手をしている。グリードベアには何度も攻撃してようやく倒し事ができたが、倒せたのは一匹だけ。近くを飛び回るデビルファルコンはまだ一羽も倒せなかった。
「クソッ! 速すぎて全然当たらない!」
「ブラッド・レクイエムも前に俺達がグリードベアを倒した事で機動力の高い猛獣を選び、機械鎧怪物に改造したんだろう!」
背中を合わせながら周りを飛び回るデビルファルコンを睨むラピュスとジャバウォック。グリードベアと違ってパワーが低い分、スピードが高いデビルファルコンを相手に完全に押されていた。バーナーキャノンや火炎放射器を使って攻撃しようとするも、デビルファルコンが内蔵兵器を使う前に二人に攻撃を仕掛けてそれを妨害して来る。まるで二人が内蔵兵器を使う事が分かるかのように。
ファフニールはグリードベアの前足攻撃をギガントパレードで防ぎながら反撃して戦っているが、機械鎧怪物化したグリードベアにはギガントパレードの攻撃も殆ど効果は無く苦戦している。どうやら斬撃と違って打撃には強いらしい。そんなファフニールを挟んでガルバとミルバがグリードベアを睨みつけながら唸っていた。
「つ、強い……この熊さん、ギガントパレードで殴られたのにピンピンしてる。脇腹を殴った時なんて、肋骨とか折れてるはずなのに……」
まるで痛みを感じていない様子のグリードベアにファフニールは不気味さを感じながらギガントパレードを構える。ガルバとミルバはファフニールを守るかのように彼女の前と後ろの回り込んでグリードベアを睨み続けた。
アリスとガズンも七竜将から渡されたMP7や電撃鞭を使ってグリードベアやデビルファルコンと戦っている。ガズンの電撃鞭がグリードベアの体に命中し、その体に傷を残す。電気を纏った鞭の攻撃は強烈で普通の人間なら即死するほどの威力だ。グリードベアにも効果はあるようだが、それでもなかなか倒れない。
「おいおい、何なんだよ、このグリードベアは? この鞭の攻撃を何度も受けたのに倒れねぇなんて、本当に怪物じゃねぇか!」
「そうですよ! 彼等はもう猛獣ではありません! 本当に怪物になっちゃったんですっ!」
驚くガズンの隣でアリサが空を飛び回るデビルファルコンに向けてMP7を乱射する。飛び回っている敵に当てるのは難しく、アリサの銃撃はまだデビルファルコンを命中していなかった。
周りでも白竜遊撃隊の騎士達が銃器を撃ちながらグリードベアと戦っているがまだ一体も倒せていない。すると、白竜遊撃隊の近くで弓矢を放ちながら戦っていた同盟軍兵達にデビルファルコンが襲い掛かり、鋭い足の爪でその体を引き裂いた。
「ぎゃあああああ!」
断末魔を上げながら倒れる一人の同盟軍兵。その姿を見た他の同盟軍兵は仲間が殺された事で混乱し、弓矢や剣を落とす。そこへグリードベアが襲い掛かり前足の爪で同盟軍兵達の体を切り裂く。更に民家の屋根の上にいる三人のBL兵が同盟軍兵に向かってMP7を乱射、数人の同盟軍兵を蜂の巣にした。
同行した同盟軍兵が次々に倒され行く姿を見てヴリトラの表情に焦りが出始める。このままでは全滅してしまう。そう感じたヴリトラは必死に起死回生の策を考えた。
(クソォ、何とか数匹は倒せたが、それでもまだかなりの数がいる。このままじゃ、城に辿り着く前に全滅しちまうぞ。どうする……)
ヴリトラが目の前にいるグリードベアを睨みながら作戦を考えた。そんな時、目の前のグリードベアに集中していたヴリトラの頭上からデビルファルコンが襲い掛かって来る。ヴリトラは目の前のグリードベアを警戒しながら作戦を練っていた為、頭上の注意が疎かになっていた。
「ヴリトラ、上だ!」
「……ッ! しまった!」
ラピュスの言葉で上を向くヴリトラだったが、既に回避できない距離までデビルファルコンの接近を許してしまっていた。もう逃げられない、ヴリトラがそう感じて覚悟を決めた次の瞬間、何処からか銃声が聞こえ、それと同時にデビルファルコンの体を無数の銃弾が命中する。
突然の銃撃を受けて絶命したデビルファルコンは銃撃の勢いで飛ばされ、ヴリトラから少し離れた所の地面に落下する。
何が起きたのか分からないヴリトラは呆然としながら動かなくなったデビルファルコンを見つめる。すると再び銃声が聞こえ、今度はヴリトラ達を囲むグリードベアや他のデビルファルコンが銃撃を受けて倒れた。
「な、何だ? 何が起きてるんだ?」
驚きながら倒れる機械鎧怪物達を見つめるヴリトラ。ラピュス達も突然の銃器で混乱しているのか驚いたままの状態だった。
民家の上から機械鎧怪物達がやられる光景を見たBL兵達も驚いている。すると、BL兵がいる屋根に何者かが上がって来てBL兵達を睨み付けた。モスグリーンのタクティカルベストを着て、頭にはタクティカルメット、そして暗視ゴーグルを付けた三人の兵士で、手には突撃銃の「IMI ガリル」が握られている。明らかにこの世界の兵士ではなく、ブラッド・レクイエム社の兵士でもない。
BL兵達は突然現れた所属不明の兵士達に向けてMP7を向けて発砲しようとした。だが彼等が引き金を引く前に所属不明兵達は素早くBL兵達の後ろに回り込み、ガリルで背中を撃ち抜く。三人のBL兵は何も出来ずに倒れ、民家の屋根から転がり落ちた。
「な、何だ、アイツ等は?」
「ブラッド・レクイエムではないのか?」
一瞬でBL兵達を倒してしまった所属不明兵達を見上げて驚くジャバウォックとラピュス。すると、所属不明兵達は民家の屋根から飛び下り見事に着地した。その光景を見てヴリトラ達は更に驚く。それもそのはずだ、彼等が飛び下りた民家は約4mの高さで、そこから飛び下りて何事も無かったかのようにしているのだから。
所属不明兵は驚くヴリトラ達にゆっくりと違づいて行き、ヴリトラ達はそんな兵士達を見て警戒する。一人の所属不明兵がヴリトラの前まで来るとガリルを下ろして敬礼をした。その姿にヴリトラは更に驚き目を丸くする。
「ヴリトラ殿、お怪我はありませんぁ?」
「え? ……あ、ああ、大丈夫だ。……アンタ達は?」
「我々はアレクシア社長の命を受けて救援に参った機械鎧兵士部隊です」
「アレクシア社長……えっ? 師匠の!?」
目の前にいる兵士達が機械鎧兵士でしかも師であるアレクシアの命令で救援に来たと聞かされたヴリトラは思わず興奮する。勿論、それを聞いていたラピュス、ジャバウォック、ファフニールも驚いていた。
「そ、それじゃあ、アンタ達はもしかして……」
「ハイ。我々はタイカベル・リーベルト社の者です」
「……ええ~~~っ!?」
ヴリトラは目の前にいるのがタイカベル・リーベルト社と知り、遂に声を上げた。ラピュス達は驚きのあまり声も出ずにTR兵を見つめている。アリサとガズン、白竜遊撃隊や同盟軍兵達はなぜヴリトラ達が此処まで驚いているのか分からずに黙って会話を見ていた。
声を上げるヴリトラを見てTR兵達は苦笑いを浮かべる。そして、落ち着きを取り戻したヴリトラは一度深呼吸をしてもう一度TR兵と向き合った。
「落ち着きましたか?」
「あ、ああ……でも、どうしてアンタ達がこっちにいるんだ?」
「説明は後です。まずはこの町を制圧し、戦いを終わらせることが重要かと」
「た、確かにそうだな……ところで、この町に来ているのはアンタ達だけなのか?」
「いいえ、まだ大勢の仲間がいます。既に他の部隊が別の所で戦っている部隊の救援に向かっています」
TR兵は小さく笑いながらまだ仲間がいる事をヴリトラ達に伝える。それを聞いたヴリトラは嬉しさと頼もしさを感じてニッ笑みを浮かべた。
――――――
同時刻、東門前の広場でも戦況が大きく変化していた。同盟軍の前には彼等に背を向けている数人のTR兵の姿があり、ガリルや特殊警棒を手に持って倒れている機械鎧怪物と化したバンディットウルフを見下ろしている姿がある。どうやら彼等がバンディットウルフ達と戦い、既に戦闘が終わった後のようだ。
突然現れたバンディットウルフ達を倒した奇妙な姿をする兵士達に同盟軍兵達はボーっとしている。そこへオロチとラランがやって来てTR兵達の前にやって来た。
「お前達……」
「……七竜将の方ですね?」
「そうだが……?」
振り返り、オロチの身分を確認するTR兵をオロチはジッと見つめながら低い声で返事をする。その隣に立っているラランも警戒するような視線でTR兵を見つめていた。
「我々はタイカベル・リーベルト社より派遣された救援部隊です。現時刻より、我々も旧オラクル共和国の解放に協力します」
「何? タイカベル・リーベルトだと? なぜこの世界にいる……?」
「ご説明は後程、それよりも、こちらをご覧ください」
TR兵は携帯端末を取り出し、その画面をオロチに見せる。そこには細かい部隊編成とどの部隊が何処へ向かったのかが映し出され、それを見たオロチは表情を変えずに黙って見た。
ラランも何を見ているのか気になり、背伸びをして画面を見ようとするが全然見えなかった。
しばらくして情報をチェックし終えたオロチは再びTR兵の方を向く。
「……お前達がタイカベル・リーベルトの人間であることは分かった」
「ありがとうございまず」
「なら、同盟軍の援護と町の制圧に手を貸してもらうが、構わないな……?」
「ハイ、この町に着き次第、七竜将の指揮下に入るよう社長に言われておりますので」
「分かった。なら、私達はこのまま町の制圧に入る。まだこの町にはさっきの様な怪物がいるはずだ、気を付けろ……?」
「了解です!」
オロチは斬月を肩に担ぐとラランに確認した内容を伝える。
二人が話をしていると東門の上空をタイカベル・リーベルト社の攻撃ヘリ「AH-1 コブラ」が三機通過し、街の方へ飛んで行く。
頭上を飛ぶ鉄の塊にパリーエや同盟軍は驚きのあまり言葉を失い、戦う事も忘れていた。だがそんな同盟軍兵達にいち早く我に返ったパリーエが大きな声で呼びかける。
「お前達! 今は戦争中だぞ。そんな風にボーっとしていると敵にやられる。驚くのはこの戦いが終わってからにしろ!」
パリーエの言葉に同盟軍は我に返ってパリーエの方を向くと武器を掲げて返事をする。
同盟軍が元に戻ったのを確認したオロチとラランも自分の武器を構えながら街を見る。
「タイカベル・リーベルトが現れた事はブラッド・レクイエムにとっては予想外のはずだ。恐らく、隙を見て逃げ出すだろう……」
「……投降はしない?」
「ああ、しないだろう。そして、上手く逃げ出したら帝国にある本部にこの事を伝えるはずだ。そうなったらのちの戦いで面倒な事になる。そうなる前に、敵の幹部を捕らえる……」
「……ヴリトラや隊長には知らせる?」
「いや、恐らくヴリトラ達のチームにも援軍が向かってるはずだ。わざわざ私が連絡を入れなくてもヴリトラならそう考えるだろう……」
「……じゃあ、私達は……」
「このまま制圧を続ける……」
「……分かった」
オロチとラランはTR兵達の間を通り、街の奥へ進軍する。TR兵達も遅れて二人について行き、白竜遊撃隊も続いた。強力な戦力が合流した事で同盟軍の勝率は一気に高まる。戦況が大きく傾いた瞬間だった。
機械鎧怪物達に追い込まれて窮地に立たされたヴリトラ達をタイカベル・リーベルト社が救う。彼等と合流した事で旧オラクル共和国解放の成功率が一気に高まり、同盟軍の士気も一気に上昇した。ヴリトラ達の快進撃が今始まる。




