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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十七章~獣が巣くう共和国~
302/333

第三百話  オルトロズムと言う獣の檻


 オルトロズムに突入したヴリトラ達はすぐに首都制圧の為の行動を開始する。そして城ではジャンヌが部下の機械鎧兵士達に出撃を命じ、激戦の始まりは徐々に近づいて行く。果たしたヴリトラ達はどうオルトロズムを攻略するつもりなのだろうか。

 南門でリンドブルム達と分かれたヴリトラ達は城へと続く街道を走っていた。途中で何人もの旧オラクル兵や帝国兵と遭遇し戦闘があったが、ヴリトラ達の前では普通の兵士など敵ではなく、順調に進んで行く。


「此処までは順調だな」

「この調子ならすぐにお城に着けるかもね」


 ガルバとミルバに乗っているガズンとファフニールは強敵と遭遇する事も無く城へ近づいて行く事に余裕を見せる。だが、そんな中で戦闘を走るヴリトラとその隣にいるラピュスは違和感を感じていた。


「……ヴリトラ、どう思う?」

「妙だな。此処は敵の首都なんだろう? なのに正門と城壁に比べて守りが薄すぎる。しかも所と周辺の町から呼び戻したブラッド・レクイエムの部隊もいるはずなのにまだ一度も遭遇していないなんて……」

「城の守りに全ての戦力を集めているんじゃないのか?」

「だとしても、町の防衛に回す戦力ぐらいはあるはずだ。いくら城の守りを固めても町全体を制圧されてしまえば逃げ場を失い、いずれは突入されて終わっちまう」

「と、いう事は……」

「……町には機械鎧兵士以外の強力な戦力があるという事だ」

「それは……」


 それは何か、とラピュスが尋ねようとした時、ヴリトラとラピュスの足元を何者かが銃撃してきた。


「ッ! 止まれ!」


 突然の銃撃に驚いたヴリトラとラピュスは急停止し、すぐに後ろにいるファフニール達を止めた。いきない止まったヴリトラとラピュスにファフニール達も驚いている。

 

「どうしたの、二人とも?」

「……敵さんのご登場だ。それも今度は厄介な敵だぞ」


 ヴリトラの言葉にファフニールは表情を鋭くし、ミルバから降りるとギガントパレードを構えて周囲を警戒した。

 アリサやガズン達もヴリトラ達の咄嗟に武器を構えて円陣を組む。ヴリトラ達がいる街道はとても静かで彼等以外は誰もいなかった。


「……おい、誰もいねぇぞ。勘違いじゃねぇのか?」


 ガズンが電撃鞭スパークテイルを構えながらヴリトラの方を向いて尋ねるとファフニールがガズンの隣まで移動し、真剣な表情のまま首を横に振る。


「勘違いじゃないよ。誰かがいる……そして私達に凄い殺意を向けている」

「わ、分かるのか?」


 ファフニールはガズンの問いかけに頷く。ガズンはこんな幼い少女が敵の気配を感じ取れる事にかなり驚いていた。普通なら誰も信じないだろうが、七竜将の力を知っている者なら信じてしまうのだ。勿論、アリサや白竜遊撃隊の騎士達も信じている。

 ヴリトラ達が武器を構えて辺りを警戒していると、民家の屋根の上から三つの人影が飛び下りてヴリトラ達の前に着地する。現れた人影を見たヴリトラ達は一斉に武器を構えた。飛び出してきたのはMP7を持つ三人のBL兵で着地したBL兵達はすぐにMP7の銃口をヴリトラ達に向ける。


「やっぱりブラッド・レクイエムか」

「だが、変だぞ? 私達を相手にするには人数が少なすぎる」


 機械鎧兵士であるヴリトラ達を相手にするのに一般のBL兵がたった三人しかいないのはおかしいとラピュスはジッとBL兵達を見つめる。

 今まで、七竜将とBL兵が戦う時、敵は最低でも八人はいた。それなのに今回はたったの三人、あまりにも少なすぎる。しかも今のヴリトラ達のは大勢の仲間がいるのだ。いくら機械鎧兵士であるBL兵でも圧倒的に不利だ。

 敵の数の少なさにヴリトラ達は不審に思っていると、BL兵の一人がMP7を構えたまま左手を上げる。すると、何処からか鳥の鳴き声の様な音が聞こえ、ヴリトラ達はフッと空を見上げた。


「何だ、今の鳴き声?」

「……あっ! あれ見てください!」


 何かを見つけたアリサが空を指差して声を上げる。ヴリトラ達がアリサの指差す場所を見ると、暗い夜の空から五匹の鳥らしき生き物が急降下して来た。外見から鷲の様な鳥だが、その翼には小型ミサイルが取り付けられており、両足の爪も鋭い刃物の様になっている。何より、その鳥は2mはある巨大な鳥だった。

 巨大な鳥はBL兵達の頭上まで降りて来ると大きな翼を広げながらヴリトラ達を鋭い目で睨む。突如現れた五匹の鳥にヴリトラ達は一瞬驚くもすぐに武器を構え直して警戒する。


「な、何だよ、この鳥は!」

「この鳥は……デビルファルコンだ!」

「デビルファルコン?」


 鳥の正体を知っているラピュスにヴリトラは振り返り訊き返した。

 ラピュスはデビルファルコンを睨みながらアゾットを強く握る。


「群れになって狩りをする非常に賢いモンスターだ。主に馬や牛などの動物を襲って餌にするが、時には人間の子供も連れ去って食べる危険な存在だ」

「マジかよ……」

「ああぁ、それに……」


 ラピュスはデビルファルコンの姿を見て更に表情を鋭くする。

 デビルファルコン達はブラッド・レクイエム社に捕らえられて機械鎧怪物に改造されて翼や足に強力な武器を付けられている。ただでさえ凶暴なモンスターが改造されて機械鎧を纏ったとなれば、かなり厄介だ。それに気づいたラピュスはほんの少しだけ汗を流した。


「どうするんだ、ヴリトラ? デビルファルコンが機械鎧怪物になっていとなるとかなり厄介だぞ? 機械鎧兵士である私達でも勝てるかどうか……」


 不安そうな顔でヴリトラにどう戦うかラピュスは尋ねた。ところが、ヴリトラはラピュスの問いかけに答えず黙ってBL兵と飛んでいるデビルファルコンを見ている。

 ラピュスは返事をしないヴリトラを見て不思議そうな顔をする。今までのヴリトラなら例え戦場で危険な状態にあったとしてもちゃんと返事をして自分の意見を口にしてきた。だが、今はなぜか返事をしない。


「……ヴリトラ、どうしたんだ?」

「……ティアマット、こりゃあ、かなり厄介な状態だぜ?」

「厄介なのは分かっている。この状況をどうやって乗り切るのかと聞いているんだ」

「違う。俺が言っているのは今の状況の事じゃない……」

「え?」

「……今の状況よりも厄介になったと言っているんだ」

「は?どういう……」


 ヴリトラの言っている事の意味が理解できずにラピュスは小首を傾げる。すると、BL兵達の背後にある細道から何かが大きな影が現れ、それに気づいたラピュスやファフニール達に緊張が走る。

 しかも一つではない。街道のあちこちにある細道からその影は現れてヴリトラ達を取り囲んでいく。その数は五つ、ヴリトラ達は完全にその大きな影に囲まれてしまった。


「こ、今度は何ですか!?」

「暗くてよく見えないよぉ」


 取り囲む黒い影に驚くアリサと敵の姿が確認できずにムッとするファフニール。ガズンは舌打ちをしながら影を見つめ、ガルバとミルバは唸り声を上げながら威嚇していた。そして白竜遊撃隊の騎士達とヴリトラ体に付いて来た同盟軍兵達は怯え表情をしている。

 やがて、雲に隠れていた月が姿を見せて街道が月明りで照らされ、出て来た大きな影の正体も確認できるようになる。その正体は以前ヴリトラ達が戦った事のあるグリードベアだった。しかも、前に戦った時のように機械鎧を纏い機械鎧怪物となっている。

 更に別の機械鎧怪物が姿を現した現状にヴリトラ達の顔から余裕が消えた。


「デビルファルコンに続いて今度はグリードベアかよ……」

「確かに、こりゃあ厄介だな……」


 ヴリトラとジャバウォックはある意味でBL兵よりも厄介な敵に囲まれてしまった状況に低い声を出す。ファフニールはギガントパレードを強く握りながら一番近くにいるグリードベアを睨んでおり、ラピュスとガズンは予想外の状態に汗を掻き始める。一方でアリサ達は驚きのあまりヴリトラ達の後ろに隠れる様にして武器を構えていた。


「……これが機械鎧兵士が街に配備されていない理由って事か。確かにコイツ等がいれば機械鎧兵士がいなくても敵を簡単に倒せるだろうからな……」

「ヴリトラ、どうするんだ?」


 ジャバウォックがこれからどうするかを尋ねると、ヴリトラは森羅を構えながら目の前にいるBL兵達を睨んだ。


「決まってるだろう? コイツ等を倒して先へ進むんだよ。敵が厄介な機械鎧怪物だからと言って引き下がるわけにはいかねぇ。それに、コイツ等を此処で倒しておかないと他の部隊の奴等が襲われる可能性だってあるんだ」

「……ヘッ、お前ならそう言うと思ってたぜ」


 ジャバウォックもヴリトラと同じ考えだったのかニッと笑いながらグリードベアの一匹を見つめてデュランダルを構えた。


「た、倒すって、どうするんですか?」


 不安を隠せないアリサがヴリトラとジャバウォックに尋ねる。するとヴリトラは左上の装甲を動かして腕の中からマイクロ弾を出した。


「もったいぶらずに機械鎧の内蔵兵器をバンバン使って戦うんだよ。皆! お前達もケチらずに使いまくれ!? 今回はそうしないといけないぐらい厄介な状態なんだからな!」

「おう!」

「分かっている!」

「了解!」


 ヴリトラの言葉にジャバウォック、ラピュス、ファフニールが返事をし、機械鎧の内蔵兵器を起動させる。その姿を見たガズンは心の中で「コイツ等はまだ諦めてねぇ」と感じ、生き残れるかヴリトラ達に賭けてみたくなったのだろう。戦意の宿った表情を見せて電撃鞭を構えた。アリサも今まで七竜将と共に戦って生き残って来た時の事を思い出し、彼等といれば大丈夫だと騎士剣を構えた。

 白竜遊撃隊も自分達が持つ銃器を構えて戦闘態勢に入り、同盟軍兵達はまだ恐怖が残っているのか怯えた表情のまま武器を構える。

 全員が戦闘態勢に入ると、そのタイミングを見計らっていたのか、BL兵の一人が機械鎧怪物達に指示を出す。そして、デビルファルコンとグリードベアは一斉にヴリトラ達に襲い掛かった。


――――――


 一方、東門ではジラーフの町からやって来たパリーエの部隊が門の前で激戦を繰り広げていた。ヴリトラ達の様に強力な爆発物を持たない彼女の部隊はなかなか城壁を突破できずに苦戦を強いられている。梯子を掛けて城壁を越えようとするも、城壁の上の防衛隊やグリフォン空撃隊の攻撃を受けて城壁前で完全に足止めを食らっていた。

 城壁の上の防衛隊は東門の前にいる同盟軍兵達に向けて矢を放ち、狙われた同盟軍兵達は矢を受けて次々に倒れる。既に二十数人の同盟軍兵が矢やグリフォンの攻撃で命を失っていた。



「くううぅ! これほどの防御力とは!」


 部隊の後ろの方で指揮を執るパリーエは東門の守りに堅さに歯を噛みしめる。城壁の弓兵や空を飛んでいるグリフォンを倒そうと同盟軍も矢を放ち攻撃するがなかなか当たらない。敵の戦力を削る事ができず、こちらの戦力だけが削らる。パリーエにとって屈辱的な戦況と言えた。

 パリーエが城壁の上の防衛隊を怒りの籠った目で睨んでいると、ストラスタ公国の女性騎士がパリーエに駆け寄って来た。


「姫様! このままでは我が隊の被害は増すばかり、一度後退して他の門から突入した部隊に増援を要請しましょう!」

「ダメだ! そんな事をすればその隊の戦力が削られて進軍が困難になる。それにこの作戦は三方向から同時に攻撃を仕掛け、敵の戦力を分断させる作戦でもあるんだ。もしここで後退すればこちら側の戦力が南と西の方へ向かってしまう。私達だけでこの東門を突破するんだ」

「し、しかし……」


 女性騎士は戦況を確認し、今の戦力では東門は突破できないと感じる。パリーエも突破は難しいと分かってはいた。だが、此処で自分達が後退すれば他の二つの部隊が追い込まれてしまう。そうなれば作戦そのものが台無しになる。

 パリーエはどうすればこの戦況を打開できるのか、必死でその事を考える。すると、突如東門の方から爆発音が聞こえ、パリーエと女性騎士はフッと東門の方を向く。


「何だ、今の爆発音は!? 誰かが火薬を使ったのか?」

「いえ、我が隊は火薬を所有しておりません。しかも、今の爆発は門の外側ではなく、内側から起きたようです」

「内側だと?」


 なぜ内側、つまり町の中から爆発が起きたのか、パリーエは何が起きたのかを考える。だが、何も心当たりが無かった。

 そんな時、再び東門の内側から爆発が起き、東門前で待機していた旧オラクル兵や帝国兵達が爆発で吹き飛ばされながらの叫び声を上げる。

 東門前の広場からは爆発によって煙が上がり、その光景を広場の上空から眺めているオロチとラランの姿があった。どうやらさっきの爆発はオロチの機械鎧に内蔵されたマイクロ弾によるものだったようだ。


「何とか無事だったみたいだな、あの姫様の部隊は……」

「……間に合った」

「ああぁ。広場の前は粗方片付けたし、次は城壁の上の連中だ……」


 ラランを背負いながらオロチはジェットブースターの出力を上げて城壁の方へ移動し、城壁の上まで来ると背負っていたラランを下ろした。

 防衛隊の兵士達は突然城壁の上に現れたオロチとラランを見て驚き、ジッと彼女達を見つめる。二人はそんな兵士達の視線を気にもせずに斬月と突撃槍を握った。


「このまま城壁の上の敵を一掃する。私が敵に突っ込む。お前は私が倒し損ねた敵を倒せ……」

「……分かった」


 役割が決まるとオロチは斬月を構えて防衛隊に向かって走り出し、ラランもその後に続く。

 向かって来るオロチとラランを見て防衛隊は驚くがすぐに武器を構えて応戦しようとする。だがオロチは素早く防衛隊の懐内に入り込み、斬月を振り回して防衛隊の兵士達を倒していく。周りにいる敵兵を全て倒すと、オロチは次の敵を倒す為に敵に向かって走り出す。

 走りながら斬月を振り回し、次々と防衛隊の兵士を倒していくオロチ。オロチの攻撃を運よく凌いだ防衛隊の兵士達は驚きの顔で走って行くオロチを見つめている。だがそこへラランが突撃槍を握って走ってくる姿を見て、慌てて体勢を立て直そうとしたが間に合わず、突撃槍の突きをその身に受けて倒れた。

 城壁の上で次々と防衛隊を倒していくオロチとラランの姿にパリーエ達は呆然としていた。立った二人の増援で自分達を苦しめていた防衛隊が体勢を崩し、次々に倒されていくのだから無理も無い。


「あれは、確か七竜将の……」

「たった二人で城壁の上の敵全員を相手に押している……何者なのですか、彼女達は……」

「噂では帝国に手を貸しているブラッド・レクイエムに唯一対抗できる力もつ者達だとか……」


 パリーエと女性騎士が城壁の上で暴れているオロチとラランを見ながら話しをしている。すると、突然正門がゆっくりと開き出し、正門前に集まっていた同盟軍兵達が驚く。


「み、見ろ!」

「正門が、開き出した?」


 低い音を立てながら開いて行く正門。同盟軍兵士達が開く正門の隙間から中をのぞくと、正門の向こう側にはオロチとラランが連れて来た白竜遊撃隊の騎士と大勢の同盟軍兵士の姿があり、同盟軍兵士に簡単な挨拶をした。

 同盟軍兵達はなぜ正門の内側に仲間がいるのか、不思議に思いながら正門の中を覗き込む。そこには大勢の旧オラクル兵や帝国兵が倒れている姿があった。中には同盟軍兵に囲まれて拘束されている者達もいる。彼等はオロチとラランが城壁の防衛隊を攻撃した直後に東門前に到着し、残っている敵兵達を一掃して東門前の広場を確保したのだ。

 仲間の救援が来たおかげで自分達は東門を突破できる。その事が同盟軍兵達に大きな喜びを与え、東門前の同盟軍は一斉に声を上げた。

 パリーエも正門が開き、同盟軍兵達が喜ぶ姿を見て状況を理解し、笑みを浮かべていた。


「開いた……七竜将が門を開いたんだっ! すぐに全員を町へ突入させろ!」

「ハ、ハイ!」


 女性騎士は慌てて同盟軍兵達に突入するよう知らせに行く。パリーエは城壁の上の防衛隊を全て倒し、同盟軍を見下ろしているオロチとラランを見つめる。


「……ありがとう、感謝する!」


 遠くにいる二人に礼を言うとパリーエも町に突入する為に正門へ向かって走り出した。

 城壁の上では敵兵を一掃したオロチおラランが城壁の下にいる同盟軍兵士を無表情で見下ろしている姿がある。周りには倒れている防衛隊の兵士の死体は傷だらけなのに、オロチとラランは全くの無傷だった。


「これで東側の部隊も無事に突入できたな……」

「……この後はどうするの?」

「私達はこのまま東側の戦力と一緒に町を制圧しながら城へ向かう。いつブラッド・レクイエムの戦力が現れるか分からないからな……」

「……分かった」


 次に何をするのか聞いたラランは自分の突撃槍を肩に担いで城壁から降りる為の階段へ向かおうとした。だが、その時、突然正門の内側から悲鳴が聞こえ、オロチとラランは正門前の広場を見下ろす。広場には既に大勢の同盟軍兵が入ってきており、彼等は何かを見て怯えている様な表情をしていた。

 同盟軍兵達の視線の先には以前にヴリトラ達が遭遇した猛獣のバンディットウルフの姿があり、同盟軍兵達を睨んで唸る声を上げている。その数は八匹、しかも彼等の四本の足の爪は鋼鉄の爪となっており、背中には機銃が取り付けられていた。

 

「あれは、バンディットウルフ。しかも体のあちこちが機械鎧している……」

「……もしかして、機械鎧?」

「ああ、間違いないだろう。あれが機械鎧怪物になった猛獣だ……」


 BL兵よりも厄介な相手がいきなり出て来た事でオロチとラランは驚き表情を鋭くする。

 同盟軍は突然現れた機械鎧怪物に驚き武器を構えながら後退する。すると救援に駆けつけて来た白竜遊撃隊が同盟軍兵達の前に出てMP7やベレッタ90を構えた。


「コイツ等が、隊長達が言っていた機械鎧を纏った猛獣達だ。普通に兵士では倒せない。俺達が相手をするんだ!」

「「「「「おおぉ!」」」」」


 白竜遊撃隊の男性騎士が周りの仲間達に声をかけ、仲間達も揃って返事をする。バンディットウルフ達は唸り声を上げながら白竜遊撃隊を睨み付け、ゆっくりと移動を始める。白竜遊撃隊もいつ攻撃されてもいいように警戒心を強くした。


「……オロチ」

「ああぁ、これは面倒な事になったな……」


 城壁の上から様子を伺っているオロチは城壁から飛び下り、ラランも急いで会談へ向かって走る。東門を突破できた直後に機械鎧怪物と遭遇してしまう。戦況は危険な状態に戻ってしまった。

 町のあちこちに出没する機械鎧怪物達。人間ではなく、動物が機械鎧を纏ったという存在にヴリトラ達はどう立ち向かうつもりなのか。ブラッド・レクイエム社が送り込んだ狩人達はまだまだ大勢隠れている。


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