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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十七章~獣が巣くう共和国~
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第二百九十九話  正門突破! ブラッド・レクイエム始動

 遂にオルトロズム制圧作戦が開始される。ヴリトラ達は三つあるオルトロズム正門の内、南門から攻撃を仕掛け、残りの東と西の正門からも同盟軍が同時に攻撃しオルトロズムを完全に包囲した。旧オラクル共和国での最後の戦いが今始まる。

 オルトロズムの中心にある城の一室、高貴な者が使うと思われる寝室で眠っていた一人の男が寝室に飛び込んで来た旧オラクル兵に気付き目を覚ます。その男は黒い長髪に長い口髭を生やした長身の五十代前半ぐらいの中年の男だ。彼こそが旧オラクル共和国を裏切り、帝国に手引きしたオルトロズムの独裁者、グーリジル・ラプタンだ。


「……何事だ? こんな夜中に」

「ご、ご報告します! 先程、同盟軍が現れて全ての正門から町に攻撃を仕掛けてきたという知らせが入りました!」

「な、何じゃと!?」


 旧オラクル兵から聞かされた同盟軍の夜襲にラプトンは目を見開いて驚く。

 数日前までまだオルトロズム周辺の町には旧オラクル軍が駐留して敵の進軍を防いでいたはずなのに、敵軍が既に此処まで来て、しかも町を包囲しているのだから驚くのも当然だった。

 ラプタンはベッドから出るとオルトロズムに攻め込んで来た同盟軍を憎たらしく思ったのか表情を険しくして歯を噛みしめた。


「おのれぇ! 同盟軍など寄せ集めの戦力が儂の首都に攻め込んでくるとは忌々しい! すぐに動ける戦力を防衛に向かわせろ。寝ている連中も叩き起せ!」

「ハ、ハイ!」

「……それと、以下この町にはブラッド・レクイエムの女王がいたな?」

「ハ、ハイ……」

「すぐに儂の書斎に来るように伝えろ!」


 ラプタンの命令を聞き、旧オラクル兵は急いで寝室を後にした。寝室に残ったラプタンは窓から外を眺め、遠くに見える明かりを見て再び歯を噛みしめる。


「……折角手に入れた儂だけの国だ。どこぞの馬の骨などに奪われてたまるか! どんな手を使っても必ず守り抜いてやるわ!」


 同盟軍に怒りをぶつけるラプタンは寝室を後にする。

 仲間を裏切り、旧オラクル共和国の人間である事の誇りを捨ててようやく手に入れた富と地位。ラプタンの頭にはそれを守る事だけしか頭に無い。まさに独裁者の発想と言えた。


――――――


 その頃、同盟軍は町の各正門前に集まり、外から城壁の上にいる旧オラクル兵に向かって矢を放ち攻撃していた。

 既に三つの正門前では激しい戦闘が行われており、同盟軍とオルトロズムの防衛隊に双方に死傷者が出ている。だがどちらも仲間がやられた事を気にも留めずに戦い続けている。それは戦争ではおかしくない光景だった。


「まずは正門の上の敵を片付けろ! 奴等がいる限り町への進軍は不可能だぞぉ!」


 南門前の部隊の中で周囲の同盟軍兵達に指示を出す隊長らしき男性騎士。周りの兵士達はその声を聞いているのか分からないくらい興奮して戦っていた。

 町へ侵入するには正門を破壊するか、城壁に梯子を掛けて登り、城壁を越えるかのどちらかしかない。正門は木製ではあるが人間が壊すには分厚すぎる。よって、町へ侵入するには城壁に越えるしか方法じゃなかった。だが防衛部隊も敵の侵入を許すまいと梯子を掛けようとする同盟軍兵を攻撃し、掛けられた梯子を倒す。他にもグリフォン空撃隊を使って空から攻撃を仕掛けるなどして同盟軍の進軍を食い止めていた。

 なかなか城壁を越えられない同盟軍を見て隊長の男性騎士は舌打ちをする。


「……やはり籠城する敵を攻略するのか簡単じゃないか。昔から城攻めには十倍の戦力がいると言われているが、どうやらその通りのようだな……」


 教訓を思い出した男性騎士は城壁の上から攻撃して来る旧オラクル兵達を見上げて悔しそうな表情を見せた。現在の同盟軍の戦力は各正門を攻める三つの戦力を合計して約六百、一方でオルトロズムの戦力は旧オラクル兵や派遣された帝国兵を合わせて千はある。更にオルトロズムにはブラッド・レクイエム社の戦力もある為、実際の戦力はそれ以上だ。明らかに同盟軍が不利だった。


「こんな事ならもっと戦力を要請してから攻め込めばよかったのに……司令官殿は何を考えておられるのだ」


 チャリバンスの考えが理解できずに男性騎士は俯きながらブツブツ言う。だがその時、正門の方から突如大きな爆発音が聞こえ、男性騎士や周りにいる同盟軍兵士は一斉に正門の方を向く。勿論オルトロズムの防衛隊も城壁の上から正門の方を見ていた。

 正門の前には灰色の煙が広がっており何も見えない。すると風が吹き、煙が静かに掻き消される。煙が消えると正門の真ん中に大きな穴が開いて光景があり、同盟軍兵達は目を見開き驚く。そして正門の前には七竜将と彼等が乗って来た装甲車が停まっており、装甲車の運転席ではニーズヘッグが小さなスイッチの様な物を持ち笑っていた。


「……フッ、上手くいったな」


 穴の開いた正門を見てニーズヘッグは呟く。運転席のすぐ隣ではヴリトラのリンドブルムが耳を塞ぎながら正門の穴を見ている。


「流石はC4、木で出来た門なんて簡単に破壊できるか」

「それにしても凄い爆発だったよねぇ? 今ので町中の人が目を覚ましたんじゃない?」

「ハハ、それは無いだろう」


 爆発の威力に驚きながらヴリトラとリンドブルムは何処か楽しそうに話している。それを見たニーズヘッグが運転席のドアをドンドンと叩いて二人に呼ぶ。


「おい、お喋りはそれぐらいにしておけ。いよいよ町へ突入だぞ?」

「おっと、そうだったな……それじゃあ、早速は突入しますか!」


 ヴリトラの言葉を合図にニーズヘッグは装甲車を走らせて正門の穴に突っ込む。装甲車は穴から町の中へ入り、七竜将やラピュス達、そして白竜遊撃隊もそれに続く。町に入ると、正門前には大勢の旧オラクル兵が待機していた。だが、その全員が正門が爆破された事に驚いて固まっている。

 そんな隙だらけの旧オラクル兵達にヴリトラ達は持っている銃器で一斉に攻撃する。旧オラクル兵達はヴリトラ達の攻撃でようやく我に返り応戦しようとしたが不意を突かれた為、旧オラクル兵達は混乱し、一瞬にして隊列が崩れて旧オラクル兵達は散り散りになった。

 一方、町の外では七竜将が正門の穴から町へ侵入した光景を同盟軍がしばらく呆然と見ていた。だが、現状を思い出した男性騎士がすぐに周りの同盟軍兵達に呼びかける。


「な、何をしている!? 正門に穴が開いたぞ、我々も町へ突入だぁ!」

「「「「「……おおおぉーーっ!!」」」」」


 隊長の言葉を聞き、同盟軍兵達も揃って声を上げ、七竜将の開けた穴から町の中へ一斉になだれ込む様に侵入する。

 城壁の上からそれを見ていた防衛隊も我に返り、慌てて町に侵入した同盟軍を食い止めようとする。だがそこへ突如グリフォン達が襲い掛かり、城壁の上の旧オラクル兵達を倒していく。


「な、何だ!? どうしてグリフォンが我々を攻撃しるんだ!」


 旧オラクル兵の一人がグリフォン空撃隊のグリフォンがなぜ自分達を襲うのかと驚きながら目の前のグリフォンを見つめる。すると、グリフォンに乗っている騎士の鎧にレヴァート王国の紋章が描かれているのを見て旧オラクル兵は気付いた。目の前を飛んでいるグリフォンは自分達の仲間のグリフォンではない、敵のグリフォンだと。

 城壁の上を飛び、防衛隊に攻撃を仕掛けて来たのは闘獣戦士隊のグリフォン達だったのだ。彼等は今日までの戦いで空中戦のコツを掴み、今では旧オラクル軍のグリフォン空撃隊と互角に戦えるほどにまで成長した。そんな彼等は今では同盟軍の主力の一つとなったのだ。


「我々はこのまま城壁の上にいる敵とグリフォン空撃隊を一掃する。その後は各自指示に従って他の部隊の救援に向かうぞ!」

「「「「「おおぉーー!」」」」」


 一人の闘獣戦士隊の隊員がグリフォンの乗りながら周りの仲間達に声をかけ、他の隊員達も声を揃えて返事をする。そんな闘獣戦士隊にグリフォン空撃隊が襲い掛かり、グリフォンを操る部隊同士の空中戦が始まった。

 空でグリフォン達を抑えている闘獣戦士隊を町の中から見上げた同盟軍兵達も負けていられないと士気を高めて一気に進軍する。作戦が始まってからまだ数十分しか経っていないのに、七竜将のおかげで同盟軍は町へ侵入でき、士気も高まった。逆に旧オラクル軍の防衛隊は町への侵入を許してしまい、正門前の戦力もバラバラになった事で一気に士気が低下する。南門周辺はあっという間に制圧されたのだった。


――――――


 オルトロズム城にあるラプトンの書斎では貴族服に着替えたラプタンと数人の貴族の姿があった。そして部屋の隅ではジャンヌと二人のBL兵が黙って待機している。

 ラプタンは自分が使う机の椅子に座りながら机を指でコンコンと何度も叩きながらイライラしている。そんなラプタンを貴族達は息が詰まるような気持ちで見つめていた。


「……戦況はどうなっている?」

「ハ、ハイ、ただいま戦力を三つに分けて各正門に向かわせています。このままなら敵はすぐに退却する事でしょう」


 貴族の一人がラプタンの機嫌を損ねないように慎重に話す。他の貴族達も苦笑いを浮かべながらラプタンを見ている。すると、一人の旧オラクル兵が書斎に慌てた様子で書斎に入って来た。ラプタン達は驚きながら一斉に兵士の方を向く。


「何だ、騒がしいぞ?」


 貴族が部屋に飛び込んで来た旧オラクル兵に注意すると息を乱した旧オラクル兵が大量の汗を流しながら顔を上げる。


「ほ、報告します! 先程、南の正門が突破され、大勢の同盟軍が町へ侵入しました!」

「何じゃと!?」


 予想外、しかも悪い知らせにラプタンは思わず席を立つ。貴族達も驚愕の表情を浮かべながらざわつき出す。だが、ジャンヌだけは表情を変えずに黙って話を聞いていた。

 敵の夜襲を受け、更に正門が突破されて敵軍が町に侵入して来た。信じられない出来事の連続に書斎は緊迫した空気に包まれていく。


「どういう事だ!? 城壁の守りは完璧のはずだぞ。なのになぜ突破された。城壁を越えて来たのか!?」

「い、いや……どうやら正門を破壊してそこから侵入したらしいのです……」

「破壊だと!? 敵は火薬の類を使ったのか?」

「お、恐らくは……」


 貴族達は敵が火薬の類を持っている事を聞かされて更に驚き固まってしまう。

 ラプタンは悪くなっていく戦況に更に苛立ち、机を大きく叩いた。


「ええいっ! 何をしておるのだ。さっさと動ける戦力を南門の方へ向かわせて敵を押し戻さんか!」

「し、しかし、動ける戦力はもう全て三つの正門の防衛に回してしまいましたした……」

「なら、西門か東門の戦力を南門の方へ回せ!」

「そ、それでは西門と東門の戦力のバランスが崩れ、他の二つの正門も突破されてしまう恐れが……」

「くうううぅっ! 役立たずどもがぁ!」


 再び机を強く叩き、ラプタンは椅子に座り込み頭を抱え込む。このままでは敵はすぐにこの城に辿り着き、オルトロズムは制圧されてしまう。そうなったら自分は全てを失ってしまう。ラプタンはどうすればいいのか分からなくなっていた。

 すると、さっきまで黙っていたジャンヌが頭を抱えるラプタンに近づき、小さく笑いながら口を開いた。


「ラプタン殿、我々の部隊をお使いになりますか?」

「何?」

「我が機械鎧兵士部隊を使えば奴らなど容易く葬れます」

「そ、それはダメだ! 奴等を動かせば誰がこの城を守るのだ!」

「では、このままにしておきますか? 確実に敵はこの城に辿り着きますよ?」

「う、ううぅ……」

「それにいくら我が社の部隊が優れていてもこの城に辿り着いた大勢の敵を相手にすれば不利です。それなら、敵の戦力がばらけている今のうちに各敵部隊を攻撃した方がよろしいかと……」


 ラプタンは言葉を失う。自分がいる城を守っている最強の部隊を動かしてしまえばこの城の守りは手薄となり、敵の侵入を許してしまう。だがこのままでは町は完全に敵に制圧されてしまい自分の身も危ない。

 どうすればいいのか分からずに頭を抱えるラプタン。そんな彼を見てジャンヌは更に助け舟を出した。


「安心してください、まだ私がいます。それに私の直属の戦士も……」

「んん?」

「イザとなれば私と彼女達が動きますのでラプタン殿は安心して戦いが終わるのをお待ちください」

「そ、そうか……そうだな、まだ貴女がたがいるんだった……」

「更に言えば、町には我が社が開発した機械鎧怪物マシンメイルビーストも配置してあります。この城の部隊と町の怪物達を使えばすぐに決着が付きますよ?」

「お、おおおぉ! そうであった、あの怪物達がいるのを忘れていた! そうだな、それなら安心だ」

「では、機械鎧怪物の起動と敵軍の排除の為にこの城の部隊を動かしてもよろしいのですね?」

「うむ! そうしてくれ」

「分かりました……お前達、城を警備している部隊から二十人ほど選び、町へ向かわせて敵を排除と機械鎧怪物の起動に向かわせろ」

「「ハッ!」」


 指示を受けたBL兵達は書斎を出て部隊の編成に向かう。

 BL兵が出て行くとジャンヌはもう一度ラプタンの方を向いて軽く頭を下げた。


「では、私も敵がこの城に来た時に備えて戦闘の準備に入りますので、失礼します」

「うむ、頼んだぞ」


 ジャンヌは静かに書斎を出て行き、誰もいない暗い廊下の真ん中を歩いて行く。

 書斎から100mほど離れた所まで来るとジャンヌは足を止め、ジッと前を見つめる。すると彼女の背後にサンダーバードが微笑みながら現れた。


「女王……」

「サンダーバードか、どうだった?」

「ハイ、女王の読み通りでした」

「フッ、やはり七竜将か……」

「ええ、南門を破壊し、突破口を開いて南門方面の同盟軍を城へ入れたみたいです」

「そうか。このオルトロズムを攻略するのだから奴等が動くのは当然だな」

「いかがいたしますか?」

「予定通り、城の部隊を町へ送り込んで機械鎧怪物達を出撃させなさい」

「制御が効かず、暴走して旧オラクルやこの町にいる帝国の兵士達を襲う可能性もありますが……」

「構わないわ。もし暴走したのなら状態を記録しておきなさい。次の暴走させない為の必要なデータになる」

「了解です……」


 ジャンヌの冷たい判断にサンダーバードは表情を一切変えずに返事をする。

 ジャンヌ直属の幹部達は全員がジャンヌを心酔しており、彼女の考えや判断が全て正しいと考えている。その為、他のジークフリートが他の幹部がジャンヌの考えと異なる答えを出しても全員がジャンヌの考えに賛同するのだ。


「それで、七竜将は何処にいるの?」

「今はまだ南門の近くにいるという報告が……」

「そうか。なら南門の方に機械鎧兵士部隊と機械鎧怪物を数体送り込みなさい。残りの東門と西門の方には適当な戦力を……」

「ハイ」

「あと、お前達姉妹にも出てもらう事になるでしょうから、準備をしておくように妹にも伝えておきなさい」

「了解」


 サンダーバードは消える様にその場から移動し、残ったジャンヌも再び廊下を歩き出す。

 ジャンヌが指揮する機械鎧部隊とまだ見ぬ機械鎧怪物達。今まさにその鋭い牙がヴリトラ達に向けられようとしていたのだった。


――――――


 南門を突破し、周辺の敵を一掃したヴリトラ達は南門の前に進撃の為の仮拠点を作った。

 破壊された南門の前に七竜将の装甲車を停車させ、それを囲む様にチャリバンスと彼の率いる白銀剣士隊、同盟軍の部隊が陣を組む。その手前では七竜将と町に進撃する部隊が集まっていた。


「よし、これで南門周辺は完全に制圧した。此処からはいよいよ本格的な進軍が始まる。気を引き締めろよ?」


 ヴリトラが気合を入れながらラピュス達に語り掛けるとラピュス達は黙って頷くヴリトラを見ている。チャリバンス達はそんなヴリトラの姿を見て彼の仲間を束ねるカリスマ性と団結力に感服していた。


「それじゃあ、もう一度役割を確認するぞ? 俺のチームはこのまま城に向かって進撃し、東門と西門から城に向けられた部隊と合流して城に攻め込み、統治者であるラプタンを見つけて捕縛する。残りはこのまま町の制圧と東門、西門の救援に当たってくれ」

「分かった」


 リンドブルムがライトソドムとダークゴモラを握りながら返事をし、ニーズヘッグ達も頷く。


「さてと、行動開始だ! 行くぞ!」


 ヴリトラはラピュス達と数人の白竜遊撃隊、同盟軍の兵士を連れて城の方へ向かって走り出す。

 残ったリンドブルム達はヴリトラ達を見送るとこの後どうするか話を始める。


「さて、僕達はこれからどうする?」

「どうするもこうするも、手はず通りに動くさ。此処は新た片付けたから何人かが残って東門と西門の救援に向かう」

「誰を残す……?」


 オロチが斬月を肩に担ぎながら尋ねると、ニーズヘッグは残っている七竜将のメンバーを確認する。


「俺とジルニトラはこのままチャリバンス達と一緒に行動する。オロチとテュポーンは此処にいる白竜遊撃隊の隊員数人と同盟軍の兵士を連れて行けるだけ連れてって東門の救援に向かってくれ」

「OK!」

「了解……」

「……分かった」


 ニーズヘッグの指示を聞いたジルニトラ、オロチ、ラランは頷きながら返事をし、オロチとラランは連れて行く部隊の編成を始める。


「リンドブルムとジーニアスは闘獣戦士隊を連れて西門の救援を頼む」

「分かった!」

「分かったのだ!」


 リンドブルムと地上に降りているジーニアスは声を揃えて返事をする。リンドブルムは素早くジーニアスの背中に乗り、ジーニアスもリンドブルムが背中に乗ると飛び上がって空を飛んでいる闘獣戦士隊のグリフォン達の下へ飛んで行く。

 部隊の編成が終わるとニーズヘッグはアスカロンを鞘から抜いて遠くに見えるオルトロズムの城を見つめた。


「……町へ侵入はできたが、戦いはこれからが本番だ。この町の何処かにブラッド・レクイエムの機械鎧兵士達がいるはず……気を付けろよ、ヴリトラ?」


 城へ向かったヴリトラ達の事を気に掛けながらニーズヘッグは自分のやるべき仕事に取り掛かる。南門の周辺を制圧しても戦力ではまだ同盟軍の方が劣っており、一瞬の油断もできない状態だ。ニーズヘッグ達はより強く戦意を燃やすのだった。

 南門を突破したヴリトラ達はすぐに部隊を分けて四つに分かれる。城の制圧と他の二つの正門にいる同盟軍の救援、南門からの進撃、まだ戦いは始まったばかりだった。


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