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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十七章~獣が巣くう共和国~
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第二百九十八話  激戦の序曲 オルトロズム制圧作戦開始!


 シャクセムの町でパリーエ、チャリバンスと再会し、首都オルトロズムを制圧する為の作戦会議を行った。そこでヴリトラはオルトロズムを三方向から攻めて一気に制圧すると言う作戦を提案する。ヴリトラ達もその作戦に参加する為にオルトロズムを目指し、町を出発した。

 オレンジ色に染まった空、その下に広がる大きな町。大きな城壁に囲まれ、城壁の上には大勢の旧オラクル兵やグリフォン空撃隊のグリフォンが待機し周囲を見張っている。この町こそ、旧オラクル共和国の首都であるオルトロズムだ。

 オルトロズムから約3K離れた所に広がる丘。その丘の上からオルトロズムの様子を伺う二つの人影、双眼鏡で町を覗くヴリトラとジャバウォックの姿がそこにあった。


「・・・城壁の上に敵兵とグリフォンが多数、かなりの戦力だな」

「当然だろう。あそこは敵の首都、つまり本拠地なんだからな。しかもガルディンの町とかに配備していたブラッド・レクイエムの部隊も集めたんだから、かなりの戦力だぜ?」

「ああぁ、これは手こずりそうだ」


 双眼鏡で城壁の上の敵戦力などを確認しながらヴリトラとジャバウォックは現状を確認した。

 ヴリトラ達はシャクセムの町を出た後、白竜遊撃隊、闘獣戦士隊を率いてガルディンの町を制圧に向かった。一日がかりでガルディンの町に着いた後、町の制圧を任されていた中隊と合流し、すぐに町の制圧を開始する。だがブラッド・レクイエム社の戦力が無く、旧オラクル軍の戦力だけとなったガルディンの町の防衛力は低く、ヴリトラ達が加わった同盟軍を抑えられずにあっという間に町への侵入を許してしまう。戦況が一気に悪くなったことで旧オラクル軍の兵士達の士気は一気に低下し、アッサリと投降した。

 ガルディンの町を制圧した後、ヴリトラ達はガルディンの町の管理とシャクセムの町にいる同盟軍本隊への連絡を任せてすぐにオルトロズムへ向かって出発した。そこから更に一日かけてようやくオルトロズムを確認できる丘に到着、現在に至るという訳だ。


「シャクセムの町の本隊は何時こっちに来るんだろうな?」

「もうそろそろじゃないか?ガルディンの町の中隊がすぐに本隊に連絡したのであれば、そんなに時間は掛からないはずだ」

「そうか・・・作戦を開始する為にはまず戦力が整わないといけないからな」


 双眼鏡を下ろしたヴリトラは真剣な顔で遠くに見えるオルトロズムの町を見つめた。


「しっかし、お前が考えた作戦、本当に驚いたぜ?」

「ん?あまりにも完璧すぎてか?」


 ニッと笑いながらヴリトラはジャバウォックを見上げる。するとジャバウォックは肩を落とし、呆れ顔で溜め息をついた。


「違う、あまりにも単純で大胆な作戦だから驚いてるんだよ」

「単純?」

「俺達がガルディンの町を制圧してオルトロズムへ向かう為の進路を確保した後にシャクセムの町の本隊と合流し、他の二つの町を制圧した部隊がオルトロズムを包囲した後に総攻撃を仕掛ける。これを単純と言わずに何と言う?地球ではこんな作戦はまず通用しないぞ?」

「確かにな。だけど、あんな風に常に厳重に守りを固めている奴等には複雑な作戦は通用しない。寧ろこんな単純な作戦の方が効果的なんだよ」

「本当かよ?俺が軍にいた時にはそんな話は聞いた事が無いぞ」


 ジャバウォックは嘗て自分がいたオーストラリア軍で得た知識を思い出し、複雑な表情を浮かべる。

 ヴリトラはそんなジャバウォックの顔を見てニッと笑う。まるで困っているジャバウォックを見て楽しんでいる様だった。

 二人が会話をしていると丘の下からラピュスが駆け上がってくる姿が見えて二人はラピュスの方を向いた。


「二人とも、此処にいた。ようやく着いたぞ」

「着いたって、本隊がか?」

「ああ、今ニーズヘッグ達と作戦会議を行っている。お前達も来てくれ」

「分かった」


 ヴリトラとジャバウォックは丘を滑り降りて下にある一本道へ降り、ラピュスもそれに続く。

 三人は丘から少し離れた所にある小さな森の方へ歩き出した。そこにヴリトラ達の隊が隠れており、その森で本隊と合流する事になっていたのだ。


「そう言えば、合流した本隊の隊長は誰なんだ?」

「チャリバンス殿だ」

「何だ、チャリバンスかよ・・・」


 隊長の名前を聞いたジャバウォックはガッカリして肩を落とす。ヴリトラも複雑そうな顔をしている。


「あのチャリバンスって、確か傭兵を差別して、自分の力を過信してる貴族のお坊ちゃんだろう?そんな奴が指揮する隊と共闘して大丈夫なのかよ?」

「その事なら心配ないと思うぞ?」


 不安になっているジャバウォックにラピュスが安心させるような口調で言う。ヴリトラとジャバウォックは意外そうな顔でラピュスの方を見た。


「どうしてそう言える?」

「作戦会議を始めた時にチャリバンス殿は今回の作戦の要は七竜将にあると言っていた。そして町への突入を七竜将と私達に任せたいと」

「そんな事を言ったのか?」


 傭兵を差別していたチャリバンスが七竜将の力を必要としている、それを聞いたヴリトラは驚いたのか訊き返す。ラピュスは微笑みながら小さく頷いた。


「だけどよぉ、それだけじゃまだ安心できねぇなぁ。もしかすると、ヤバくなったら俺達を囮にするかもしれねぇじゃねぇか」

「ジャバウォック、その言い方はいくらなんでも失礼だぞ?」

「今までのアイツの俺達に対する態度を見ればそう思うのは当然だろう」


 ラピュスがチャリバンスを疑うジャバウォックに注意をする。そんなラピュスにジャバウォックは言い返した。

 確かにジャバウォックの言っている事も一理ある。武術大会の時の彼のヴリトラに対する態度を知っていれば疑うのも無理はない事だ。

 いまいちチャリバンスを信用できないジャバウォックを見てラピュスは真剣な顔で口を開く。


「チャリバンス殿と部隊の騎士から聞いた話だと、チャリバンス殿はあの武術大会でヴリトラに敗れた後、自分がどれだけ自惚れているのかを自覚し、騎士として一から修行し直したらしい。それからのチャリバンス殿は自分よりも身分の低い者を見下さず、傭兵達ともできるだけ接しているみたいだ」

「ほおぉ?」


 チャリバンスの変わりようを聞かされてジャバウォックは意外そうな顔をした。ヴリトラは黙ってラピュスの話を聞いているが、その表情にはどこか嬉しさの様なものが感じられる。


「ヴリトラと戦ったおかげで、チャリバンス殿は新しい自分を見つける事ができたんだ。もう彼は今までの様に他人を見下すような人ではない」

「・・・フッ、そうか。アイツはそんなに変わったか」


 さっきまでチャリバンスを疑っていたジャバウォックが小さく笑いながら空を見上げた。その隣を歩いているヴリトラも前を見ながら笑っている。

 

「アイツも少しは俺達傭兵の事を信じてくれるようになったんだな」

「ああ。まだ少し素直になれないところもあるようだが、少なくとも以前のように私達を見下すような事をしないと思う」

「そうか・・・それなら、今回の作戦は上手くいくかもな」


 ヴリトラはチャリバンスと協力し合ってオルトロズムを制圧する事ができると感じヤル気を出した。そして二人を置いて森に向かって走る出す。ラピュスとジャバウォックは走り出したヴリトラを見て、遅れて後を追う様に走り出したのだった。

 森の奥には広場があり、そこにはヴリトラ達の装甲車とバンが停まっており、その近くでは白竜遊撃隊と闘獣戦士隊が待機している。少し離れた所ではチャリバンスが連れて来た白銀剣士シルヴァリオン隊の四個中隊程が固まって休んでいる姿があった。その近くには大きめのテントが張れており、その中でチャリバンスと数人の騎士、そしてニーズヘッグ達がテーブルを囲みながら広げられているオルトロズムの地図を見て作戦会議を行っている。


「・・・今日の夜、我々はオルトロズムの町に夜襲を仕掛ける。我々以外にジラーフの町のルートから来たパリーエ王女が指揮する部隊、バルバの町のルートから来た部隊、この三つで一斉に攻撃し、各部隊は正門を火薬で爆破して町へ突入。そこからは自由に行動して敵首都を一気に制圧すると言う流れだ」


 チャリバンスがオルトロズム制圧作戦の流れを説明し、その話をニーズヘッグ達は黙って聞いている。すると、一人の男性騎士がチャリバンスに質問をして来た。


「城壁の上にいる部隊はどうしますか?」

「正門を突破した後に各部隊が戦力を分ける事になっている。進軍する部隊と城壁の上の戦力を倒す部隊。三つの戦力は何処も大部隊だ、部隊を二つに分けても進攻には何の問題もないだろう」


 正門を突破しても城壁の上には多くの敵兵とグリフォン空撃隊が残っている。彼等を何とかしないと例え町へ侵入できても背後を突かれてしまい、最悪挟み撃ちに遭ってしまう。そうならないようにする為にも町へ侵入したら最初に城壁の上の敵を抑えなければならない。そう考えたうえでチャリバンスは戦力を分けるべきと判断した。

 チャリバンスが細かく作戦を説明する姿を見たニーズヘッグ達は黙って彼を見ている。すると、チャリバンスは今度はニーズヘッグ達の方を向いてテーブルの上のオルトロズムの地図を指差した。


「七竜将、アンタ達には正門を突破した後に首都の中心にある城へ向かってもらう。そこを制圧すればこの戦いは我々同盟軍の勝利だ」

「俺達が城の制圧を?」


 意外な指名に驚くニーズヘッグ。周りにいるリンドブルム達も同じように少し驚いた顔をしていた。

 驚くニーズヘッグ達を見たチャリバンスは腕を組みながらゆっくりと目を閉じる。


「ここの戦力の中ではお前達七竜将が最も強い。それならお前達に敵の城の制圧を任せるのが当然だろう?」

「ほぉ~?」

「ん?何だ?」

「一年前と比べて随分と分かるようになったなぁ、と思ってな」

「フン・・・一年前にお前達の隊長に武術大会でボロボロにされた時に私は分かった。自分がどれだけ未熟で愚かな男だったかという事を・・・それから私は騎士として心身ともに鍛え直し、傭兵だろうと位の低い騎士だろうと二度と軽く見ないと心に決めた」

「・・・・・・」


 過去を振り返り、自分の未熟さを認めるチャリバンスをニーズヘッグは黙って見ている。

 周りからジッと見られながらチャリバンスは目を閉じたまま話を続けた。


「お前達がこの作戦に参加している戦力の中で最も力が強いからこそ、お前達に城への攻撃を任せる。理由はそれだけだ」

「・・・フッ、そうか」


 少し照れる様な口調のチャリバンスを見てニーズヘッグは小さく笑う。周りにいるリンドブルム達も聞こえないくらい小さな声で笑っていた。


「分かった。城への攻撃は俺達が引き受ける。だが、いくらなんでも俺達だけじゃ城一つを落とす事は難しい。もう少し戦力がないと・・・」

「心配するな。他の正門から進攻する戦力からも城を攻撃する部隊が送られる。その者達と一緒に攻略してくれ。既に密偵が商人に成りすまして町へ潜入しレジスタンスと接触し、今回の作戦の事を伝えてある。我々はオルトロズムに潜伏しているレジスタンスと協力して戦う」

「了解だ」


 他に城を攻撃する戦力があると聞いて安心したニーズヘッグ達。それからチャリバンスは他の騎士達に担当する任務の説明を始める。

 作戦会議が順調に進んでいる中、テントにヴリトラ、ラピュス、ジャバウォックの三人が入って来た。三人に気付いたニーズヘッグ達は一斉に三人の方を向く。


「遅れてすまねぇ」

「遅いよ、ヴリトラ。もう一通りの作戦が決まったよ?」


 遅れて来たヴリトラ達を見てリンドブルムが作戦の説明が終わった事を話す。それを聞いたヴリトラ達は「しまった」と言う様な顔を見せる。


「終わっちまったかぁ・・・悪いんだけど、もう一度説明してくれるか?」

「・・・ハァ、仕方がないな。俺が説明する」


 溜め息をついたニーズヘッグが七竜将の役割と詳しい作戦の内容を遅れて来たヴリトラ達に説明する。ニーズヘッグから作戦の内容をヴリトラは真剣な顔で聞く。

 全ての説明を聞いたヴリトラはテーブルの前まで移動しチャリバンスの方を向いた。


「・・・俺達の役割は分かった。だけど、七竜将全員を城の攻略に向かわせるのはマズいんじゃないか?」

「なぜだ?」

「忘れてないか?あの町にはブラッド・レクイエムの部隊がいるんだぞ?それに敵に調教された猛獣達も・・・」


 ヴリトラの話を聞いたチャリバンスは「あっ!」と反応する。どうやら町の攻略に頭が言っててブラッド・レクイエム社の事を忘れていたようだ。そしてニーズヘッグ達もその事を忘れていたらしい。

 ヴリトラはブラッド・レクイエム社の事を思い出してホッとしているニーズヘッグ達を見て溜め息をつく。そしてブラッド・レクイエム社の戦力を計算に入れた状態で自分の考えた戦力分けをチャリバンス達に話し始めた。


「ブラッド・レクエムの兵士は普通の騎士や兵士が戦うにはキツ過ぎる相手だ。七竜将おれたちの戦力も城へ攻め込むチームと城壁の上、そして町の敵兵と戦うチームと分けたほうがいい」

「チーム分けはどうするんだ?」


 ニーズヘッグがチームをどう分けるのか尋ねる。ヴリトラはテントの中にいるラピュス達、そしてテントの端で座り込んでいるガズンを見ながらチームメンバーを発表する。


「城へ攻め込むチームは俺とラピュス、ジャバウォック、ファフニール、ガズンのおっさん、あとアリサと白竜遊撃隊の騎士を五、六人だ」

「んん?俺も行くのか?」


 自分が選ばれた事が意外に思ったのかガズンは座り込んだままヴリトラの方を見る。ヴリトラはガズンの顔を見て頷いた。


「ああ、城へ向かうには街の中を進む必要がある。建物だらけの中じゃグリフォン達は思いように飛べない。だから地上での動きやジャンプを得意とするドレッドキャットを連れているおっさんについて来てもらいたいんだよ。城壁の上にいるグリフォン空撃隊は残ったグリフォンに乗った闘獣戦士隊に任せた方がいい」

「目には目を、って事か・・・」

「いいだろう、おっさん?」

「・・・・・・いいだろう。グリフォンに乗っている連中も今回の仕事で多少は経験を得る事ができた。俺がいなくても大丈夫だろう」

「決まりだな」


 城へ突入するチームが決まり、ヴリトラはニッと笑う。ファフニールもガズンの連れているドレッドキャット、ガルバとミルバと戦える事が嬉しいのかニコッと笑っている。

 次にヴリトラは残りの城壁の上の敵と町の制圧を担当するチームメンバーとその役割などを説明した。


「町の制圧にかかるチームはリンドブルム、ニーズヘッグ、ジルニトラ、オロチ、ララン、ジーニアス、残った白竜遊撃隊と闘獣戦士隊だ。白竜遊撃隊と闘獣戦士隊には俺達が突破した正門近くの敵を一掃した後に他の二つの正門を突破した戦力の救援に向かってもらった方がいい。そっちにブラッド・レクイエムの部隊や猛獣達が向かうと彼等が危険だからな」

「分かった。そちらの方は俺達に任せろ」

「よし!・・・アンタ達もこのチーム編成で構わないか?」


 ニーズヘッグの返事を聞くとヴリトラはチャリバンスや騎士達の方を見て作戦の確認を取る。チャリバンス達はヴリトラの考えた作戦の方が成功率が高いと判断したのか異議を唱える事なく黙って頷いた。


「チームは決まったし、あとは作戦開始の時間だな。何時始めるんだ?」

「今日の夜中だ。見張りの兵士達以外が眠りに付いた頃に襲撃する。作戦開始時刻もレジスタンスに伝えておいたから我々が襲撃するの同時にレジスタンスも動くだろう」

「外と中から同時に奇襲を仕掛けられるって事か」

「そういう事だ。このチャンスを逃せば敵は警戒を強くして二度と同じ作戦は通用しなくなる。この一戦で必ずオルトロズムを落とす!他の二つの部隊にも開始時刻を伝えろ!」

「ハッ!すぐに早馬を出させます!」


 チャリバンスから指示を受けた男性騎士がテントから出てパリーエ達の部隊に作戦の詳しい情報と作戦開始時刻を伝えさせに向かう。


「今回の戦いは旧オラクル領での戦いで最も激しい戦いになる。各自しっかりと体を休めて戦いに備える様にしろ!」


 オルトロズム攻略の作戦が決まるとヴリトラ達は作戦会議は終わらせる。その後、作戦開始時刻まで七竜将は兵士達はゆっくりと体を休めて作戦の時間を待った。

 それから五時間後、日は完全に沈み真っ暗になった。空には星が輝いているが、月は雲の隠れて月明りは全くと言っていいほどない。夜襲は仕掛けるには絶好のチャンスと言えた。

 ヴリトラ達の部隊は音を立てずにオルトロズムへ近づいて行き、奇襲を仕掛ける為の場所へ移動していた。先頭を進む七竜将の装甲車とバンは音を最小限にする為にローで走っている。部隊の兵士達を置いて先に行ってしまう事も無いので七竜将にとっては丁度良かった。


「・・・何処まで進めばいいんだ?」


 装甲車を運転しながらニーズヘッグは後部座席のラピュスに尋ねる。ラピュスは前を見て数十m先にある小さな林を指差した。


「あそこの林までだ。あの林は正門の目の前にあるから時間が来ればすぐに攻撃を仕掛ける事ができる」

「じゃあ、あそこまでなら近づいても大丈夫なんだな?」

「ああ。とりあえずは林に入って正門側の出入口の手前まで行けばいい」

「分かった」


 指示されてニーズヘッグはゆっくりと装甲車を走らせる。

 林に入ると敵兵が隠れていないかを警戒しながら先へ進む。そして正門側の出口が見えるとヴリトラ達は止まり、最後にもう一度装備のチェックをした。


「準備は大丈夫か?」


 装甲車を降りたヴリトラは周りにいるラピュス達に準備が整たか確認する。ヴリトラの前には装甲車を運転するニーズヘッグ以外の全員が揃っており、自分達の装備をチェックしていた。そして準備が整うとヴリトラの方を向いて真剣な表情を見せる。


「よし、此処からは暗号名コードネームで呼び合う。愛称とかで呼ぶなよ?ラピュスとラランもいいな?」

「分かった」

「・・・うん」


 いよいよ戦いが始まるという事で七竜将は全員仲間を暗号名で呼び合う。ラピュスとラランは自分の得物であるアゾットと突撃槍を握り、遠くに見える正門を見つめる。ヴリトラ達も戦闘態勢に入り作戦開始の時を待った。

 しばらくすると、後ろの方から一人のレヴァート兵がやって来てヴリトラに小声で話しかけた。


「作戦開始時刻です」

「分かった・・・」


 レヴァート兵から作戦開始の知らせを聞いたヴリトラは森羅を鞘から抜き、オルトロズムの方をジッと見つめた。ラピュス達も武器を強く握ってヴリトラと同じようにオルトロズムを見つめる。


「よぉし・・・・・・作戦開始だっ!」


 ヴリトラの言葉を合図にラピュス達は一斉に森から飛び出す。それに続いて白竜遊撃隊、闘獣戦士隊、同盟軍も一斉に森から出て正門に向かって走り出した。遂にオルトロズム制圧作戦が開始されたのだ。

 旧オラクル共和国のオルトロズムにやって来たヴリトラ達は同盟軍と共に首都オルトロズムを攻撃する。敵の主力が集められているオルトロズムをヴリトラ達は一体どうやって攻略するのだろうか!?


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