第二百九十五話 再出発 遭遇!グリフォン空撃隊
寝坊したファフニールを起こす為に朝から騒ぎを起こすヴリトラ達。だがその騒ぎと朝食によって同行している騎士達との距離が少しだけ縮まる。それはこれから激しい戦場へ足を踏み入れる戦士達の小さな安らぎの時でもあった。
朝食を終えたヴリトラ達はすぐにバドムの村を後にした。最前線で大勢の同盟軍の戦士達が戦っている今、時間を無駄にできない。ヴリトラ達は一分でも早くオラクル共和国を解放する為に最前線へ急いだ。村を出てから三十分が経過し、先頭を走る装甲車の助手席ではヴリトラが地図を見ながら現在地と進む道をチェックしていた。
「・・・ニーズヘッグ、次の分かれ道を右へ曲がってくれ。そこから5Kほど先へ行った所に町があるからそこで休憩しよう」
「分かった」
ヴリトラに指示され、ニーズヘッグは前を見ながら返事をする。しばらく走るとヴリトラの言った通りY字の分かれ道が見え、ニーズヘッグはハンドルを回し右へと曲がった。その後ろをついて来るバンや白竜遊撃隊の騎士達、ガルバに乗ったガズンも右へと回る。彼等の上空ではアリサと数人の騎士を乗せたジーニアスとグリフォンに乗った闘獣戦士隊の騎士達がヴリトラ達を追い越さないようにゆっくりと飛んでついて来ていた。
緑の静かな平原の中に続く一本道を進むヴリトラ達。とても戦争をしているようには見えないくらい平和な光景だった。
「・・・この辺りは戦闘があった形跡はないな」
「町や村に駐留していた旧オラクル兵達は拠点である町や村の防衛をコラール帝国から命じられていたらしく、外に出て同盟軍の拠点を攻撃するような事は殆どしなかったらしい。きっと、戦争が始まってから一歩も町や村の外には出ていなかったのだろう。戦闘は全て町や村の中で行われたとバドムの村の騎士が言っていた」
外を眺めるヴリトラに後部座席に座っているラピュスがレヴァート王国の騎士から聞いた情報を話す。それを聞いたヴリトラは「へぇ~」と言う様な顔をしながらゆっくりと頷く。さっきのバドムの村の中でも騎士達が片付けて綺麗になっていたが、まだ少し戦闘を行った痕跡が残っており、それを見たヴリトラ達は村に入った時から村の中で激しい戦いがあった事に気付いていた。
拠点の中や周りでは戦闘を行い、村から離れた所では戦闘を行わない。そのせいで町や村に住む人達に被害が出ている事を考えたヴリトラはどこか哀れむ様な顔で空を眺める。するとヴリトラが遠くの空から何かがこちらに近づいて来るのを見つけて目を凝らした。
「おい、何だあれ?」
「ん?どうした、何か見つけたのか?」
運転しているニーズヘッグがヴリトラの方を見て尋ねる。ヴリトラは双眼鏡を手に取り、その近づいて来る何かを確認した。
ヴリトラが双眼鏡を覗き込むと、彼の目に数匹のグリフォンが飛びこんで来た。しかもその背中に乗っているのは旧オラクル軍の紋章の入った鎧を着た騎士。驚いたヴリトラは双眼鏡を下ろし、すぐにニーズヘッグと後部座席にいるラピュス達に知らせる。
「グリフォンだ!しかも背中に旧オラクル共和国の騎士が乗ってる!」
「何だと!?数は?」
ニーズヘッグから数を聞かれたヴリトラはもう一度双眼鏡をのぞいて数を確認する。後部座席にも緊張が走り、ラピュス、オロチ、ファフニールは窓から外を見た。
「・・・此処から確認できる数は六匹だ。でも、まだ何処かにいるかもしれない」
「分かった。俺は後ろのジャバウォック達に伝える」
ニーズヘッグは運転しながら耳の小型通信機のスイッチを入れてバンに乗っているジャバウォック達にグリフォン隊の事を伝える。
ヴリトラがグリフォンの数を数え、ニーズヘッグがジャバウォック達にグリフォン隊の事を知らせている中、ラピュス達は戦闘が行っても大丈夫なように戦闘準備に取り掛かった。そんな中、ラピュスの頭の中にある疑問が浮上する。
「・・・なぜ旧オラクル軍のグリフォン隊が此処にいるんだ?この辺りの町や村は既に同盟軍が制圧している。拠点の近くを通れば見逃すはずがないのに・・・」
ラピュスはなぜ旧オラクル軍のグリフォン空撃隊がこんな所にいるのか分からずに考える。するとオロチが自分の使う煙玉や爆雷クナイの準備をしながら口を開いた。
「確かに見逃す事は無いだろう。拠点の『近く』を通過したならな・・・」
「・・・え?」
「拠点にいる者達が確認できない所を通れば見つかる心配はない・・・」
「確認できない所?」
「例えば雲の上や拠点から確認できないくらい遠くとかな・・・」
オロチの言葉にラピュスはハッとする。いくらこの辺りの町や村の全てを制圧したとしても全てを完璧に管理する事ができる訳ではない。同盟軍のチェックが入っていない所はいくらでもある。特に空などには全く手が出せない為、例え敵部隊を見つける事ができても止める事はできない。それが今の同盟軍の弱点でもあった。
ヴリトラは自分達と敵グリフォン隊との距離を計算し、この後どうするかを考える。そして答えを出すと真剣な顔で小型通信機のスイッチを入れた。
「全部隊停止し、敵グリフォン部隊を迎え撃つ!」
「いいの?もしかしたら降伏する為の使者かもしれないわよ?」
ジルニトラがグリフォン隊の正体を考えてヴリトラ達に話した。するとニーズヘッグが低い声を出す。
「あり得ないな。もし本当に降伏するんだったら近くの町か村に駐留している同盟軍に使者を送るはずだ。ましてやグリフォンに乗って空からくるはずがない。恐らく、同盟軍の拠点の様子を探る為に送り込まれた偵察隊だろう」
「偵察隊だったら見逃す訳にはいかねぇな。情報を持ち帰られたら面倒な事になっちまう」
「ああ。とにかく急いで戦闘の準備をしろ。白竜遊撃隊と闘獣戦士隊にも知らせるんだ」
「「「「「了解!」」」」」
ヴリトラの指示を聞いた七竜将のメンバー全員が声を揃えて返事をする。ニーズヘッグは装甲車を停め、運転席から降りると同じようにバンを停めて運転席から飛び下りたジャバウォックと作戦を確認し行動に移る。ラピュス達も自分達の武器を手に取り装甲車から降りて遠くに見えるグリフォン隊を警戒した。
リンドブルム、ジルニトラ、ラランは白竜遊撃隊の騎士達やガズンに旧オラクル軍のグリフォン隊が接近してきている事を伝え、それを知らされたガズン達も武器を構えて戦闘態勢に入った。
ガズン達が戦闘の準備に入るのを確認したジルニトラが腰に付けてある通信機を手に取りスイッチを入れて空を見上げる。
「こちらジルニトラ。アリサ、聞こえる?」
「・・・ハイ、聞こえています!」
通信機からアリサの声が聞こえ、ジルニトラは「よし」と頷く。実はジルニトラが今使っている通信機は七竜将、ラピュス、ラランが使っている小型通信機とは違う旧式のトランシーバーに近い通信機で白竜遊撃隊と上手く連携が取れる様にヴリトラ達が持たせた物なのだ。アリサが上手く使えるか不安だったジルニトラだったが、彼女がしっかりと応答した事に安心したようだ。
ジルニトラはサクリファイスを右手に持ちながらグリフォン隊が見えた方角の空を見ながら通信機を通して上空にいるアリサに指示を出す。
「今こっちに旧オラクル軍のグリフォン隊が向かって来ているわ」
「え!グリフォン空撃隊ですか?」
「空撃隊?・・・旧オラクルのグリフォン隊はそう言うの?」
「ハ、ハイ。旧オラクル軍のグリフォン隊は機動力が高く、かなり手強いと聞いています」
「そう・・・とにかく、もうすぐ戦闘が始まるから、アンタはグリフォンに乗っている騎士達と一緒に敵がバドムの村や橋の方へ行かないように食い止めて。あたし達も地上から攻撃するわ」
「分かりました!」
アリサは少し緊張しているような声で返事をし通信機をしまう。するとアリサの後ろで会話を聞いていた騎士達がアリサに近づき声を掛けて来た。
「隊長、グリフォン空撃隊が来たというのは本当ですか?」
「・・・ジルニトラさん達が言うんだから間違いないわ」
「ええぇ!じ、自分達はこれからどうすればいいのですか?」
男性騎士が不安そうな顔で尋ねるとアリサは真剣な顔で騎士達を見る。
「落ち着いて。私達は空からグリフォン空撃隊の足止めをするよう言われたわ。後ろにいる闘獣戦士隊にも説明して一緒に彼等を食い止める。いいわね?」
「「「「ハ、ハイ!」」」」
アリサの指示を聞いた騎士達は返事をする。初めての空中戦闘に緊張しているのか戸惑いながら自分達の武器や持ち物のチェックした。
戸惑う部下達を見てアリサも少し緊張してきたのか微量の汗を流す。だが、隊長として部下達を不安にさせる訳にもいかないので深呼吸をしたりなどして少しずつ落ち着きを取り戻していく。
緊張が少しだけ和らぐとアリサはジーニアスの長い首をポンポンと叩いてジーニアスを呼んだ。
「ジーニアス、もうすぐ旧オラクル軍との戦いが始まるわ。彼等に勝てるかどうかは貴方と後ろのグリフォン達にかかっているわ。頑張って?」
「分かったのだ」
ジーニアスは背中に乗っているアリサを見て頷き、後ろで待機している闘獣戦士隊のところへ飛んで戦いが始まる事を伝えた。闘獣戦士隊の騎士達も初めての猛獣に乗った戦いにかなり緊張している様子だ。しかも空中戦と来れば緊張も更に大きくなる。アリサはそんな闘獣戦士隊の騎士達を落ち着かせようと色々とアドバイスをするのだった。
アリサが騎士達を落ち着かせている頃、地上ではヴリトラ達が戦闘の準備を進めていた。ヴリトラ、ラピュス、リンドブルム、ララン、ジルニトラが銃器を、ニーズヘッグとファフニールは機械鎧の内蔵機銃を出して構えグリフォン空撃隊が近づくのを待つ。ジャバウォックは装甲車に取り付けてある重機関銃を握り、狙いを空に向ける。そして白竜遊撃隊も馬から降りてMP7やベレッタ90を構えた。
「いいか、皆?普通に撃っても空高くにいる奴等に当たる可能性は低い。まずオロチが奴等の注意を引いて銃撃が当たるところまでおびき寄せる。その後に俺が合図をするから一斉に撃ちまくれ!」
「・・・分かった」
「OK!」
ラランとリンドブルムが返事をし、それを聞いたヴリトラは自分の後ろに立っているオロチに法を向く。
「じゃあ、オロチ、手はず通りに頼むぜ?」
「了解・・・」
オロチは両足のジェットブースターを点火させて高く飛び上がった。オロチが上昇していく姿を見上げるヴリトラはオートマグを両手でしっかりと握り、再び遠くに見えるグリフォン空撃隊の方を向く。するとそこへハイパワーを持ったラピュスがヴリトラの隣までやって来た。
「ヴリトラ、ちょっといいか?」
「ん?どうした?」
「なぜオロチに敵部隊を誘い込む役目を?ジーニアスやグリフォン達にやらせた方がいいと思うのだが・・・」
「いや、ジーニアスとアリサはともかく、グリフォンに乗っている連中は空中戦闘の経験が無い。そんな彼等に旧オラクル軍の精鋭であるグリフォン空撃隊の相手をさせるのはマズいだろう?」
囮と言う危険な仕事を空中戦闘の無い者達にやらせるのは危険すぎるというヴリトラの考えにラピュスは納得する。いきなり強敵と戦わせるよりも、普通の敵を相手にして少しずつ経験を積ませた方が安全で確実に闘獣戦士隊が強くなるとヴリトラは考えていたのだ。
「それにオロチなら速いし小回りも効くから例えグリフォン達に囲まれても逃げ切れる。伊達に七竜将の偵察兵はやってないんだよ、アイツはな」
「成る程・・・流石は七竜将の隊長、仲間の特技や長所は全て把握しているという訳か」
敵の拠点や敵部隊の様子を探り事を得意とするオロチなら敵をかく乱させ、挑発する事も簡単にできる。そこまで計算しているヴリトラにラピュスは感服するのだった。
一方、グリフォン空撃隊は近くにヴリトラ達がいる事に気付かずに飛び続けていた。六匹のグリフォンに乗る騎士達は全員突撃槍を手に持ち、マントを風で揺らしながら前だけを見ている。
「もう少しで国境だ。皆、見つからないように注意しろよ?」
「分かってる」
先頭を飛ぶグリフォンに乗る旧オラクル軍の男性騎士が後ろを飛ぶグリフォンに乗る騎士達に忠告し、その内の一人が返事をする。他の四人の騎士達も返事はしなかったが真剣な顔で頷いた。
「けど、本当に大丈夫なのか?俺達だけで敵軍の国境の様子を偵察しに行くなんて・・・」
「心配性だなお前は?大丈夫だよ、同盟軍には俺達の様な空を飛ぶ戦力は無いんだ。例え見つかってもすぐに逃げられるさ」
「ああぁ、それに弓矢なんかじゃ俺達がいる高さまで届かねぇからな。安心して偵察できるってもんだよ」
「だといいんだけどなぁ・・・」
不安そうな顔をする男性騎士を他の騎士達が笑いながら安心させる。やはり彼等はレヴァート領と旧オラクル領を繋ぐ橋の様子を偵察する為にやって来たらしい。
「・・・正直言うとな、俺は不安なんだよ。もしかして、同盟軍にも俺達の様な空を飛ぶ事のできる戦力があるんじゃないかって・・・」
「馬鹿言うなよ。グリフォンの様な猛獣を調教できる奴なんてそうはいない。仮にいたとしても俺等と同等に戦えるような部隊を編成するには数週間は掛かるだぞ?断言できる。同盟軍の連中には対空用の部隊は存在しない」
「だけど、コラール帝国に力を貸しているブラッド・レクイエムっていう連中がいるじゃねぇか」
男性騎士の言葉に周りの騎士達の表情が変わる。
自分達の国に攻め込み、蹂躙し、屈服させたコラール帝国とそれに手を貸す未知の力を持った悪魔の軍団。前の戦いを思い出し、グリフォン空撃隊の隊員達の表情が少しだけ歪む。
「あんな力を持つ連中がこの世にいるんだぜ?もしかすると、同盟軍にもそんな力を持つ連中がいるかもしれねぇじゃねぇか」
「・・・確かにアイツ等は普通じゃなかった。見た事の無い武器を使い、空飛ぶ鉄の竜や鉄の馬車に乗って主要都市を次々に攻め落としていきやがった・・・」
「もし、奴等の様な力を持つ連中が同盟軍に力を貸していたら・・・」
「考えすぎだ」
「ああ、そうだよ。あんな化け物みたいなやつがそこら辺にいるはずがない。同盟軍なんて俺達の前じゃ無力同・・・」
男性騎士が余裕の態度を見せると、突然グリフォン空撃隊の前にジェットブースターで飛び上がったオロチが現れた。
いきなり姿を見せたオロチにグリフォン達は驚き急停止する。騎士達もいきなり止まったグリフォンに驚いたが、目の前に現れたオロチを見て更なる驚きを見せた。
「な、何だコイツは!?」
「そ、空を飛んでやがるぞ!?」
翼も無く、グリフォンにも乗らずに空を飛んでいる少女に驚きを隠せないグリフォン空撃隊。そんな彼等を斬月を担ぎながら見つめるオロチはゆっくりと口を動かした。
「オラクル共和国のグリフォン隊だな?ここから先へ行かせる訳にはいかない。さっさと立ち去れ・・・」
「な、何?いきなり現れて何を言い出す!そもそも貴様は何者だ!?」
「レヴァート王国に雇われた傭兵、と言っておこうか・・・」
「何っ、レヴァート王国だと?」
今、自分達と敵対している同盟軍の戦力の一つ、レヴァート王国の傭兵と聞いて男性騎士達は反応する。そしてすぐに突撃槍を構えて警戒した。
「同盟軍の傭兵がこんな所で何をしている?」
「・・・離す必要は無い・・・」
「クッ!ふざけた事を言いおって!それに立つ去れと言うなら、それはお前達の方だろう!此処は我々オラクル共和国の領土なのだからな!」
「『旧』オラクル領、だろう・・・?」
「き、貴様ぁ!」
挑発を受けた一人の男性騎士がグリフォンを操りオロチへ突っ込んでいく。彼の持つ突撃槍がオロチの体を貫こうとした時、オロチはジェットブースターの出力を上げて一気に上昇し、突撃槍をかわした。
グリフォン空撃隊は突然上昇したオロチを見上げて更に驚きの表情を浮かべた。
「な、何だアイツは!?」
「本当に人間か・・・?」
「・・・いや、待て。あの女の両足、コラール帝国に手を貸しているブラッド・レクイエムの兵士と同じ物じゃないか?」
「い、言われてみれば・・・」
グリフォン空撃隊がオロチを見上げて驚いていると、オロチは上昇を止めて地上に向かって急降下した。
「おい、アイツ逃げるぞ!」
「マズイ、俺達が偵察しに来た事を敵に知られると面倒だ。捕まえるぞ!」
「ほ、本気か?あんな得体のしれない女を捕まえるって・・・」
「そんな事言ってる場合か!」
グリフォン空撃隊全員はグリフォンを操り、急降下するオロチの後を追った。
彼女が何者であるかなど、もはやどうでもよかった。自分達の任務を邪魔をする者を捕らえる、彼等の頭の中にはそれだけしかなかったのだ。
オロチはグリフォン空撃隊が自分に追いつけるぐらいのギリギリの速さで飛び、チラチラと後ろを気にしながら移動する。折角挑発しても彼等は追ってこなければ何の意味も無いからだ。そして、グリフォン空撃隊はオロチの計算通り、後を追って来ていた。
「よし、後はこのまま・・・」
降下を止めて低空飛行でヴリトラ達の方へ飛んで行くオロチ。一方でグリフォン空撃隊は自分達がおびき寄せられているとも知らずにオロチの後を必死で追っていた。
オロチは後ろにグリフォン空撃隊がいる事を確認し前を見る。そして数十m先で銃器を構えているヴリトラ達の姿を確認した。オロチはヴリトラ達に簡単な合図を送り急上昇した。
「な、何だ?」
「いきなり上昇したぞ!?」
突然上昇したオロチを見て驚き、オロチの後を追う様に見上げるグリフォン空撃隊。すると、男性騎士の一人がすぐに前を向き、自分達に向かって銃器を向けているヴリトラ達に気付く。
「お、おい!あれを見ろ!」
先頭にいる男性騎士が前を指差して仲間達にヴリトラの事を知らせようとする。だが、気付いた時にはもう遅かった。
「今だ!撃てぇ!」
ヴリトラの合図でラピュス達は一斉に引き金を引いてグリフォン空撃隊を銃撃した。先頭にいた男性騎士が咄嗟にグリフォンを上昇させて銃撃をかわすが、残りの五匹のグリフォンは銃撃を受けて蜂の巣になり、乗っていた男性騎士達も放り出されて地面に叩き付けられた。
「うわあああぁっ!」
「ぐおおおおぉっ!」
地面に叩き付けられた男性騎士達は声を上げながら地面を転がり、ヴリトラ達の前に倒れる。中には銃弾を受けて負傷している者もいるが大した怪我でなかった。ヴリトラ達は男性騎士達が大勢を直す前に彼等を取り囲んだ。
生き残った男性騎士はグリフォンに乗りながらやられた仲間達を見下ろして青ざめている。
「ば、馬鹿な・・・一瞬で皆を・・・どうして・・・・・・ッ!奴等が使ったあの武器、ブラッド・レクイエムという奴等と同じ・・・」
ヴリトラ達の使っていた銃器がブラッド・レクイエム社が使っていた物と同じだと気付いた男性騎士は固まる。そんな彼の周りにジーニアスに乗ったアリサとグリフォンに乗った闘獣戦士隊が現れて男性騎士が乗るグリフォンを取り囲んだ。
「な、何ぃ!?レヴァート王国が、グリフォンに・・・」
「もう逃げ場はないわよ。投降しなさい!」
「観念するのだ!」
アリサとジーニアスの警告に男性騎士はもう抵抗は無駄だと感じたのか、持っていた突撃槍を離す。突撃槍は地面に刺さり、その直後に男性騎士はグリフォンと下ろして投降したのだった。
一瞬にして旧オラクル共和国の優秀なグリフォン空撃隊を倒したヴリトラ達。だが、今回のグリフォン空撃隊との戦いはこれから始まる旧オラクル領での戦闘の中ではとても小さなものだという事をヴリトラ達は気付いていなかった。




