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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十六章~静かな森の妖精達~
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第二百八十八話  読まれる攻撃 七竜将絶体絶命!

 バロンとの戦いが始まり、最初は押していたヴリトラ達であったが、ヴリトラ達の動きを読んだバロンが遂に反撃を始める。そしてその攻撃によってヴリトラとラピュスはバロンの攻撃を受けてしまったのだった。

 一瞬にして背後に回り込んだバロンの斬撃を腹部に受けたヴリトラとラピュス。幸い、傷は浅く出血も多くなかった。だがそれでも多少のダメージはあるのか二人は斬られた箇所を押さえながらバロンを睨み付ける。


「・・・大丈夫か?ラピュス」

「ああ、大した傷じゃない・・・」


 ヴリトラとラピュスは斬られた腹部を押さえて止血しながら痛みに耐える。そんな二人の様子を眺めるバロンは腕から飛び出した内蔵剣の刀身をゆっくりと回しながら見つめていた。


「流石は七竜将、あの攻撃をかわすとは。いや、かわし切れてはいなかったがな。フフフフ」

「コイツゥ・・・」


 自分とラピュスに一撃を食らわせたのは嬉しいのか楽しそうに笑うバロンを見てヴリトラは目を鋭くしバロンを睨む。ラピュスもアゾットを右手で持ちながら左手で腹部を押さえてバロンを見つめていた。

 一方でヴリトラとラピュスがバロンの攻撃を受けた姿を見たリンドブルム達は武器を構えながら次にどう動くかを考えていた。バロンが二人の隙を突き、簡単に傷を負わせる事のできる実力者なら普通に戦っても勝てないと感じていたからだ。


「・・・ジャバウォック、どうする?」

「一瞬で二人の背後に回り込んで一撃を食らわすほどの輩だ、普通に戦っても意味は無いだろう。しかもまだ奴の力の底が見えていない。どんな攻撃をするのか、他にどんな内蔵兵器を隠しているのかもだ。情報が少ないんじゃ作戦の立てようもない」

「じゃあ、どうするの?」

「・・・戦いながら敵の情報を集めるしかないだろう」


 バロンの情報が手元に無い以上、戦って相手の攻撃パターンなどを見極めるしか方法はない。リンドブルム達は危険を覚悟し、戦いながらバロンの情報を集める事にした。

 リンドブルムとジャバウォックがどう戦うかを話し合っている時、ラランはエリスとリーニョの二人と合流し、少し離れた所からヴリトラ達を見ていた。


「・・・隊長、ヴリトラ」


 突撃槍を構えながら傷を負ったヴリトラとラピュスを心配し呟くララン。その後ろではエリスとリーニョが横に並んでバロンの姿を見ながら驚いている。腕から突然剣が飛び出し、持っていた盾が黄緑色の光に包まれた光景を見たのだから驚くのも当然だ。


「な、何なのだあれは?腕から剣が出たかと思ったら今度は盾が光り出したぞ・・・」


 機械鎧という物を知らないリーニョはバロンの姿を見て目を見開きながら驚く。戦いが始まった時から何度もBL兵の内蔵兵器を見ていたのだが、その時は興奮していたせいか機械鎧の内蔵兵器の事をよく見ていなかったのだ。だが落ち着きを取り戻し、改めて機械鎧やバロンの持つ盾など長い間生きてきて初めて見る未知の武器に驚いた。


「・・・あれがパティの言っていたマシンメイルという物なのか・・・」


 リーニョの隣に立っているエリスも間近で見る機械鎧の内蔵兵器や機械鎧兵士との戦いに驚いている。

 以前、武術大会で七竜将の戦いを見た事はあるがそれは遠くから見ていた為、どんな戦いなのか分からなかった。だから目の前で起きている機械鎧兵士との戦いに驚き、それと同時に興奮しているのだ。


「おい、アーナリア、アイツ等は一体何者なのだ?」


 エリスがラランに問いかけるとラランはバロンを警戒しながら口を開く。


「・・・アイツ等とは?」

「七竜将とブラッド・レクイエムの事だ。アイツ等は何処から来た?どうしてあんな見た事の無い武器を持っている?」

「・・・このヴァルトレイズ大陸とは別の大陸から来ました」


 ラランはヴリトラ達が用意しておいた嘘の情報を話す。七竜将やブラッド・レクイエム社が別の世界から来たなどと話せばパニックになるので誰も驚かない様な情報を用意しており、ヴリトラ達が何処から来たのか訊かれたらそれを話す事にしている。

 エリスはヴリトラ達が何処から来たのかを聞くと遠くで戦っているヴリトラ達の方を向きジッと彼等を見つめた。


「・・・本当に別の大陸から来たのか?私にはもっと遠く、私達の想像もできない様な未知の世界から来たように感じられる」

「・・・!」


 ラランはエリスの言葉に一瞬驚きの表情を浮かべる。今までヴリトラ達の事を訊いて来た者はさっきの説明で納得したがエリスの様に深く考えた者はいなかったからだ。「


「アーナリア、他に七竜将やブラッド・レクイエムに関する情報は知らないのか?」

「・・・ハイ」


 ラランは嘘をついた。これ以上何かを話せばうっかり何かを喋ってしまうと感じたのだ。

 バロンを見ながら黙り込むラランを見たエリスは小さく息を吐く。すると騎士剣を両手でしっかりと握りながら微笑んだ。


「まぁ、アイツ等が何処から来たにせよ、私達の味方でブラッド・レクイエムと戦ってくれているのは確かだ。今は戦いの最中だし、考えるのはやめよう」


 エリスの態度にラランはホッとした。あれ以上何かを聞かれたらどう受け答えしていいのか分からずに悩んでいたのだろう。

 リーニョは二人の会話の内容が分からずに小首を傾げていた。

 ララン達が七竜将の事で会話をしている頃、ヴリトラ達の方では緊迫した空気が漂っていた。互いに相手を睨み、いつ戦いが始まってもおかしくない雰囲気だ。そんな中でヴリトラとラピュスは態勢を整えて武器を両手で構えている。まだ僅かに腹部から出血しているが最初と比べたら大分良くなっていた。


「さっきはお前の速さに驚いたが、今度は油断しない。全力で行くぜ!」

「フッ、その威勢の良さがいつまで続くのか見物だな」


 森羅を構えるヴリトラを見て嘲笑うバロン。そんなバロンをヴリトラを睨みながら両足に力を入れ、勢いよくバロンに向かって跳び、正面から袈裟切りを放つ。バロンは盾でヴリトラの斬撃を簡単に防いだ。だがヴリトラは攻撃の手を休めずに連続で攻撃した。

 バロンはヴリトラの連続切りを全て盾で防ぎ、隙があれば内蔵剣で反撃する。ヴリトラもバロンの攻撃を森羅で防いだり、回避したりなどしており、両者とも激しい攻防を繰り広げた。鋭い表情で攻撃をするヴリトラに対しバロンは余裕の態度を見せていた。


「なかなか重い攻撃だ。だが、この程度では私に傷を負わせる事はできんぞ?」

「フン!こっちはまだ本気を出してねぇぞ!」

「なら、本気で戦ってもらうよう、私は少し本気を出すとしよう」


 ヴリトラの攻撃を防ぎながらバロンは仮面の赤い目を光らせる。激しい攻防の中、ヴリトラの攻撃に一瞬隙ができるとバロンは盾を構えてヴリトラにタックルして来た。

 咄嗟にヴリトラは森羅を横にしてバロンのタックルを止めようとする。だが、日本刀である森羅で止める事はできずに大きく後ろへ押し飛ばされしまう。普通の盾に突進されるのなら素手でも止められるが、バロンの盾は今、電磁シールドを展開していた。そんな状態では素手は勿論、機械鎧の腕でも触れる事はできない。もし触れればヴリトラの手は電磁シールドの熱でボロボロになってしまう。

 押し飛ばされて仰向けに倒れたヴリトラは体を起こし体勢を立て直そうとする。だがバロンはそんな隙を与えまいと倒れているヴリトラに向かって走り出し内蔵剣を振り上げる。バロンはヴリトラの目の前まで近づくと内蔵剣を振り下ろして攻撃した。その攻撃をヴリトラは横へ転がってギリギリで回避する。そしてすぐに立ち上がり体勢を立て直す。


「よく今のをかわしたな?流石は七竜将の隊長と言うべきか」

「そりゃどうも!」

「もっと私を楽しませてくれ?お前には期待しているのだからな。勿論・・・」


 バロンは途中で言葉を止めると盾を動かして左側面からのラピュスの攻撃を前を向いたまま防いだ。ラピュスは自分の攻撃を簡単に止めたバロンを見て歯を噛みしめる。バロンはアゾットを止めながらゆっくりとラピュスの方を向いた。


「勿論、お前にも期待しているぞ?」

「クッ!前を見たまま攻撃を止められるとは・・・」

「私はさっきの戦いでお前達の戦い方をじっくりと見物させてもらった。おかげでお前達がどんな攻撃を仕掛けてくるのか分かるのだ」

「私達の動きが分かるだと?未来が分かるなんて、まるで予言者だな?」

「予言者か・・・フフフフ、当たらずとも遠からず、だな」


 ラピュスの言葉に笑い出すバロン。そこへ体勢を立て直したヴリトラは森羅で攻撃する。しかしバロンはヴリトラの攻撃を内蔵剣で防ぎ、ヴリトラとラピュスの二人の攻撃を簡単に防いでしまった。だが、両手で二人の攻撃を止めた事で今のバロンは両手が塞がれている。それは動きを封じられた事を示していた。

 ヴリトラとラピュスによって動きを封じられたバロンはチラチラと二人を見た。その直後、バロンは内蔵剣と盾を押してヴリトラとラピュスの体勢を崩す。バロンは体勢を崩して隙のできた二人の攻撃するのかと思われたが攻撃せずに振り返って盾を構える。バロンの視線の先にはライトソドムとダークゴモラを構えているリンドブルムの姿があった。リンドブルムはさっきまでヴリトラとラピュスの二人に集中していたバロンが突然自分の方を向いた事に驚く。勿論、ヴリトラとラピュスも驚いていた。


「仲間に私の動きを封じさせて背後からの銃撃か。悪くない手だが、私には通用しない」

「なっ!?まさか、最初から僕の存在に気付いていたの?」


 自分がバロンの背後から銃撃する事を読まれたいた事に驚きを隠せないリンドブルム。そんなリンドブルムを見て目を赤く光らせたバロンは盾のスイッチを押し、再び小型ミサイルを撃ちリンドブルムに攻撃する。

 リンドブルムは迫って来る四発の小型ミサイルを一発ずつ撃ち爆破して行く。何とか全てのミサイルを破壊したが、爆煙の中からバロンが飛び出しリンドブルムに向かって走って来る。リンドブルムはライトソドムとダークゴモラを撃って応戦するが弾丸は全て内蔵剣で弾かれたり盾で防がれてしまう。バロンは一気に距離を縮めてリンドブルに斬ろうとする。だがリンドブルムとバロンの間にジャバウォックが回り込み、デュランダルでバロンの斬撃を防ぎリンドブルムを守った。


「大丈夫か?」

「うん、ありがと」


 助けてくれたジャバウォックに礼を言ったリンドブルムはバロンから離れて体勢を立て直す。リンドブルムが離れたのを見たジャバウォックはバロンの方を向いて彼を睨み付ける。


「その巨体でなかなかのスピードだな?」

「俺をそこら辺にいる木偶の坊と一緒にするなよ?俺は図体と違って速いぜ?」

「そうか、なら見せてもらおうか。お前の速さとやらをな」


 バロンはそう言ってジャバウォックに内蔵剣で連続切りを放った。ジャバウォックは大剣であるデュランダルを器用に動かしてバロンの斬撃を防いでいく。

 それか十数秒の攻防が繰り広げられた後、ジャバウォックとバロンは後ろへ跳んで距離を取る。ヴリトラ達はバロンから離れたジャバウォックと合流し、数m先に立っているバロンを警戒した。


「大丈夫か?」

「うん、僕は平気」

「そうか。ヴリトラ、ティアマット、お前等はどうだ?」

「大丈夫だ、大した怪我じゃない」

「ああ、傷も大分痛みが引いて来た」


 リンドブルムや傷を負ったヴリトラとラピュスを見てとりあえず大丈夫だと感じたジャバウォックは安心した。そしてすぐにバロンの方を向いて自分達の武器を構える。


「・・・どうだった?」

「ああ、思った以上にやるぜ、あの野郎。ただの内蔵超振動剣と盾だけの装備なのに今までのブラッド・レクイエムの機械鎧兵士とは全然違う。あれなら一人で俺等全員を相手にしてもおかしくねぇ」

「そうか・・・・・・にしても、機械鎧兵士四人でたった一人に苦戦するとは、情けない話だ」

「ああぁ、まったくだな・・・で?この後はどうする?」


 ジャバウォックはこの後どのように戦うのかヴリトラに尋ねる。するとヴリトラはジッとバロンを見つめながら頭の中で考え始めた。しばらくするとヴリトラはバロンには聞こえないように小さな声を出す。


「俺が正面からアイツに突っ込む。俺が足止めをしている間にティアマットとジャバウォックはそれぞれ左右に回り込んで攻撃してくれ。リンドブルムは援護射撃、いいな?」

「分かった」

「「了解!」」


 指示を聞いた三人は返事をし、ヴリトラ達はすぐに行動を開始する。

 ヴリトラは森羅を下段構えに持ちバロンに向かって走る。ヴリトラが走り出すとリンドブルムはライトソドムとダークゴモラで援護射撃を開始した。バロンはリンドブルムの銃撃を盾で防ぎ、走って来るヴリトラを見て仮面の目を赤く光らせる。バロンの正面までやって来たヴリトラは素早くバロンに逆袈裟切りを放ち攻撃した。バロンはヴリトラの攻撃を内蔵剣で防ぎ、目の前にいるヴリトラを見つめる。そして二人はすぐに激しい攻防を始め、二人の周囲に火花と金属が削れる音が広が、その様子を見たラピュスとジャバウォックは分かれて円を描く様に走り出し、バロンの左右から挟もうとする。

 ところが、ラピュスとジャバウォックがバロンの数m近くまで近づき、左右から攻撃を仕掛けようとした瞬間、ヴリトラの連撃を防いでいたバロンは一瞬の隙をついてジャンプしヴリトラの真後ろに着地した。


「クッ!」


 背後に回り込まれ、左右から挟み撃ちにする作戦が失敗した事にヴリトラは悔しそうな顔をする。ラピュスとジャバウォックもバロンの突然の行動に驚いていた。

 ヴリトラの背後に回り込んだバロンは振り返りざまに内蔵剣を横に振ってヴリトラに攻撃する。ヴリトラは森羅で縦に構えてバロンの斬撃をギリギリで止めた。

 二人の戦いを遠くで見ていたリンドブルムはヴリトラを援護しようとライトソドムを撃つ。だがバロンはヴリトラの方を向いたままリンドブルムの銃撃を盾で簡単に防いでしまう。次々と自分達の攻撃を読まれてしまう事が納得できないのかリンドブルムはムッとした。


(おかしい、おかしすぎる!どうしてこんなにも簡単に僕達の攻撃が読まれちゃうの?いくら僕達の戦いを見てたからってここまで動きが読まれるのは不自然だ。まるで心が読まれているみたい・・・・・・もしかして、バロンは超能力者で読心術リーディングが使えるんじゃ・・・)


 心の中でバロンが自分達の心を読んでいるのではないかと考えるリンドブルム。だが本当に心が読めるならわざわざヴリトラ達の動きを見物して戦い方を調べる必要は無い。すぐに戦いを初めて心を読みながら戦えばいいだけの話だ。だが、バロンはヴリトラ達とBL兵達の戦いをじっくりと見物していた。つまり、彼は読心術を使えるという訳じゃないという事だ。

 多くの謎が頭の中でこんがらがりながらリンドブルムは援護射撃を続ける。バロンは盾でリンドブルムの銃撃を防ぎながら内蔵剣でヴリトラに攻撃し、ヴリトラはバロンの連続攻撃を森羅で防いでいた。


「なんて奴だ、銃撃されているのにリンドブルムを警戒せずに俺に攻撃するなんて!」


 バロンが自分だけを見てリンドブルムの方を全く警戒していない事にヴリトラは驚く。そんなヴリトラを見てバロンは再び仮面の目を赤く光らせるとヴリトラへの攻撃を止めて左へ跳び、ヴリトラの背後に向かって盾の小型ミサイルを発射した。小型ミサイルが飛んで行く先にはラピュスとジャバウォックがもう一度分かれてバロンを左右から挟み撃ちにしようとしていた姿があり、四発の小型ミサイルはそんな二人に向かって飛んで行く。


「何っ!?」

「まさか、俺達の次の手が読まれた!?」


 予想外の攻撃に驚きを隠せないラピュスとジャバウォック。小型ミサイルは二人の足元に命中し爆発、ラピュスとジャバウォックを吹き飛ばした。


「うわああああぁ!」

「ぐわああああぁ!」


 爆風と衝撃を受けて声を上げる二人は地面に叩き付けられ、そのまま倒れてしまう。そんな様子を見たヴリトラとリンドブルム、離れた所にいるララン達は驚いて目を見開く。

 バロンは休む間もなく次の攻撃に移った。驚いて隙だらけになっているヴリトラに内蔵剣で突きを放つ。ヴリトラは咄嗟に体を左へ反らして突きをかわそうとしたが、内蔵剣の刃はヴリトラの右肩を掠め、ヴリトラは痛みに顔を歪めた。


「ぐうぅ!」

「戦場では一瞬の隙が命取りになる。そんなのは常識だぞ?」

「いちいちうるせぇよ!」


 ヴリトラはバロンにキックで反撃するがバロンは後ろへ跳んでそのキックを簡単にかわした。

 距離を取ったバロンにヴリトラは左腕を向け、内蔵されているマイクロ弾を撃つ。まっすぐバロンへ向かって飛んで行くマイクロ弾、だがバロンは横へ移動し、マイクロ弾を簡単に回避されてしまう。すると避けられたマイクロ弾はバロンの後ろにある大きな岩に向かって行き当たりそうになった。


「!」


 マイクロ弾が岩に当たりそうになるのに気づいたバロンは素早く持っている盾で自分の頭部を守り、その直後にマイクロ弾は岩に命中しバロンは爆発に巻き込まれた。


「!?」


 爆発に巻き込まれたバロンを見たヴリトラは何か違和感の様なものを感じ表情が変わる。しばらくすると爆煙が晴れていき、少しずつ煙の中が見えるようになるとヴリトラは目を凝らす。そこへリンドブルムも合流し、ヴリトラの隣でライトソドムとダークゴモラを構えながら爆煙を見つめて警戒する。


「大丈夫!?」

「ああ、大した傷じゃない・・・」


 ヴリトラの肩の傷を心配するリンドブルムにヴリトラは笑って答える。二人がふと小型ミサイルの爆発と吹き飛ばされたラピュスとジャバウォックの方を見ると、二人は全身の痛みに耐えながら体を起こす姿があった。どうやら二人も無事のようだ。

 二人が無事な姿を確認して安心したヴリトラとリンドブルムはすぐにバロンの方を向いて武器を構える。やがて爆煙が完全に消え、その中心に体に火傷を負い、白い煙を上げているバロンの姿があった。特殊スーツもあちこち焦げている。だが、聖獣の仮面だけは無傷で赤い目を光らせていた。


「・・・フゥ、危ない危ない。あと少し防御が遅かったらどうなってたか・・・」

「・・・・・・」


 全身に火傷を負っているにもかかわらず平然とした態度を取るバロン。そんなバロンを見たヴリトラは黙って彼を見つめる。


「あんな近くで爆発を受けたのに殆どダメージを受けていないなんて・・・」


 リンドブルムはヴリトラの隣でバロンの態度に驚きを隠せないでいる。いくら機械鎧兵士でも至近距離から爆発に巻き込まれたら只では済まない。だがバロンは痛みを感じていない様な態度を取り、驚くリンドブルムを見て笑った。


「ねぇ、ヴリトラ、一体どうなってるの?」

「多分、体内のナノマシンがアイツに痛みを感じさせないようにしているんだろ。あるいはもともと痛みを感じにくい体なのか・・・」

「・・・どっちにせよ、色んな意味で厄介な相手って事だね?」

「そういう事だ・・・」


 バロンの更なる秘密を知って表情を鋭くするリンドブルム。その隣ではヴリトラが先程の爆発を思い出して難しい顔をしていた。


(・・・アイツは何であんな行動をとったんだ?あんな事をするぐらいなら・・・)


 何かに疑問を抱くヴリトラは頭の中で必死に答えを考えた。すると、バロンが内蔵剣と盾を構え直してヴリトラとリンドブルムを見て目を赤く光らせる。


「フフフ、私に傷を負わせた事は誉めてやろう。だが、それもここまでだ。そろそろまとめて地獄へ送ってやろう」


 ヴリトラ達の死刑宣告をするバロンを見てヴリトラ達は一斉に身構える。力の底の見えない相手にヴリトラ達は緊迫した空気に包まれるのだった。

 相手の動きを読んで攻めて来るバロン。そんなバロンの力の前に苦戦を強いられるヴリトラ達。そんな中でヴリトラはある事に気付く。それは一体何なのか、いよいよ戦いもクライマックスを迎えようとしていた。


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